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銀の鎖

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  • 1:

    美桜

    初めて書く小説なので、下手ですが読んでもらえれば嬉しいです。更新も少しずつになりますが、気長におつきあい下さいm(__)m

    2006-05-07 02:28:00
  • 201:

    毎日がそれの繰り返しだった。もっとも嫉妬のおかげで、清香の席ではいつもシャンパンがおり、皓輝の売り上げは驚くほど上がっていた。

    2006-05-10 21:49:00
  • 202:

    「そっかぁ。皓輝も大変だね〜。美桜あんまり来ない方がいいのかなぁ…」「それはダメっすよ!美桜姉来なくなったら俺らが困る!」と真剣な表情で悠馬が言う。

    2006-05-10 21:50:00
  • 203:

    「何で?」「だって機嫌の悪い皓輝さんの相手できるのって、美桜姉くらいだもん。それに、美桜姉来なくなったら俺ら飢え死にする!」「おいおい、売り上げのことじゃなくて、悠馬たちのお腹の心配〜?」「俺たちにとっては切実な問題なの!!」と悠馬が言い返す。

    2006-05-10 21:51:00
  • 204:

    悠馬は美桜より3歳年下の二十歳。甘え方が上手なので、今ではすっかり本当の弟のような存在だった。「はいはい。で、今日は晩御飯食べた?」「まだ!!」と元気良く悠馬が答える。

    2006-05-10 21:52:00
  • 205:

    「じゃあ、美桜も少しお腹減ったから悠馬の食べたいの何か適当に頼んで?あ、皓輝はご飯食べた?」「まだじゃないっすかね?俺が出勤してきたら皓輝さんソファでダウンしてたんで」

    2006-05-10 21:53:00
  • 206:

    「そっか、じゃあ皓輝の分も一緒に頼んでおいて」と言いながら、美桜は席を立つ。「あ、皓輝さん厨房ですよ」と言う悠馬に「はいは〜い」と返事をしながら厨房へ向う。

    2006-05-10 21:53:00
  • 207:

    厨房の床に崩れるように皓輝がいた。ひどく苦しそうな顔をしながら眠っている。そっと近づき「皓輝?」と声をかける。「……ん」と寝言のように皓輝が返事をする。

    2006-05-10 21:54:00
  • 208:

    「お〜い、皓輝くん。仕事の時間ですよ〜。起きなさ〜い」とさっきより少し大きな声で美桜は話しかける。「…わかってる…」ととりあえず返事だけはしているが、皓輝は眠り続けている。

    2006-05-10 21:55:00
  • 209:

    美桜はため息をつきながら皓輝の耳元へ顔を寄せ、「皓輝さん!後5分でオーナー来るって!」と叫んだ。「…まじで!?」と皓輝は飛び起きる。

    2006-05-10 21:56:00
  • 210:

    「って、ヤバ!!悠馬、今何時!?」どうやら皓輝はまだ少し寝ぼけているようで悠馬に起こされたと思っているようだ。「おはよ、皓輝」としゃがみこみながら声をかける。

    2006-05-10 21:57:00
  • 211:

    「え?美桜?何で?」と驚きながら辺りを見回し、「てか、お前ここ厨房。スタッフ以外出入り禁止」と急に目が覚めたようにしっかりと返す。「大丈夫だよ。まだ他にお客さん来てないから。只今の時刻は午前1:00です」と少しふざけて返す美桜に、

    2006-05-10 21:58:00
  • 212:

    「そういう問題じゃなくて…とりあえず席に行こう」と美桜の腕を摑み厨房を出る皓輝。「おはようございます!」と一斉に従業員たちが挨拶をする。

    2006-05-10 21:59:00
  • 213:

    「おはようさん。ていうか、お前ら起こせよ」「いや、俺ら何度も起こしましたって。起こしたら皓輝さん自分でソファから歩いて厨房まで行ったじゃないですか!」「…そうだっけ?」と惚ける皓輝。

    2006-05-10 22:00:00
  • 214:

    「もう、皓輝さんまじ勘弁して下さいよ〜。皓輝さんがダウンしてると毎回俺らがオーナーに怒られるんっすよ?」と悠馬と同期の陽太が言う。「まぁ、仕方ないだろ」と皓輝。「オレ客多いから毎日飲む量ハンパじゃないしな〜」

    2006-05-10 22:01:00
  • 215:

    と言いながら、スタッフルームへ引っ込む。そんな皓輝を見送りながら美桜は、「ほんっと迷惑な奴だね〜」と陽太に話しかける。「ね〜。ほんっと皓輝さんには困ったもんですよ!」と苦笑しながら陽太が言う。

    2006-05-10 22:01:00
  • 216:

    「てか、美桜姉さすがだね。ダウンしてる皓輝さん起こせるのってオーナーと美桜姉だけだわ」と横から悠馬が言う。「皓輝さんがダウンしてるときは美桜姉、起こしに来てよ!」

    2006-05-10 22:02:00
  • 217:

    「美桜はここのスタッフか?」と苦笑しながら返す美桜に、「あ、それナイス!美桜姉ここで働けば?」と半ば本気で悠馬が言う。

    2006-05-10 22:03:00
  • 218:

    ばぁか!ここで働く=皓輝の世話係、でしょ?そんなダルい仕事無理〜」とそんな会話をしている内に、用意を終えた皓輝がスタッフルームから出てきて美桜の横に座る。

    2006-05-10 22:04:00
  • 219:

    「あぁ、ダル…」とそのままカウンターにうつ伏せる。「こらこら皓輝。まだ全然仕事してないっつーの!てか、それがお客様の前でする態度〜?」と美桜がからかうと、

    2006-05-10 22:05:00
  • 220:

    「美桜は客じゃないからこれでいい」と皓輝は呟く。「いやいや、皓輝くん。美桜ちゃんとお金払ってるじゃん。客じゃなかったら何なのよ?」と返すと、一瞬間が空き、

    2006-05-10 22:06:00
  • 221:

    「…オレのおふくろ」とうつ伏せたまま皓輝は言う。「はぁ!?美桜こんなデカい子供持った覚えないし!」「オレも美桜に育てられた覚えないし…」とダルがりながらもしっかり言い返す皓輝。

    2006-05-10 22:07:00
  • 222:

    「もう!ほんっとやる気ないでしょ?」「…うん、無理。飯来るまでしばらく寝かせて…」と言いながら皓輝は本気で眠り出した。

    2006-05-10 22:08:00
  • 223:

    そんな2人を見ながら悠馬が「皓輝さんまじ疲れてるから勘弁してやってよ、美桜姉」と。「ん。別に美桜はいいんだけど、下の子にしめしつかないじゃん」「大丈夫。俺ら皓輝さんが誰より頑張ってること知ってるから…」

    2006-05-10 22:08:00
  • 224:

    皓輝はあまり出てこないオーナーに代わり、店を任されている。従業員の管理、売り上げの管理、お客さんの管理、色々雑用が多くほとんど眠る時間などないことは美桜も知っていた。

    2006-05-10 22:09:00
  • 225:

    加えて皓輝には病気がちの母親がいてその世話に追われ、失踪した父親の残した莫大な借金もあった。皓輝は店にいても、家にいても、心の休まる時間がない。それは美桜も知っているのだが、後輩たちの手前というものもある。

    2006-05-10 22:10:00
  • 226:

    「皓輝さん、美桜姉の横じゃないとゆっくりできないんだよ…」と悠馬が言う。「だから悪いけど、しばらく寝かせてやって」そこまで悠馬に言われれば美桜にはダメと言う理由がない。

    2006-05-10 22:11:00
  • 227:

    「仕方ないか!デキの悪い子ほど可愛いっていうし!?」とふざけて美桜が返すと、悠馬も「美桜姉の子供デキ悪過ぎ〜」と返し、2人で笑い合った。

    2006-05-10 22:12:00
  • 228:

    「悠馬もゆっくりしておいで?出前来たらちゃんと呼んであげるから」「でも、俺までいなくなったら美桜姉、暇じゃん?」「大丈夫!眠ってても皓輝がいてくれてるから…」

    2006-05-10 22:13:00
  • 229:

    「そっか。じゃ、お言葉に甘えて営業電話でもしてくるわ!」と席を外す悠馬。

    2006-05-10 22:14:00
  • 230:

    厨房に入る悠馬を見送り美桜は皓輝に視線を戻す。さっきまでとは違い気持ち良さそうな顔で眠っている。顔にかかる前髪が少しうっとうしそうなので、美桜はかき上げた。

    2006-05-10 22:15:00
  • 231:

    すると皓輝が目を開ける。「ごめん、起こした?」と静かに話しかける。「…ん、大丈夫。…美桜…」「何?」「ごめん、全然構ってやれない…」と美桜の目を見ながら皓輝は言う。

    2006-05-10 22:16:00
  • 232:

    「毎日来てくれてるのに、いつも話せる時間ほとんどなくて、ごめん」「大丈夫だよ。美桜は皓輝の頑張ってる姿を見るのが好きだから」「…ん。忙しくなくなったらちゃんと時間作って美桜の話いっぱい聞くから…」そう言いながら皓輝はまた眠りに落ちた。

    2006-05-10 22:17:00
  • 233:

    美桜は嬉しくて涙が出そうだった。この1ヶ月間皓輝の営業スタイルはもちろん見てきている。いわゆる「オラ営」。

    2006-05-10 22:17:00
  • 234:

    いつも偉そうにお客さんに物を言いお客さんを放ったらかしにし、それでも詫びの一言もない。そんな皓輝が美桜のことをちゃんと考えしかも「ごめん」という。

    2006-05-10 22:18:00
  • 235:

    それだけで美桜には充分だった。気持ち良さそうに眠る皓輝の寝顔を見ながら美桜は幸せな気分でいっぱいだった。

    2006-05-10 22:19:00
  • 236:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    一旦ここで中断させていただきます。また後で更新できれば、と思いますができなければすいませんm(__)mその場合次回更新は明日の夜とさせていただきます。

    2006-05-10 22:20:00
  • 237:

    名無しさん

    ?

    2006-05-11 04:24:00
  • 238:

    名無しさん

    ??

    2006-05-11 11:58:00
  • 239:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今から更新させていただきます。読んでいて下さっている方いれば、ありがとうございます。

    2006-05-11 22:17:00
  • 240:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    Side B〜皓輝〜 情けなくも美桜に縋りついたあの日から美桜は皓輝を心配してか、毎日のように店に来てくれていた。だが、毎日のように美桜が店に来てくれていても、皓輝が美桜の席につけるのは一日で多くて一時間ほど。

    2006-05-11 22:18:00
  • 241:

    ひどい日は、挨拶だけをし一度も席につけないこともあった。それでも美桜は楽しそうに悠馬や陽太と遊んでくれている。悠馬や陽太も美桜によく懐き、今では直接美桜に電話をしたりしているようだった。

    2006-05-11 22:19:00
  • 242:

    普通なら口座を持つ客とヘルプが仲良くするのは、揉め事の原因になるのであまり良くないことだったが、美桜に関してはそんな心配もなく、ヘルプたちから電話があったことや、今度ご飯に行っていいか、などきちんと皓輝に報告をしてくれる。

    2006-05-11 22:20:00
  • 243:

    今日も美桜は来てくれていた。いつもの通りカウンターに座り、悠馬と楽しそうに話をしている。皓輝はといえば、清香が来ていてその席から離れることが出来ない。

    2006-05-11 22:21:00
  • 244:

    「ねえ、皓輝聞いてるの!?」と清香が皓輝の腕を引っ張りながら言う。正直美桜に気を取られていたので、清香の話など全く耳に入っていなかった。

    2006-05-11 22:22:00
  • 245:

    「悪い、聞いてなかった。何?」「だからぁ、今度遊びに行こうって!」と清香は上目遣いに皓輝を見ながら言う。冗談じゃない。

    2006-05-11 22:23:00
  • 246:

    ただでさえ店の雑用や実家のことで忙しく、美桜ともろくに話せない状況なのに、と思いながら、「時間が出来たらな」と素っ気なく返す。

    2006-05-11 22:24:00
  • 247:

    と、突然清香が「皓輝。あの子皓輝の何?」と顎で美桜の方を示す。「何って客」「あの子皓輝の口座だよね?」「だったら何?」と少し苛立ちながら皓輝は返す。「毎日毎日カウンターに座って、大したお金も使わないでさぁ。何しに店に来てるの?」そう言いながら美桜の方を見る。

    2006-05-11 22:25:00
  • 248:

    「皓輝の口座のくせに皓輝とは全然話さないで、毎日ヘルプと話すだけ。可哀想だよね〜」と何故か嬉しそうに言う清香。誰のせいで美桜がそんな目に遭ってるんだ!?と怒鳴り返したいのを抑えながら、

    2006-05-11 22:26:00
  • 249:

    「別にあの子はオレに色恋求めて来てるわけじゃないからあれでいいんだよ」「それにしたってさあ、全然お金使ってないのに毎日来られたら皓輝も迷惑でしょ?」と言いながら清香は立ち上がる。

    2006-05-11 22:26:00
  • 250:

    「…どこに行くんだよ」嫌な予感がし皓輝は清香を引き留める。「清香さんの席はここだろ!?」そんな皓輝の言葉を無視し、清香は美桜のほうへと近づいていく。慌てて腕を摑み止めようとしたが「ちょっと!」と清香が美桜に声をかける方が一瞬早かった。

    2006-05-11 22:27:00
  • 251:

    振り返り少し驚きながら清香を見る美桜。「何?」と美桜が清香に言う。「あんた目障りなんだよね」「は!?」「毎日大したお金も使わず店来てさ、皓輝が迷惑してるのわからないの!?」「清香さんっ!!」と止めに入る皓輝に向って、「皓輝は黙ってて」と一言いい美桜に向き直る。

    2006-05-11 22:28:00
  • 252:

    「毎日に来るお金があるんだったら、週に1度くらいにしてその分一気に使えば?そんなに少しずつ使われたって皓輝が恥かくだけなんだけど」「私のお金をどう使おうが、あなたに関係ないと思うけど?」と美桜は冷静に返す。

    2006-05-11 22:30:00
  • 253:

    てか、厚かましいんだよ。たったそれぐらいのお金で皓輝の口座だなんて!」と清香は叫ぶ。「皓輝の客だったらさぁ、もっとお金使えば!?ナンバー1の客にあんたみたいな細客はいらないんだよ!!」

    2006-05-11 22:31:00
  • 254:

    叫ぶ清香を見ながら怒った様子もなく美桜は、「あなたの言い分だと、お金をたくさん使った人が皓輝とたくさん時間を過ごせるのね?」と返す。「当然でしょ!?ここをどこだと思ってるの!?」美桜が冷静なのが気に入らないのか、更に怒り狂ったように清香は叫ぶ。

    2006-05-11 22:32:00
  • 255:

    「私くらい皓輝と話したければもっと使ってみれば!?あんたみたいな細客には無理でしょうけどね!」「いい加減にしろって!!」さすがに皓輝も我慢の限界が来て、清香を席へ引きずっていこうとした。そこへ

    2006-05-11 22:33:00
  • 256:

    「私があなたよりたくさん使えば皓輝との時間を譲ってくれるのね?」と静かに美桜は言う。「それであなたは大人しく引き下がってくれるのね?」更に静かに美桜は続ける。

    2006-05-11 22:34:00
  • 257:

    そんな美桜を見て清香は、「出来るものならやってみれば?それができればいくらでも皓輝のこと譲ってあげるわよ!」勝ち誇ったように清香は言う。

    2006-05-11 22:35:00
  • 258:

    それを受け美桜は、「そう。わかった」と言いながら、自分のカバンから何かを取り出し、カウンターの上に投げ出した。清香が息を飲む。…帯のついた札束だった。しかも3つ。

    2006-05-11 22:36:00
  • 259:

    「これで皓輝のこと譲ってくれるのよね?」と美桜が言う。「あなたさっき、自分で言ったよね?たくさん使った方が皓輝とたくさん時間を過ごせるって。だったらこれでいいでしょう。今すぐ私に皓輝をちょうだい」

    2006-05-11 22:37:00
  • 260:

    そして更に冷たい声で言い放つ。「それとも、これ以上のお金をあなたが皓輝に使えるの?だったら私はもっと使うだけ」清香は返す言葉もなく立ち尽くす。それは皓輝も、その場にいた悠馬や陽太も同じだった。

    2006-05-11 22:38:00
  • 261:

    まさか美桜がこれほどの金を持っているなんて誰も予想していなかった。しかもこんなに冷たい瞳をした美桜を誰も見たことなんてない。冷静にだが確実に美桜は怒っている。

    2006-05-11 22:39:00
  • 262:

    「遊び方も知らないんだったら、大人しくしていなさい。その歳になって人を見下すことでしか優越感を感じることが出来ないなんて可哀想な人だね」

    2006-05-11 22:40:00
  • 263:

    と突き放すように言うと美桜は何事もなかったように、カウンターに向き直り、「悠馬、お酒作って」と悠馬に話しかけた。「あ、ああ、はい」茫然としていた悠馬が我に返り、美桜のグラスを受け取る。

    2006-05-11 22:41:00
  • 264:

    「さっきのちょっと濃かったよ?もう少し薄めでね〜」と本当に何事もなかったかのように振る舞う美桜。清香のことなんてもう目に入っていないようだった。

    2006-05-11 22:42:00
  • 265:

    さすがに清香が少し可哀想になり皓輝は、「清香さん?」と声をかけると、「勝手にすれば!!」と叫び財布の中から何枚かの札を抜き取り皓輝に投げつけ、清香は出て行った。

    2006-05-11 22:43:00
  • 266:

    「ばっかみたい」と美桜が呟く。そして皓輝を振り返り、「ごめんね、皓輝。どうしても我慢できなかった…」と小さくなりながら美桜は謝る。

    2006-05-11 22:43:00
  • 267:

    「本当にごめんなさい…」さっきまでとは別人のようにいつもの美桜がそこにいた。「いや、オレの方こそゴメン。気ぃ悪い思いさせて…」と皓輝も謝りながら、

    2006-05-11 22:44:00
  • 268:

    「それにしても美桜…この金は…」「…親から貰ったお金…」ため息とともに吐き出すように美桜は言う。「ごめん、皓輝。美桜まだ皓輝に言っていないことがあるの…今から話聞いてくれる?」

    2006-05-11 22:45:00
  • 269:

    と真剣な瞳をする美桜の横に半ば茫然としながら皓輝は座った。

    2006-05-11 22:46:00
  • 270:

    今日の更新はここまでです。少しだけですいませんm(__)m次回更新は明日の夜になります。

    2006-05-11 22:48:00
  • 271:

    名無しさん

    ?

    2006-05-11 22:50:00
  • 272:

    名無しさん

    頑張って

    2006-05-12 09:30:00
  • 273:

    ラビ

    読みやすい!この話が一番大好きです、これからも頑張ってね!!

    2006-05-13 12:48:00
  • 274:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    ラビさん読んで下さってありがとうございます。昨日は更新できなくてごめんなさい。今から少しだけですが更新させていただきます。

    2006-05-13 22:06:00
  • 275:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    side A〜美桜〜 21歳の春、美桜は家を飛び出した。汚い物を見るように美桜を見る父。怯えたように美桜を見る母。そして両親にも美桜にも無関心な妹。その何もかもが嫌になり、家を飛び出した。そうなった原因は16歳の冬にさかのぼる……

    2006-05-13 22:07:00
  • 276:

    美桜の家は裕福で父は社会的にそれなりの地位もあり、世間体をひどく気にする父に本当に厳しく育てられていた。父は二言目には「藤沢家の長女なんだから…」と言う。

    2006-05-13 22:08:00
  • 277:

    幼稚園、小学校、中学校と美桜は金銭的には何不自由なく育てられた。欲しいものは全て買い与えられ、物質的不満を感じることなどなかった。だが精神的にはいつも孤独だった。

    2006-05-13 22:09:00
  • 278:

    父は『跡取り』として美桜を育てようとし、テストでどれだけ良い点を取ろうと、作文や絵のコンクールで賞などを貰おうと決して美桜を誉めることがなかった。

    2006-05-13 22:09:00
  • 279:

    母は大人しい人で厳しく育てられている美桜を不憫には思っていたのだろうが父のやり方に口を挟むことができず、いつも黙って寂しそうな顔をしているだけだった。

    2006-05-13 22:10:00
  • 280:

    そんな家庭で親からの愛情を感じることも出来ず、それでも16歳の冬までは何とか『良い子』を演じることが出来ていた。

    2006-05-13 22:11:00
  • 281:

    だが16歳の冬、美桜は突然学校へ行けなくなってしまった。それは本当に突然の出来事だった。

    2006-05-13 22:12:00
  • 282:

    強烈な吐き気。立っていられないほどのめまい。急にやって来ためまいのせいで机の上の物を落としながら美桜はその場に崩れた。物が落ちる大きな音に驚いた母が飛んできた。

    2006-05-13 22:14:00
  • 283:

    「美桜ちゃん、美桜ちゃん!!どうしたの!?」すぐ側にいるはずの母の声が途方もなく遠くから聞こえる。「…だ・・・だいじょう…」

    2006-05-13 22:15:00
  • 284:

    美桜は母に返事をしようとしたが最後まで言い終えるができず母を突き飛ばすようにしてトイレに駆け込む。

    2006-05-13 22:16:00
  • 285:

    昨日の夜ご飯を食べたのが最後で空っぽのはずの胃が何かを吐き出そうとする。だがもちろん空っぽの胃からは何も出ることはない。吐きたいのに吐けない。強烈な苦しみに襲われながら、美桜は軽いパニックに陥っていた。

    2006-05-13 22:17:00
  • 286:

    (何…これ!?)前日まで美桜はいたって元気だった。風邪を引きかけているような様子もなく、睡眠が不足しているわけでもない。美桜がトイレの中でパニックに陥っている最中、扉の外ではひたすら母が美桜に呼びかけている。

    2006-05-13 22:17:00
  • 287:

    「美桜ちゃん!!大丈夫!?美桜ちゃん!!」(お母さん、助けて!!)必死に声を出そうとするが一言も声が出ない。

    2006-05-13 22:18:00
  • 288:

    そのまま美桜はトイレの床に崩れるように気を失ってしまった…

    2006-05-13 22:19:00
  • 289:

    目が覚めたのはそれから3時間程後でもう昼に近かった。目を覚ますと蒼白になった母の顔が目に入った。「美桜ちゃん、気がついたのね!大丈夫!?」

    2006-05-13 22:20:00
  • 290:

    目に入ってくる母の顔と、その後ろに見える見覚えのない天井。(ここは…?)どうやら美桜はあのまま救急車で病院に運ばれたようだった。恐る恐る体を起こす。

    2006-05-13 22:21:00
  • 291:

    「美桜ちゃん、起きて大丈夫なの!?」母が心配そうに声をかける。ところがさっきの苦痛は嘘のように、吐き気もめまいも消えている。そんな美桜の様子を見ながら母がナースコールで看護師を呼んだ。

    2006-05-13 22:22:00
  • 292:

    しばらくして看護師とともに医者がやって来た。「気分はどう?倒れる前のこと覚えているかな?」と穏やかに医者が問いかける。「…もう大丈夫です。倒れる前のこともちゃんと覚えています」「そう。少し検査させてもらいたいんだけど、動けるかな?」「はい。大丈夫です」

    2006-05-13 22:23:00
  • 293:

    それから2時間ほど血液検査やレントゲンなど色々なところを検査された。ところが…「血液検査の結果はまだわかりませんが、今のところ特に目立った症状は無いですね」と医者の言葉。

    2006-05-13 22:24:00
  • 294:

    その言葉に母も美桜も愕然とする。あれだけ苦しかったのに悪いところがない!?「恐らく一時的に血圧が低下しそれでめまいや吐き気が起こったんだと思いますよ」と大したことなさそうに医者は続ける。

    2006-05-13 22:25:00
  • 295:

    「念のために今日は家でゆっくりしていて下さいね」と言われ、その日はそのまま自宅に帰らされた。

    2006-05-13 22:26:00
  • 296:

    午後になってからも特に体調が悪くなることも無く、本当に医者が言うように一時的なことだったのだと母も美桜も思っていた。だが次の日の朝…

    2006-05-13 22:27:00
  • 297:

    目が覚め制服に着替えようとした途端、また昨日のように吐き気・めまいに襲われ、パニック症状が美桜を襲った。そんなことがそれから1週間も続き、美桜は1週間学校を休んでいた。

    2006-05-13 22:28:00
  • 298:

    (本当にどこも悪くないの!?)(どこも悪くないなら毎朝のように苦しいのは何故!?)と理由のわからない不安をぬぐうこともできないまま日々を過ごしていた。

    2006-05-13 22:29:00
  • 299:

    だが具合が悪くなるのは午前中。しかも決まって学校のある平日の朝。それが午後になると朝の苦しみが嘘のように以前と変わらず元気になる。

    2006-05-13 22:30:00
  • 300:

    母は毎朝そんな美桜を見ていたので『仮病』とは思っていなかったのだが、父は違った。父は毎朝出勤が早いため滅多に朝美桜と顔を合わせることが無い。

    2006-05-13 22:31:00
  • 301:

    顔を合わせるのは夕食の時間のみ。そのため父の目に映る美桜は表面的にはいつもと変わらない元気な姿だった。

    2006-05-13 22:31:00
  • 302:

    『発作』に襲われるようになり1週間が過ぎた頃、父は美桜に「お前はいつまで学校をさぼっているつもりだ」と言った。その父の言葉に美桜は愕然となる。

    2006-05-13 22:32:00
  • 303:

    (さぼり!?)とんでもない言いがかりに美桜が言葉を返せずにいると、「まったく。藤沢家の長女がろくに学校にも行かないなんて。世間体の悪い!」と吐き捨てる。

    2006-05-13 22:33:00
  • 304:

    (世間体!?)それが何だと言うのだ。毎朝体が引き裂かれてしまうほどの苦しみを味わっているのに、そのことを心配する様子も無く世間体!?美桜は父のあまりの言いように体が震える。

    2006-05-13 22:34:00
  • 305:

    さすがに見かねた母が「お父さん。美桜ちゃんはさぼっているのではなくて、毎朝本当に具合が悪くなるんですよ」それを聞いた父の言葉は耳を疑うようなものだった。

    2006-05-13 22:35:00
  • 306:

    「医者はどこも悪くないと言っているんだろ?全て美桜が言っていることだ」と…

    2006-05-13 22:36:00
  • 307:

    その瞬間美桜は椅子を蹴り席を立っていた。「何だ美桜、食事中に行儀の悪い。とにかく明日からは学校へ行け」と冷たく父は言う。美桜は怒りに全身を震わせていた。

    2006-05-13 22:37:00
  • 308:

    何か言い返そうとしたその途端、『発作』が起こった。その時の発作は毎朝起こる発作とは比べものにならないくらいひどいものだった。

    2006-05-13 22:37:00
  • 309:

    怒りのために震えていたのが、全身を覆う痺れとなり立っていられなくなる。

    2006-05-13 22:41:00
  • 310:

    倒れるのを防ぐためにしゃがみこむのが精一杯でそこから一歩も動けず、全身を覆う痺れのため指一本動かすことも出来ず、息もろくに出来ない。

    2006-05-13 22:42:00
  • 311:

    だが今日に限りひどい苦しみにも関わらず、意識だけはしっかりしていた。(助けて!助けて!!)美桜は心の中で大声で叫ぶ。駆け寄る母と妹の足音に重なり、更に信じられない父の言葉。

    2006-05-13 22:43:00
  • 312:

    「放っておけ。どうせ信じてもらえないと思って演技しているんだろ」とそのまま席を立ち、自分の部屋へ戻ろうとする。

    2006-05-13 22:44:00
  • 313:

    その言葉を聞いた瞬間美桜は、苦しみの中から更に暗い穴の中へと突き落とされたような気分だった。

    2006-05-13 22:45:00
  • 314:

    (どうして!?どうして、こんなに苦しいのにお父さんは信じてくれないの!?)「お父さん!お姉ちゃん演技なんかしてないよ!早く救急車呼んでよ!」と妹が叫ぶ。「美桜ちゃん、美桜ちゃん!」必死に母が呼びかける。

    2006-05-13 22:46:00
  • 315:

    そのどれもが美桜には既に現実のことのようには感じられていなかった。「お父さん、救急車!!」もう一度妹が叫ぶ。「お姉ちゃん死んじゃうよ!!」

    2006-05-13 22:47:00
  • 316:

    「…構わん。そんな弱い奴に藤沢家は継げん」と言い残し父は部屋へ戻ってしまった。

    2006-05-13 22:47:00
  • 317:

    それが意識の途切れる寸前に美桜の美桜に届いた最後の言葉だった…

    2006-05-13 22:48:00
  • 318:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今日の更新はここまでになります。お付き合い下さいましてありがとうございました。また明日の夜更新させていただきます。

    2006-05-13 22:49:00
  • 319:

    名無しさん

    2006-05-14 02:42:00
  • 320:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    申し訳ありませんが、今日は多忙のため更新できそうにありません。お待ちいただいてる皆様本当に申し訳ありません。

    2006-05-14 22:55:00
  • 321:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今から少しだけですが更新させていただきます。

    2006-05-15 21:18:00
  • 322:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    Side B〜皓輝〜 美桜の話を皓輝は言葉を挟むことなく聞いていた。「…結局ね、原因は鬱から来るパニック症候群ってやつだったの」と美桜が言う。

    2006-05-15 21:19:00
  • 323:

    親や周りからの過剰な期待によるストレスで美桜は自覚することもなく鬱になってしまっていたのだった。「それからはね、本当に大変だったなぁ」と遠い目をしながら話を続ける。

    2006-05-15 21:19:00
  • 324:

    話し始めてから美桜は一度も皓輝の目を見ていなかった。こんな美桜を見るのも初めてだ。美桜は話すときはいつも必ず相手の目を見ながら話をする。

    2006-05-15 21:21:00
  • 325:

    よほど辛い思い出なのだろう大きな瞳にうっすらと涙を浮かべている。そこで初めて美桜は皓輝を見た。

    2006-05-15 21:21:00
  • 326:

    「美桜のせいで家の中はぐっちゃぐちゃ。お父さんは毎日美桜の顔を見ては恥さらしだの世間体が悪いだの非難するし、お母さんは美桜のこと壊れ物を扱うような態度だしね」「……」

    2006-05-15 21:22:00
  • 327:

    「妹もね、最初のうちはお父さんから庇っていてくれてたんだけど、段々疲れてきたんだろうね。『お姉ちゃんさえいなければ』っていうようになってね」と苦笑しながら美桜は言う。

    2006-05-15 21:23:00
  • 328:

    そんな美桜に皓輝はどんな言葉をかけていいのかわからなかった。出会ってからの美桜はいつも笑顔を絶やさず、いつでも皓輝を励ましてくれていた。今まで見てきた美桜にはそんな暗い影は全然見当たらなかった。話を聞いた今でも信じられないくらいだ。

    2006-05-15 21:24:00
  • 329:

    「それでね、21歳のときに家を出たんだ。美桜も苦しかったし、美桜がいなければ皆元の生活に戻れるかなぁと思って」「…どうやって?」「ん?」「家を出てどうしてたの?」

    2006-05-15 21:25:00
  • 330:

    と、かろうじて皓輝は尋ねる。そんな皓輝に苦笑しながら美桜は「とりあえず、お決まりのパターンだね」と言った。

    2006-05-15 21:26:00
  • 331:

    「手っ取り早く一人暮らしの男のところに転がり込んだ」「そのとき付き合ってた彼氏?」「ううん」とさらに苦笑しながら美桜は続ける。

    2006-05-15 21:27:00
  • 332:

    「今思えば本当に最低なことしたんだけどね。その時美桜のこと好きって言ってくれた男の人を利用した」「……」

    2006-05-15 21:28:00
  • 333:

    と苦笑から痛そうな表情に変え美桜は言う。「…最低だね。自分が辛いからって人の気持ちを利用するなんて…」

    2006-05-15 21:30:00
  • 334:

    「その時…そいつと暮らし始めてから美桜は幸せだった?」「…幸せ、だったかな…その人はとにかく美桜のこと大事にしてくれたから…」と、また遠い目をしながら美桜は言った。

    2006-05-15 21:31:00
  • 335:

    「…家を出てからね、結局お父さんは毎月美桜の口座にお金を振り込んでるんだ。さっきのはそのお金」「親父さん、本当は美桜のこと心配してるんじゃないのか?」

    2006-05-15 21:32:00
  • 336:

    すると美桜は激しく首を振った。「違う!!あの人はそんな人じゃない!!」美桜の激情に皓輝は目を丸くする。

    2006-05-15 21:35:00
  • 337:

    「あの人がお金を振り込む理由は美桜が藤沢家の名前を汚さないように、世間から見て恥ずかしいことをさせないように、それだけの理由でお金を振り込み続けてるんだよ!」

    2006-05-15 21:36:00
  • 338:

    「どういう意味?」と皓輝は尋ねる。美桜は睨みつけるように皓輝を見ながら

    2006-05-15 21:37:00
  • 339:

    「あの人は水商売や風俗は最低の人間がやる仕事だと思ってる。だから美桜がそんな世界に行かないようにお金を与えていれば体裁が守れると思っているんだよ!だから…だから美桜は!!…」

    2006-05-15 21:38:00
  • 340:

    そこまで言い、耐え切れなくなったのか美桜の大きな瞳からとうとう涙がこぼれた。その涙を見られないように美桜は両手で顔を覆う。

    2006-05-15 21:39:00
  • 341:

    そんな美桜の頭を皓輝は静かに撫でる。「美桜…」皓輝の中で様々な感情が巡っていた。その中から皓輝が美桜に一番伝えたい言葉を口にする。

    2006-05-15 21:40:00
  • 342:

    「美桜…何も気づけなくてごめん。これからは我慢しなくていいから」弾かれたように美桜が顔を上げる。

    2006-05-15 21:41:00
  • 343:

    「今でも親父さんのことが憎いならオレに話してくれていい。親父さんに反抗するためだけに水商売をしているなら辞めればいいとオレは思う」美桜は無言で皓輝を見つめる。

    2006-05-15 21:42:00
  • 344:

    「無責任な言い方かもしれないけど今のオレは美桜に何もしてやれない。家族との仲を戻すことも、美桜を養ってやることもできない。でも…」美桜の頭を撫で続けながら皓輝は言う。

    2006-05-15 21:43:00
  • 345:

    「どんな美桜でも美桜は美桜だから、いつでも『本当』の美桜でいて欲しい」

    2006-05-15 21:44:00
  • 346:

    「皓輝…」疲れ果てたような表情で美桜が皓輝の名前を呼ぶ。「『本当』の美桜って?…」囁くような声で美桜が尋ねる。

    2006-05-15 21:45:00
  • 347:

    「誰かを憎んでいる美桜も、オレや悠馬の前で笑ってくれている美桜も全部美桜ってことだよ」皓輝も囁くような声で答える。

    2006-05-15 21:46:00
  • 348:

    そう答えた皓輝に、「駄目だよ…皓輝…美桜は『良い子』でいなくちゃ…美桜の存在価値がなくなっちゃう…」と子供のような表情になり美桜は言う。

    2006-05-15 21:47:00
  • 349:

    そんな美桜に皓輝は首を横に振る。「美桜。それは違う。今ここにこうして美桜がいること。それ自体が美桜の存在価値だよ」大きな瞳を更に見開いて美桜は皓輝を見つめる。

    2006-05-15 21:48:00
  • 350:

    「オレは今日美桜が怒るところや誰かを憎んでいるところを初めて見たよ。でもそんな美桜を見ても嫌いになんてならない」皓輝は少しずつ少しずつだが、一生懸命思いを美桜に伝える。

    2006-05-15 21:49:00
  • 351:

    「だからもう我慢だけはするな」そう言った皓輝に美桜が縋りつくように抱きついた。

    2006-05-15 21:50:00
  • 352:

    初めて2人で出かけたあの日とは逆に今度は皓輝が美桜のことを静かに強く抱き止めていた…美桜がいつもの笑顔を取り戻せるまで…

    2006-05-15 21:51:00
  • 353:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    本日の更新はここまでです。本当に少なくて申し訳ないです。また明日の夜更新させていただきます。

    2006-05-15 21:52:00
  • 354:

    名無しさん

    2006-05-16 12:44:00
  • 355:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    遅くなりましたが今から更新させていただきます。読んでくださっている方本当にありがとうございますm(__)m

    2006-05-16 23:17:00
  • 356:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    Side A〜美桜〜 それからの毎日は美桜にとってとても幸せな日々だった。仕事が終わると毎日まっすぐ皓輝の店に行き、毎日少しずつでも皓輝と色んな話をする。

    2006-05-16 23:18:00
  • 357:

    店に来てくれたお客さんのこと、友人たちとご飯に行ったこと、悠馬のことや皓輝の仕事の話。そんな他愛のない会話ができる、それが今の美桜にとって一番幸せなことだった。

    2006-05-16 23:19:00
  • 358:

    皓輝は日々本当に忙しくプライベートな時間を過ごせることなどほとんどなかった。それでも月に一度や二度、休みの日や出勤前の時間に美桜を食事やビリヤード、お世話になった先輩が経営している店など色々な所に連れて行ってくれた。

    2006-05-16 23:20:00
  • 359:

    そんな他愛もないだけど幸せな日々を送り、美桜の誕生日を1週間後に迎えたある日美桜と皓輝は些細なことで喧嘩をした。

    2006-05-16 23:21:00
  • 360:

    その日美桜は珍しく仕事中に酔っぱらってしまい、店が終わってどうやって帰ったのか記憶もなく、とにかくなんとか着替えだけを済ませ、自宅で一人潰れていた。何か物音がしたような気がして目を覚ます。ふと時計を見ると時間はa.m8:30。

    2006-05-16 23:22:00
  • 361:

    あぁ、やっちゃったぁ…って、頭いた〜い…)激しい二日酔いに襲われながら目が覚める前に聞こえた音の元を探す。

    2006-05-16 23:23:00
  • 362:

    その瞬間美桜の携帯がなる。《着信 皓輝》「…はぁい…」「お前、今どこだっ!?」聞こえてきたのは皓輝の激しい怒鳴り声。

    2006-05-16 23:24:00
  • 363:

    え?」「どこだって聞いてんだよっ!!」「…家だけど…」事情はわからないがとにかく皓輝は本気で怒っているようだ。「…どうしたの、皓輝。何かあった?」「何かあったの?じゃねえんだよ!」と相変わらず怒鳴り声のまま皓輝が言う。

    2006-05-16 23:25:00
  • 364:

    「電話にも出ない、メールも送ってこない、お前昨日一日何してたんだ!?」「はぁ!?」どうやら皓輝は昨日美桜と連絡が取れなかったことに対して怒っているようだった。

    2006-05-16 23:26:00
  • 365:

    「昨日店で酔っ払っちゃって、そのまま家に帰って潰れてたんだけど…たった一日連絡つかなかったくらいで何そんなに怒ってるの?」訳もわからず怒られていることにさすがに美桜もムッとなり、思わず喧嘩腰で言い返す。

    2006-05-16 23:27:00
  • 366:

    「お前今まで一日だって連絡欠かしたこと無かっただろ!そんな奴がいきなり何の連絡も無くこっちから連絡しても連絡がつかないなんて心配するだろ!!」「…心配かけたことは悪かったと思うけど、だからってそんないきなり怒鳴らなくてもいいじゃない!!」

    2006-05-16 23:28:00
  • 367:

    「オレがどれだけ心配したと思ってるんだよ!」と皓輝も怒鳴り返す。「だから、心配させてごめんって。でも怒るにしたって理由くらい聞いてから怒ってよ!」

    2006-05-16 23:29:00
  • 368:

    「はぁ!?お前本当に反省してんのかよ!?」とそんな遣り取りが30分程繰り返され、「つうか、お前まじむかつく」それだけを言い皓輝が電話を切った。

    2006-05-16 23:30:00
  • 369:

    美桜は美桜で心配をかけたのは悪かったと思っていたが、あまりの皓輝のキレっぷりにかなり苛立ってたので、携帯の電源をそのまま切りベッドの上に投げ付けた。

    2006-05-16 23:31:00
  • 370:

    カバンからタバコを取り出し火を点ける。一本吸い終わり少し冷静になって考える。(…確かにあれだけ毎日連絡してたのが、ぷっつり途切れちゃったら心配するかなぁ…)と少し反省をする。だが…

    2006-05-16 23:32:00
  • 371:

    (それにしたってあの言い方は無いよね!?)と思い返し腹が立つ。一瞬電話をかけ直して文句を言ってやろうかと思ったのだが、二日酔いのこの頭で怒鳴り声を聞き続ける元気もなかった。

    2006-05-16 23:33:00
  • 372:

    (まぁ、いいや…また夜にでも電話しよ…)そう思いながらもう一度ベッドに横になり眠ることにした。

    2006-05-16 23:33:00
  • 373:

    タイミングが悪いことは続くもので、その日から美桜は毎日アフターが続き皓輝に連絡することができなかった。あの日、夕方に起きて携帯の電源を入れ着信履歴を見返すと、皓輝からの着信がa.m12:30一時間おきで残っていた。

    2006-05-16 23:34:00
  • 374:

    (本当に心配してくれてたんだ…)さすがに反省をし、取り敢えず「本当にごめんなさい」とだけメールはしておいた。だが、皓輝からの返事はなかった。(さすがに呆れられちゃったかな…)と美桜は落ち込んでいた。

    2006-05-16 23:35:00
  • 375:

    あれから、6日が過ぎ美桜の誕生日の前日。やっと時間に余裕が出来、仕事が終わってから6日ぶりに皓輝に電話をする。コール音は鳴っているのだが、皓輝は出ない。

    2006-05-16 23:36:00
  • 376:

    (忙しいのかな?また後でかけ直そう…)美桜はひとまずタクシーに乗り自宅へ戻った。自宅に着き着替えを済ませもう一度皓輝に電話をかける。…出ない。

    2006-05-16 23:37:00
  • 377:

    皓輝はまだ怒っているのだろうか。美桜は不安に襲われた。もしかして美桜は皓輝に見捨てられてしまったのだろうか。それから何度か皓輝に電話をかけてみたのだが、やはり出ない。

    2006-05-16 23:38:00
  • 378:

    不安が今度は心配に変わる。(もしかして皓輝に何かあったんじゃ!?)とそこで美桜はふと気付く。(あの日の皓輝もこんな気持ちだったんだ…)

    2006-05-16 23:39:00
  • 379:

    そう思うと美桜はいても立ってもいられなくなり、皓輝の店へ電話を入れる。「…お電話ありがとうござ…」「悠馬!?」電話が繋がった途端、話し出す美桜。

    2006-05-16 23:40:00
  • 380:

    「…美桜姉?」「うん。悠馬、皓輝は!?」「え?」「皓輝と連絡が取れないの!?店に来てる!?」「…美桜姉も連絡取れてないの?」悠馬のその一言が美桜の心配を募らせる。

    2006-05-16 23:40:00
  • 381:

    「皓輝さん2日ぐらい前から店に来てないんですよ。連絡もないし、電話しても出ないし。今皆で美桜姉に連絡しようかどうしようか相談してたところで…」「!?」

    2006-05-16 23:42:00
  • 382:

    「美桜姉何か心当たりない?」見えない悠馬を相手に美桜は激しく首を振る。「わかんない!!私も最近忙しくて全然連絡していなかったから…!」と半泣きになりながら答える美桜に、「美桜姉、落ち着いて!」と悠馬が慌てた様子で声をかける。

    2006-05-16 23:42:00
  • 383:

    「たぶん皓輝さんのことだから、風邪引いて寝てるとかそんなことだと思うから。何か分かったら美桜姉にも連絡するし」「…うん」「じゃあ、美桜姉、またね」電話を切った美桜はまた不安に襲われる。

    2006-05-16 23:43:00
  • 384:

    どうしよう…皓輝の自宅の連絡先なんて知らないし、携帯へかけても出ない。本当に風邪を引いて寝ているだけなのだろうか…それとも…何かあったのでは!?一人でいる美桜は段々パニックに襲われ始めた。

    2006-05-16 23:44:00
  • 385:

    体が震え、息が出来ない。《過呼吸》だ。(やば…)今発作を起こすわけにはいかない。とにかく気持ちを落ち着かせようとする。だが、『もう一人』の美桜がささやく。

    2006-05-16 23:45:00
  • 386:

    『皓輝はあんたからの電話に出たくないんだよ』『あんた皓輝に嫌われたんだよ』(うるさい、うるさい!!)美桜は必死に自分を抑える。

    2006-05-16 23:46:00
  • 387:

    『可哀想にね。あんたこれから独りだよ』さらに『もう一人』の美桜がたたみかける。『あんたが《良い子》じゃなかったからいけないんだよ』その一言で美桜は『もう一人』の美桜に囚われた。

    2006-05-16 23:47:00
  • 388:

    (美桜が《良い子》じゃなかったから、皓輝に嫌われたの…?)『そうだよ。だからあのクソ親父と同じようにあんたを捨てたんだよ』震える手を伸ばし美桜は化粧ボックスを摑む。

    2006-05-16 23:48:00
  • 389:

    『《良い子》でいられないあんたなんか誰も必要としてないんだよ』(皆…美桜なんて要らないの?…)化粧ボックスを開け、美桜はある一点を見つめる。

    2006-05-16 23:49:00
  • 390:

    『そうだよ。だからあんたなんか死んじゃえばいいんだ』見つめていた『物』を取り出す。…カミソリだった。美桜は震え続ける右手で、それでもしっかりとカミソリを握る。

    2006-05-16 23:50:00
  • 391:

    『死ね』その瞬間美桜は左手に刃を当て一気に引いた…痛みは無い。真っ白な腕の上に一本の赤い筋。

    2006-05-16 23:51:00
  • 392:

    (綺麗…)美桜は取り憑かれたように自分の傷口を見つめる。赤い筋は量を増し次第に白い部分が少なくなっていく。それでも美桜はまだ見つめ続けている。

    2006-05-16 23:52:00
  • 393:

    10分ほどそうしていて美桜はふと我に返る。自分の両手に目をやり、激しい後悔に襲われる。(ああ…また…)美桜はまだ皓輝に言っていないことがあった。

    2006-05-16 23:53:00
  • 394:

    美桜の持病。パニック症候群ともう一つ《自傷癖》。16歳の冬パニック症候群と診断される前から始まっていたリストカット。

    2006-05-16 23:54:00
  • 395:

    体を襲う激しい苦しみがひどく長く続いているうちに美桜には今自分の身に起こっていることが現実か夢なのかその区別がつかなくなっていった。そしてそれは発作が起こっていない日常にも及び出した。

    2006-05-16 23:55:00
  • 396:

    起きていても夢の中にいるような気分。今自分が起きているのか眠っているの、それすら区別がつかない。現実と夢の区別をつけるためには《痛み》を感じるしかなかった。

    2006-05-16 23:55:00
  • 397:

    そうして始まったのがリストカットだった。《痛み》を感じている間だけが美桜にとっては《現実》のだった。

    2006-05-16 23:56:00
  • 398:

    だが始めは区別をつけるための《痛み》だったのが次第に《不安》や《苦しみ》から逃れる手段に変わっていった。《不安》や《苦しみ》に襲われているときリストカットをすると、何故か急にすっきりする。

    2006-05-16 23:57:00
  • 399:

    そのことに気付いてしまい、美桜はリストカットが止められなくなってしまったのだ。それ以降もう数えきれないくらい何度と無くリストカットを繰り返してきていた。

    2006-05-16 23:58:00
  • 400:

    助けて皓輝!)胸の中で美桜は叫ぶ。だが実際にこのことだけは皓輝には言えない。醜く引き攣る無数の傷跡。

    2006-05-16 23:59:00
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