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絆-Kizuna-
-
1:
◎
頑張って書くので宜しくお願いしますm(__)m
2005-06-26 01:28:00 -
551:
◎
「私もビックリしたんだけどね。もう30歳手前であんなことあったからどん底までへこんでたし」
夏美さんは八年付き合っていた彼氏と秋に結婚が決まっていた。でもその彼氏が私ぐらいの年齢の女に乗り換えてしまったのだ。別れた直後は本当に信じられなかった。
「えっ?っていうか誰にプロポーズされたの?」
「うん。それがね・・・あいつ。八年野郎」
八年野郎???って、ってことはモトサヤー!?私は一瞬事態がのみこめずに頭がごちゃごちゃになってしまった。2005-08-11 05:29:00 -
552:
◎
「ってことは復活?っていうかプロポーズって結婚することになったんですか?」
「分かんない。でもね、戻ってきた時やっぱり嬉しかったんだよね。あんなことされたのに馬鹿みたいでしょ」
話を聞いていると一週間前、突然夏美さんのお店に来たみたいだ。「魔がさした」って。「やっぱりお前じゃなきゃダメだった」って。「結婚してくれ」って。八年の長い長い時間は二人にしか分からない何かを残していたんだろう。
分からないと言っている夏美さんだけど、こんな幸せそうなキレーな顔してる。きっと答えは一つ。2005-08-11 05:41:00 -
560:
◎
「っていうか由里ちゃんは?最近どうなの?うまくいってる」
夏美さんは私にとってお姉さんみたい。だから何でも話せるし相談に乗ってもらったり。
「ハイ、なんとか頑張ってます。いっぱいいろんなことありすぎて大変だったんだけど・・・」
それから英二のことやモデルの元カノのこと、仕事のことや千恵という人のこと、この一ヶ月たくさんあった出来事を一気に話した。最近のアリスト事件の話も。2005-08-11 06:21:00 -
561:
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あぼ~ん -
562:
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あぼ~ん -
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あぼ~ん -
568:
◎
「スキャンダル度MAXだねホントに。色々あったんだ由里ちゃんも。でも何か強くなった感じがする」
「そうですかー?」
私はそう言ったけど自分でも少しそう思っていた。強くなったとゆうより多少のことでは動じなくなった、みたいな。
数々の出来事のおかげ?なんだろうか。それにしても夏美さんと話してるとすっきりするなぁ。多分何でも受け止めてくれるからなんだろうな。2005-08-11 06:31:00 -
569:
名無しさん
このスレにくんなや!荒らすな!糞野郎
2005-08-11 06:32:00 -
570:
◎
楽しい時間はあっという間に過ぎた。
「またゆっくりご飯でも行こうよ。由里ちゃんって不思議なんだよね。年離れてるけど気使わないし」
私も同じ感覚だった。夏美さんは対等な目線で見てくれるから。年上だからって威張ったりしないし変にお姉さんぶったりもしないし。
「うん♪またゆっくり遊びましょーね」
敬語混じりのタメ語?でそう答えた。夏美さんとはそのまま新宿で別れ、私は帰りに六本木に寄り黒木さんに電話をかけると喫茶店で話をすることになった。2005-08-11 06:40:00 -
571:
?
頑張って???
2005-08-11 06:43:00 -
572:
◎
今日言おう。水商売を上がるつもりだって。私は黒木さんを待っている間、一人でそう考えていた。
しばらく待っていると相変わらずイカツイ黒木さんが現れ私の前にドカッと座った。
「由里久しぶりだなぁ。元気してたか?最近出てきてなかったろ?」
「うん最近休んでたけど、このとーりめちゃくちゃ元気だよ!」
そんな会話から始まった。2005-08-11 06:45:00 -
573:
◎
「で?どうした?何かあったんだろ?」
「あ、うん・・・」
私は何故か言葉が見つからなかった。
「上がるのか?」
黒木さんの口からそう言われ、私は静かにうなずいた。いつもこうだった。黒木さんには私が何を考えているか見透かされてる。2005-08-11 06:49:00 -
574:
◎
「そうか・・・分かった。でも寂しい気になるなぁ。もう六年か、あれから」
黒木さんは少し声が小さくなった気がした。私を六年前のあの時から夜の世界で育ててくれた人、何があっても守ってくれた人、支えてきてくれた人。
私のホステス時代の全てを築いてくれた。“夜のドン”黒木さんが味方でいてくれたから頑張ってこれた。お父さんのように優しかった。叱られたこともあった。たくさんのことがあったけど黒木さんには『感謝』という言葉だけでは表せないくらいの恩がある。2005-08-11 06:58:00 -
575:
◎
「ごめんね・・・」
「何で由里が謝るんだよ、馬鹿か」
辞めると言ったからなのか私の頭の中には走馬灯のように今までの六本木での出来事が駆け巡った。何も分からない新人ホステスから始まり、いっぱしのホステスになり、ナンバーワンを掴むとキープすることに必死だった。
ただ負けたくないプライドだけで走り続けてきたんだなぁ。
「まぁいつでも戻りたくなかったら戻ってこい。お前の場所はいつでも作ってやれるから。お前みたいに可愛がれるやつは今までもこれから先も現れないだろうしな。俺も20年この東京の夜を見てきたんだけどな」2005-08-11 07:09:00 -
576:
◎
「由里にはな、何かを感じたんだよ。その“何か”は今だに分からないんだけどな。まぁお前は娘みたいなもんだ。ラストはいつやるんだ?」
ラスト・・・かぁ。いつって全然そんなこと考えてなかった。夏真っ盛りの八月。やるなら早い方がいいだろう。
「ら、来週の金曜日にしようかな?」
「そうか、じゃあ花出しておくか。まぁ顔出すし頑張って花道飾れよ!何年も六本木でナンバーワンやってきたんだから」2005-08-11 07:15:00 -
577:
名無しさん
まぢ感動する
2005-08-11 07:24:00 -
578:
◎
「うん、頑張る」
土壇場でラストの日を決めた私は黒木さんと別れるとそのままお店に向かった。事務所でマネージャーに辞める話をすると店長、代表まで集まりややこしくなってしまった。
「引き抜きだろ?支度金いくらだ?時給いくらって提示されたんだ?」
ずっと質問攻めだった。
「引き抜きじゃないよ。ただ、もう水商売を上がりたいの。めちゃくちゃいっぱい考えたよ。でももうやるべきことは、やりつくした気がして。だから来週の金曜日にラストイベントするから」2005-08-11 07:24:00 -
579:
◎
「らっ来週!?」
代表達は声を揃えて驚いた。来週の金曜日まであと10日。カウントダウンは始まった。
「ラストの案内状とポスターは?っていうか間に合うか?」
「急ぐしかないです」
店長は慌ただしく動きだし、その日はラストのイベント内容や来客予定客数、同業店への案内状送付、最後のポスター撮影、夜中とにかくひたすら動き回った。2005-08-11 07:30:00 -
580:
◎
(♪〜♪〜♪)
晃太から電話が鳴り、慌てて出た。
(由里どこいんの?)
「あっごめん。六本木なんだ。ちょっと色々あったんだけどもうすぐ帰るから。話したいこともあるし」
(えっ?なにそれ、嫌な話じゃないよな?)
「うん。多分いい話だと思うよ」2005-08-11 07:35:00 -
581:
◎
(だったらいいけど。じゃあ用事済んだら早く帰っておいでね)
「うん分かったぁ」
電話を切り、最後に代表に話をした。今までありがとうございましたって。ここ《クラブJ》は私の六年間のホステス歴のうち、約三年間を過ごしたお店だった。
入店してからずっと、ナンバーワンを取ってきた。頑張って頑張って、自分の居場所を作り上げていた。
代表は最後までずっと止めてきたけど、折れない私にしびれを切らし最後は納得してくれ、何故か代表と私は握手をした。「今までありがとう」そう言われた気がした最初で最後の握手だった。2005-08-11 07:54:00 -
582:
◎
もうそろそろ帰ろうと事務所を出ると、そこにはレイが立っていた。
「辞めちゃうの?」
店長から聞いたのだろうかレイは少し寂しそうな顔をしてそう聞いてきた。私は黙ってウンウンとうなづいた。
「ホントのホントに?絶対辞めちゃうの?寂しいじゃん由里いなくなったら」
「ありがと。でももう中途半端なままでダラダラしたくなかったんだ。これからはレイが引っ張ってJ盛り上げてってね」2005-08-11 08:00:00 -
583:
◎
レイは泣きそうな顔をした。それを見て私も泣きそうになった。
「もう!そんな顔しないでよー。会えなくなるわけじゃないんだしさ。レイとは友達なんだしいつでも会えるじゃん」
「うんそーだね。由里は友達だもんね!ラストいつなの?」
それから来週の話や、内容を軽く話して私はお店をあとにした。
マンションに着く頃にはもう夜中の3時を過ぎていた。そーっとドアを開けて部屋に入ると晃太が起きて座ってた。2005-08-11 08:07:00 -
584:
◎
「えっ?何で起きてるの?もうこんな時間なのに」
眠そうな顔をした晃太に私は聞いた。
「何でじゃねーよ、遅いから心配するだろ携帯もつながんねーしさ。話も気になってたし。すげー眠かったけど寝れなかったんだからな」
晃太は少しふくれていた。眠いの我慢して待っててくれたんだ。私はちょっと嬉しかった。2005-08-11 08:11:00 -
585:
◎
「ごめんね。あのね、ネイルサロンの担当の夏美さんって人とご飯食べて、六本木行って黒木さんって人に上がる話しててさ、そのまま辞める話しにお店行ってたの。そしたらラストの打ち合わせになっちゃって。ごめんね遅くなって」
「えっ?何て?どういうこと?」
一気に話し過ぎたみたいで晃太はわけが分からなかったみたいだからゆっくり最初から説明した。
「マジで?」
「うんホントだよ」2005-08-11 08:16:00 -
586:
◎
「マジで?そっかぁ」
晃太は嬉しそうに笑った。さっきまでの眠そうなすねた顔とは全然違う。それもそのはずだろう。ずっと嫌がってたからなぁ。
やめてくれとは決して言ってこなかったけど、明らかによく思っていなかったし。私も晃太が嫌がったり心配する仕事をしていていいのかってずっと引っ掛かってたから・・・。
自問自答するたびにどうすればいいのか分からなくなってた。でもこんなに嬉しそうな晃太を見てると、これで良かったんだってそう思えた。2005-08-11 08:21:00 -
587:
◎
「その夏美さんって人も良かったなぁ。やっぱり繋がってる運命の糸があるんだよ。切っても切れない糸が」
運命の糸・・・かぁ。私と晃太の間にそれはあるのかな?あるよね?きっと。あればいいのになぁ。
「俺も結婚したくなってきたよ。由里結婚しよっか」
「はいはい。しよーしよー」
「なんだよー超テキトーだなぁ。でも一年後、じゃ早いか?んーそうだなぁ二年後ぐらいにできるといいよな。っていうかしような」2005-08-11 08:29:00 -
588:
◎
「そうだねー」
私はそう答えながら色々考えていた。“これから先”の自分を。晃太が寝てしまった後も一人でぼんやり考えていた。
昔から今、現在までのこと、そしてこれからのことを。レイの着信音に指定してる大黒摩季の『あぁ』。酔うとレイがいつも歌っていた。
レイの口癖は、この歌聞いたり歌うと由里を思い出すんだーだった。私はこの歌を知らなかったけどレイがきっかけで好きになった。2005-08-11 08:37:00 -
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あぼ~ん -
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594:
◎
その大黒摩季の『あぁ』はこんな歌だった。
やっぱり夢を叶えたいこのまま終わりたくない 目の前の現実は厳しすぎるけどもう一度だけ賭けてみよう やらなきゃいけないことだらけやりたいこと募るだけ
“このままでいいのかな”何もかもが不安に変わるよ
あぁ君のように輝いてみたい冷たい風に吹かれても負けない君のように
あぁ諦めないで前だけ向いて歩いてみよう寂しくてもたとええつらくても何かが見えるまで2005-08-11 08:44:00 -
595:
◎
きっかけがないと自分では越えられないことがある 誰かに背中をぐっと押されなきゃ勇気が出ない時もある
人はどちらにつくかで味方が変わってしまう あれは身を引いたのかそれとも逃げ出したのか
あぁ君のように貫いてみたいどんなに遠回りしても迷わない君のように
あぁ前だけ向いてこの今を乗り越えてみよう 正しくても間違いだったとしても何かが見えるまで2005-08-11 08:50:00 -
596:
◎
始めはピンとこなかった歌詞も、今は覚えてしまってるぐらい好きになった。
寝る前にそんなことをぼーっと思い出しながら私は眠りについた。
そして目が覚めると妙な音で目が覚めた。隣を見ると晃太がいない。
えっ?何かしてるのかな?2005-08-11 08:53:00 -
597:
◎
寝室を出てリビングに行くとキッチンに立つ晃太がいた。
「おはよ、何してるの?」
「あっ来ちゃダメ!ちょっと座ってて」
慌てる晃太。少し寝ぼけていた私はアクビをしながらソファーに座った。あれ?何やらコゲ臭いにおいが・・・。
「晃太!めちゃくちゃ焦げてるにおいがするんだけど大丈夫?」2005-08-11 08:57:00 -
598:
◎
「大丈夫大丈夫!あ、あーっもう!」
一人でブツブツ言いながら晃太は必死で何かを作っていた。でもあまりにも悪戦苦闘してるから見兼ねて私はキッチンに入った。
そこには丸焦げの鮭らしき魚と、焦げた目玉焼き。目玉焼きなんて焦がす方が難しいよね。
あれまーよくこんなに焦がしちゃって・・・
「朝ご飯作ってあげようと思って、さ」2005-08-11 09:05:00 -
599:
◎
ボソッと小さな声で晃太が言った。何だかそれがめちゃくちゃ可愛くて私は晃太にギュッと抱き着いた。
「ありがと」
私がそう言うと晃太はかがんでオデコにキスしてきた。
「あ、やばい。っていうか無理」
急にそう言うと私をさっとお姫様だっこして寝室まで持ってかれた。そのまま・・・。2005-08-11 09:11:00 -
600:
◎
晃太の全部が好きだなぁ。最近はホントにそれを実感させられることが多くなった。
毎日ちゃんと寄り道しないでまっすぐ帰ってくるし、今日みたいに私を驚かせようと何かしてくれたり最近は幸せ過ぎて怖いぐらい。
そんなある日、新たな事件が起きてしまった。2005-08-11 09:20:00 -
601:
◎
その日、晃太が家に帰って来るのが遅かった。電話をかけると「すぐかけ直す」と言われ、しばらくたったら家にそのまま帰ってきた。
「ビックリするじゃん。何かあったの?」
晃太の顔色がよくなかった。何かあったなとピンときた。
「あさって発売の週刊誌にさ、出るんだって」
話を聞いていくと、その掲載される記事の内容がよくないように書かれてるとのことだった。2005-08-11 09:27:00 -
602:
◎
「大丈夫なの?」
「う、うん多分。ごめんな」
私は週刊誌の発売日までの晃太の動揺ぶりの原因がまさかあんなことが原因だとはその時まだ分からずにいた。
二日後、晃太が寝ている時に起こさないよう早朝からコンビニに行った。その週刊誌を探して見つけた時、私は一瞬目を疑った。2005-08-11 09:32:00 -
603:
コァラ
しぉり?頑張ってくださぃ??
2005-08-11 09:36:00 -
604:
◎
『矢口晃太・ホステスと同棲』と大きく表紙に記載されていたからだ。
私はすぐにレジに向かい、週刊誌を買うと帰り道に読みながら帰った。全部で2ページ4面だった。掲載されていた写真は全部で7枚。横浜での二人の車内写真、晃太の実家から出た時の写真、Jに入る晃太の写真、Jから出た私の写真、スーパーで買い物する二人の写真。
そこまでは予想できた範囲だった。でも私は次のページをめくった時、頭が一瞬ごちゃごちゃになった。2005-08-11 09:41:00 -
605:
◎
大人数でお店から出てきた写真と晃太と女の子が車に乗り込むのが写っている写真が掲載されていた。
はぁ?なにこれ・・・
『彼女に内緒の遊びなのだろうか。7月×日、矢口は大人数で食事した後、ある一人の女の子を車に乗せ送って行った・・・etc』
っていうかこの日って同窓会の日じゃん!ってことは誰?この女。もしかして・・・《千恵》?2005-08-11 09:47:00 -
606:
◎
私との記事も最悪だった。勝手に好き勝手に書かれていた。
出会いは六本木の某店。矢口はナンバーワンホステスにはまり、通いに通って彼女を口説きおとした。貢いだ金額は○百万だとか。今でも彼女の店にはしょっちゅう出入りしている。同棲中の彼女とは順調そのものだが周囲は交際に反対しているそうだ。
そうだって何なの?あてずっぽで書くなっつーの。っていうかこの写真は何なの?晃太が知らない女と写っているページを私は何回も見直した。2005-08-11 09:55:00 -
607:
◎
「起きて晃太」
マンションに帰り、寝ていた晃太を起こした。
買ってきた週刊誌のページを開き、晃太に投げ付けた。
「これって同窓会の日だったよね?何なの」
「あっあのっつーかホントに誤解なんだって!帰り送って行っただけだしホントに何もないから!」2005-08-11 09:59:00 -
608:
◎
「送っただけ?は?ふざけんな!頭おかしーんじゃないの?この人千恵って人でしょ?」
私は怒りMAXだった。ただでさえ晃太の両親にも合わせる顔がなかった。仕事のことも知らなかっただろうし。
ラストももうすぐで目前に控えてるってゆうのに散々なアリサマだ。2005-08-11 10:03:00 -
610:
名無しさん
2005-08-11 14:05:00 -
611:
◎
「嘘つき!ちゃんと信じてたのに・・・」
私は苛立ちを通りこし、悔しくて涙が出た。何も聞きたくない、そう思ってカバンと財布を手にとり部屋を飛び出したのはいいものの、朝早くにどこに行くこともできなかった。
自分のマンションも晃手との同棲で引き払ってしまったし・・・。レイに電話をかけたけど繋がらなかった。そうだ!由輝、あいつなら家にいるだろ。
渋谷で一人暮らししてる由輝のマンションに朝っぱらから連絡もしないで押しかけた。2005-08-12 01:08:00 -
612:
◎
《ピンポンピンポン》
インターホンのボタンを連打する迷惑な姉。由輝がドアを開けると私は何も言わずに家に上がり込んだ。
「ちょっと何だよ朝っぱらからー。電話してから来いっつーの!女いたらどうすんだよ」
「うるさいなーもう」
私は散らかった由輝の部屋に座り込んだ。2005-08-12 01:13:00 -
613:
◎
「どーしたんだよ急に。何かあったの?姉ちゃん」
由輝がアクビをしながら私に聞いた。面倒だから黙ってしばらく無視していた。ぼーっとしているとやっとだいぶ落ち着いてきた。
「喧嘩したの?」
「うん。」
「何で?」2005-08-12 01:16:00 -
614:
◎
「知らないよそんなの」
「何だよそれ。何かあったから喧嘩したんだろ?ったくもう!っつーか腹減ったぁ俺。なぁ姉ちゃん何か作ってよ」
だるいなぁと思いながらも急に来て起こした私も悪いなぁと思い、冷蔵庫に残っていた夏野菜とイカで冷製パスタを作ってあげた。
「へーあんなのしか残ってなかったのにこんなの作れたんだ?飯だけは何でも作れるしやっぱスゲーな」
減らず口とはこいつのためにあるような言葉。でも憎めない弟なのだ。2005-08-12 01:26:00 -
615:
◎
「ごちそうさま!うまかったよ。っつーかさ、マジで何があったんだよ」
由輝はしつこく突っ込んでくる。私は説明するとまた腹がたちそうだったから、手っ取り早く見せた方がいいと思った。
「ねーアンタさ、コンビニ行って**って週刊誌買ってきてよ。あとコーヒーと適当に何かいるもの買っていいから」
そう言って財布を渡すと、由輝は珍しく素直に言うことを聞いてコンビニに行った。2005-08-12 01:31:00 -
616:
◎
15分後、帰ってきた由輝の手にはあの週刊誌が握られていた。きっともう見たんだろう。
「喧嘩の原因ってもしかしてこれ?」
私は黙ってうなずいた。
「マジかよ。っていうかこの送ってもらってる女って誰なの?」2005-08-12 01:34:00 -
617:
◎
「晃太の大学の同期で、学生時代の彼女。三回生の時に一年位付き合って晃太が振られたんだって」
「そ、そうなんだ」
由輝は一瞬だけ黙り込んだけど、すぐに笑いだした。
「っていうか何もないんでしょ?送ってるだけかもしれないじゃん。実家にまで挨拶しにきてくれて姉ちゃんと同棲してんだぜ?それにこの記事だって書いてること無茶苦茶じゃん」2005-08-12 01:40:00 -
618:
◎
「分かんないよそんなの。でも車で送ってるのは確かじゃん。この同窓会の日は晃太ちゃんと早く帰ってきたけど、こんなことしてたなんて知らないし。だいたい送る必要なんてないでしょ?」
「俺にキレるなって。まぁよく分かんねーけど色々あったってことだな。でもさこれ母ちゃん見たらビックリするよ」
そのとおりだ。お母さんだけじゃない。晃太のお母さん達も、あゆみだってレイだって健にいだって。
夏美さんも・・・英二だって。2005-08-12 01:48:00 -
619:
◎
頭が痛くなってくる。
自分のことも大変なんだけど・・・。《千恵》という人のことで頭がいっぱいだった。どうして晃太が送っていく必要があったのか。やっぱり未練があるんだろうか。五年も前に別れた二人なのに。2005-08-12 01:51:00 -
620:
◎
音を切ったままの携帯には気付けば着信30件が全て晃太で埋まっていた。でも電話はかけなおさなかった。
しばらくここにいようかな。Jのラストイベントまでは色々やらなきゃなんないことあるし。そうしよう。
「ね、由里しばらくってゆーか金曜日までここにいるから。そうゆうことでよろしく」
「はっ!?何だよそれ。勝手に決めんなってー」
「毎日ご飯作ったげるから。んーあと焼肉一回連れてくから!」2005-08-12 01:57:00 -
621:
◎
反抗していた弟は焼肉と聞いてすぐに喜んでOkをした。単純な馬鹿だ。渋谷のクラブでDJをやってる由輝は女の子には何故かモテまくっている。私には理解不能なんだけど。
渋谷では一緒に歩いていてカップルに間違えられることも多々ある。渋谷は由輝の庭(本人いわく)らしく、ホントにすれ違う子達がみんな由輝の顔見知りか!ってくらい。
っていうかDJなんていつまでできるかもわかんないのに。
でも最近はクラブでもイベントに引っ張りだこらしく、自慢げにそんな話をしてきたりする。まぁ充実してるならいいんだけど。2005-08-12 02:08:00 -
622:
◎
若いうちしかできないこともあるし、若いからできるってこともあるし。
自分の好きなことをしているならそれでいいと思う。好きなことして、楽しめばいい。それが振り返った時に眩しいぐらいのキラキラした思い出になるんだから。
やりたいことを途中で投げだしたり、諦めてしまった人は、後悔だけが残るでしょ。“やれば良かった”って。
だからどうせならやりたいことやるべきなんだよ。やって後悔したとしても納得できるじゃん。やりたいことやったんだしって。2005-08-12 02:14:00 -
623:
◎
結局私は、由輝の部屋でそのまま寝てしまっていた。目が覚めるともう外は暗く、夜の7時過ぎになっていた。由輝もDJの仕事で出掛けてしまっていて一人でぼーっとしながらテレビをつけた。
携帯を見ると晃太やレイ、あゆみからの着信でいっぱいになっていた。レイとあゆみもあの週刊誌見たのかな?そして、メールが三件。
フォルダを開いた私は一瞬ドキッとした。2005-08-12 02:20:00 -
624:
コァラ
しぉり??
2005-08-12 02:27:00 -
625:
◎
それは英二からのメールだったからだ。
久しぶり。元気か?俺は大阪で何とか頑張ってます。何かあったらいつでも電話してこいよ。俺はスーパーマンだからすぐ飛んでけるからさ。なーんてな。ちゃんと天使の涙が守ってくれてるよ。俺も頑張りまっせ←大阪弁
見終わった私は少し笑っていた。最後の一言が英二らしいなぁって。でも何で?急に。英二も知ってるんだろうか?2005-08-12 02:29:00 -
626:
◎
大阪かぁ。英二ちゃんと頑張ってるんだなぁ。大阪弁までメールで使ってくるなんて。楽しくやってるんだろう。
天使の涙・・・。今も私の首元には天使の涙のネックレスが身につけられている。英二と最後に会った時からずっと。
「幸せになれ」そう言って渡してくれたっけな。あれからもう一ヶ月半がたとうとしている。2005-08-12 02:36:00 -
627:
◎
私なにやってんだろ。ホントに馬鹿みたいだ。よし!ラストまでのあと五日間、何もかも忘れて営業頑張ろう。私はラストイベントはとにかく死ぬ気でやろうと思った。
金曜日のラストは爽快感で溢れるように。そう思った私は最後の営業電話を全てのお客さんにかけ、時間の予定や客数などを確認してお店に連絡を入れておいた。2005-08-12 02:43:00 -
628:
◎
ラスト・・・か。やっぱり少し寂しい気もした。結局それから六本木に出ることになり、ついでに長年通っていたドレスのショップに行くことにした。
「おー久しぶりだね。今日は?最近新作めちゃくちゃ入ったんだよ」
私がお店に入るといつものお姉さんが話してきた。色とりどりの綺麗なドレスがたくさんある。いつも試着しまくって迷ってたなぁ。2005-08-12 02:49:00 -
629:
◎
「今日は白。真っ白がいいんだけど」
水商売を上がる時は、白い衣装だと六本木には妙なジンクスのようなものがある。白い衣装で上がると、綺麗に夜の世界から上がることができる―と。
出戻ったりしないように。誰にも染められない白い色に身を包んで、水商売を上がり、それからの人生に自分で色をつけられるように―って。
いつか黒木さんが言っていた。2005-08-12 02:55:00 -
630:
◎
「白ってもしかして夜上がるとか?」
お姉さんが冗談っぽく聞いてきた。
「あ、ハイ。金曜日なんです」
「えっ!?ホントに!?Jの看板だったのにーもったいない。そっかぁ。じゃあお花出しておくね。今までずっと来てくれてたし」
「あっ、ありがとー。スイマセン何か気使ってもらっちゃって・・・。ドレス真っ白で何着か出して下さい」2005-08-12 03:00:00 -
631:
◎
それから選んでもらった3着を試着して、1番似合うと言ってもらったお姫様のようなふんわり広がったドレスを買うことにした。
「ありがとう。ラスト頑張ってね!」
帰り際にそう言ってもらい、私はお店を出た。もうここに来ることもないだろうなぁ。ドレスは30着近くあるし、これから先、着なくなる=もう買うこともないだろう。2005-08-12 03:04:00 -
632:
◎
しんみりした気持ちのままクラブJに向かい、案内状の送付確認やシャンパンの数を補充してもらう発注などをした後まだ営業中だから誰もいないロッカールームに入った。
ここで働いてからもう三年かぁ。早かったな、あっという間だった。壁に書いてあるメガネって落書き。これって酔っ払ってマネージャーと喧嘩した時に書いたんだっけな。毎日化粧を直していたドレッサーや化粧台。
少しへこんだロッカーたち。なんだかんだ言ってても楽しかったな。幸せだったんだよね。2005-08-12 03:12:00 -
634:
◎
時間だけが足早に過ぎていたのか私だけが先走ってきたのかは分からないけど、ホントにこの六年は長いようで早かった。
過ぎてみて初めて分かった。時間の早さ、人生の早さが。ロッカーの中身を整理し、ドレスやパンプスやミュールを片付けた。
《ゆかり》と張られたこのロッカーとも、もうすぐお別れ。来週にはきっと新しい名前がついているんだろう。何だかちょっと切なかった。2005-08-12 05:20:00 -
635:
◎
ラストまでのカウントダウンが刻々と迫ってきている。もう後戻りはできない。私は唇をかみしめ、ロッカーをバタンと閉めた。
ロッカールームを出て、帰ろうとした時、ちょうどマネージャーが入口に立っていた。
「もう帰るの?」
「うんそーだよ」
「そっか。金曜・・・ラスト頑張れよ。っていうか一緒に頑張ろうな。今までの六本木でのお前の実績、俺に見せてくれよな」2005-08-12 05:26:00 -
636:
◎
マネージャー・・・
「あったりまえじゃん。頑張るよ!派手にやっちゃうからねーお疲れっ」
私は何故かマネージャーの顔を見れなかった。寂しそうな顔をしてるのが分かったから。今から泣きそうになってたら本番がもたなくなりそうだ。
私はタクシーに乗り、弟のマンションに向かった。途中でレイが「何で黙って来て黙って帰るのー!」って電話してきたけど、ラストが終わるまではレイとも距離がほしかった。
なんか、やめれなくなりそうだから。周りと話すと考えが変わりそうで怖いんだよね。やっと決心ついたのに。2005-08-12 05:34:00 -
637:
◎
由輝の家に帰るとドアが開いていた。あれ?帰ってたんだあいつ。部屋に入ると超黒ぉーっいギャル?があぐらをかいて座っていた。えっ?誰この子。私に気付いたその子もジロっと私を見た。
「あんた誰?ユーキなら今いないよ」
「え?あ、うん。っていうかあなたは誰なの?」
「あたし?彼女」
あ、彼女か。ってエエェ?この子が由輝の?っていうか超ギャルじゃん。2005-08-12 05:42:00 -
638:
◎
「で、あんた誰?」
小生意気に突っ掛かったような喋り方だ。
「由輝のおねえ。相川由里ってゆうんだけど」
「おねえ?ってことは、あっお姉さんですか?あの、えっとスイマセン。あたしまた浮気かと思って」
さっきのぶっきらぼうな態度とは一転、全く逆に敬語で話し始めた。分かりやすい子だなぁホントに。由輝とそっくり。2005-08-12 05:47:00 -
639:
名無しさん
続き気になる!まだかな?
2005-08-13 01:23:00 -
640:
名無しさん
まだ
2005-08-14 01:27:00 -
641:
名無しさん
はよせーや
2005-08-14 15:45:00 -
642:
名無しさん
あげとくぅ?早く書いて欲しいなぁ?
2005-08-15 12:11:00 -
643:
かな
楽しみにまってまぁぁす?(*ゝε0*)
2005-08-17 05:33:00 -
644:
◎
書いていきます?
2005-08-17 21:56:00 -
645:
◎
「そうなんだー。ごめんね。金曜日までいることになっちゃって」
私がそう言うとさっきまであぐらをかいていた由輝の彼女はそそくさと正座して慌てていた。
「付き合ってどのくらいなの?」
「今で三週間です」
三週間かぁ・・・まぁ由輝のことだし何人かいるうちの一人なんだろう。2005-08-17 22:04:00 -
646:
◎
「私あすかって言うんですー。お姉さんに聞きたいんですけど由輝ってDJやってるじゃないですかー。だから女に超モテるんですよー。私って彼女なのかなー?って不安でー」
語尾がのびまくりの話し方で私に聞いてきた。内心、知らないよそんなのって感じでできれば早く帰ってほしかったけど、女の子はそういうことが最大な悩みなんだろうなぁって思うと、ほっておけなかった。
「うーん?分かんないけどあすかちゃんは由輝がDJやってるからカッコイイって思ってない?女の子にモテてるからとか。由輝がただのボンクラだったりしても好き?」2005-08-17 22:12:00 -
647:
◎
「ボンクラかぁー。でもたしかに私DJしてる時の由輝好きなんですよねー。初めっから遊ばれてるかもって分かってたんですけど家とかも簡単に入れてくれるし鍵もくれたから彼女なのかな?って。でも何回かここに女がいたりとかして私だけじゃないんだなぁって分かったんですよー。でもモテるからしかたないなぁって。許しちゃうんですよねー」
バカだなぁこの子も。
「それっておかしいって思わない?許すも許さないも由輝が謝ったりした?してないでしょ?姉の私がこんなこと言うのは変だけどやめた方がいいよ。それでも好きなら他の子と同じ2005-08-17 22:21:00 -
648:
◎
じゃダメだよ。たくさんいる周りの女の子と同じじゃいつまでたってもそこからは抜け出せないしさ。由輝も若いしバカだしね。何か心を揺らすもんがなかったら変われないと思うよ」
私は長々と話した。
真剣な顔で聞くあすかちゃんの目は気のせいかもしれないけど少しうるんでいるように見えた。
「そうですよね・・・あの、ありがとうございました。今日は私帰ります。おじゃましました」
そう言うとあすかちゃんは部屋から出て行った。あーあ変なこと言っちゃったかなぁ・・・2005-08-17 22:27:00 -
649:
◎
それからすぐに由輝が帰ってきた。
「あすかって子来てたよー。っていうかアンタ女泣かせすぎなんじゃないの?女の子は大事にしてあげないと」
私がそう言うとだるそうな顔をして寝転んだ。
「あすかが何か言ってたの?あいつダルイんだよ。鍵も返してくんないしさ。姉ちゃん返してもらってくれたら良かったのに。女はダリーよマジ」2005-08-17 22:33:00 -
650:
名無しさん
かこー
2005-08-19 04:09:00