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銀の鎖

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  • 1:

    美桜

    初めて書く小説なので、下手ですが読んでもらえれば嬉しいです。更新も少しずつになりますが、気長におつきあい下さいm(__)m

    2006-05-07 02:28:00
  • 300:

    母は毎朝そんな美桜を見ていたので『仮病』とは思っていなかったのだが、父は違った。父は毎朝出勤が早いため滅多に朝美桜と顔を合わせることが無い。

    2006-05-13 22:31:00
  • 301:

    顔を合わせるのは夕食の時間のみ。そのため父の目に映る美桜は表面的にはいつもと変わらない元気な姿だった。

    2006-05-13 22:31:00
  • 302:

    『発作』に襲われるようになり1週間が過ぎた頃、父は美桜に「お前はいつまで学校をさぼっているつもりだ」と言った。その父の言葉に美桜は愕然となる。

    2006-05-13 22:32:00
  • 303:

    (さぼり!?)とんでもない言いがかりに美桜が言葉を返せずにいると、「まったく。藤沢家の長女がろくに学校にも行かないなんて。世間体の悪い!」と吐き捨てる。

    2006-05-13 22:33:00
  • 304:

    (世間体!?)それが何だと言うのだ。毎朝体が引き裂かれてしまうほどの苦しみを味わっているのに、そのことを心配する様子も無く世間体!?美桜は父のあまりの言いように体が震える。

    2006-05-13 22:34:00
  • 305:

    さすがに見かねた母が「お父さん。美桜ちゃんはさぼっているのではなくて、毎朝本当に具合が悪くなるんですよ」それを聞いた父の言葉は耳を疑うようなものだった。

    2006-05-13 22:35:00
  • 306:

    「医者はどこも悪くないと言っているんだろ?全て美桜が言っていることだ」と…

    2006-05-13 22:36:00
  • 307:

    その瞬間美桜は椅子を蹴り席を立っていた。「何だ美桜、食事中に行儀の悪い。とにかく明日からは学校へ行け」と冷たく父は言う。美桜は怒りに全身を震わせていた。

    2006-05-13 22:37:00
  • 308:

    何か言い返そうとしたその途端、『発作』が起こった。その時の発作は毎朝起こる発作とは比べものにならないくらいひどいものだった。

    2006-05-13 22:37:00
  • 309:

    怒りのために震えていたのが、全身を覆う痺れとなり立っていられなくなる。

    2006-05-13 22:41:00
  • 310:

    倒れるのを防ぐためにしゃがみこむのが精一杯でそこから一歩も動けず、全身を覆う痺れのため指一本動かすことも出来ず、息もろくに出来ない。

    2006-05-13 22:42:00
  • 311:

    だが今日に限りひどい苦しみにも関わらず、意識だけはしっかりしていた。(助けて!助けて!!)美桜は心の中で大声で叫ぶ。駆け寄る母と妹の足音に重なり、更に信じられない父の言葉。

    2006-05-13 22:43:00
  • 312:

    「放っておけ。どうせ信じてもらえないと思って演技しているんだろ」とそのまま席を立ち、自分の部屋へ戻ろうとする。

    2006-05-13 22:44:00
  • 313:

    その言葉を聞いた瞬間美桜は、苦しみの中から更に暗い穴の中へと突き落とされたような気分だった。

    2006-05-13 22:45:00
  • 314:

    (どうして!?どうして、こんなに苦しいのにお父さんは信じてくれないの!?)「お父さん!お姉ちゃん演技なんかしてないよ!早く救急車呼んでよ!」と妹が叫ぶ。「美桜ちゃん、美桜ちゃん!」必死に母が呼びかける。

    2006-05-13 22:46:00
  • 315:

    そのどれもが美桜には既に現実のことのようには感じられていなかった。「お父さん、救急車!!」もう一度妹が叫ぶ。「お姉ちゃん死んじゃうよ!!」

    2006-05-13 22:47:00
  • 316:

    「…構わん。そんな弱い奴に藤沢家は継げん」と言い残し父は部屋へ戻ってしまった。

    2006-05-13 22:47:00
  • 317:

    それが意識の途切れる寸前に美桜の美桜に届いた最後の言葉だった…

    2006-05-13 22:48:00
  • 318:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今日の更新はここまでになります。お付き合い下さいましてありがとうございました。また明日の夜更新させていただきます。

    2006-05-13 22:49:00
  • 319:

    名無しさん

    2006-05-14 02:42:00
  • 320:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    申し訳ありませんが、今日は多忙のため更新できそうにありません。お待ちいただいてる皆様本当に申し訳ありません。

    2006-05-14 22:55:00
  • 321:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今から少しだけですが更新させていただきます。

    2006-05-15 21:18:00
  • 322:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    Side B〜皓輝〜 美桜の話を皓輝は言葉を挟むことなく聞いていた。「…結局ね、原因は鬱から来るパニック症候群ってやつだったの」と美桜が言う。

    2006-05-15 21:19:00
  • 323:

    親や周りからの過剰な期待によるストレスで美桜は自覚することもなく鬱になってしまっていたのだった。「それからはね、本当に大変だったなぁ」と遠い目をしながら話を続ける。

    2006-05-15 21:19:00
  • 324:

    話し始めてから美桜は一度も皓輝の目を見ていなかった。こんな美桜を見るのも初めてだ。美桜は話すときはいつも必ず相手の目を見ながら話をする。

    2006-05-15 21:21:00
  • 325:

    よほど辛い思い出なのだろう大きな瞳にうっすらと涙を浮かべている。そこで初めて美桜は皓輝を見た。

    2006-05-15 21:21:00
  • 326:

    「美桜のせいで家の中はぐっちゃぐちゃ。お父さんは毎日美桜の顔を見ては恥さらしだの世間体が悪いだの非難するし、お母さんは美桜のこと壊れ物を扱うような態度だしね」「……」

    2006-05-15 21:22:00
  • 327:

    「妹もね、最初のうちはお父さんから庇っていてくれてたんだけど、段々疲れてきたんだろうね。『お姉ちゃんさえいなければ』っていうようになってね」と苦笑しながら美桜は言う。

    2006-05-15 21:23:00
  • 328:

    そんな美桜に皓輝はどんな言葉をかけていいのかわからなかった。出会ってからの美桜はいつも笑顔を絶やさず、いつでも皓輝を励ましてくれていた。今まで見てきた美桜にはそんな暗い影は全然見当たらなかった。話を聞いた今でも信じられないくらいだ。

    2006-05-15 21:24:00
  • 329:

    「それでね、21歳のときに家を出たんだ。美桜も苦しかったし、美桜がいなければ皆元の生活に戻れるかなぁと思って」「…どうやって?」「ん?」「家を出てどうしてたの?」

    2006-05-15 21:25:00
  • 330:

    と、かろうじて皓輝は尋ねる。そんな皓輝に苦笑しながら美桜は「とりあえず、お決まりのパターンだね」と言った。

    2006-05-15 21:26:00
  • 331:

    「手っ取り早く一人暮らしの男のところに転がり込んだ」「そのとき付き合ってた彼氏?」「ううん」とさらに苦笑しながら美桜は続ける。

    2006-05-15 21:27:00
  • 332:

    「今思えば本当に最低なことしたんだけどね。その時美桜のこと好きって言ってくれた男の人を利用した」「……」

    2006-05-15 21:28:00
  • 333:

    と苦笑から痛そうな表情に変え美桜は言う。「…最低だね。自分が辛いからって人の気持ちを利用するなんて…」

    2006-05-15 21:30:00
  • 334:

    「その時…そいつと暮らし始めてから美桜は幸せだった?」「…幸せ、だったかな…その人はとにかく美桜のこと大事にしてくれたから…」と、また遠い目をしながら美桜は言った。

    2006-05-15 21:31:00
  • 335:

    「…家を出てからね、結局お父さんは毎月美桜の口座にお金を振り込んでるんだ。さっきのはそのお金」「親父さん、本当は美桜のこと心配してるんじゃないのか?」

    2006-05-15 21:32:00
  • 336:

    すると美桜は激しく首を振った。「違う!!あの人はそんな人じゃない!!」美桜の激情に皓輝は目を丸くする。

    2006-05-15 21:35:00
  • 337:

    「あの人がお金を振り込む理由は美桜が藤沢家の名前を汚さないように、世間から見て恥ずかしいことをさせないように、それだけの理由でお金を振り込み続けてるんだよ!」

    2006-05-15 21:36:00
  • 338:

    「どういう意味?」と皓輝は尋ねる。美桜は睨みつけるように皓輝を見ながら

    2006-05-15 21:37:00
  • 339:

    「あの人は水商売や風俗は最低の人間がやる仕事だと思ってる。だから美桜がそんな世界に行かないようにお金を与えていれば体裁が守れると思っているんだよ!だから…だから美桜は!!…」

    2006-05-15 21:38:00
  • 340:

    そこまで言い、耐え切れなくなったのか美桜の大きな瞳からとうとう涙がこぼれた。その涙を見られないように美桜は両手で顔を覆う。

    2006-05-15 21:39:00
  • 341:

    そんな美桜の頭を皓輝は静かに撫でる。「美桜…」皓輝の中で様々な感情が巡っていた。その中から皓輝が美桜に一番伝えたい言葉を口にする。

    2006-05-15 21:40:00
  • 342:

    「美桜…何も気づけなくてごめん。これからは我慢しなくていいから」弾かれたように美桜が顔を上げる。

    2006-05-15 21:41:00
  • 343:

    「今でも親父さんのことが憎いならオレに話してくれていい。親父さんに反抗するためだけに水商売をしているなら辞めればいいとオレは思う」美桜は無言で皓輝を見つめる。

    2006-05-15 21:42:00
  • 344:

    「無責任な言い方かもしれないけど今のオレは美桜に何もしてやれない。家族との仲を戻すことも、美桜を養ってやることもできない。でも…」美桜の頭を撫で続けながら皓輝は言う。

    2006-05-15 21:43:00
  • 345:

    「どんな美桜でも美桜は美桜だから、いつでも『本当』の美桜でいて欲しい」

    2006-05-15 21:44:00
  • 346:

    「皓輝…」疲れ果てたような表情で美桜が皓輝の名前を呼ぶ。「『本当』の美桜って?…」囁くような声で美桜が尋ねる。

    2006-05-15 21:45:00
  • 347:

    「誰かを憎んでいる美桜も、オレや悠馬の前で笑ってくれている美桜も全部美桜ってことだよ」皓輝も囁くような声で答える。

    2006-05-15 21:46:00
  • 348:

    そう答えた皓輝に、「駄目だよ…皓輝…美桜は『良い子』でいなくちゃ…美桜の存在価値がなくなっちゃう…」と子供のような表情になり美桜は言う。

    2006-05-15 21:47:00
  • 349:

    そんな美桜に皓輝は首を横に振る。「美桜。それは違う。今ここにこうして美桜がいること。それ自体が美桜の存在価値だよ」大きな瞳を更に見開いて美桜は皓輝を見つめる。

    2006-05-15 21:48:00
  • 350:

    「オレは今日美桜が怒るところや誰かを憎んでいるところを初めて見たよ。でもそんな美桜を見ても嫌いになんてならない」皓輝は少しずつ少しずつだが、一生懸命思いを美桜に伝える。

    2006-05-15 21:49:00
  • 351:

    「だからもう我慢だけはするな」そう言った皓輝に美桜が縋りつくように抱きついた。

    2006-05-15 21:50:00
  • 352:

    初めて2人で出かけたあの日とは逆に今度は皓輝が美桜のことを静かに強く抱き止めていた…美桜がいつもの笑顔を取り戻せるまで…

    2006-05-15 21:51:00
  • 353:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    本日の更新はここまでです。本当に少なくて申し訳ないです。また明日の夜更新させていただきます。

    2006-05-15 21:52:00
  • 354:

    名無しさん

    2006-05-16 12:44:00
  • 355:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    遅くなりましたが今から更新させていただきます。読んでくださっている方本当にありがとうございますm(__)m

    2006-05-16 23:17:00
  • 356:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    Side A〜美桜〜 それからの毎日は美桜にとってとても幸せな日々だった。仕事が終わると毎日まっすぐ皓輝の店に行き、毎日少しずつでも皓輝と色んな話をする。

    2006-05-16 23:18:00
  • 357:

    店に来てくれたお客さんのこと、友人たちとご飯に行ったこと、悠馬のことや皓輝の仕事の話。そんな他愛のない会話ができる、それが今の美桜にとって一番幸せなことだった。

    2006-05-16 23:19:00
  • 358:

    皓輝は日々本当に忙しくプライベートな時間を過ごせることなどほとんどなかった。それでも月に一度や二度、休みの日や出勤前の時間に美桜を食事やビリヤード、お世話になった先輩が経営している店など色々な所に連れて行ってくれた。

    2006-05-16 23:20:00
  • 359:

    そんな他愛もないだけど幸せな日々を送り、美桜の誕生日を1週間後に迎えたある日美桜と皓輝は些細なことで喧嘩をした。

    2006-05-16 23:21:00
  • 360:

    その日美桜は珍しく仕事中に酔っぱらってしまい、店が終わってどうやって帰ったのか記憶もなく、とにかくなんとか着替えだけを済ませ、自宅で一人潰れていた。何か物音がしたような気がして目を覚ます。ふと時計を見ると時間はa.m8:30。

    2006-05-16 23:22:00
  • 361:

    あぁ、やっちゃったぁ…って、頭いた〜い…)激しい二日酔いに襲われながら目が覚める前に聞こえた音の元を探す。

    2006-05-16 23:23:00
  • 362:

    その瞬間美桜の携帯がなる。《着信 皓輝》「…はぁい…」「お前、今どこだっ!?」聞こえてきたのは皓輝の激しい怒鳴り声。

    2006-05-16 23:24:00
  • 363:

    え?」「どこだって聞いてんだよっ!!」「…家だけど…」事情はわからないがとにかく皓輝は本気で怒っているようだ。「…どうしたの、皓輝。何かあった?」「何かあったの?じゃねえんだよ!」と相変わらず怒鳴り声のまま皓輝が言う。

    2006-05-16 23:25:00
  • 364:

    「電話にも出ない、メールも送ってこない、お前昨日一日何してたんだ!?」「はぁ!?」どうやら皓輝は昨日美桜と連絡が取れなかったことに対して怒っているようだった。

    2006-05-16 23:26:00
  • 365:

    「昨日店で酔っ払っちゃって、そのまま家に帰って潰れてたんだけど…たった一日連絡つかなかったくらいで何そんなに怒ってるの?」訳もわからず怒られていることにさすがに美桜もムッとなり、思わず喧嘩腰で言い返す。

    2006-05-16 23:27:00
  • 366:

    「お前今まで一日だって連絡欠かしたこと無かっただろ!そんな奴がいきなり何の連絡も無くこっちから連絡しても連絡がつかないなんて心配するだろ!!」「…心配かけたことは悪かったと思うけど、だからってそんないきなり怒鳴らなくてもいいじゃない!!」

    2006-05-16 23:28:00
  • 367:

    「オレがどれだけ心配したと思ってるんだよ!」と皓輝も怒鳴り返す。「だから、心配させてごめんって。でも怒るにしたって理由くらい聞いてから怒ってよ!」

    2006-05-16 23:29:00
  • 368:

    「はぁ!?お前本当に反省してんのかよ!?」とそんな遣り取りが30分程繰り返され、「つうか、お前まじむかつく」それだけを言い皓輝が電話を切った。

    2006-05-16 23:30:00
  • 369:

    美桜は美桜で心配をかけたのは悪かったと思っていたが、あまりの皓輝のキレっぷりにかなり苛立ってたので、携帯の電源をそのまま切りベッドの上に投げ付けた。

    2006-05-16 23:31:00
  • 370:

    カバンからタバコを取り出し火を点ける。一本吸い終わり少し冷静になって考える。(…確かにあれだけ毎日連絡してたのが、ぷっつり途切れちゃったら心配するかなぁ…)と少し反省をする。だが…

    2006-05-16 23:32:00
  • 371:

    (それにしたってあの言い方は無いよね!?)と思い返し腹が立つ。一瞬電話をかけ直して文句を言ってやろうかと思ったのだが、二日酔いのこの頭で怒鳴り声を聞き続ける元気もなかった。

    2006-05-16 23:33:00
  • 372:

    (まぁ、いいや…また夜にでも電話しよ…)そう思いながらもう一度ベッドに横になり眠ることにした。

    2006-05-16 23:33:00
  • 373:

    タイミングが悪いことは続くもので、その日から美桜は毎日アフターが続き皓輝に連絡することができなかった。あの日、夕方に起きて携帯の電源を入れ着信履歴を見返すと、皓輝からの着信がa.m12:30一時間おきで残っていた。

    2006-05-16 23:34:00
  • 374:

    (本当に心配してくれてたんだ…)さすがに反省をし、取り敢えず「本当にごめんなさい」とだけメールはしておいた。だが、皓輝からの返事はなかった。(さすがに呆れられちゃったかな…)と美桜は落ち込んでいた。

    2006-05-16 23:35:00
  • 375:

    あれから、6日が過ぎ美桜の誕生日の前日。やっと時間に余裕が出来、仕事が終わってから6日ぶりに皓輝に電話をする。コール音は鳴っているのだが、皓輝は出ない。

    2006-05-16 23:36:00
  • 376:

    (忙しいのかな?また後でかけ直そう…)美桜はひとまずタクシーに乗り自宅へ戻った。自宅に着き着替えを済ませもう一度皓輝に電話をかける。…出ない。

    2006-05-16 23:37:00
  • 377:

    皓輝はまだ怒っているのだろうか。美桜は不安に襲われた。もしかして美桜は皓輝に見捨てられてしまったのだろうか。それから何度か皓輝に電話をかけてみたのだが、やはり出ない。

    2006-05-16 23:38:00
  • 378:

    不安が今度は心配に変わる。(もしかして皓輝に何かあったんじゃ!?)とそこで美桜はふと気付く。(あの日の皓輝もこんな気持ちだったんだ…)

    2006-05-16 23:39:00
  • 379:

    そう思うと美桜はいても立ってもいられなくなり、皓輝の店へ電話を入れる。「…お電話ありがとうござ…」「悠馬!?」電話が繋がった途端、話し出す美桜。

    2006-05-16 23:40:00
  • 380:

    「…美桜姉?」「うん。悠馬、皓輝は!?」「え?」「皓輝と連絡が取れないの!?店に来てる!?」「…美桜姉も連絡取れてないの?」悠馬のその一言が美桜の心配を募らせる。

    2006-05-16 23:40:00
  • 381:

    「皓輝さん2日ぐらい前から店に来てないんですよ。連絡もないし、電話しても出ないし。今皆で美桜姉に連絡しようかどうしようか相談してたところで…」「!?」

    2006-05-16 23:42:00
  • 382:

    「美桜姉何か心当たりない?」見えない悠馬を相手に美桜は激しく首を振る。「わかんない!!私も最近忙しくて全然連絡していなかったから…!」と半泣きになりながら答える美桜に、「美桜姉、落ち着いて!」と悠馬が慌てた様子で声をかける。

    2006-05-16 23:42:00
  • 383:

    「たぶん皓輝さんのことだから、風邪引いて寝てるとかそんなことだと思うから。何か分かったら美桜姉にも連絡するし」「…うん」「じゃあ、美桜姉、またね」電話を切った美桜はまた不安に襲われる。

    2006-05-16 23:43:00
  • 384:

    どうしよう…皓輝の自宅の連絡先なんて知らないし、携帯へかけても出ない。本当に風邪を引いて寝ているだけなのだろうか…それとも…何かあったのでは!?一人でいる美桜は段々パニックに襲われ始めた。

    2006-05-16 23:44:00
  • 385:

    体が震え、息が出来ない。《過呼吸》だ。(やば…)今発作を起こすわけにはいかない。とにかく気持ちを落ち着かせようとする。だが、『もう一人』の美桜がささやく。

    2006-05-16 23:45:00
  • 386:

    『皓輝はあんたからの電話に出たくないんだよ』『あんた皓輝に嫌われたんだよ』(うるさい、うるさい!!)美桜は必死に自分を抑える。

    2006-05-16 23:46:00
  • 387:

    『可哀想にね。あんたこれから独りだよ』さらに『もう一人』の美桜がたたみかける。『あんたが《良い子》じゃなかったからいけないんだよ』その一言で美桜は『もう一人』の美桜に囚われた。

    2006-05-16 23:47:00
  • 388:

    (美桜が《良い子》じゃなかったから、皓輝に嫌われたの…?)『そうだよ。だからあのクソ親父と同じようにあんたを捨てたんだよ』震える手を伸ばし美桜は化粧ボックスを摑む。

    2006-05-16 23:48:00
  • 389:

    『《良い子》でいられないあんたなんか誰も必要としてないんだよ』(皆…美桜なんて要らないの?…)化粧ボックスを開け、美桜はある一点を見つめる。

    2006-05-16 23:49:00
  • 390:

    『そうだよ。だからあんたなんか死んじゃえばいいんだ』見つめていた『物』を取り出す。…カミソリだった。美桜は震え続ける右手で、それでもしっかりとカミソリを握る。

    2006-05-16 23:50:00
  • 391:

    『死ね』その瞬間美桜は左手に刃を当て一気に引いた…痛みは無い。真っ白な腕の上に一本の赤い筋。

    2006-05-16 23:51:00
  • 392:

    (綺麗…)美桜は取り憑かれたように自分の傷口を見つめる。赤い筋は量を増し次第に白い部分が少なくなっていく。それでも美桜はまだ見つめ続けている。

    2006-05-16 23:52:00
  • 393:

    10分ほどそうしていて美桜はふと我に返る。自分の両手に目をやり、激しい後悔に襲われる。(ああ…また…)美桜はまだ皓輝に言っていないことがあった。

    2006-05-16 23:53:00
  • 394:

    美桜の持病。パニック症候群ともう一つ《自傷癖》。16歳の冬パニック症候群と診断される前から始まっていたリストカット。

    2006-05-16 23:54:00
  • 395:

    体を襲う激しい苦しみがひどく長く続いているうちに美桜には今自分の身に起こっていることが現実か夢なのかその区別がつかなくなっていった。そしてそれは発作が起こっていない日常にも及び出した。

    2006-05-16 23:55:00
  • 396:

    起きていても夢の中にいるような気分。今自分が起きているのか眠っているの、それすら区別がつかない。現実と夢の区別をつけるためには《痛み》を感じるしかなかった。

    2006-05-16 23:55:00
  • 397:

    そうして始まったのがリストカットだった。《痛み》を感じている間だけが美桜にとっては《現実》のだった。

    2006-05-16 23:56:00
  • 398:

    だが始めは区別をつけるための《痛み》だったのが次第に《不安》や《苦しみ》から逃れる手段に変わっていった。《不安》や《苦しみ》に襲われているときリストカットをすると、何故か急にすっきりする。

    2006-05-16 23:57:00
  • 399:

    そのことに気付いてしまい、美桜はリストカットが止められなくなってしまったのだ。それ以降もう数えきれないくらい何度と無くリストカットを繰り返してきていた。

    2006-05-16 23:58:00
  • 400:

    助けて皓輝!)胸の中で美桜は叫ぶ。だが実際にこのことだけは皓輝には言えない。醜く引き攣る無数の傷跡。

    2006-05-16 23:59:00
  • 401:

    こんなものを見られたら嫌われてしまう。だから皓輝には言えない。今皓輝を失うことは死ぬより辛い。

    2006-05-17 00:00:00
  • 402:

    連絡が取れない不安と、リストカットがばれれば皓輝を失うかもしれない、という不安で美桜はまたパニックに陥りかける。(ダメ!!もう絶対にやっちゃダメ!)

    2006-05-17 00:01:00
  • 403:

    何とか自分に言い聞かせ、リビングへと行き薬箱の中から睡眠薬を取り出し一気に飲む。それから傷の手当をする。

    2006-05-17 00:02:00
  • 404:

    (明日になったらきっと連絡が取れるから)(皓輝はきっと元気だから)そう自分に言い聞かせながら手当てをしている内に、睡眠薬が効き始め、美桜はそのまま眠りに落ちた。

    2006-05-17 00:03:00
  • 405:

    このとき美桜はまだ気付いていなかった。自分がどれだけ皓輝に依存し始めているかということに。そしてそれがどれだけ《危険》なことか、ということにもまだ気付いていなかった……

    2006-05-17 00:04:00
  • 406:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今日の更新はここまでです。お付き合いくださいましてありがとうございました。次回更新は明日の夜になります。

    2006-05-17 00:05:00
  • 407:

    名無しさん

    2006-05-18 12:27:00
  • 408:

    ラビ

    主さん忙しいん?(;Д;)

    2006-05-20 09:28:00
  • 409:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    ラビさんお待たせして申し訳ありませんっm(__)m急な仕事が入りバタバタしています。今暫らくお待ちいただけると幸いです。

    2006-05-20 16:26:00
  • 410:

    名無しさん

    昨日ここまで全部読みました。
    更新楽しみにしています。

    2006-05-23 23:32:00
  • 411:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    お待ちいただいていた方大変申し訳ありませんでした。今から少しだけですが更新させていただきます。

    2006-05-24 00:32:00
  • 412:

    今日になってやっと熱も下がり、何とか店にも行けそうだった。(ヤベ、オレ全然連絡してなかった…)携帯を見ると不在着信だらけだった。店、従業員、客、そして…美桜。

    2006-05-24 00:34:00
  • 413:

    この間喧嘩をして以来美桜とは連絡が取れていなかった。あの日、電話を切った後散々悠馬たちに『言い過ぎ』と言われ何となく皓輝からは連絡がしにくかったのだ。

    2006-05-24 00:35:00
  • 414:

    それに美桜も怒っているのか全然連絡をしてこなかったので、結局ちゃんとした仲直りもできていない。(美桜、心配してるかな)と思い電話をかけようとしたのだが、時間を見るとまだ美桜は仕事中の時間だった。

    2006-05-24 00:36:00
  • 415:

    そしてカレンダーを見ると、今日は美桜の誕生日だった。(…良かった、プレゼントだけ先に用意しておいて)

    2006-05-24 00:37:00
  • 416:

    ちょうど風邪を引く前の日に仲直りのきっかけも含め皓輝は美桜の誕生日プレゼントを買っていたのだった。

    2006-05-24 00:38:00
  • 417:

    電話をかける『口実』を見つけ、美桜の仕事が終わった時間にでも電話をしてみようと思いなおし、ひとまず悠馬に電話をかけた。コール音。「…皓輝さん!!」慌てたような悠馬の声が電話の向こうから聞こえる。

    2006-05-24 00:40:00
  • 418:

    「おはようさん」「おはようさん、じゃないっすよ〜!!連絡も無しに3日間何してたんっすか!?」と悠馬が怒る。「悪い。風邪引いて寝込んでた」

    2006-05-24 00:41:00
  • 419:

    「それにしたってメールくらいできるでしょう!!俺らどれだけ心配したと思ってるんすか〜」と最後の方は情けない声になりながら悠馬が言う。「まじ、ごめん。熱出てて、メールすらできる状況じゃなかったから」「まぁ、無事ならいいんっすけどね」

    2006-05-24 00:42:00
  • 420:

    悠馬のあまりに情けない声に苦笑しながら、「で、3日間無事だった?」と尋ねる。「無事じゃないっすよ〜。皓輝さんのお客さんたちから電話鳴りっぱなし」

    2006-05-24 00:43:00
  • 421:

    「あぁ、オレの携帯もすっげぇ着信してたわ」「…でしょうね」と悠馬も苦笑しながら言う。よっぽど店にも客からの電話が入っていたのだろう。

    2006-05-24 00:44:00
  • 422:

    「あ」と思い出したように悠馬が言う。「昨日美桜姉からも電話ありましたよ」「…何て?」突然美桜の名前が出て何故か皓輝は動揺する。

    2006-05-24 00:45:00
  • 423:

    「皓輝さんと連絡取れないから何かあったのかって。でも何かちょっと様子変でしたよ」と心配そうに悠馬がいう。「どういう風に変だった?」「なんかすっげー焦ってて、泣きそうな声でした」「……」

    2006-05-24 00:47:00
  • 424:

    何かあったのだろうか。皓輝は不安になる。「…ダメっすよ、あんまり美桜姉に心配かけちゃ」「ああ。後で美桜に電話しとくわ。で、今日からは出勤するわ」「あ、はい。じゃあ、また後で」

    2006-05-24 00:48:00
  • 425:

    悠馬との電話を切り皓輝は美桜に電話をしょうか悩む。どうせ仕事中なので出ないだろうが悠馬から聞いた美桜の様子が気になる。

    2006-05-24 00:49:00
  • 426:

    少し悩んで結局かけることにした。出なくても着信を残しておけば美桜はかけてくるだろう。コール音が鳴る。

    2006-05-24 00:51:00
  • 427:

    5コールほど鳴らしたが出ないので電話を切ろうとした時「…はい」と美桜が電話に出た。「美桜ごめん、オレ昨日まで風邪引いてて連絡できなかった。電話もらってたけど、何かあった?」

    2006-05-24 00:52:00
  • 428:

    「…ううん、特に」電話から聞こえる美桜の声は何となく元気がなかった。「皓輝、もう大丈夫なの?」「ああ。今日から店にも出ようと思ってる」「そう…あんまり無理しちゃダメだよ」

    2006-05-24 00:52:00
  • 429:

    そういう美桜の声はやはり元気がない。「美桜、何か元気ないけど、どうした?」「そう?少し疲れてるだけだよ」「そっか。って、今日仕事は?」まだp.m.9:00なので本当なら美桜は仕事中のはずだ。

    2006-05-24 00:53:00
  • 430:

    「疲れてるから今日は休んだの」「そんなに具合悪いのか?」「ううん、半分はサボりみたいなもんだから、大丈夫だよ」「そっか。それならいいけど…」

    2006-05-24 00:54:00
  • 431:

    美桜は大丈夫だというがどうも様子がおかしい。だがいくら聞いたところで美桜はきっと大丈夫、としか言わないだろう。そう思いながら、「美桜、今日ミナミまで出てくる元気ある?」と尋ねる。

    2006-05-24 00:55:00
  • 432:

    「…出るには出られるけど、お酒飲む元気はないかな」と一瞬ためらってから美桜は答える。「じゃあ、オープン前でもいいから時間ない?」「…いいよ。何時にどこ?」

    2006-05-24 00:56:00
  • 433:

    美桜の誕生日プレゼントは店に置いてきてしまっていたので、「10:30に店前で大丈夫か?」「OK。じゃあまた後で」それだけ言って電話は切れた。

    2006-05-24 00:57:00
  • 434:

    あきらかに美桜の様子はおかしい。親父さんとまた何かあったのだろうか。そんなことを考えながら皓輝は急いで用意をする。

    2006-05-24 00:58:00
  • 435:

    用意を終え、タクシーに乗りメールのチェックをする。『皓輝、どこで何をしてるの!?』『電話ぐらい出てよ!』と客たちからのメールはそんな内容ばかりだった。皓輝はうんざりし、返事をすることなく携帯を閉じる。

    2006-05-24 00:59:00
  • 436:

    ミナミに着き早足で店に向う。p.m.10:15。約束の時間まで後15分だった。店の鍵を開け照明をつける。3日ぶりの店がなんだか少し懐かしかった。

    2006-05-24 01:01:00
  • 437:

    ロッカーへ向い美桜の誕生日プレゼントを取り出す。美桜は喜んでくれるだろうか。

    2006-05-24 01:02:00
  • 438:

    約束の時間まで皓輝は3日間の売り上げのチェックや仕入れのチェックなどをしながら時間を過ごす。どうやら悠馬たちは皓輝が不在の間でもちゃんと仕事をしてくれていたようだ。

    2006-05-24 01:03:00
  • 439:

    (あいつら、やれば出来るじゃないか…)と日頃の世話のやかされぶりを思い返し、少し腹が立つ。そう思っていると携帯が鳴った。《着信 美桜》

    2006-05-24 01:04:00
  • 440:

    「はい」「今店の下。上がっていけばいい?」「ああ。鍵開けてるから入ってきて」そう言って電話を切り皓輝はふと気付く。(プレゼントってどうやって渡せばいいんだ?)

    2006-05-24 01:04:00
  • 441:

    今まで皓輝は客はもちろん彼女ですらプレゼントなんてしたことがなかった。一緒に出かけたときに何かを買ってやったりとか、金を渡し好きなものを買ってこい、といったことはある。

    2006-05-24 01:05:00
  • 442:

    だが、改めて『プレゼント』となるとしたことがない。そんなことに皓輝が頭を悩ませていると、ドアが開き美桜が入って来た。

    2006-05-24 01:06:00
  • 443:

    「おはよ」と微笑みながら美桜が言う。やはり少し元気がないのだが、皓輝は(どうやってプレゼントを渡すか?)に気を取られているので、気がつかない。「おはようさん」とぎこちなく返す。

    2006-05-24 01:07:00
  • 444:

    「思ってたより元気そう。良かった」と美桜が言う。「昨日までは大変だったけどな」と平静を装い皓輝は返事をする。美桜は皓輝のいるテーブルまで歩いてきて皓輝の隣に座る。

    2006-05-24 01:09:00
  • 445:

    「…この間はゴメンね」「この間?」「酔っ払って皓輝に連絡しなかった日…」「…。ああ。いや、あれはオレも悪かったから」

    2006-05-24 01:10:00
  • 446:

    そう返事をしながらも皓輝は上の空だ。プレゼントのことばかりが頭を占めている。「皓輝?何かあったの?」とそんな皓輝を見て美桜が尋ねる。

    2006-05-24 01:10:00
  • 447:

    「何で!?」「何か今日の皓輝ヘンだよ?」その言葉に皓輝は動揺する。「…そうか。」とだけかろうじて返事をする。「うん」と頷く美桜。沈黙が流れた。

    2006-05-24 01:11:00
  • 448:

    皓輝は本当にどうしていいのかわからなくなり、背中の後ろに置いてあったプレゼントを摑み「やる」と突き出した。きょとんとした顔で美桜が皓輝を見る。

    2006-05-24 01:12:00
  • 449:

    「何?」「だから、やる」と同じ言葉だけを繰り返す。不思議そうな顔をしながら美桜が受け取る。中を覗き「…皓輝…これ」と皓輝に尋ねる。

    2006-05-24 01:13:00
  • 450:

    「今日お前誕生日だろ。だから…」「!?…ありがとう…開けていい?」「ああ」美桜は紙袋から中身を取り出し丁寧に開ける。そこに入っているのはReturn to TIFFANYのシルバーネックレス。

    2006-05-24 01:14:00
  • 451:

    ネックレスを見つめ美桜は無言だった。「美桜…?」気に入らなかったのだろうか。恐る恐る皓輝は声をかける。美桜が顔を上げた。その顔を見て皓輝は驚いた。

    2006-05-24 01:16:00
  • 452:

    美桜は瞳に涙を浮かべている。「!?どうした?」訳がわからず皓輝は動揺する。「…ごめん。凄い嬉しくて。皓輝、本当にありがとう」どうやら嬉し涙らしい。

    2006-05-24 01:17:00
  • 453:

    途端に皓輝は安心し息をつく。「びっくりさせんなよ…」「…だって」と言いながら美桜はまたネックレスに視線を戻す。

    2006-05-24 01:18:00
  • 454:

    「これ、皓輝が選んでくれたの?」「オレ以外に誰が選ぶんだよ…」その場面を想像したのだろうか、「…似合わない」と少し笑いながら美桜が言う。

    2006-05-24 01:19:00
  • 455:

    「本当にありがとう。可愛いね」よほど嬉しいのか美桜は何度もありがとうを言う。「つけていいかな?」「…そのために買ったんだけど」

    2006-05-24 01:19:00
  • 456:

    「そうだよね」と自分のせりふに苦笑しながら美桜はネックレスをつけようとした。ネックレスをつけようとしている美桜を見ているうちに皓輝の視線が美桜の左腕に止まる。

    2006-05-24 01:20:00
  • 457:

    袖口からのぞく傷。まさか…!?ネックレスをつけ皓輝の顔を美桜が見る。皓輝の表情の変化に気づき「どうしたの?」と美桜が聞く。「皓輝、恐い顔してるよ?」

    2006-05-24 01:21:00
  • 458:

    そういう美桜に無言で手を伸ばし左手を摑もうとする。「!?」驚いたように美桜が左手を引こうとする。それより素早く手を伸ばし腕を摑みシャツをめくる。

    2006-05-24 01:22:00
  • 459:

    「!?」そこには真新しい傷と、それ以外にも無数の古い傷跡があった。「…お前、これ…」視線を逸らす美桜。「美桜…お前!?」「何でもないよ。ちょっと猫にひっかかれただけ…」

    2006-05-24 01:23:00
  • 460:

    摑まれた腕を慌てて引きシャツをおろす。「…本当のこと言えよ」低い声で皓輝が言う。「…本当に何でもないから」と視線を逸らしたまま美桜は言う。「美桜!!」大声で名前を呼ばれ美桜の体はびくっとする。

    2006-05-24 01:24:00
  • 461:

    「オレには本当のこと言う約束だよな」はっとしたように皓輝の顔を見る美桜。「…オレの客にも何人か似たような傷のある奴がいる。そいつらは…」

    2006-05-24 01:25:00
  • 462:

    「やめて!!」皓輝の言葉を遮るように美桜が叫ぶ。「猫に引っかかれたなんてウソ…本当は皓輝の思ってる通りだよ」

    2006-05-24 01:26:00
  • 463:

    「…何で!?」「苦しくて…」と本当に苦しそうな表情で美桜は言う。「何が苦しかったんだ!?何があったんだ!?」「……」「美桜!!」

    2006-05-24 01:27:00
  • 464:

    なかなか話そうとしない美桜に少し苛立つ皓輝。どんな理由があったとしてもやっていいことと悪いことがある。「…皓輝がいなくなっちゃうかもって思ったら…」「え?」

    2006-05-24 01:27:00
  • 465:

    「昨日、皓輝と連絡が取れなかったでしょ?」「ああ」「だからお店に電話したの。そしたら悠馬が出て何日か前から皓輝と連絡が取れないって言うから…」

    2006-05-24 01:28:00
  • 466:

    俯きながら美桜が言う。「…もしかしたら、皓輝に何かあったんじゃないかって思って…」「だからって、何で…」理由がわからず皓輝は苛立つ。「だからって、何でそんなことするんだよ!?」

    2006-05-24 01:29:00
  • 467:

    「…だって!」と美桜は皓輝の顔を見ながら、「皓輝がいなくなるなんて耐えられないんだもん…皓輝がいなくなっちゃうかもしれないって思ったら恐かったんだよ!」と叫ぶ。そして

    2006-05-24 01:30:00
  • 468:

    「お願い皓輝…美桜の側にいて…」と皓輝の首にしがみつく。

    2006-05-24 01:31:00
  • 469:

    小さな声で「…どこにも行かないで…」そう言って美桜は泣き出した。

    2006-05-24 01:32:00
  • 470:

    美桜以外の女にその台詞を言われたならきっと重たくてウザくて仕方がなかっただろう。だが皓輝の首にしがみつく美桜を皓輝は『愛おしい』と思った。

    2006-05-24 01:33:00
  • 471:

    そっと美桜の体を剥がし涙で濡れる顔を見つめる。「美桜…オレはずっとお前の傍にいるから」「…本当?」

    2006-05-24 01:34:00
  • 472:

    「ああ。だから二度とこんな馬鹿なことはするな」「美桜がいなくなるなんて、オレには考えられない…」そういいながら皓輝は美桜がいなくなることを想像してみる。

    2006-05-24 01:35:00
  • 473:

    ぞっとした。美桜がいなくなる。それは皓輝にとって『空虚』だった。

    2006-05-24 01:36:00
  • 474:

    「ずっと、ずっと傍にいてね?」そう囁く美桜に皓輝は「ああ」と答える。そして…

    2006-05-24 01:37:00
  • 475:

    2人は目を見交わし顔を寄せ、そっと初めてのキスをした…

    2006-05-24 01:38:00
  • 476:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今日の更新はここまでになります。少し忙しくしているので、次回の更新のお約束はできませんが、どんなに遅くても完結させますのでお付き合いいただければ幸いです。

    2006-05-24 01:38:00
  • 477:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    読んで下さっている皆様、本当にありがとうございます。

    2006-05-24 01:39:00
  • 478:

    ラビ

    わーい\(o゚ω゚o)/たくさん更新されてる↑↑無理せず頑張って下さいね。

    2006-05-24 01:55:00
  • 479:

    sage

    待ってます!

    2006-06-04 22:01:00
  • 480:

    名無しさん

    2006-06-11 03:58:00
  • 481:

    名無しさん

    2006-06-11 04:38:00
  • 482:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    ラビさんを始めお待ちいただいていた皆様大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
    今から再開させていただきます。

    2006-06-14 00:43:00
  • 483:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    Side A~美桜〜 皓輝と出逢って初めての冬を迎えた。平穏な日々。生まれてきてから一番平穏で幸せな日々が続いている。

    2006-06-14 00:44:00
  • 484:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    もちろん時にはささいなことで喧嘩をすることもあった。だが初めて喧嘩をして以来2人で約束したことがあった。『喧嘩は1日で終わらす』こと。

    2006-06-14 00:45:00
  • 485:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    例えば『ごめんなさい』と言ったのに、その話題を次の日に蒸し返したり、話し合うことも無くお互い意地を張って何日も過ごしたり…

    2006-06-14 00:46:00
  • 486:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    そんなことが無いように、腹が立ったことがあればその日に言い、その日の内に解決すること。それが2人の間の数少ない約束の内の1つだった。

    2006-06-14 00:47:00
  • 487:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    その約束のお陰で衝突することはあっても、次の日には必ずいつも通りの2人でいられた。

    2006-06-14 00:48:00
  • 488:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    こんなにも自分を出すことが出来て、そして相手も『素』で接してくれる。美桜は貴重な経験だった。

    2006-06-14 00:49:00
  • 489:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    そして現在でもはっきりと覚えている『あの日』。美桜にとって人生で最良の日…

    2006-06-14 00:50:00
  • 490:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    今日は1月2日。時間はa.m.4:00。皓輝は毎年恒例の従業員全員でのカウントダウンのために12月31日から今日の夕方ぐらいまで神戸へ出かけていた。

    2006-06-14 00:51:00
  • 491:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    だが皓輝は1日になった瞬間、『あけましておめでとう』と電話をくれた。他にもかけなければいけないところはあるはずなのに、一番に美桜にかけてきてくれた。

    2006-06-14 00:52:00
  • 492:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    そう思うと美桜は一人で過ごす正月も寂しくはなかった。1人でのんびり正月番組などを見ながら過ごしていると、気がつけばこんな時間になっていた。

    2006-06-14 00:53:00
  • 493:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    (そろそろ寝ようかなぁ)そう思っていると《着信 皓輝》

    2006-06-14 00:54:00
  • 494:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    はぁい」「起きてた?」「起きてたよ〜」少し寝ぼけているような皓輝の声が受話器から聞こえてくる。

    2006-06-14 00:55:00
  • 495:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「どしたの?こんな時間に」「いや、特に用事はないんだけどな。何となく」「そっか。美桜は今から寝ようかな〜と思ってたところ」

    2006-06-14 00:56:00
  • 496:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「寝てないのか?」「何となくテレビ見てたら寝そびれちゃって」と苦笑しながら美桜は言う。

    2006-06-14 00:57:00
  • 497:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「暇だったら少し出てこないか?」「今からぁ?」と突然の皓輝の誘いに驚く美桜。「無理?」「無理じゃないけど、すぐには…」と美桜が返すと、

    2006-06-14 00:58:00
  • 498:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「ああ、どうせオレも今から用意しないといけないし…」「じゃあ朝ご飯でも食べに行く?今からだとあんまりにも中途半端な時間じゃない?」「そうだな」

    2006-06-14 00:59:00
  • 499:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    「じゃあ、7時にいつもの場所で待ち合わせね」「おう」と言って電話は切れた。

    2006-06-14 01:00:00
  • 500:

    美桜 ◆kJmhGaf60.

    皓輝はいつも突然美桜を誘う。でも美桜も日にちを決めて遊びに行く、というのが凄く苦手なので皓輝のペースは美桜にとってはちょうど良かった。

    2006-06-14 01:01:00
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