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銀の鎖

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  • 1:

    美桜

    初めて書く小説なので、下手ですが読んでもらえれば嬉しいです。更新も少しずつになりますが、気長におつきあい下さいm(__)m

    2006-05-07 02:28:00
  • 300:

    母は毎朝そんな美桜を見ていたので『仮病』とは思っていなかったのだが、父は違った。父は毎朝出勤が早いため滅多に朝美桜と顔を合わせることが無い。

    2006-05-13 22:31:00
  • 301:

    顔を合わせるのは夕食の時間のみ。そのため父の目に映る美桜は表面的にはいつもと変わらない元気な姿だった。

    2006-05-13 22:31:00
  • 302:

    『発作』に襲われるようになり1週間が過ぎた頃、父は美桜に「お前はいつまで学校をさぼっているつもりだ」と言った。その父の言葉に美桜は愕然となる。

    2006-05-13 22:32:00
  • 303:

    (さぼり!?)とんでもない言いがかりに美桜が言葉を返せずにいると、「まったく。藤沢家の長女がろくに学校にも行かないなんて。世間体の悪い!」と吐き捨てる。

    2006-05-13 22:33:00
  • 304:

    (世間体!?)それが何だと言うのだ。毎朝体が引き裂かれてしまうほどの苦しみを味わっているのに、そのことを心配する様子も無く世間体!?美桜は父のあまりの言いように体が震える。

    2006-05-13 22:34:00
  • 305:

    さすがに見かねた母が「お父さん。美桜ちゃんはさぼっているのではなくて、毎朝本当に具合が悪くなるんですよ」それを聞いた父の言葉は耳を疑うようなものだった。

    2006-05-13 22:35:00
  • 306:

    「医者はどこも悪くないと言っているんだろ?全て美桜が言っていることだ」と…

    2006-05-13 22:36:00
  • 307:

    その瞬間美桜は椅子を蹴り席を立っていた。「何だ美桜、食事中に行儀の悪い。とにかく明日からは学校へ行け」と冷たく父は言う。美桜は怒りに全身を震わせていた。

    2006-05-13 22:37:00
  • 308:

    何か言い返そうとしたその途端、『発作』が起こった。その時の発作は毎朝起こる発作とは比べものにならないくらいひどいものだった。

    2006-05-13 22:37:00
  • 309:

    怒りのために震えていたのが、全身を覆う痺れとなり立っていられなくなる。

    2006-05-13 22:41:00
  • 310:

    倒れるのを防ぐためにしゃがみこむのが精一杯でそこから一歩も動けず、全身を覆う痺れのため指一本動かすことも出来ず、息もろくに出来ない。

    2006-05-13 22:42:00
  • 311:

    だが今日に限りひどい苦しみにも関わらず、意識だけはしっかりしていた。(助けて!助けて!!)美桜は心の中で大声で叫ぶ。駆け寄る母と妹の足音に重なり、更に信じられない父の言葉。

    2006-05-13 22:43:00
  • 312:

    「放っておけ。どうせ信じてもらえないと思って演技しているんだろ」とそのまま席を立ち、自分の部屋へ戻ろうとする。

    2006-05-13 22:44:00
  • 313:

    その言葉を聞いた瞬間美桜は、苦しみの中から更に暗い穴の中へと突き落とされたような気分だった。

    2006-05-13 22:45:00
  • 314:

    (どうして!?どうして、こんなに苦しいのにお父さんは信じてくれないの!?)「お父さん!お姉ちゃん演技なんかしてないよ!早く救急車呼んでよ!」と妹が叫ぶ。「美桜ちゃん、美桜ちゃん!」必死に母が呼びかける。

    2006-05-13 22:46:00
  • 315:

    そのどれもが美桜には既に現実のことのようには感じられていなかった。「お父さん、救急車!!」もう一度妹が叫ぶ。「お姉ちゃん死んじゃうよ!!」

    2006-05-13 22:47:00
  • 316:

    「…構わん。そんな弱い奴に藤沢家は継げん」と言い残し父は部屋へ戻ってしまった。

    2006-05-13 22:47:00
  • 317:

    それが意識の途切れる寸前に美桜の美桜に届いた最後の言葉だった…

    2006-05-13 22:48:00
  • 318:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今日の更新はここまでになります。お付き合い下さいましてありがとうございました。また明日の夜更新させていただきます。

    2006-05-13 22:49:00
  • 319:

    名無しさん

    2006-05-14 02:42:00
  • 320:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    申し訳ありませんが、今日は多忙のため更新できそうにありません。お待ちいただいてる皆様本当に申し訳ありません。

    2006-05-14 22:55:00
  • 321:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今から少しだけですが更新させていただきます。

    2006-05-15 21:18:00
  • 322:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    Side B〜皓輝〜 美桜の話を皓輝は言葉を挟むことなく聞いていた。「…結局ね、原因は鬱から来るパニック症候群ってやつだったの」と美桜が言う。

    2006-05-15 21:19:00
  • 323:

    親や周りからの過剰な期待によるストレスで美桜は自覚することもなく鬱になってしまっていたのだった。「それからはね、本当に大変だったなぁ」と遠い目をしながら話を続ける。

    2006-05-15 21:19:00
  • 324:

    話し始めてから美桜は一度も皓輝の目を見ていなかった。こんな美桜を見るのも初めてだ。美桜は話すときはいつも必ず相手の目を見ながら話をする。

    2006-05-15 21:21:00
  • 325:

    よほど辛い思い出なのだろう大きな瞳にうっすらと涙を浮かべている。そこで初めて美桜は皓輝を見た。

    2006-05-15 21:21:00
  • 326:

    「美桜のせいで家の中はぐっちゃぐちゃ。お父さんは毎日美桜の顔を見ては恥さらしだの世間体が悪いだの非難するし、お母さんは美桜のこと壊れ物を扱うような態度だしね」「……」

    2006-05-15 21:22:00
  • 327:

    「妹もね、最初のうちはお父さんから庇っていてくれてたんだけど、段々疲れてきたんだろうね。『お姉ちゃんさえいなければ』っていうようになってね」と苦笑しながら美桜は言う。

    2006-05-15 21:23:00
  • 328:

    そんな美桜に皓輝はどんな言葉をかけていいのかわからなかった。出会ってからの美桜はいつも笑顔を絶やさず、いつでも皓輝を励ましてくれていた。今まで見てきた美桜にはそんな暗い影は全然見当たらなかった。話を聞いた今でも信じられないくらいだ。

    2006-05-15 21:24:00
  • 329:

    「それでね、21歳のときに家を出たんだ。美桜も苦しかったし、美桜がいなければ皆元の生活に戻れるかなぁと思って」「…どうやって?」「ん?」「家を出てどうしてたの?」

    2006-05-15 21:25:00
  • 330:

    と、かろうじて皓輝は尋ねる。そんな皓輝に苦笑しながら美桜は「とりあえず、お決まりのパターンだね」と言った。

    2006-05-15 21:26:00
  • 331:

    「手っ取り早く一人暮らしの男のところに転がり込んだ」「そのとき付き合ってた彼氏?」「ううん」とさらに苦笑しながら美桜は続ける。

    2006-05-15 21:27:00
  • 332:

    「今思えば本当に最低なことしたんだけどね。その時美桜のこと好きって言ってくれた男の人を利用した」「……」

    2006-05-15 21:28:00
  • 333:

    と苦笑から痛そうな表情に変え美桜は言う。「…最低だね。自分が辛いからって人の気持ちを利用するなんて…」

    2006-05-15 21:30:00
  • 334:

    「その時…そいつと暮らし始めてから美桜は幸せだった?」「…幸せ、だったかな…その人はとにかく美桜のこと大事にしてくれたから…」と、また遠い目をしながら美桜は言った。

    2006-05-15 21:31:00
  • 335:

    「…家を出てからね、結局お父さんは毎月美桜の口座にお金を振り込んでるんだ。さっきのはそのお金」「親父さん、本当は美桜のこと心配してるんじゃないのか?」

    2006-05-15 21:32:00
  • 336:

    すると美桜は激しく首を振った。「違う!!あの人はそんな人じゃない!!」美桜の激情に皓輝は目を丸くする。

    2006-05-15 21:35:00
  • 337:

    「あの人がお金を振り込む理由は美桜が藤沢家の名前を汚さないように、世間から見て恥ずかしいことをさせないように、それだけの理由でお金を振り込み続けてるんだよ!」

    2006-05-15 21:36:00
  • 338:

    「どういう意味?」と皓輝は尋ねる。美桜は睨みつけるように皓輝を見ながら

    2006-05-15 21:37:00
  • 339:

    「あの人は水商売や風俗は最低の人間がやる仕事だと思ってる。だから美桜がそんな世界に行かないようにお金を与えていれば体裁が守れると思っているんだよ!だから…だから美桜は!!…」

    2006-05-15 21:38:00
  • 340:

    そこまで言い、耐え切れなくなったのか美桜の大きな瞳からとうとう涙がこぼれた。その涙を見られないように美桜は両手で顔を覆う。

    2006-05-15 21:39:00
  • 341:

    そんな美桜の頭を皓輝は静かに撫でる。「美桜…」皓輝の中で様々な感情が巡っていた。その中から皓輝が美桜に一番伝えたい言葉を口にする。

    2006-05-15 21:40:00
  • 342:

    「美桜…何も気づけなくてごめん。これからは我慢しなくていいから」弾かれたように美桜が顔を上げる。

    2006-05-15 21:41:00
  • 343:

    「今でも親父さんのことが憎いならオレに話してくれていい。親父さんに反抗するためだけに水商売をしているなら辞めればいいとオレは思う」美桜は無言で皓輝を見つめる。

    2006-05-15 21:42:00
  • 344:

    「無責任な言い方かもしれないけど今のオレは美桜に何もしてやれない。家族との仲を戻すことも、美桜を養ってやることもできない。でも…」美桜の頭を撫で続けながら皓輝は言う。

    2006-05-15 21:43:00
  • 345:

    「どんな美桜でも美桜は美桜だから、いつでも『本当』の美桜でいて欲しい」

    2006-05-15 21:44:00
  • 346:

    「皓輝…」疲れ果てたような表情で美桜が皓輝の名前を呼ぶ。「『本当』の美桜って?…」囁くような声で美桜が尋ねる。

    2006-05-15 21:45:00
  • 347:

    「誰かを憎んでいる美桜も、オレや悠馬の前で笑ってくれている美桜も全部美桜ってことだよ」皓輝も囁くような声で答える。

    2006-05-15 21:46:00
  • 348:

    そう答えた皓輝に、「駄目だよ…皓輝…美桜は『良い子』でいなくちゃ…美桜の存在価値がなくなっちゃう…」と子供のような表情になり美桜は言う。

    2006-05-15 21:47:00
  • 349:

    そんな美桜に皓輝は首を横に振る。「美桜。それは違う。今ここにこうして美桜がいること。それ自体が美桜の存在価値だよ」大きな瞳を更に見開いて美桜は皓輝を見つめる。

    2006-05-15 21:48:00
  • 350:

    「オレは今日美桜が怒るところや誰かを憎んでいるところを初めて見たよ。でもそんな美桜を見ても嫌いになんてならない」皓輝は少しずつ少しずつだが、一生懸命思いを美桜に伝える。

    2006-05-15 21:49:00
  • 351:

    「だからもう我慢だけはするな」そう言った皓輝に美桜が縋りつくように抱きついた。

    2006-05-15 21:50:00
  • 352:

    初めて2人で出かけたあの日とは逆に今度は皓輝が美桜のことを静かに強く抱き止めていた…美桜がいつもの笑顔を取り戻せるまで…

    2006-05-15 21:51:00
  • 353:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    本日の更新はここまでです。本当に少なくて申し訳ないです。また明日の夜更新させていただきます。

    2006-05-15 21:52:00
  • 354:

    名無しさん

    2006-05-16 12:44:00
  • 355:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    遅くなりましたが今から更新させていただきます。読んでくださっている方本当にありがとうございますm(__)m

    2006-05-16 23:17:00
  • 356:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    Side A〜美桜〜 それからの毎日は美桜にとってとても幸せな日々だった。仕事が終わると毎日まっすぐ皓輝の店に行き、毎日少しずつでも皓輝と色んな話をする。

    2006-05-16 23:18:00
  • 357:

    店に来てくれたお客さんのこと、友人たちとご飯に行ったこと、悠馬のことや皓輝の仕事の話。そんな他愛のない会話ができる、それが今の美桜にとって一番幸せなことだった。

    2006-05-16 23:19:00
  • 358:

    皓輝は日々本当に忙しくプライベートな時間を過ごせることなどほとんどなかった。それでも月に一度や二度、休みの日や出勤前の時間に美桜を食事やビリヤード、お世話になった先輩が経営している店など色々な所に連れて行ってくれた。

    2006-05-16 23:20:00
  • 359:

    そんな他愛もないだけど幸せな日々を送り、美桜の誕生日を1週間後に迎えたある日美桜と皓輝は些細なことで喧嘩をした。

    2006-05-16 23:21:00
  • 360:

    その日美桜は珍しく仕事中に酔っぱらってしまい、店が終わってどうやって帰ったのか記憶もなく、とにかくなんとか着替えだけを済ませ、自宅で一人潰れていた。何か物音がしたような気がして目を覚ます。ふと時計を見ると時間はa.m8:30。

    2006-05-16 23:22:00
  • 361:

    あぁ、やっちゃったぁ…って、頭いた〜い…)激しい二日酔いに襲われながら目が覚める前に聞こえた音の元を探す。

    2006-05-16 23:23:00
  • 362:

    その瞬間美桜の携帯がなる。《着信 皓輝》「…はぁい…」「お前、今どこだっ!?」聞こえてきたのは皓輝の激しい怒鳴り声。

    2006-05-16 23:24:00
  • 363:

    え?」「どこだって聞いてんだよっ!!」「…家だけど…」事情はわからないがとにかく皓輝は本気で怒っているようだ。「…どうしたの、皓輝。何かあった?」「何かあったの?じゃねえんだよ!」と相変わらず怒鳴り声のまま皓輝が言う。

    2006-05-16 23:25:00
  • 364:

    「電話にも出ない、メールも送ってこない、お前昨日一日何してたんだ!?」「はぁ!?」どうやら皓輝は昨日美桜と連絡が取れなかったことに対して怒っているようだった。

    2006-05-16 23:26:00
  • 365:

    「昨日店で酔っ払っちゃって、そのまま家に帰って潰れてたんだけど…たった一日連絡つかなかったくらいで何そんなに怒ってるの?」訳もわからず怒られていることにさすがに美桜もムッとなり、思わず喧嘩腰で言い返す。

    2006-05-16 23:27:00
  • 366:

    「お前今まで一日だって連絡欠かしたこと無かっただろ!そんな奴がいきなり何の連絡も無くこっちから連絡しても連絡がつかないなんて心配するだろ!!」「…心配かけたことは悪かったと思うけど、だからってそんないきなり怒鳴らなくてもいいじゃない!!」

    2006-05-16 23:28:00
  • 367:

    「オレがどれだけ心配したと思ってるんだよ!」と皓輝も怒鳴り返す。「だから、心配させてごめんって。でも怒るにしたって理由くらい聞いてから怒ってよ!」

    2006-05-16 23:29:00
  • 368:

    「はぁ!?お前本当に反省してんのかよ!?」とそんな遣り取りが30分程繰り返され、「つうか、お前まじむかつく」それだけを言い皓輝が電話を切った。

    2006-05-16 23:30:00
  • 369:

    美桜は美桜で心配をかけたのは悪かったと思っていたが、あまりの皓輝のキレっぷりにかなり苛立ってたので、携帯の電源をそのまま切りベッドの上に投げ付けた。

    2006-05-16 23:31:00
  • 370:

    カバンからタバコを取り出し火を点ける。一本吸い終わり少し冷静になって考える。(…確かにあれだけ毎日連絡してたのが、ぷっつり途切れちゃったら心配するかなぁ…)と少し反省をする。だが…

    2006-05-16 23:32:00
  • 371:

    (それにしたってあの言い方は無いよね!?)と思い返し腹が立つ。一瞬電話をかけ直して文句を言ってやろうかと思ったのだが、二日酔いのこの頭で怒鳴り声を聞き続ける元気もなかった。

    2006-05-16 23:33:00
  • 372:

    (まぁ、いいや…また夜にでも電話しよ…)そう思いながらもう一度ベッドに横になり眠ることにした。

    2006-05-16 23:33:00
  • 373:

    タイミングが悪いことは続くもので、その日から美桜は毎日アフターが続き皓輝に連絡することができなかった。あの日、夕方に起きて携帯の電源を入れ着信履歴を見返すと、皓輝からの着信がa.m12:30一時間おきで残っていた。

    2006-05-16 23:34:00
  • 374:

    (本当に心配してくれてたんだ…)さすがに反省をし、取り敢えず「本当にごめんなさい」とだけメールはしておいた。だが、皓輝からの返事はなかった。(さすがに呆れられちゃったかな…)と美桜は落ち込んでいた。

    2006-05-16 23:35:00
  • 375:

    あれから、6日が過ぎ美桜の誕生日の前日。やっと時間に余裕が出来、仕事が終わってから6日ぶりに皓輝に電話をする。コール音は鳴っているのだが、皓輝は出ない。

    2006-05-16 23:36:00
  • 376:

    (忙しいのかな?また後でかけ直そう…)美桜はひとまずタクシーに乗り自宅へ戻った。自宅に着き着替えを済ませもう一度皓輝に電話をかける。…出ない。

    2006-05-16 23:37:00
  • 377:

    皓輝はまだ怒っているのだろうか。美桜は不安に襲われた。もしかして美桜は皓輝に見捨てられてしまったのだろうか。それから何度か皓輝に電話をかけてみたのだが、やはり出ない。

    2006-05-16 23:38:00
  • 378:

    不安が今度は心配に変わる。(もしかして皓輝に何かあったんじゃ!?)とそこで美桜はふと気付く。(あの日の皓輝もこんな気持ちだったんだ…)

    2006-05-16 23:39:00
  • 379:

    そう思うと美桜はいても立ってもいられなくなり、皓輝の店へ電話を入れる。「…お電話ありがとうござ…」「悠馬!?」電話が繋がった途端、話し出す美桜。

    2006-05-16 23:40:00
  • 380:

    「…美桜姉?」「うん。悠馬、皓輝は!?」「え?」「皓輝と連絡が取れないの!?店に来てる!?」「…美桜姉も連絡取れてないの?」悠馬のその一言が美桜の心配を募らせる。

    2006-05-16 23:40:00
  • 381:

    「皓輝さん2日ぐらい前から店に来てないんですよ。連絡もないし、電話しても出ないし。今皆で美桜姉に連絡しようかどうしようか相談してたところで…」「!?」

    2006-05-16 23:42:00
  • 382:

    「美桜姉何か心当たりない?」見えない悠馬を相手に美桜は激しく首を振る。「わかんない!!私も最近忙しくて全然連絡していなかったから…!」と半泣きになりながら答える美桜に、「美桜姉、落ち着いて!」と悠馬が慌てた様子で声をかける。

    2006-05-16 23:42:00
  • 383:

    「たぶん皓輝さんのことだから、風邪引いて寝てるとかそんなことだと思うから。何か分かったら美桜姉にも連絡するし」「…うん」「じゃあ、美桜姉、またね」電話を切った美桜はまた不安に襲われる。

    2006-05-16 23:43:00
  • 384:

    どうしよう…皓輝の自宅の連絡先なんて知らないし、携帯へかけても出ない。本当に風邪を引いて寝ているだけなのだろうか…それとも…何かあったのでは!?一人でいる美桜は段々パニックに襲われ始めた。

    2006-05-16 23:44:00
  • 385:

    体が震え、息が出来ない。《過呼吸》だ。(やば…)今発作を起こすわけにはいかない。とにかく気持ちを落ち着かせようとする。だが、『もう一人』の美桜がささやく。

    2006-05-16 23:45:00
  • 386:

    『皓輝はあんたからの電話に出たくないんだよ』『あんた皓輝に嫌われたんだよ』(うるさい、うるさい!!)美桜は必死に自分を抑える。

    2006-05-16 23:46:00
  • 387:

    『可哀想にね。あんたこれから独りだよ』さらに『もう一人』の美桜がたたみかける。『あんたが《良い子》じゃなかったからいけないんだよ』その一言で美桜は『もう一人』の美桜に囚われた。

    2006-05-16 23:47:00
  • 388:

    (美桜が《良い子》じゃなかったから、皓輝に嫌われたの…?)『そうだよ。だからあのクソ親父と同じようにあんたを捨てたんだよ』震える手を伸ばし美桜は化粧ボックスを摑む。

    2006-05-16 23:48:00
  • 389:

    『《良い子》でいられないあんたなんか誰も必要としてないんだよ』(皆…美桜なんて要らないの?…)化粧ボックスを開け、美桜はある一点を見つめる。

    2006-05-16 23:49:00
  • 390:

    『そうだよ。だからあんたなんか死んじゃえばいいんだ』見つめていた『物』を取り出す。…カミソリだった。美桜は震え続ける右手で、それでもしっかりとカミソリを握る。

    2006-05-16 23:50:00
  • 391:

    『死ね』その瞬間美桜は左手に刃を当て一気に引いた…痛みは無い。真っ白な腕の上に一本の赤い筋。

    2006-05-16 23:51:00
  • 392:

    (綺麗…)美桜は取り憑かれたように自分の傷口を見つめる。赤い筋は量を増し次第に白い部分が少なくなっていく。それでも美桜はまだ見つめ続けている。

    2006-05-16 23:52:00
  • 393:

    10分ほどそうしていて美桜はふと我に返る。自分の両手に目をやり、激しい後悔に襲われる。(ああ…また…)美桜はまだ皓輝に言っていないことがあった。

    2006-05-16 23:53:00
  • 394:

    美桜の持病。パニック症候群ともう一つ《自傷癖》。16歳の冬パニック症候群と診断される前から始まっていたリストカット。

    2006-05-16 23:54:00
  • 395:

    体を襲う激しい苦しみがひどく長く続いているうちに美桜には今自分の身に起こっていることが現実か夢なのかその区別がつかなくなっていった。そしてそれは発作が起こっていない日常にも及び出した。

    2006-05-16 23:55:00
  • 396:

    起きていても夢の中にいるような気分。今自分が起きているのか眠っているの、それすら区別がつかない。現実と夢の区別をつけるためには《痛み》を感じるしかなかった。

    2006-05-16 23:55:00
  • 397:

    そうして始まったのがリストカットだった。《痛み》を感じている間だけが美桜にとっては《現実》のだった。

    2006-05-16 23:56:00
  • 398:

    だが始めは区別をつけるための《痛み》だったのが次第に《不安》や《苦しみ》から逃れる手段に変わっていった。《不安》や《苦しみ》に襲われているときリストカットをすると、何故か急にすっきりする。

    2006-05-16 23:57:00
  • 399:

    そのことに気付いてしまい、美桜はリストカットが止められなくなってしまったのだ。それ以降もう数えきれないくらい何度と無くリストカットを繰り返してきていた。

    2006-05-16 23:58:00
  • 400:

    助けて皓輝!)胸の中で美桜は叫ぶ。だが実際にこのことだけは皓輝には言えない。醜く引き攣る無数の傷跡。

    2006-05-16 23:59:00
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