小説掲示板『あの夏を もう一度』のスレッド詳細|夜遊びweb関西版

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『あの夏を もう一度』

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  • 1:

    ◆/fmXna4sZY

    耳をすませば 今も聞こえてくる
    あの日の 波の音
    指の隙間から 零れ落ちる砂のように…

    いつか、消えてしまうの?

    2006-05-22 04:35:00
  • 2:

    ◆/fmXna4sZY

    「ごめん、他に好きな人が出来た…」

    三年間付き合っていた彼氏に、あっさりとそう言われた一ヵ月前。あたしは、フラれてしまった。
    『好きな人… 誰?』
    「泉の…知らない人。」 『どんな人?』

    2006-05-22 04:50:00
  • 3:

    ◆/fmXna4sZY

    「弱くて…なんか…さ、守ってやりたくなるんだ」   
    遠回しに、自分とは違う、そう言われている気がした。
    『…そっか、分かった。圭吾が決めたんなら仕方ないよ。ちゃんと大事にしてあげなよ。』
    「泉…… ほんとごめん」『今度、彼女紹介してね。圭吾のある事ない事吹き込んどくから。』
    「えっ… ちょ、それだけは勘弁してっ!」

    2006-05-22 05:12:00
  • 4:

    ◆/fmXna4sZY

    『あはは、冗談に決まってるじゃん。まぁ、紹介くらいはしてよね。付き合いが長い《友達》として。』 「なんだ…冗談かよ。ってか、まだ付き合ってないけどさ。もし、うまくいったら一番に紹介するよ」  『うん、了解。じゃあ、あたしはそろそろ行くから。あ、今までありがとね!』

    「……ぇ…な」
    『え?何?』
    「やっぱ、泉は強ぇな…。俺こそ、ありがとな。お前なら幸せになれるよ。」

    2006-05-22 05:24:00
  • 5:

    ◆/fmXna4sZY

    『…ははっ、ありがと。圭吾も今度こそ幸せになりなよ。じゃあ、また連絡して。とりあえず元気でね。』   
    バタン――― 。
    車のドアを勢い良く閉めた。三年間の終止符は、こんなにも呆気なく打たれる。ププッー クラクションを鳴らして、軽快に走りだした車。その助手席は、昨日まであたしの指定席だったはずなのに…

    あたしは、どうして笑えてるんだろう?

    2006-05-22 05:38:00
  • 6:

    ◆/fmXna4sZY

    圭吾とは、友人を通じて学生の頃に知り合い、お互いに一目惚れをした。共通の音楽の趣味もあり、「なぁ…一緒にイベントに行かない?」彼のその一言で、あたし達は始まった――  三年間の月日は、思い返せばあっという間で、彼の前で一度も涙を見せなかったあたしは《強い女》
    そうレッテルを貼られ、こうして幕を閉ざれる‥     
    『…なぁーにが、幸せになれるよ。あたしの三年間を返せっつーの。はぁ…』

    もうすぐまた【夏】がやってくる。一枚一枚服が薄くなる度に、ムキだしになりそうで嫌なこの季節――…

    2006-05-22 12:13:00
  • 7:

    ◆/fmXna4sZY

    今日で、あれから一ヵ月が経つ。意外と早くに立ち直れたあたしは、やっぱり 《強い女》…なのかな。    
    カンカンカン―― マンションの階段をゆっくりと登る。 ‥と、駐車場に目についた一台の車。『…また、かぁ……』状況を察して、ノブを回す前に、廊下を引き戻しかけた。
    カチャ――「…いづみ?どうしたのよ?何処行くの?」『あ、ただいま…』
    開いたドアからは、やっぱりタバコの匂い。うちは、禁煙なのに――…   
    「入りなさいよ。あんたの好きな【ra・mand】のケーキ持ってきてくださってるのよぉ。」

    2006-05-22 12:26:00
  • 8:

    ◆/fmXna4sZY

    『……いいよ』
    「へんな子ね。なに遠慮してるの?あんたの家なのに。」
    『…あたしの家じゃないよ。ママと、お金出してくれてるあの人の家でしょ。』「…ちょ、いづみ!」     
    カンカンカン――― ママとパパが離婚してから、約3年が経つ。仲が良くて有名だったうちの家族は、パパが背負った借金が原因で‥ ぐちゃぐちゃになった。 
    3年前、全てが信じれなくなっていた頃、圭吾に出会ってあたしは救われたんだ

    2006-05-22 12:40:00
  • 9:

    ◆/fmXna4sZY

    パパと離婚して、半年前、年下の彼氏が出来たママは、当時よりだいぶ若返った。パパと離婚した当時は、本当に、一気に老け込んでしまった気がしてたから‥

    ママの新しい恋人は、家に来る度にいつも、あたしのお気に入りの駅前のケーキ屋さんでケーキを買ってきてくれる。 

    でも、そんなもん 欲しくない。

    2006-05-22 12:49:00
  • 10:

    ◆/fmXna4sZY

    から… お金が欲しい。 お金があったら、家を出れるのに。あたしが、あの場所にいなくてすむのに。

    風俗でも、いこうかな…  
     
    「…あっ、泉ちゃぁ〜ん。こっちこっち!何してんの?こっちおいでよ〜!」 『あれ?伊織…』

    2006-05-22 12:57:00
  • 11:

    ◆/fmXna4sZY

    「あはっ、久々じゃん〜。こんなとこでなぁにしてんの!?」『いや…それは、こっちのセリフ。あんたこっち戻ってきてたの?』 「ん…一週間前にねっ。」  
    【伊織】は、学生の頃、同じサークルだった男友達。天真爛漫な性格で、男が苦手だったあたしでも、自然と仲良くなれた。だけど、大学を卒業する間際で、急に引っ越していった。居場所も分からない。連絡も取れないまま、約二年。
    こんなトコでまた再会するなんて…      

    『あんた…一体何処にいたの?急にいなくなってみんなすっごく心配してたよ』

    2006-05-22 13:08:00
  • 12:

    ◆/fmXna4sZY

    本当に、あたしも圭吾も、心配してたのに…   
    「あはっ、ごめんなぁ。ちょっと家の事情で一人フラリ旅ぃ〜みたぃな。」
    『は…?フラリ旅?』  「っつーのは、冗談でぇ。…笑 女のケツ追っ掛けてた。で、フラれてシッポまいて帰ってきたってわけ。俺ってカッコ悪りぃ〜。」  
    ・・・なんだそりゃ。女?そんな話、全く知らなかったし…。
    「そういや泉、お前、圭吾とはうまくいってんのっ?アイツ元気〜?」

    2006-05-22 13:24:00
  • 13:

    ◆/fmXna4sZY

    『…圭吾とは…別れたよ』「へっ? ……マジで?言ってんの?いつ?」
    『一ヵ月前。他に好きな子が出来たんだってさ。』 「マジか…よ、アイツ…」『ははっ、もう立ち直ってるから大丈夫!今も、普通に友達だしね。番号変わってないから圭吾に連絡してあげてよ。伊織の事、だいぶ心配してたから』
    「……おう。あ、泉の番号も教えてよ。俺、携帯変わってるから。」
    『アンタ…もうブッチとかしないでよね?それなら、いいよ。教えても。』
    「ははっ、大丈夫ぅ〜。もう、ずっとこっちにいるつもりだから。泉ちゃんっ、これからもよろしくね♪」

    2006-05-22 13:38:00
  • 14:

    ◆/fmXna4sZY

    『調子いいやつっ……』      

    圭吾、良かったね?伊織、戻って来てたよ。アンタが自分を責めてきた日々が、やっと報われるね――…  

    2006-05-22 13:44:00
  • 15:

    ◆/fmXna4sZY

    伊織と別れて、あたしは一人、海に来ていた。まだ、季節は5月… 夏が近づいてるといっても、海に人は少ない。
    ザザン… だけど、この時期の海を見るのが一番落ち着く。もうすぐやってくる季節を目前に、それを待つように波は優しく、行ったり来たりする。

    だけど今日は、潮の香りになんだか切なくなった…

    2006-05-22 13:54:00
  • 16:

    ◆/fmXna4sZY

    あたしの目に映る、一人の人影。太陽の光が反射して…… 良く、見えない。   
    「あれ…?何?サーフィン?ヤバイ!超カッコイイ」「ほんとだぁ… あ、立った!すごいっ!ひゃ〜ぁ…寒くないのかなぁ。」    

    キラキラ眩しい光の中、海の中で風をきる君に、目を奪われてしまった―― 

    2006-05-22 14:17:00
  • 17:

    ◆/fmXna4sZY

    「あ……れ?ねぇねぇ横にいた女の人がいないよぉ」「あ、海……!!」

    体が、勝手に動いてた。気付けば、走って堤防を駆け降りあたしは靴を脱ぎ捨て海に入ってた。バシャッ―…   
    どんどん遠くに向かって、歩いていく。服が重たくなって、自然とペースが落ちる。だけど、何故だろう…足が止まらない――

    2006-05-22 14:30:00
  • 18:

    ◆/fmXna4sZY

    バシャバシャッ―… もう少し…もう少しで……バシャ… 
    「ひゃ・・・あの人、何やってんの?ぶつかるんじゃ…」「あっ…ヤバイ!!」   

    ザパーン――――ッ ………

    2006-05-22 14:39:00
  • 19:

    ◆/fmXna4sZY

    「…ッップハァ…!死にてーのか…ッバカヤローっ!!」

    え―――… 思わず、目を掠めてしまった。海水で濡れた髪の毛を掻き上げながら叫ぶ、君の顔を見た。 『あ…ごめん…なさい』 「………」

    足がすくんで、動けなかった。自分のした行動に、急に恐怖が湧いてくる…

    2006-05-22 14:52:00
  • 20:

    ◆/fmXna4sZY

    足がガクガクする… 震えが止まらない……    
    「…ケガは?」 
    『え…』
    「ケガはねぇの?」
    『あ、大丈夫… っ…』 「何?ケガしてんの?」 裸足で歩いてきたから、石で足を切ったみたい‥‥

    2006-05-22 14:58:00
  • 21:

    ◆/fmXna4sZY

    「……ほら、掴まれ。」 『え…あ、いーですっ。本当に』「…ったく。ほら」『えっ……!!』       
    信じられない・・・ 『ちょっ本当に、離して…!!大丈夫だから!』

    「また、死にてーの?」

    2006-05-22 15:11:00
  • 22:

    ◆/fmXna4sZY

    『……』
    足が痛くて… 恐怖で、動けない… 
    黙り込むあたしを背負ってそのまま歩き始めた。あたし、何してんだろ…   「ボード引っ張るから、落ちないよーにちゃんと掴まってて」『うん…』       
     
    初めて触れた体からは、海の香りがしたんだ――…

    2006-05-22 15:20:00
  • 23:

    ◆/fmXna4sZY

    「で、なんであんなトコにいたの?…俺がいるの見えなかった?」
    『見えてた…』
    浜辺について、サーフボードに座り込む彼に、濡れた服を絞りながら答える。 「じゃ…なんで?」   溜め息混じりに、また質問を繰り返される。
    『体が勝手に…動いてた』    
    だって、本当の事だから。

    2006-05-22 15:26:00
  • 24:

    ◆/fmXna4sZY

    「…名前は?」『え…?』「アンタの名前。俺は、 瀬名 柊二。」
    『あ… あたしは… 泉』 「泉は、海が好きなん?」『好き…海は、落ち着くから。いつも全てを、忘れさせてくれる』
    気付けば、太陽は夕日に変わり、夕日は、地平線の向こうで広い海に沈みかけていた。深い紅が、深い青に溶け込んでいく…

    なんて情緒溢れるんだろう

    2006-05-22 15:40:00
  • 25:

    ◆/fmXna4sZY

    「あんま、危ねー事すんなよ。命は粗末にするもんじゃないからな。」
    『…そうだね。』
    「あ、夕日…沈んだ。日暮れると冷えてくるから、気付けて帰れよ。こっから家近いの?」
    『ん…近いよ。じゃあ、今日は本当にごめんなさい。じゃあ、また』
    あたしは立ち上がり、堤防に向かって歩き始めた。

    2006-05-22 15:49:00
  • 26:

    ◆/fmXna4sZY

    「いづみ!夏が終わるまでは俺、毎日ここにいんだ。忘れたい事あんなら、顔出しに来いよ」
    後ろを振り返ると、柊二が笑顔でそう言った。
    『ありがと…また来るね』   

    柊二、聞こえる?この日の【言葉】の重みが、あたし今になって分かるんだ…

    2006-05-22 15:58:00
  • 27:

    名無しさん

    2006-05-22 15:59:00
  • 28:

    名無しさん

    2006-05-22 16:00:00
  • 29:

    名無しさん

    2006-05-22 21:29:00
  • 30:

    美雨

    おもしろくなりそぉ??続き期待してます?

    2006-05-22 22:56:00
  • 31:

    名無しさん

    あげ?あげ

    2006-05-23 06:45:00
  • 32:

    ◆/fmXna4sZY

    美雨サン、ありがとうございます★良ければ完結までお付き合い下さい(*^_^*)
    32サン、ありがとうございます★

    2006-05-23 15:00:00
  • 33:

    ◆/fmXna4sZY

    なんだ、まだいたんだ… 「あれ、いづみ帰ってきてたの?おかえりぃー」  『ただいま…』
    嫌なニオイ。鼻が、ムズムズする。キライ―――…     
    「泉ちゃん、こんばんは。おかえりなさい」
    『あ…こんばんは…』  テレビの音が鳴り響くリビングの中から、ひょこっと顔を出してきたこの人― この人が、ママの年下の彼氏。長身で細身なスタイルに、屈託のない笑顔は、33歳という実年齢よりも、数倍若く見える。

    2006-05-23 15:09:00
  • 34:

    ◆/fmXna4sZY

    「お邪魔してます。良かったらケーキ買ってきてあるから、食べないかな?」 愛想のないあたしにニッコリと笑いかけるこの人は、悪い人ではないと思う。 だけど… 
    『今お腹すいてないから…あとで頂きます。』   「ちょ…いづみ」
    タンタンタンタン― カチャッバタン――

    だけど、 パパがあまりに可哀相で――…

    2006-05-23 15:18:00
  • 35:

    ◆/fmXna4sZY

    パパとママの離婚した原因は、パパが作った借金。 いや、正確には… パパが覆い被ってしまった借金。

    パパは、建設会社の社長をしてた。そんなパパには、若い頃から付き合いがある大親友がいた。ある日、その親友に告げられる。  「なぁ俺、リストラにあっちまった…このご時世にだよ?俺…これからどうしたらいいかっ……うっ…」 勤めていた会社からリストラにあったという彼に、パパは落ち着いて言った。 「なら、うちの会社で働けばいい。ちょうど人が足りてなかったとこなんだよ」笑顔に話すパパに、彼は、泣きながら喜び感謝した。  
    その後、真面目に働く彼の姿を見て…パパは言う。 「竹下、お前には20年来の信頼がある。私一人じゃ管理しきれない…会社の資産管理をお前に任せたい。」

    2006-05-23 15:42:00
  • 36:

    ◆/fmXna4sZY

    「資産管理…?俺が…?でも、あそこは他の従業員だって立ち入り禁止だろ?」「金庫か、大丈夫だよ。お前には信用があるからな」「……そうか、分かった。じゃあ、明日からは責任持って管理するよ。」


    その日、パパは、竹下さんに金庫の鍵を預けた。まさか、信頼の厚い彼に裏切られるなんて思ってもみなかった事だろう――――…

    2006-05-26 06:07:00
  • 37:

    ◆/fmXna4sZY

    パパとママの離婚が決まったのは、その日から、半年も経たないうちの事。    
    竹下さんは、もともと自分の背負っていた多額の借金の保証人をパパに頼んだ。そしてその一ヵ月後…  会社の金庫から、お金を持ち出したまま音信不通となってしまう――――  


    【信用】って、本当に当てにならない。所詮は、みんな他人だもんね。ママも、ママだよ。ショックとストレスで入院までしたパパを見捨てて、アッサリ離婚するなんて……

    2006-05-26 06:21:00
  • 38:

    ◆/fmXna4sZY

    圭吾だって伊織だって、人はみーんな簡単に他人を裏切れるんだ。――そんなの良く分かってる。


    だから、あたしは今こうしてこの場所に… 立っていられるのかも知れない。 

    2006-05-26 06:32:00
  • 39:

    ◆/fmXna4sZY

    ♪♪着信 伊織♪♪

    「あれ?伊織…?」
    伊織と再会してから、三日後。寝呆けつつディスプレイを覗くと、早速の着信に思わず目が覚めた。
    「もしもし…どした?」 《あ、泉ちん?何してんのさっ?遊ぼーぜぃっ!!》

    2006-05-26 06:41:00
  • 40:

    ◆/fmXna4sZY

    朝から疲れるそのテンションに、あたしは開きかけてた目を再び閉じた…   「…今何時?は?まだ六時じゃん。相変わらずあんたは人の迷惑考えないね…」《そんな堅い事言わないでさぁ〜!二時間後に迎え行くから用意しとけよんっ★じゃっまた後でなぁ!》 「…え?ちょっ…伊織!」

    プツップープープープー・・・   
    「はぁぁぁ…」
    伊織の性格は、昔からこんな感じ。末っ子のせいか、悪く言えば子供っぽくて自己中心的…。だけど、人なつっこっくてこう見えて意外と頼りになったりする。だから、憎めないんだ―。

    2006-05-26 06:58:00
  • 41:

    ◆/fmXna4sZY

    《いづみち〜ん!家の前に着いたよんっ!》
    『はいは〜い!…今出るからちょっと待っててぇ。』流行りの編みあげサンダルを履きながら、慌てて電話を切ると、勢い良く玄関のドアを閉めた。

    「ぐっもーにん!相変わらずやる気ねーじゃん!笑」マンションの下に止めてある車に近づくと、伊織がひょこっと顔を出す。
    『…なんでやる気出す必要があんの?眠いってば。』

    2006-05-26 07:10:00
  • 42:

    ◆/fmXna4sZY

    「いやいや…その格好でコンビニの前に座ってたら、完全にヤンキぃーだよ君。泉らしいけど。」
    『あ…コンビニ行きたい。とりあえずお腹すいたし』「……行くのかよ。笑」

    朝早くから急に呼び出されて、気合いなんて入れれるワケがない。伊織と遊ぶ時はたいがいこんな感じ。 スウェットの上下に、足元は常にスニーカー。まぁ、着替えるのが面倒臭かったからだけなんだけど…

    2006-05-26 07:20:00
  • 43:

    名無しさん

    2006-05-26 07:22:00
  • 44:

    ◆/fmXna4sZY

    「んじゃあ、いっちょ行きますか!泉、ちゃんと掴まっとけよ〜!」
    『飛ばしたら、即効帰るから。…寝起きにあんたの運転はキツイって』

    少しくせのある茶色い髪を手でくしゃくしゃさせながら、悪戯っぽく笑う伊織。チャームポイントの八重歯が、その整った顔立ちに、ギャップを作っている。     
    伊織と圭吾の間にあった出来事を、あたしが知るのはもう少し先の話―――…

    2006-05-26 08:54:00
  • 45:

    名無しさん

    ?

    2006-05-26 14:46:00
  • 46:

    ◆/fmXna4sZY

    『…で、どこに向かってるの?』
    コンビニに立ち寄って買った菓子パンを頬張りながら、ハンドル片手にタバコを吸う伊織に聞く。
    「ん、…懐かしいとこ。」『懐かしい?なに?』  「ま、着いてからのお楽しみじゃん。食べながらいい子にしてなさい。笑」  『……あっそ。』        
    懐かしい場所?
    あたし達の懐かしい場所って言ったらやっぱり――…

    2006-05-28 16:25:00
  • 47:

    ◆/fmXna4sZY

    「はいとうちゃーく!姫、足元にお気を付けてっ。」『…ん?あ、ごめん。ウトウトして……え・・?』

    …予想を反する目の前の光景に、ただ驚いた―――    

    『ココ…って圭吾の家?』なんで………

    2006-05-28 16:37:00
  • 48:

    ◆/fmXna4sZY

    「懐かしいだろ?昔はみんなで…しょっちゅう集まったよな。」
    伊織は、遠い記憶を思い出すように――‥反射する太陽の光を、眩しそうに目を細めた。
    『…圭吾に会ったの?』 「会ってないよ。」   『そう…』     

    【伊織と圭吾】。誰よりも仲が良かった二人の間に、修復のきかない━亀裂━が入ってしまったあの日。 あたしはただ悲しくて、 一人で海を眺めていたんだ。

    2006-05-28 17:35:00
  • 49:

    ◆/fmXna4sZY

    …懐かしい場所っていうから、てっきり学校かその近くの遊び場だと思ってたのに。  
    伊織と圭吾が顔合わすのも二年ぶり。昔は、良く三人でも遊んでたのにな…  なんだか今は、自分のいる立場にすごく緊張する。 「んじゃ、呼びますか。」『…え?あぁ、うん…。 ってか、大丈夫なの?』 「何が?」『圭吾の事…』「どしたの?泉が心配しなくてもいいよ。」
    伊織は、あたしの頭を軽くポンポンと叩いた。

    ピンポーン――

    2006-05-28 17:55:00
  • 50:

    ◆/fmXna4sZY

    ガチャ――
    「はい…え……いお…り」この時の圭吾の表情は、きっと忘れられない。伊織を見た時の、圭吾の表情は―  
    「圭吾、久しぶり」
    「…な…んで?ココ……お前今まで何処…に?」 
    「んーちょっとね。まぁ、色々あって。」

    2006-05-29 03:30:00
  • 51:

    ◆/fmXna4sZY

    「………あ…れ?泉…?」『あ…いや、さっき伊織に呼ばれてさ。……元気?一ヵ月ぶりだね。』

    一ヵ月ぶりに見た圭吾は、長かった髪を切って、前より垢抜けた気がした。 

    「ま、なんだし中で話そうよ。圭吾、今いける?」 「お…おう……」

    2006-05-29 03:35:00
  • 52:

    ◆/fmXna4sZY

    都内で一人暮らしをする圭吾の家――。1LDKのマンション。
    一ヵ月前までは、あたしも同じ【鍵】を持っていた。『…お邪魔します。』

    去年の誕生日に貰った、赤と青のリボンのついた二つお揃いの鍵。そう、あたしと圭吾は大学を卒業してからココで同棲していた。   
    今はもう、“ただいま” じゃないけれど――…

    2006-05-29 03:46:00
  • 53:

    ◆/fmXna4sZY

    彼女と自分の違いを…痛感させられた気がしたんだ。


    「でさ、圭吾話出来る?」「お…おう」
    あたし達三人はとりあえずテーブルを囲んで腰を下ろし、あたしは一人、この緊迫したムードに落ち着きを取り戻せずにいた。

    2006-05-29 04:12:00
  • 54:

    ◆/fmXna4sZY

    「……実奈の事だけど」 「伊織っ…ごめんっ!!」   
    え――――??あたしは、目を疑った‥ 
    伊織の言葉を遮るように放った圭吾の言葉。それと同時に、彼は床に両手と頭を付け土下座していた。
    『ちょ…圭……吾?』  あたしは、何が何だか分からなくて… 
    「伊織っ…ほんとに、悪かった。俺が、俺が、あんな事しなきゃ……」

    2006-05-30 19:22:00
  • 55:

    ◆/fmXna4sZY

    『伊織…何?あんた達二年前に…何があったの?』 あたしの言葉に、黙って圭吾の姿を見つめていた伊織が、ゆっくりと口を開いた。

    「圭吾、顔あげろよ…」 「……伊…織?」
    「土下座なんてすんなよ。謝るのは…俺の方だよ。」    

    2006-05-30 19:31:00
  • 56:

    ◆/fmXna4sZY

    伊織が語りだした、二年前の真実。あたしが何度圭吾に聞いても、彼の口からは告げられなかった…過去。
        
    伊織には、当時、彼女がいた。“実奈ちゃん”といって、あたし達より一つ下の同じ大学の女の子だった。伊織は、こんな性格のくせに意外と照れ屋なトコロがあって… あたし達にすらなかなか彼女である“実奈ちゃん”を紹介してくれなかった。
    初めて彼女を見たのは、学園祭の日――。伊織の横で楽しそうに笑う女の子を見て、一目で実奈ちゃんだと分かった。それから、学校でもちょくちょく彼女を見かけたけど、人一倍…人見知りが激しいあたしは、一回も声をかけれなかった。

    2006-05-30 19:44:00
  • 57:

    ◆/fmXna4sZY

    特別目立つ感じの子では無かったけれど、伊織と一緒にいる時の彼女は、いつもニコニコ笑っていて…女のあたしから見ても、とても可愛いと思ったんだ。


    ある日、圭吾から一本の電話が鳴った。内容は、伊織の彼女と三人で遊ぶから、あたしも来て欲しいという話だった。だけど、あいにく今からバイトに行かないといけなかったあたしは、その誘いを断った――

    2006-05-30 19:55:00
  • 58:

    ◆/fmXna4sZY

    そこから、全ては変わっていってしまったんだ…

    その日、帰ってきた圭吾に電話で伊織の彼女の事を聞いても、圭吾は「ん、まぁ普通だった」としか、言わなかった。あたしも、あえてそれ以上は触れなかった。
    それから、数か月が過ぎた――。ある日の、放課後だった。「泉…!大変!!圭吾と伊織が!!」共通の友人が慌ててあたしの元に、駆け寄ってくる。『えっ…何?どしたの?』「いいから!!早く来て…!!」 ただならぬ様子の友人に無理矢理腕を引っ張られて、あたしはそのまま‥何処かへ連れていかれた。

    2006-05-31 00:34:00
  • 59:

    ◆/fmXna4sZY

    連れていかれた場所は、学校の裏庭。何やら、騒がしい声が聞こえてくる。  え―――…? 
    『ちょ…二人共、何やってんの!?やめなよ!!』 駆け寄るあたしの目に映った光景は、男二人の取っ組み合い。圭吾と伊織…  「…っ前に、何が分かんだよ!!」バシッ――「……前の為に‥言ってんだろ!!!」ガンッ―――
    『やめてってばぁ…!!圭吾!!伊織っ…!!』    

    今考えれば、あの時あたしがバイトを休んで行っていれば。ううん、圭吾に話を聞いていれば… あの日の二人の気持ちを、少しは理解出来たのかな―――…?.

    2006-05-31 00:49:00
  • 60:

    ◆/fmXna4sZY

    そのまま、喧嘩の原因が何か分からないまま…その日は三人別々に帰った。

    伊織が姿を消したのは、その日から三日後の事だった。卒業式までは、すでに一ヵ月をきっていた。
    そのまま音信不通になり居場所も、何をしているのかも、分からなくなった。…風の噂で、彼女とは別れたんだと聞いた。それだけだった。     
    それから圭吾は、毎日自分を責めた。伊織がいなくなったのは、自分のせいだと。あの日の喧嘩が原因――…? あたしには、分からなかったけれど。 .

    2006-05-31 01:02:00
  • 61:

    ◆/fmXna4sZY

    突然いなくなった伊織。 自分を責めてきた、圭吾。理由を知らずに、圭吾の傍に居続けたあたし―。  二年前の真実は…ドコに?    

    「伊…織、お前は悪くねーだろ?だって、お前は…本当はいづ……」「圭吾!」「…え?」「いいから…」「もう、いいから。だから今日、……ココに泉を呼んだんだよ。」         
    『え――?何…?』 
    突然、二人と同時に目が合う。あたし…?

    2006-05-31 01:19:00
  • 62:

    ◆/fmXna4sZY

    「泉……今から、俺が話す事聞いて欲しい。」   伊織が、真剣な表情を浮かべる。緊迫した空気が、その場を張り詰める。
    『…分かった。何?』 

    「泉、“実奈”は…分かるよな?大学ん時に俺が付き合ってた…女。」
    『ん…分かるよ。何度か、一緒にいるトコ見かけたから。』

    2006-05-31 03:32:00
  • 63:

    ◆/fmXna4sZY

    「アイツは…さ、俺が全てを嫌になってた時期に、俺を…救ってくれたんだ。 実奈と……出会ったのは、クラブのイベントだった」   

    「ねぇねぇ、こんなトコで何してんのぉー?」
    「…っえ?私…ですか?」酒にもいい感じに酔ってた俺は、仲間からはぐれて、一人騒がしいフロアをうろついていた。そして、たまたま隅の階段に座り込んでいた一人の女の子に、声をかけた。    
    「そそっ。君だよ〜君。」「あっ……えっと、私…こういう場所に来るの初めてで…?あの、えっと…」

    2006-05-31 03:46:00
  • 64:

    ◆/fmXna4sZY

    真面目そうな女…       
    実奈への第一印象は、こんな感じだった。     それから、少し階段で話し込んでいると、同じ大学だという事が判明。ノリで携帯番号を交換して、俺はその場を離れた。

    【さっきは、話してくれてありがとう…。伊織くんって、なんだかお兄ちゃんみたいだね。 FROM.実奈】  
    その場の社交辞令かと思いきや、意外にも…メールは実奈の方から先にきた。

    2006-05-31 03:53:00
  • 65:

    ◆/fmXna4sZY

    【…お兄ちゃんかぁ。俺は今妹より、慰めてくれる女が欲しいけど(>_

    2006-05-31 04:10:00
  • 66:

    ◆/fmXna4sZY

    「会うの二回目だけど…。ほんと……に、いいの?」「……う…ん。」
    「分かった……」      

    俺と実奈は、出会って二日目で、そういう関係になった――。      

    2006-05-31 04:27:00
  • 67:

    ◆/fmXna4sZY

    「嫌な事…少しは、忘れられそう?」
    「……え!?あ、うん…実奈のおかげでね。」
    「実奈…伊織くんを、支えていきたい。誰かの代わりでも構わない…だから…」   
    昨日会ったばかりの俺なんかの為にそこまでしてくれて… 目の前でそんな事言われたら、断る男っているのかなぁ?
    ちが…う 本当はさ、彼女の今にも零れ落ちそうな涙を見てしまったから――

    2006-05-31 04:36:00
  • 68:

    ◆/fmXna4sZY

    「実奈ありがとう…こんな俺で良かったらさ、これからも傍にいてやってよ?」「……ほん…と?」
    「ほんとだよ…おいで。」  

    彼女を抱き締める。力一杯包み込む。この腕の中に、誰かの影を 重ねながら… 

    2006-05-31 04:42:00
  • 69:

    ◆/fmXna4sZY

    「…い…おり…くっ…あっ…」「実奈……ハァ…っ」 「あっ…ダメッ……!!」  

    彼女を抱いた夜、俺の心には罪悪感と、自分の気持ちを偽った虚しさだけが…  
    ただ、残っていた――。

    2006-05-31 04:48:00
  • 70:

    名無しさん

    2006-05-31 04:50:00
  • 71:

    名無しさん

    2006-05-31 09:37:00
  • 72:

    名無しさん

    ???

    2006-06-01 02:32:00
  • 73:

    ◆/fmXna4sZY

    「おっす!伊織!あれ…お前何?ちょっと痩せた?」「……圭吾。」 

    学校に行く途中、背後から圭吾に声をかけられた。 体がダルイ―――…。  「お前…目の下の隈すげぇよ?どした?寝不足か?」「いや…」
       
    ほっといてくれよ… 今は誰とも話したくないんだ。.

    2006-06-08 17:28:00
  • 74:

    ◆/fmXna4sZY

    「……何でもないよ。」 「えっ……伊織?」     
    体のダルさは、きっと昨晩した【薬】のせいだ。

    そう… 俺は、一ヵ月前に興味本位で手を出したドラッグを、―――今だに止められないでいた。

    2006-06-08 17:35:00
  • 75:

    ◆/fmXna4sZY

    『あっ圭吾と伊織じゃん。何してんの?おはよ!』 「あ……泉!うっす!」

    理由は、一つ。ただ、どうしても消せない自分の気持ちを 押し殺す為に――…

    2006-06-08 18:07:00
  • 76:

    ◆/fmXna4sZY

    『あ、そうだ。圭吾、今日うち来るよね?ママが、買い物行きたいから車出して欲しいって……』
    「ははっ、いーよ。なんなら俺、泉と泉ママの専属タクシーになろっかな?」 『何言ってんの…』      
    いつまで、こんな日々が続くんだろう―――

    『あれ…伊織?どしたの?その目の隈……』

    2006-06-08 18:17:00
  • 77:

    ◆/fmXna4sZY

    「あはっ…泉ちんおはよ。あぁコレ?単なる寝不足〜。徹夜でゲームしてた。」『…徹夜でゲーム?あんたも暇人だね〜。伊織ファンが泣くよ。』
    「あはは、俺ってつくづく女泣かせ?笑」
    『馬鹿じゃん……』    
       
    そう言って、泉は呆れたように笑う。俺なんて、きっと彼女にとって今までもこれからも、一生“男友達”でしかないんだ。 .

    2006-06-08 18:31:00
  • 78:

    ◆/fmXna4sZY

    サークルの新歓コンパで泉に初めて会った日、
    《…初めまして。朝倉 泉です。》
    一人一人の挨拶が始まり、俺は何気なく彼女を見た。《朝倉さん美人だね〜。好きなタイプはぁ!?》  遊び人風のノリのいい先輩が、一際目立つ彼女に質問を投げ掛ける。
    《タイプとか…別にないです。興味ないし。》     
    そっけなく答えて、すぐさま席に腰掛ける泉。あまりの無愛想さに“なんだこの女…?”―― 第一印象はそんな感じだった。

    2006-06-08 18:48:00
  • 79:

    ◆/fmXna4sZY

    サークルを通じて次第に仲良くなって、泉は思ってたより話しやすいヤツで… 《あ、伊織!放課後ひま?今日、圭吾とイベント行くんだけど伊織も来てよ!》もともと圭吾と仲の良かった俺と、女の…泉。気付いたら俺らはいつも、三人で行動するようになっていた。週末は毎週三人で、イベントに行ったり飲みに行ったりしてた。


    圭吾と泉が付き合い始めたと聞いたのはそれから半年が過ぎた頃――。俺は、正直信じられなかった。  いや、信じたくなかったんだ… 俺は、自分でも気付かないうちに泉の事を好きになっていた。

    2006-06-08 19:08:00
  • 80:

    ◆/fmXna4sZY

    だけど、泉は圭吾の彼女。圭吾は、俺の親友だから…この気持ちは、伝える事は出来ない。こんな疾しい気持ちは、早く消し去らなきゃいけないんだ…
    《あ、伊織っ…!》
    《……え、泉?どした?》《今日は、圭吾の家に行くらしいから…帰り校門で!また放課後にねっ。》

    全てが、どうでも良くなるんだよ。俺なんて、いない方が二人の為だから‥‥さ.

    2006-06-08 20:39:00
  • 81:

    ◆/fmXna4sZY

    その夜、二人の誘いを断りクラブに行った俺は、先輩からたまたま貰った薬に初めて手を付けた。こんなの自分の弱さから逃げてるだけだよな… だけど、こうするしかなかった。彼女を見るのが辛かった。これ以上、三人でいるのが耐えられなかったんだ―――      

    薬は、全てを忘れさせてくれた…… 

    2006-06-08 20:50:00
  • 82:

    ◆/fmXna4sZY

    《伊織くんって…なんだかお兄ちゃんみたいだね!》  
    俺の運命を変える【実奈】との出会いだった―――    


    実奈と付き合い初めて、俺は救われた。泉に対する想いも、実奈が隣にいてくれるおかげで…実奈を抱いている間だけは…… 思い込まないですんだ。薬の数も減っていった。だけど今考えれば、俺は最低な事をしていたんだ… と思う。

    2006-06-08 21:11:00
  • 83:

    ◆/fmXna4sZY

    実奈は、俺に他に想う女がいる事を、初めから知っていた。それでもいいから傍にいたい――と言った。 俺は、実奈が大切だった。俺を救ってくれた女を、失いたくない…。だけど、それは恋愛とは別の感情。いつの間にか実奈の事を、本当の妹のように……思っていたのかも知れない。   
      
    だから、あの日、実奈から“妊娠した”と告げられた日――。俺は、何も言う事が出来なかった。
    “おめでとう”とも“結婚しよう”とも、 不安げに呟いた彼女の肩を抱く事さえ…… 俺には、出来なかったんだ。

    2006-06-08 21:23:00
  • 84:

    ◆/fmXna4sZY

    圭吾と泉に…全て話そうと、実奈を連れて、初めて二人を誘った。だけど、泉は来なかった。         
    圭吾は、俺の話を黙って聞いていた。――そして、ゆっくりと口を開く。
    「…で、伊織は、どうする気なんだ?結婚するの?」「……結…婚は、俺らまだ付き合って間もないし…」「―――は?じゃあ、子供どーするんだよ?実奈ちゃんのお腹にいるんだろ?」「それ…は、俺も実奈も…そんなつもりじゃなかった……から。」
    バンッッ――――
    「お前いい加減にしろよ!自分の女目の前にして…良くそんな事言えるな。じゃあ、何の為に俺を呼んだんだ?堕ろす金でも貸してって言いにきたのか!?ふざけんなっ…!!」

    2006-06-08 21:36:00
  • 85:

    ◆/fmXna4sZY

    圭吾は、テーブルを思い切り叩きつけると、俺を睨み付け店を出て行った。  「伊織…く…大丈…夫?」「………」


    俺だって、どーしたらいいか分かんねーんだよ。避妊を…してなかったわけじゃないんだ。実奈を、嫌いなワケでもない。ただ、展開が余りに早すぎて…
    ガキな俺は、また弱さに逃げちまいそーなんだよ‥‥。

    2006-06-08 21:43:00
  • 86:

    ◆/fmXna4sZY

    三日後、圭吾に呼び出された俺は、一人校舎裏に迎う。 
    「……で、お前はどーする気なんだ?」
    「この間も言った通り…俺も実奈も、結婚なんてまだ早いって思ってる。」
    「実奈ちゃんが…ハッキリそう言ったのか?子供については何って言ってるんだよ?」
    「子供は………生みたいって。」

    2006-06-08 21:48:00
  • 87:

    ◆/fmXna4sZY

    実奈は、自分のお腹に宿った生命を殺す事なんて出来ない。一人でも、育てていきたいんだ…と言った。     
    「伊織は…どう受け止めるつもりなんだ?」
    「………俺は」
    だけど俺には…… ずっとずっと想ってる奴が―――‥     
    「圭吾……実は、俺…」

    2006-06-08 21:54:00
  • 88:

    ◆/fmXna4sZY

    「……伊織。お前、薬は?もうやってないのか?」 「え―――?なん・・で」   
    驚いた。まさか、圭吾が知っていたなんて。泉を忘れる為にやってた俺の、俺だけの虚しい逃げ道……     
    「薬を止めれたのって、実奈ちゃんのおかげだろ?大切に…してやれよ。彼女も、お腹の中の子供も。」    
    圭吾… お前には…  

    2006-06-08 22:05:00
  • 89:

    ◆/fmXna4sZY

    お前だけには…
    一生、俺の気持ちなんてわかんねぇよ………       

    「…子供の事は、俺と実奈でもう決めた事だから。」「は……?何言ってんの?じゃあ、実奈ちゃん一人で育ってるって事か?」  「実奈も…ちゃんと納得してる。もう話はつい――」バシンッッ―――――    「ふざけんなっ……!!!伊織、お前がそんなやつだったとは思わなかったよ…!!」

    2006-06-08 22:13:00
  • 90:

    ◆/fmXna4sZY

    「………」
    「お前…最低だよ。同じ男として信じらんねぇ…。」  

    お前には何が分かるんだ?   

    2006-06-08 22:20:00
  • 91:

    ◆/fmXna4sZY



    俺になくてお前にあるモノ一体何なんだよ……………

    2006-06-08 22:21:00
  • 92:

    ◆/fmXna4sZY

    「ふざけんなぁぁぁっ…!上等じゃねぇかぁ!!!」バキィッッッッ――――
    「……痛…って。ん…に、すんだよ…っ!!!お前がわりぃんだろーがぁ!!」バコンッッッッ―――
    「お前に……お前なんか…に…にが…分かんだよっ!」バキィンッッ――
    「俺はっ……お前の為を思って―――バシンッッ――」 「…っいってぇ。あぁー!もう何なんだよーっ…!」    

    2006-06-08 22:32:00
  • 93:

    ◆/fmXna4sZY



    そこから先の記憶は、あんまり覚えていない。
    ただ、いづみの叫び声がして俺と圭吾は正気に戻った。生傷が痛む顔で寝転がって空を見上げた――

    2006-06-08 22:33:00
  • 94:

    ◆/fmXna4sZY

    空は悲しい程に鮮やかで、今の俺には眩しくて、ゆっくりと目を閉じる。
       

    閉じる前に、隣を見ると圭吾を心配そうに見つめる彼女の姿がそこにあったんだ……   

    2006-06-08 22:40:00
  • 95:

    ◆/fmXna4sZY

    三日後、俺は二人の前から姿を消した。同時に、実奈もまた……俺の前から姿を消した。
    一通の手紙を残して。    

    【伊織くんへ。突然、いなくなったりしてごめんなさい。出会った頃から、伊織くんには他に好きな人がいる事、分かってました。だけど、一緒にいるうちにいつか実奈の事を好きになってくれれば… って思ってた。時々見せる、伊織くんの悲しそうな表情を見るのがつらかった。慰めてあげる事は簡単だけど、支えてあげられるのは、やっぱり実奈じゃないんだって…気付いたの。今までごめんなさい。一緒にいてくれて、ありがとう。実奈より。】 

    2006-06-08 22:52:00
  • 96:

    ◆/fmXna4sZY

    俺は………本当に、どうしようもねぇよ。軽い気持ちで声をかけた実奈を、こんなにも苦しめちまったんだ。

    俺は、実奈の居場所を学校で片っ端から聞き回った。実奈の友達から、今は実家に帰ってると聞く事が出来た。実家の場所は九州… 俺は、その日のうちにチケットを手配してすぐさま飛行機に乗り込んだ。      
    実奈、ごめんな…

    2006-06-08 22:58:00
  • 97:

    ◆/fmXna4sZY

    実奈の実家に着いてインターフォンを鳴らすと、中から実奈が出てきた―――。「い…おりく………?」 「実奈…ごめん。気持ち考えれないで……ごめんな。俺の事、恨んでるかも知れない…。だけど、もう一度やり直して欲しい。これからは一緒に……お腹の中の子供育てていきたい。」   
    俺の言い終わるのと同時に実奈の大きな目から、涙が零れた。

    「……伊織く…ほん…と…に…?」

    2006-06-08 23:07:00
  • 98:

    ◆/fmXna4sZY

    俺は、黙って彼女を抱き締めた。これからは、実奈だけを、俺達の子供を幸せにしてあげたい――――…     
    「ありが…とう。伊織…くん。実奈は、その言葉が聞けただけで……幸せだよ」   
    「…え?」

    腕の中にいる彼女の言葉に、一瞬疑問が浮かぶ。

    2006-06-08 23:12:00
  • 99:

    ◆/fmXna4sZY

    「実…奈?今の言葉って、どーいう意味……?」  少し黙り込んだ後、彼女はゆっくりと呟く。
    「赤ちゃんは……もういないの。こっちに戻ってきてからすぐ…に、流産してしまった……の。」


    頭が、真っ白になる。流産…? じゃあ、俺達の子供は もういないのか…?

    2006-06-08 23:16:00
  • 100:

    ◆/fmXna4sZY

    実奈の目からは、留まる事のない涙が、次々と頬を濡らしていた。
    「伊織く…ごめん…ね…」彼女は、俺のシャツを遠慮がちにキュッと…握る。   

    なんでお前が謝んだよ。なぁ、実奈……… お前は一人でどこまで強がるんだ?

    2006-06-08 23:23:00
  • 101:

    ◆/fmXna4sZY

    俺は、彼女の痩せ細った体を力一杯抱き締めた。今度は他の誰の影も重ねずに、実奈だけを… 実奈だけを愛してると実感して、彼女を強く抱き締めた――。       

    眩しい季節が終わろうとしている。剥き出しになった太陽が、徐々に紅く染まり始めた。焼けた肌に一筋の涙が、頬を伝う。俺は今、誰かを守る為に生きているんだ……       

    2006-06-08 23:32:00
  • 102:

    ◆/fmXna4sZY


    そしてこれからも……  


    SIDE ━━伊織━━

    2006-06-08 23:35:00
  • 103:

    ◆/fmXna4sZY

    まだまだ途中ですが… すみません。最初に書き忘れてしまったのですが、一応この話は【三人の夏物語】なので、第一話は━伊織━のお話でした。
    最終的には主人公の泉がメインなので…完結まで宜しくお願いします〜(>_

    2006-06-08 23:40:00
  • 104:

    名無しさん

    2006-06-09 03:22:00
  • 105:

    名無しさん

    読んでますよ?
    あと?人の話楽しみにしてます?

    2006-06-09 04:20:00
  • 106:

    名無しさん

    あげ?

    2006-06-09 13:16:00
  • 107:

    名無しさん

    2006-06-09 20:59:00
  • 108:

    名無しさん

    ????????????

    2006-06-10 15:41:00
  • 109:

    ◆/fmXna4sZY

    108サン、書き込みありがとうございます!
    すごく嬉しいです。頑張りますね(*^_^*)
    あげて下さった方々、ありがとうございました☆

    2006-06-11 18:02:00
  • 110:

    ◆/fmXna4sZY



    SIDE  ━━泉━━   

    2006-06-11 18:30:00
  • 111:

    ◆/fmXna4sZY

    伊織の話が終わる頃、あたしは…これ以上その場に立っていられなくなりそうだった――   

    「……伊…織、じゃあ実奈ちゃんとは今も……」  「……いや、実奈とは今は一緒じゃないよ。アイツは九州の実家にいるから。」「え…?なんでだよ…?」  
      
    伊織が、あたしを好きだったなんて……

    2006-06-11 18:39:00
  • 112:

    ◆/fmXna4sZY

    「……んーなんだろ?フラれちまった…かな?あははっ…カッコ悪りぃ。笑」 「え…フラれた?実奈ちゃんに?」
    「や……正確には、実奈じゃなくて実奈の親にフラれちまった…だな。」


    実奈ちゃんに会いに行った伊織は、その後すぐに、実奈ちゃんの両親に挨拶をしに行ったらしい。だけど、【娘を妊娠させ、責任から逃げ出した男】―――という硬いレッテルは、想像以上に頑丈なもので… 伊織は、実奈ちゃんのお父さんに初対面にして鉄拳をくらった。その後、何度会いに行っても「二度と家に現われるな!!」と、吐き捨て玄関のドアを閉められる。その繰り返し――…

    2006-06-11 18:55:00
  • 113:

    ◆/fmXna4sZY

    だけど、伊織は懲りずに何度でも何度でも、頭を下げに行った。実奈ちゃんも一緒になって、頭を下げていた。だけど、お父さんの返事はいつでも“NO”――。しまいには、玄関にすら出てきてくれなくなってしまった…
    伊織は、近くにアパートを借りて現場仕事を始めた。公認にはなれない為、目を盗んで隠れてコソコソと二人は会う。伊織は実奈ちゃんの為に、実奈ちゃんの事だけを想って…毎日一生懸命働いた。心も体もボロボロだったけれど、幸せだった。誰かを守る為に生きる喜びが―、嬉しかったと。そんな日々が、そのまま二年間続いた。        

    ある日の夜、実奈ちゃんに告げられた言葉。「伊織くん、もう……自由になっていいよ。」
    伊織は、ただ――、わけが分からずに 理由のない涙が止まらなかったらしい 。

    2006-06-11 19:18:00
  • 114:

    ◆/fmXna4sZY

    「…んで……そのまま、戻ってきたのか…?」

    圭吾と伊織の会話が、なんだか上の空で…あんまりうまく聞き取れない。     
    「ん…仕方ないから。実奈が、これからは一人で頑張りたいって言ったからね」「そんな…のっ、強がってるだけに決まっ――…」 「分かってるよ。だから、迎えに行く。俺がこっちで一人前の男になったら、アイツの親にも認めてもらえるような男になったら… もう一度、実奈を迎えに行く。……もう一度、アイツにプロポーズするよ。」

    2006-06-11 19:33:00
  • 115:

    ◆/fmXna4sZY

    「伊織、お前……」     
    伊織…アンタ変わったね。全然、違う人みたいだよ。  
      
    「…いづみ、あの日、あそこで再会したのは偶然なんかじゃないんだ。泉に会いたくて… 俺は、あの場所で待ってたんだ。」
    『…待ってた?』

    2006-06-11 19:38:00
  • 116:

    ◆/fmXna4sZY

    「お前の事が、好きだったよ。三年前から…ずっと。泉が、好きだった。」     

    “やっと言えた――”  そう言って笑った彼の表情は、二年前のあの頃より…一回りも二回りも、大人になっている気がした。あの頃、何も知らずに無邪気に圭吾の隣で笑っているあたしを見て… 伊織は、それでもあたしに笑いかけてくれてたんだね。
    誰も裏切ってなんてなかったのに。ごめんね、伊織。  

    2006-06-11 19:49:00
  • 117:

    ???

    しおり?

    2006-06-11 22:15:00
  • 118:

    ◆/fmXna4sZY

    そして、ありがとう…    

    圭吾と伊織と別れて、あたしは一人あの場所へ来ていた。何かあると来る、いつものあの場所へ―――… ザザン…

    何かを忘れたい時…やっぱり潮の香りに、心洗われる気がするんだ。

    2006-06-12 02:28:00
  • 119:

    ◆/fmXna4sZY

    ???サン、しおりありがとうございます!(*^_^*)

    2006-06-12 02:49:00
  • 120:

    ◆/fmXna4sZY

    さっきまでの朝焼けは、照りつける太陽に代わり、青い海に反射する。もうすっかり“夏” と呼ばれる季節に突入したんだと実感して、前髪を掻き上げながら潮風を浴びた―――…      
    『気持ちいい…』       

    海が好き。昔から、此処に来ると落ち着く。海は、思い出の場所だから。家族三人で訪れた、最初で最後の思い出の場所――― ‥。

    2006-06-12 02:59:00
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