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1:
美桜
初めて書く小説なので、下手ですが読んでもらえれば嬉しいです。更新も少しずつになりますが、気長におつきあい下さいm(__)m
2006-05-07 02:28:00 -
302:
『発作』に襲われるようになり1週間が過ぎた頃、父は美桜に「お前はいつまで学校をさぼっているつもりだ」と言った。その父の言葉に美桜は愕然となる。
2006-05-13 22:32:00 -
303:
(さぼり!?)とんでもない言いがかりに美桜が言葉を返せずにいると、「まったく。藤沢家の長女がろくに学校にも行かないなんて。世間体の悪い!」と吐き捨てる。
2006-05-13 22:33:00 -
304:
(世間体!?)それが何だと言うのだ。毎朝体が引き裂かれてしまうほどの苦しみを味わっているのに、そのことを心配する様子も無く世間体!?美桜は父のあまりの言いように体が震える。
2006-05-13 22:34:00 -
305:
さすがに見かねた母が「お父さん。美桜ちゃんはさぼっているのではなくて、毎朝本当に具合が悪くなるんですよ」それを聞いた父の言葉は耳を疑うようなものだった。
2006-05-13 22:35:00 -
307:
その瞬間美桜は椅子を蹴り席を立っていた。「何だ美桜、食事中に行儀の悪い。とにかく明日からは学校へ行け」と冷たく父は言う。美桜は怒りに全身を震わせていた。
2006-05-13 22:37:00 -
308:
何か言い返そうとしたその途端、『発作』が起こった。その時の発作は毎朝起こる発作とは比べものにならないくらいひどいものだった。
2006-05-13 22:37:00 -
310:
倒れるのを防ぐためにしゃがみこむのが精一杯でそこから一歩も動けず、全身を覆う痺れのため指一本動かすことも出来ず、息もろくに出来ない。
2006-05-13 22:42:00 -
311:
だが今日に限りひどい苦しみにも関わらず、意識だけはしっかりしていた。(助けて!助けて!!)美桜は心の中で大声で叫ぶ。駆け寄る母と妹の足音に重なり、更に信じられない父の言葉。
2006-05-13 22:43:00 -
314:
(どうして!?どうして、こんなに苦しいのにお父さんは信じてくれないの!?)「お父さん!お姉ちゃん演技なんかしてないよ!早く救急車呼んでよ!」と妹が叫ぶ。「美桜ちゃん、美桜ちゃん!」必死に母が呼びかける。
2006-05-13 22:46:00 -
315:
そのどれもが美桜には既に現実のことのようには感じられていなかった。「お父さん、救急車!!」もう一度妹が叫ぶ。「お姉ちゃん死んじゃうよ!!」
2006-05-13 22:47:00 -
318:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。お付き合い下さいましてありがとうございました。また明日の夜更新させていただきます。
2006-05-13 22:49:00 -
320:
美桜 ◆kJmhGaf60.
申し訳ありませんが、今日は多忙のため更新できそうにありません。お待ちいただいてる皆様本当に申し訳ありません。
2006-05-14 22:55:00 -
321:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今から少しだけですが更新させていただきます。
2006-05-15 21:18:00 -
322:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side B〜皓輝〜 美桜の話を皓輝は言葉を挟むことなく聞いていた。「…結局ね、原因は鬱から来るパニック症候群ってやつだったの」と美桜が言う。
2006-05-15 21:19:00 -
323:
親や周りからの過剰な期待によるストレスで美桜は自覚することもなく鬱になってしまっていたのだった。「それからはね、本当に大変だったなぁ」と遠い目をしながら話を続ける。
2006-05-15 21:19:00 -
324:
話し始めてから美桜は一度も皓輝の目を見ていなかった。こんな美桜を見るのも初めてだ。美桜は話すときはいつも必ず相手の目を見ながら話をする。
2006-05-15 21:21:00 -
326:
「美桜のせいで家の中はぐっちゃぐちゃ。お父さんは毎日美桜の顔を見ては恥さらしだの世間体が悪いだの非難するし、お母さんは美桜のこと壊れ物を扱うような態度だしね」「……」
2006-05-15 21:22:00 -
327:
「妹もね、最初のうちはお父さんから庇っていてくれてたんだけど、段々疲れてきたんだろうね。『お姉ちゃんさえいなければ』っていうようになってね」と苦笑しながら美桜は言う。
2006-05-15 21:23:00 -
328:
そんな美桜に皓輝はどんな言葉をかけていいのかわからなかった。出会ってからの美桜はいつも笑顔を絶やさず、いつでも皓輝を励ましてくれていた。今まで見てきた美桜にはそんな暗い影は全然見当たらなかった。話を聞いた今でも信じられないくらいだ。
2006-05-15 21:24:00 -
329:
「それでね、21歳のときに家を出たんだ。美桜も苦しかったし、美桜がいなければ皆元の生活に戻れるかなぁと思って」「…どうやって?」「ん?」「家を出てどうしてたの?」
2006-05-15 21:25:00 -
331:
「手っ取り早く一人暮らしの男のところに転がり込んだ」「そのとき付き合ってた彼氏?」「ううん」とさらに苦笑しながら美桜は続ける。
2006-05-15 21:27:00 -
334:
「その時…そいつと暮らし始めてから美桜は幸せだった?」「…幸せ、だったかな…その人はとにかく美桜のこと大事にしてくれたから…」と、また遠い目をしながら美桜は言った。
2006-05-15 21:31:00 -
335:
「…家を出てからね、結局お父さんは毎月美桜の口座にお金を振り込んでるんだ。さっきのはそのお金」「親父さん、本当は美桜のこと心配してるんじゃないのか?」
2006-05-15 21:32:00 -
337:
「あの人がお金を振り込む理由は美桜が藤沢家の名前を汚さないように、世間から見て恥ずかしいことをさせないように、それだけの理由でお金を振り込み続けてるんだよ!」
2006-05-15 21:36:00 -
339:
「あの人は水商売や風俗は最低の人間がやる仕事だと思ってる。だから美桜がそんな世界に行かないようにお金を与えていれば体裁が守れると思っているんだよ!だから…だから美桜は!!…」
2006-05-15 21:38:00 -
340:
そこまで言い、耐え切れなくなったのか美桜の大きな瞳からとうとう涙がこぼれた。その涙を見られないように美桜は両手で顔を覆う。
2006-05-15 21:39:00 -
341:
そんな美桜の頭を皓輝は静かに撫でる。「美桜…」皓輝の中で様々な感情が巡っていた。その中から皓輝が美桜に一番伝えたい言葉を口にする。
2006-05-15 21:40:00 -
343:
「今でも親父さんのことが憎いならオレに話してくれていい。親父さんに反抗するためだけに水商売をしているなら辞めればいいとオレは思う」美桜は無言で皓輝を見つめる。
2006-05-15 21:42:00 -
344:
「無責任な言い方かもしれないけど今のオレは美桜に何もしてやれない。家族との仲を戻すことも、美桜を養ってやることもできない。でも…」美桜の頭を撫で続けながら皓輝は言う。
2006-05-15 21:43:00 -
348:
そう答えた皓輝に、「駄目だよ…皓輝…美桜は『良い子』でいなくちゃ…美桜の存在価値がなくなっちゃう…」と子供のような表情になり美桜は言う。
2006-05-15 21:47:00 -
349:
そんな美桜に皓輝は首を横に振る。「美桜。それは違う。今ここにこうして美桜がいること。それ自体が美桜の存在価値だよ」大きな瞳を更に見開いて美桜は皓輝を見つめる。
2006-05-15 21:48:00 -
350:
「オレは今日美桜が怒るところや誰かを憎んでいるところを初めて見たよ。でもそんな美桜を見ても嫌いになんてならない」皓輝は少しずつ少しずつだが、一生懸命思いを美桜に伝える。
2006-05-15 21:49:00 -
352:
初めて2人で出かけたあの日とは逆に今度は皓輝が美桜のことを静かに強く抱き止めていた…美桜がいつもの笑顔を取り戻せるまで…
2006-05-15 21:51:00 -
353:
美桜 ◆kJmhGaf60.
本日の更新はここまでです。本当に少なくて申し訳ないです。また明日の夜更新させていただきます。
2006-05-15 21:52:00 -
355:
美桜 ◆kJmhGaf60.
遅くなりましたが今から更新させていただきます。読んでくださっている方本当にありがとうございますm(__)m
2006-05-16 23:17:00 -
356:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side A〜美桜〜 それからの毎日は美桜にとってとても幸せな日々だった。仕事が終わると毎日まっすぐ皓輝の店に行き、毎日少しずつでも皓輝と色んな話をする。
2006-05-16 23:18:00 -
357:
店に来てくれたお客さんのこと、友人たちとご飯に行ったこと、悠馬のことや皓輝の仕事の話。そんな他愛のない会話ができる、それが今の美桜にとって一番幸せなことだった。
2006-05-16 23:19:00 -
358:
皓輝は日々本当に忙しくプライベートな時間を過ごせることなどほとんどなかった。それでも月に一度や二度、休みの日や出勤前の時間に美桜を食事やビリヤード、お世話になった先輩が経営している店など色々な所に連れて行ってくれた。
2006-05-16 23:20:00 -
360:
その日美桜は珍しく仕事中に酔っぱらってしまい、店が終わってどうやって帰ったのか記憶もなく、とにかくなんとか着替えだけを済ませ、自宅で一人潰れていた。何か物音がしたような気がして目を覚ます。ふと時計を見ると時間はa.m8:30。
2006-05-16 23:22:00 -
363:
え?」「どこだって聞いてんだよっ!!」「…家だけど…」事情はわからないがとにかく皓輝は本気で怒っているようだ。「…どうしたの、皓輝。何かあった?」「何かあったの?じゃねえんだよ!」と相変わらず怒鳴り声のまま皓輝が言う。
2006-05-16 23:25:00 -
364:
「電話にも出ない、メールも送ってこない、お前昨日一日何してたんだ!?」「はぁ!?」どうやら皓輝は昨日美桜と連絡が取れなかったことに対して怒っているようだった。
2006-05-16 23:26:00 -
365:
「昨日店で酔っ払っちゃって、そのまま家に帰って潰れてたんだけど…たった一日連絡つかなかったくらいで何そんなに怒ってるの?」訳もわからず怒られていることにさすがに美桜もムッとなり、思わず喧嘩腰で言い返す。
2006-05-16 23:27:00 -
366:
「お前今まで一日だって連絡欠かしたこと無かっただろ!そんな奴がいきなり何の連絡も無くこっちから連絡しても連絡がつかないなんて心配するだろ!!」「…心配かけたことは悪かったと思うけど、だからってそんないきなり怒鳴らなくてもいいじゃない!!」
2006-05-16 23:28:00 -
367:
「オレがどれだけ心配したと思ってるんだよ!」と皓輝も怒鳴り返す。「だから、心配させてごめんって。でも怒るにしたって理由くらい聞いてから怒ってよ!」
2006-05-16 23:29:00 -
368:
「はぁ!?お前本当に反省してんのかよ!?」とそんな遣り取りが30分程繰り返され、「つうか、お前まじむかつく」それだけを言い皓輝が電話を切った。
2006-05-16 23:30:00 -
369:
美桜は美桜で心配をかけたのは悪かったと思っていたが、あまりの皓輝のキレっぷりにかなり苛立ってたので、携帯の電源をそのまま切りベッドの上に投げ付けた。
2006-05-16 23:31:00 -
370:
カバンからタバコを取り出し火を点ける。一本吸い終わり少し冷静になって考える。(…確かにあれだけ毎日連絡してたのが、ぷっつり途切れちゃったら心配するかなぁ…)と少し反省をする。だが…
2006-05-16 23:32:00 -
371:
(それにしたってあの言い方は無いよね!?)と思い返し腹が立つ。一瞬電話をかけ直して文句を言ってやろうかと思ったのだが、二日酔いのこの頭で怒鳴り声を聞き続ける元気もなかった。
2006-05-16 23:33:00 -
373:
タイミングが悪いことは続くもので、その日から美桜は毎日アフターが続き皓輝に連絡することができなかった。あの日、夕方に起きて携帯の電源を入れ着信履歴を見返すと、皓輝からの着信がa.m12:30一時間おきで残っていた。
2006-05-16 23:34:00 -
374:
(本当に心配してくれてたんだ…)さすがに反省をし、取り敢えず「本当にごめんなさい」とだけメールはしておいた。だが、皓輝からの返事はなかった。(さすがに呆れられちゃったかな…)と美桜は落ち込んでいた。
2006-05-16 23:35:00 -
375:
あれから、6日が過ぎ美桜の誕生日の前日。やっと時間に余裕が出来、仕事が終わってから6日ぶりに皓輝に電話をする。コール音は鳴っているのだが、皓輝は出ない。
2006-05-16 23:36:00 -
376:
(忙しいのかな?また後でかけ直そう…)美桜はひとまずタクシーに乗り自宅へ戻った。自宅に着き着替えを済ませもう一度皓輝に電話をかける。…出ない。
2006-05-16 23:37:00 -
377:
皓輝はまだ怒っているのだろうか。美桜は不安に襲われた。もしかして美桜は皓輝に見捨てられてしまったのだろうか。それから何度か皓輝に電話をかけてみたのだが、やはり出ない。
2006-05-16 23:38:00 -
378:
不安が今度は心配に変わる。(もしかして皓輝に何かあったんじゃ!?)とそこで美桜はふと気付く。(あの日の皓輝もこんな気持ちだったんだ…)
2006-05-16 23:39:00 -
379:
そう思うと美桜はいても立ってもいられなくなり、皓輝の店へ電話を入れる。「…お電話ありがとうござ…」「悠馬!?」電話が繋がった途端、話し出す美桜。
2006-05-16 23:40:00 -
380:
「…美桜姉?」「うん。悠馬、皓輝は!?」「え?」「皓輝と連絡が取れないの!?店に来てる!?」「…美桜姉も連絡取れてないの?」悠馬のその一言が美桜の心配を募らせる。
2006-05-16 23:40:00 -
381:
「皓輝さん2日ぐらい前から店に来てないんですよ。連絡もないし、電話しても出ないし。今皆で美桜姉に連絡しようかどうしようか相談してたところで…」「!?」
2006-05-16 23:42:00 -
382:
「美桜姉何か心当たりない?」見えない悠馬を相手に美桜は激しく首を振る。「わかんない!!私も最近忙しくて全然連絡していなかったから…!」と半泣きになりながら答える美桜に、「美桜姉、落ち着いて!」と悠馬が慌てた様子で声をかける。
2006-05-16 23:42:00 -
383:
「たぶん皓輝さんのことだから、風邪引いて寝てるとかそんなことだと思うから。何か分かったら美桜姉にも連絡するし」「…うん」「じゃあ、美桜姉、またね」電話を切った美桜はまた不安に襲われる。
2006-05-16 23:43:00 -
384:
どうしよう…皓輝の自宅の連絡先なんて知らないし、携帯へかけても出ない。本当に風邪を引いて寝ているだけなのだろうか…それとも…何かあったのでは!?一人でいる美桜は段々パニックに襲われ始めた。
2006-05-16 23:44:00 -
385:
体が震え、息が出来ない。《過呼吸》だ。(やば…)今発作を起こすわけにはいかない。とにかく気持ちを落ち着かせようとする。だが、『もう一人』の美桜がささやく。
2006-05-16 23:45:00 -
386:
『皓輝はあんたからの電話に出たくないんだよ』『あんた皓輝に嫌われたんだよ』(うるさい、うるさい!!)美桜は必死に自分を抑える。
2006-05-16 23:46:00 -
387:
『可哀想にね。あんたこれから独りだよ』さらに『もう一人』の美桜がたたみかける。『あんたが《良い子》じゃなかったからいけないんだよ』その一言で美桜は『もう一人』の美桜に囚われた。
2006-05-16 23:47:00 -
388:
(美桜が《良い子》じゃなかったから、皓輝に嫌われたの…?)『そうだよ。だからあのクソ親父と同じようにあんたを捨てたんだよ』震える手を伸ばし美桜は化粧ボックスを摑む。
2006-05-16 23:48:00 -
389:
『《良い子》でいられないあんたなんか誰も必要としてないんだよ』(皆…美桜なんて要らないの?…)化粧ボックスを開け、美桜はある一点を見つめる。
2006-05-16 23:49:00 -
390:
『そうだよ。だからあんたなんか死んじゃえばいいんだ』見つめていた『物』を取り出す。…カミソリだった。美桜は震え続ける右手で、それでもしっかりとカミソリを握る。
2006-05-16 23:50:00 -
392:
(綺麗…)美桜は取り憑かれたように自分の傷口を見つめる。赤い筋は量を増し次第に白い部分が少なくなっていく。それでも美桜はまだ見つめ続けている。
2006-05-16 23:52:00 -
393:
10分ほどそうしていて美桜はふと我に返る。自分の両手に目をやり、激しい後悔に襲われる。(ああ…また…)美桜はまだ皓輝に言っていないことがあった。
2006-05-16 23:53:00 -
395:
体を襲う激しい苦しみがひどく長く続いているうちに美桜には今自分の身に起こっていることが現実か夢なのかその区別がつかなくなっていった。そしてそれは発作が起こっていない日常にも及び出した。
2006-05-16 23:55:00 -
396:
起きていても夢の中にいるような気分。今自分が起きているのか眠っているの、それすら区別がつかない。現実と夢の区別をつけるためには《痛み》を感じるしかなかった。
2006-05-16 23:55:00 -
398:
だが始めは区別をつけるための《痛み》だったのが次第に《不安》や《苦しみ》から逃れる手段に変わっていった。《不安》や《苦しみ》に襲われているときリストカットをすると、何故か急にすっきりする。
2006-05-16 23:57:00 -
399:
そのことに気付いてしまい、美桜はリストカットが止められなくなってしまったのだ。それ以降もう数えきれないくらい何度と無くリストカットを繰り返してきていた。
2006-05-16 23:58:00 -
402:
連絡が取れない不安と、リストカットがばれれば皓輝を失うかもしれない、という不安で美桜はまたパニックに陥りかける。(ダメ!!もう絶対にやっちゃダメ!)
2006-05-17 00:01:00 -
404:
(明日になったらきっと連絡が取れるから)(皓輝はきっと元気だから)そう自分に言い聞かせながら手当てをしている内に、睡眠薬が効き始め、美桜はそのまま眠りに落ちた。
2006-05-17 00:03:00 -
405:
このとき美桜はまだ気付いていなかった。自分がどれだけ皓輝に依存し始めているかということに。そしてそれがどれだけ《危険》なことか、ということにもまだ気付いていなかった……
2006-05-17 00:04:00 -
406:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでです。お付き合いくださいましてありがとうございました。次回更新は明日の夜になります。
2006-05-17 00:05:00 -
408:
ラビ
主さん忙しいん?(;Д;)
2006-05-20 09:28:00 -
409:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ラビさんお待たせして申し訳ありませんっm(__)m急な仕事が入りバタバタしています。今暫らくお待ちいただけると幸いです。
2006-05-20 16:26:00 -
410:
名無しさん
昨日ここまで全部読みました。
更新楽しみにしています。2006-05-23 23:32:00 -
411:
美桜 ◆kJmhGaf60.
お待ちいただいていた方大変申し訳ありませんでした。今から少しだけですが更新させていただきます。
2006-05-24 00:32:00 -
412:
今日になってやっと熱も下がり、何とか店にも行けそうだった。(ヤベ、オレ全然連絡してなかった…)携帯を見ると不在着信だらけだった。店、従業員、客、そして…美桜。
2006-05-24 00:34:00 -
413:
この間喧嘩をして以来美桜とは連絡が取れていなかった。あの日、電話を切った後散々悠馬たちに『言い過ぎ』と言われ何となく皓輝からは連絡がしにくかったのだ。
2006-05-24 00:35:00 -
414:
それに美桜も怒っているのか全然連絡をしてこなかったので、結局ちゃんとした仲直りもできていない。(美桜、心配してるかな)と思い電話をかけようとしたのだが、時間を見るとまだ美桜は仕事中の時間だった。
2006-05-24 00:36:00 -
417:
電話をかける『口実』を見つけ、美桜の仕事が終わった時間にでも電話をしてみようと思いなおし、ひとまず悠馬に電話をかけた。コール音。「…皓輝さん!!」慌てたような悠馬の声が電話の向こうから聞こえる。
2006-05-24 00:40:00 -
418:
「おはようさん」「おはようさん、じゃないっすよ〜!!連絡も無しに3日間何してたんっすか!?」と悠馬が怒る。「悪い。風邪引いて寝込んでた」
2006-05-24 00:41:00 -
419:
「それにしたってメールくらいできるでしょう!!俺らどれだけ心配したと思ってるんすか〜」と最後の方は情けない声になりながら悠馬が言う。「まじ、ごめん。熱出てて、メールすらできる状況じゃなかったから」「まぁ、無事ならいいんっすけどね」
2006-05-24 00:42:00 -
420:
悠馬のあまりに情けない声に苦笑しながら、「で、3日間無事だった?」と尋ねる。「無事じゃないっすよ〜。皓輝さんのお客さんたちから電話鳴りっぱなし」
2006-05-24 00:43:00 -
421:
「あぁ、オレの携帯もすっげぇ着信してたわ」「…でしょうね」と悠馬も苦笑しながら言う。よっぽど店にも客からの電話が入っていたのだろう。
2006-05-24 00:44:00 -
422:
「あ」と思い出したように悠馬が言う。「昨日美桜姉からも電話ありましたよ」「…何て?」突然美桜の名前が出て何故か皓輝は動揺する。
2006-05-24 00:45:00 -
423:
「皓輝さんと連絡取れないから何かあったのかって。でも何かちょっと様子変でしたよ」と心配そうに悠馬がいう。「どういう風に変だった?」「なんかすっげー焦ってて、泣きそうな声でした」「……」
2006-05-24 00:47:00 -
424:
何かあったのだろうか。皓輝は不安になる。「…ダメっすよ、あんまり美桜姉に心配かけちゃ」「ああ。後で美桜に電話しとくわ。で、今日からは出勤するわ」「あ、はい。じゃあ、また後で」
2006-05-24 00:48:00 -
425:
悠馬との電話を切り皓輝は美桜に電話をしょうか悩む。どうせ仕事中なので出ないだろうが悠馬から聞いた美桜の様子が気になる。
2006-05-24 00:49:00 -
427:
5コールほど鳴らしたが出ないので電話を切ろうとした時「…はい」と美桜が電話に出た。「美桜ごめん、オレ昨日まで風邪引いてて連絡できなかった。電話もらってたけど、何かあった?」
2006-05-24 00:52:00 -
428:
「…ううん、特に」電話から聞こえる美桜の声は何となく元気がなかった。「皓輝、もう大丈夫なの?」「ああ。今日から店にも出ようと思ってる」「そう…あんまり無理しちゃダメだよ」
2006-05-24 00:52:00 -
429:
そういう美桜の声はやはり元気がない。「美桜、何か元気ないけど、どうした?」「そう?少し疲れてるだけだよ」「そっか。って、今日仕事は?」まだp.m.9:00なので本当なら美桜は仕事中のはずだ。
2006-05-24 00:53:00 -
430:
「疲れてるから今日は休んだの」「そんなに具合悪いのか?」「ううん、半分はサボりみたいなもんだから、大丈夫だよ」「そっか。それならいいけど…」
2006-05-24 00:54:00 -
431:
美桜は大丈夫だというがどうも様子がおかしい。だがいくら聞いたところで美桜はきっと大丈夫、としか言わないだろう。そう思いながら、「美桜、今日ミナミまで出てくる元気ある?」と尋ねる。
2006-05-24 00:55:00 -
432:
「…出るには出られるけど、お酒飲む元気はないかな」と一瞬ためらってから美桜は答える。「じゃあ、オープン前でもいいから時間ない?」「…いいよ。何時にどこ?」
2006-05-24 00:56:00 -
433:
美桜の誕生日プレゼントは店に置いてきてしまっていたので、「10:30に店前で大丈夫か?」「OK。じゃあまた後で」それだけ言って電話は切れた。
2006-05-24 00:57:00 -
435:
用意を終え、タクシーに乗りメールのチェックをする。『皓輝、どこで何をしてるの!?』『電話ぐらい出てよ!』と客たちからのメールはそんな内容ばかりだった。皓輝はうんざりし、返事をすることなく携帯を閉じる。
2006-05-24 00:59:00 -
436:
ミナミに着き早足で店に向う。p.m.10:15。約束の時間まで後15分だった。店の鍵を開け照明をつける。3日ぶりの店がなんだか少し懐かしかった。
2006-05-24 01:01:00 -
438:
約束の時間まで皓輝は3日間の売り上げのチェックや仕入れのチェックなどをしながら時間を過ごす。どうやら悠馬たちは皓輝が不在の間でもちゃんと仕事をしてくれていたようだ。
2006-05-24 01:03:00 -
439:
(あいつら、やれば出来るじゃないか…)と日頃の世話のやかされぶりを思い返し、少し腹が立つ。そう思っていると携帯が鳴った。《着信 美桜》
2006-05-24 01:04:00 -
440:
「はい」「今店の下。上がっていけばいい?」「ああ。鍵開けてるから入ってきて」そう言って電話を切り皓輝はふと気付く。(プレゼントってどうやって渡せばいいんだ?)
2006-05-24 01:04:00 -
441:
今まで皓輝は客はもちろん彼女ですらプレゼントなんてしたことがなかった。一緒に出かけたときに何かを買ってやったりとか、金を渡し好きなものを買ってこい、といったことはある。
2006-05-24 01:05:00 -
443:
「おはよ」と微笑みながら美桜が言う。やはり少し元気がないのだが、皓輝は(どうやってプレゼントを渡すか?)に気を取られているので、気がつかない。「おはようさん」とぎこちなく返す。
2006-05-24 01:07:00 -
444:
「思ってたより元気そう。良かった」と美桜が言う。「昨日までは大変だったけどな」と平静を装い皓輝は返事をする。美桜は皓輝のいるテーブルまで歩いてきて皓輝の隣に座る。
2006-05-24 01:09:00 -
446:
そう返事をしながらも皓輝は上の空だ。プレゼントのことばかりが頭を占めている。「皓輝?何かあったの?」とそんな皓輝を見て美桜が尋ねる。
2006-05-24 01:10:00 -
447:
「何で!?」「何か今日の皓輝ヘンだよ?」その言葉に皓輝は動揺する。「…そうか。」とだけかろうじて返事をする。「うん」と頷く美桜。沈黙が流れた。
2006-05-24 01:11:00 -
448:
皓輝は本当にどうしていいのかわからなくなり、背中の後ろに置いてあったプレゼントを摑み「やる」と突き出した。きょとんとした顔で美桜が皓輝を見る。
2006-05-24 01:12:00 -
449:
「何?」「だから、やる」と同じ言葉だけを繰り返す。不思議そうな顔をしながら美桜が受け取る。中を覗き「…皓輝…これ」と皓輝に尋ねる。
2006-05-24 01:13:00 -
450:
「今日お前誕生日だろ。だから…」「!?…ありがとう…開けていい?」「ああ」美桜は紙袋から中身を取り出し丁寧に開ける。そこに入っているのはReturn to TIFFANYのシルバーネックレス。
2006-05-24 01:14:00 -
451:
ネックレスを見つめ美桜は無言だった。「美桜…?」気に入らなかったのだろうか。恐る恐る皓輝は声をかける。美桜が顔を上げた。その顔を見て皓輝は驚いた。
2006-05-24 01:16:00 -
452:
美桜は瞳に涙を浮かべている。「!?どうした?」訳がわからず皓輝は動揺する。「…ごめん。凄い嬉しくて。皓輝、本当にありがとう」どうやら嬉し涙らしい。
2006-05-24 01:17:00 -
454:
「これ、皓輝が選んでくれたの?」「オレ以外に誰が選ぶんだよ…」その場面を想像したのだろうか、「…似合わない」と少し笑いながら美桜が言う。
2006-05-24 01:19:00 -
455:
「本当にありがとう。可愛いね」よほど嬉しいのか美桜は何度もありがとうを言う。「つけていいかな?」「…そのために買ったんだけど」
2006-05-24 01:19:00 -
456:
「そうだよね」と自分のせりふに苦笑しながら美桜はネックレスをつけようとした。ネックレスをつけようとしている美桜を見ているうちに皓輝の視線が美桜の左腕に止まる。
2006-05-24 01:20:00 -
457:
袖口からのぞく傷。まさか…!?ネックレスをつけ皓輝の顔を美桜が見る。皓輝の表情の変化に気づき「どうしたの?」と美桜が聞く。「皓輝、恐い顔してるよ?」
2006-05-24 01:21:00 -
458:
そういう美桜に無言で手を伸ばし左手を摑もうとする。「!?」驚いたように美桜が左手を引こうとする。それより素早く手を伸ばし腕を摑みシャツをめくる。
2006-05-24 01:22:00 -
459:
「!?」そこには真新しい傷と、それ以外にも無数の古い傷跡があった。「…お前、これ…」視線を逸らす美桜。「美桜…お前!?」「何でもないよ。ちょっと猫にひっかかれただけ…」
2006-05-24 01:23:00 -
460:
摑まれた腕を慌てて引きシャツをおろす。「…本当のこと言えよ」低い声で皓輝が言う。「…本当に何でもないから」と視線を逸らしたまま美桜は言う。「美桜!!」大声で名前を呼ばれ美桜の体はびくっとする。
2006-05-24 01:24:00 -
461:
「オレには本当のこと言う約束だよな」はっとしたように皓輝の顔を見る美桜。「…オレの客にも何人か似たような傷のある奴がいる。そいつらは…」
2006-05-24 01:25:00 -
463:
「…何で!?」「苦しくて…」と本当に苦しそうな表情で美桜は言う。「何が苦しかったんだ!?何があったんだ!?」「……」「美桜!!」
2006-05-24 01:27:00 -
464:
なかなか話そうとしない美桜に少し苛立つ皓輝。どんな理由があったとしてもやっていいことと悪いことがある。「…皓輝がいなくなっちゃうかもって思ったら…」「え?」
2006-05-24 01:27:00 -
465:
「昨日、皓輝と連絡が取れなかったでしょ?」「ああ」「だからお店に電話したの。そしたら悠馬が出て何日か前から皓輝と連絡が取れないって言うから…」
2006-05-24 01:28:00 -
466:
俯きながら美桜が言う。「…もしかしたら、皓輝に何かあったんじゃないかって思って…」「だからって、何で…」理由がわからず皓輝は苛立つ。「だからって、何でそんなことするんだよ!?」
2006-05-24 01:29:00 -
467:
「…だって!」と美桜は皓輝の顔を見ながら、「皓輝がいなくなるなんて耐えられないんだもん…皓輝がいなくなっちゃうかもしれないって思ったら恐かったんだよ!」と叫ぶ。そして
2006-05-24 01:30:00 -
470:
美桜以外の女にその台詞を言われたならきっと重たくてウザくて仕方がなかっただろう。だが皓輝の首にしがみつく美桜を皓輝は『愛おしい』と思った。
2006-05-24 01:33:00 -
472:
「ああ。だから二度とこんな馬鹿なことはするな」「美桜がいなくなるなんて、オレには考えられない…」そういいながら皓輝は美桜がいなくなることを想像してみる。
2006-05-24 01:35:00 -
476:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。少し忙しくしているので、次回の更新のお約束はできませんが、どんなに遅くても完結させますのでお付き合いいただければ幸いです。
2006-05-24 01:38:00 -
477:
美桜 ◆kJmhGaf60.
読んで下さっている皆様、本当にありがとうございます。
2006-05-24 01:39:00 -
478:
ラビ
わーい\(o゚ω゚o)/たくさん更新されてる↑↑無理せず頑張って下さいね。
2006-05-24 01:55:00 -
479:
sage
待ってます!
2006-06-04 22:01:00 -
482:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ラビさんを始めお待ちいただいていた皆様大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
今から再開させていただきます。2006-06-14 00:43:00 -
483:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side A~美桜〜 皓輝と出逢って初めての冬を迎えた。平穏な日々。生まれてきてから一番平穏で幸せな日々が続いている。
2006-06-14 00:44:00 -
484:
美桜 ◆kJmhGaf60.
もちろん時にはささいなことで喧嘩をすることもあった。だが初めて喧嘩をして以来2人で約束したことがあった。『喧嘩は1日で終わらす』こと。
2006-06-14 00:45:00 -
485:
美桜 ◆kJmhGaf60.
例えば『ごめんなさい』と言ったのに、その話題を次の日に蒸し返したり、話し合うことも無くお互い意地を張って何日も過ごしたり…
2006-06-14 00:46:00 -
486:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんなことが無いように、腹が立ったことがあればその日に言い、その日の内に解決すること。それが2人の間の数少ない約束の内の1つだった。
2006-06-14 00:47:00 -
487:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その約束のお陰で衝突することはあっても、次の日には必ずいつも通りの2人でいられた。
2006-06-14 00:48:00 -
488:
美桜 ◆kJmhGaf60.
こんなにも自分を出すことが出来て、そして相手も『素』で接してくれる。美桜は貴重な経験だった。
2006-06-14 00:49:00 -
489:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そして現在でもはっきりと覚えている『あの日』。美桜にとって人生で最良の日…
2006-06-14 00:50:00 -
490:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日は1月2日。時間はa.m.4:00。皓輝は毎年恒例の従業員全員でのカウントダウンのために12月31日から今日の夕方ぐらいまで神戸へ出かけていた。
2006-06-14 00:51:00 -
491:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが皓輝は1日になった瞬間、『あけましておめでとう』と電話をくれた。他にもかけなければいけないところはあるはずなのに、一番に美桜にかけてきてくれた。
2006-06-14 00:52:00 -
492:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう思うと美桜は一人で過ごす正月も寂しくはなかった。1人でのんびり正月番組などを見ながら過ごしていると、気がつけばこんな時間になっていた。
2006-06-14 00:53:00 -
493:
美桜 ◆kJmhGaf60.
(そろそろ寝ようかなぁ)そう思っていると《着信 皓輝》
2006-06-14 00:54:00 -
494:
美桜 ◆kJmhGaf60.
はぁい」「起きてた?」「起きてたよ〜」少し寝ぼけているような皓輝の声が受話器から聞こえてくる。
2006-06-14 00:55:00 -
495:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「どしたの?こんな時間に」「いや、特に用事はないんだけどな。何となく」「そっか。美桜は今から寝ようかな〜と思ってたところ」
2006-06-14 00:56:00 -
496:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「寝てないのか?」「何となくテレビ見てたら寝そびれちゃって」と苦笑しながら美桜は言う。
2006-06-14 00:57:00 -
497:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「暇だったら少し出てこないか?」「今からぁ?」と突然の皓輝の誘いに驚く美桜。「無理?」「無理じゃないけど、すぐには…」と美桜が返すと、
2006-06-14 00:58:00 -
498:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ああ、どうせオレも今から用意しないといけないし…」「じゃあ朝ご飯でも食べに行く?今からだとあんまりにも中途半端な時間じゃない?」「そうだな」
2006-06-14 00:59:00 -
499:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「じゃあ、7時にいつもの場所で待ち合わせね」「おう」と言って電話は切れた。
2006-06-14 01:00:00 -
500:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝はいつも突然美桜を誘う。でも美桜も日にちを決めて遊びに行く、というのが凄く苦手なので皓輝のペースは美桜にとってはちょうど良かった。
2006-06-14 01:01:00 -
501:
美桜 ◆kJmhGaf60.
知り合って半年が過ぎたがちゃんと予定を立ててから出かけたのはほんの2、3回程度だった。皓輝との約束の時間まではまだ間があるので部屋を片付けたりしながら時間を過ごす。
2006-06-14 01:02:00 -
502:
美桜 ◆kJmhGaf60.
しばらくして時計と見るとそろそろいい時間だったので用意をし始め、タクシーを呼び出かける。待ち合わせの場所に着いたのはa.m.6:50。
2006-06-14 01:03:00 -
503:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜は待ち合わせをするときいつも少し早めに行き皓輝を待つ。皓輝を待っている時間が好きだった。待っている間は1人だが時間になると皓輝がやって来る。
2006-06-14 01:04:00 -
504:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝がこちらに歩いてくる姿を見ているときが何故か一番孤独が癒される。『1人ではない』何故かそう強く思える。だから美桜は皓輝を待つのが大好きだった。
2006-06-14 01:05:00 -
505:
美桜 ◆kJmhGaf60.
a.m.7:10。いつも通り皓輝が時間に少し遅れてやって来る。「おはよ〜」「おはようさん」いつものやりとりだ。
2006-06-14 01:06:00 -
506:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「寒いね〜」「外じゃなくて、中で待っていれば良かったのに」そう言いながら皓輝は店のドアを開け美桜を中に入れてくれる。
2006-06-14 01:07:00 -
507:
美桜 ◆kJmhGaf60.
案内された席に座り皓輝の顔を見る。たった2・3日会っていないだけなのに、なんだか既に懐かしい。「どした?」と皓輝が尋ねる。
2006-06-14 01:08:00 -
508:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「いやぁ、好きだなぁと思って」「は!?」と皓輝が照れながら返事をする。「人が素直な気持ちを言ってるのに、『は!?』はないでしょ」と笑いながら美桜が言うと、
2006-06-14 01:09:00 -
509:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「お前が突然ヘンなこと言うから…」照れ隠しなのかタバコに火をつけながら皓輝は言う。
2006-06-14 01:10:00 -
510:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「何か2人でゆっくりするの久しぶりだね〜」「ああ、クリスマスからこっち何かとバタバタしてたからなぁ」としみじみ皓輝は言う。
2006-06-14 01:11:00 -
511:
美桜 ◆kJmhGaf60.
本当に年末の皓輝は忙しそうだった。クリスマスイベントから始まり、店の大掃除、30日には常連だけを呼んで店を開け、いつもの感謝の気持ちを込めて打ち上げ会。
2006-06-14 01:12:00 -
512:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その後は従業員たちとのカウントダウン。そして今日。「今日はゆっくりしていれば良かったのに」「まぁ、でもまとめて休みが取れるのは正月と盆くらいだからな。盆は慰安旅行があるし」
2006-06-14 01:13:00 -
513:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝の店のオーナーは『客よりオレ優先!!』とお客さんにも公言しているほど、従業員と過ごす時間が大好きな人なので、休みがあれば皓輝はオーナーに呼び出されている。
2006-06-14 01:15:00 -
514:
美桜 ◆kJmhGaf60.
もちろんオーナーは美桜と皓輝の関係を知っているがそれでも関係無しに皓輝を連れ回す。美桜はオーナーとも仲が良いので腹は立たないが、たまにやきもちを焼きたくなるほどだ。
2006-06-14 01:15:00 -
515:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう言えば皓輝の正月の予定を聞いていなかったことに気付き、「お正月、っていっても今日と明日だけだけど、どうするの?」
2006-06-14 01:17:00 -
516:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「今日は後で実家に帰る。で、そのまま実家に泊まって4日は実家から出勤予定」皓輝のお母さんは体が弱いので、今は実家を出ている皓輝もちょくちょく帰ってはいるのだが、ゆっくり実家にいられるときは母の傍にいてやりたいのだろう。
2006-06-14 01:18:00 -
517:
美桜 ◆kJmhGaf60.
家族と仲の良さそうな皓輝を見ていると正直羨ましく思う。自分が家族と上手くいっていないからこそ、皓輝が実家でゆっくりしたいというならそうさせてあげたい。
2006-06-14 01:19:00 -
518:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…ゆっくりできると良いね」「ああ。でも親戚とか集まってきてるだろうからなぁ…」と苦笑しながら皓輝は言う。「休みなのに酒呑まされそう」「ほどほどにね」
2006-06-14 01:20:00 -
519:
美桜 ◆kJmhGaf60.
とそこで少しふざけて美桜は「美桜も行こうかなぁ」「どこに?」「皓輝の実家に」と言うと皓輝が食べていたご飯を吹き出す。
2006-06-14 01:21:00 -
520:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「!?ちょっと汚ぁい!!」と美桜は慌ててよける。「お前がヘンなこと言うから…」「何で?」「突然正月なんかに連れて帰ってみろ。何言われることやら…」
2006-06-14 01:22:00 -
521:
美桜 ◆kJmhGaf60.
母や親戚に囲まれ質問攻めにあっている場面を想像したのか、うんざりした様子で皓輝が言う。
2006-06-14 01:23:00 -
522:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「冗談だよ。そんな非常識なことするわけないじゃん」と本音では少し寂しいのだがそんなことは口には出さず美桜は笑いながら言う。
2006-06-14 01:24:00 -
523:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな美桜の様子を見ながら皓輝がぼそっと、「…まぁ、焦らなくても20年後にオレの親戚はお前の親戚になってるから…」と言う。
2006-06-14 01:25:00 -
524:
美桜 ◆kJmhGaf60.
言われた言葉の内容を一瞬考え美桜は「皓輝…それって…」(プロポーズ?)と思いながらもその言葉は飲み込む。
2006-06-14 01:26:00 -
525:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…だから、そういうこと…」と美桜の方を見ずに皓輝は言う。思い切り顔を赤くしながら。
2006-06-14 01:27:00 -
526:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜は嬉しくて泣きそうになりながらも、わざとからかい口調で「え〜、20年後も美桜が皓輝の傍にいると思ってるところが凄いよね〜。どっからそんな自信が!?」と言うと、
2006-06-14 01:28:00 -
527:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「オレより良い男はそうそういないから」と皓輝もふざけて言い返す。どちらからともなく2人は笑い出す。
2006-06-14 01:29:00 -
528:
美桜 ◆kJmhGaf60.
…本当に現在思えばこの「時間」が一番幸せだったと美桜は思う。時間を戻せるなら、この頃に戻りたいと、現在の美桜は強く願い続けている…
2006-06-14 01:30:00 -
529:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでです。お待ちいただいていた皆様本当にありがとうございます。お待たせしてしまった時間を少しでも取り返せるようにまた更新頑張っていきたいと思っています。
2006-06-14 01:31:00 -
530:
名無しさん
?
2006-06-14 09:47:00 -
531:
ラビ
わーい\(o゚ω゚o)/久々だぁ。完結まで頑張ってくださいね??
2006-06-14 10:27:00 -
532:
美桜
ラビさん素早いレス&励ましのお言葉ありがとうございますm(__)m頑張ります!
2006-06-14 13:04:00 -
533:
美桜 ◆kJmhGaf60.
本日分の更新をさせていただきます。読んで下さっている皆様本当にありがとうございますm(__)m
2006-06-15 21:23:00 -
534:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side B〜皓輝〜 正月も明け、ミナミの街もいつもどおりの賑やかさを取り戻している。
2006-06-15 21:24:00 -
535:
美桜 ◆kJmhGaf60.
(今年でこの世界に入ってもう五年か…)そんなことを考えながら皓輝はミナミの街を眺めていた。
2006-06-15 21:25:00 -
536:
美桜 ◆kJmhGaf60.
この街は『虚飾』の街だと皓輝は思う。華やかなネオンの裏には目を覆いたくなるほど暗い背景が隠されている。
2006-06-15 21:26:00 -
537:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな世界に生き続けて早五年。この世界で皓輝が得たものといえば『金』だった。
2006-06-15 21:27:00 -
538:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな金では一家を養ってはいけない。もっとたくさんの金が欲しくて17歳の時に水商売の世界に足を踏み入れた。
2006-06-15 21:29:00 -
539:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝には父親がいない。父は皓輝が幼い頃に会社の金を横領し逮捕された。それからの父の消息は知らない。
2006-06-15 21:30:00 -
540:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今も獄中にいるのか、それとも出所してどこかで生きているのか。父は会社の金に手をつけただけでなく、金融からもたくさんの金を借りていた。…母を保証人にし。
2006-06-15 21:31:00 -
541:
美桜 ◆kJmhGaf60.
おかげで父が獄中に入ってからというもの毎日のように取り立て屋が皓輝の家を訪れた。
2006-06-15 21:32:00 -
542:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そのせいで元々丈夫ではなかった母は肉体的にも精神的にも追い詰められ、寝込むことが多くなり生活はいっそう苦しくなった。
2006-06-15 21:33:00 -
543:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな子供時代を過ごしてきていたので、皓輝は人一倍『金』に執着をするようになった。
2006-06-15 21:34:00 -
544:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そして水商売の世界は驚くほどの金を皓輝にもたらした。給料以外にも客が色んな物を貢いでくれる。
2006-06-15 21:35:00 -
545:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝が水商売にはまってしまうのにそんなに時間はかからなかった。
2006-06-15 21:36:00 -
546:
美桜 ◆kJmhGaf60.
売り上げを上げるためにずいぶんひどいこともした。ボトルを卸すのを嫌がった客を蹴ったり、未収を飛んだ客に追い込みをかけ風俗に落としたり。
2006-06-15 21:37:00 -
547:
美桜 ◆kJmhGaf60.
幼い頃皓輝を、皓輝の家族を苦しめた復讐をするかのように客たちに当たった。
2006-06-15 21:38:00 -
548:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だがそんな自分に正直うんざりしはじめていた。そんな時に美桜に出会ったのだ。
2006-06-15 21:39:00 -
549:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜も『父』に苦しめられ未だにその呪縛から抜け出すことが出来ない。父を恨み、そして自分を呪っている。
2006-06-15 21:40:00 -
550:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが美桜には皓輝との決定的な違いがあった。美桜は『真っ直ぐ』だった。
2006-06-15 21:41:00 -
551:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝は自分を苦しめた父の変わりに客を苦しめて来た。客たちが稼いでる以上の金を使わせ、払えなくなれば体を売らす。
2006-06-15 21:42:00 -
552:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな風に『金』に対する復讐をしてきた。
2006-06-15 21:43:00 -
553:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが美桜は自分が苦しんできた分、周りに優しくしようとする。どれだけ救いようがない人間でも手を差し伸べようとする。
2006-06-15 21:44:00 -
554:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だからこそ皓輝は美桜に惹かれたのだ。
2006-06-15 21:44:00 -
555:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜を幸せにしてやりたい。心からそう思う。お互いに子供時代に家庭に恵まれなかった分、幸せな家庭というものを美桜と一緒に築いていきたい。
2006-06-15 21:45:00 -
556:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが、美桜と過ごす時間が増えれば増えるほど、育ってきた環境の違いに直面させられる。
2006-06-15 21:47:00 -
557:
美桜 ◆kJmhGaf60.
裕福に育ってきた美桜。皓輝も今は自分で稼いでいるとはいえ、美桜が育ってきた環境とはずいぶん違いがある。そんな2人が上手くやっていけるのだろうか…
2006-06-15 21:48:00 -
558:
美桜 ◆kJmhGaf60.
それに皓輝は『犯罪者』の息子なのだ。そんなことが美桜の実家にバレてしまえば、当然2人は引き裂かれるだろう。
2006-06-15 21:48:00 -
559:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜と自分の置かれている環境を思えば、離れた方がいいのかもしれない……最近ではそう思うことすらある。
2006-06-15 21:49:00 -
560:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが、美桜が皓輝がいなくては息が出来ない、というように皓輝だって美桜がいない生活なんて考えられない。
2006-06-15 21:50:00 -
561:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜と一緒にいたい、という気持ちと、美桜のことを思えばこそ離れてしまった方が…という気持ちの間で日々皓輝は揺れていた。
2006-06-15 21:51:00 -
562:
美桜 ◆kJmhGaf60.
この日も、そんなことを考えながらミナミの街を歩いていた。そこへ《メール受信 美桜》。
2006-06-15 21:52:00 -
563:
美桜 ◆kJmhGaf60.
時間を見ると、美桜の出勤時間だったので、いつもの『いってきます』というメールだろうと思いながら受信メールを開いた。
2006-06-15 21:53:00 -
564:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だがそのメールには予想もしなかった言葉が書かれていた。
2006-06-15 21:54:00 -
565:
美桜 ◆kJmhGaf60.
『ごめんなさい。実家に引き戻されてしまって暫く皓輝とも連絡が取れそうにありません。もうすぐこの携帯も取り上げられてしまいそう。でも、きっと必ず皓輝の傍へ帰るから待っていて』
2006-06-15 21:56:00 -
566:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そのメールを最後に現在も美桜からの連絡は無い。美桜、現在どこでどうしている?ちゃんと笑ってるか?幸せにしているか?
2006-06-15 21:57:00 -
567:
美桜 ◆kJmhGaf60.
現在お前がオレの傍にいないのは、あの日、『離れてしまった方がいい』と思ったオレに対する罰なのか?
2006-06-15 21:58:00 -
568:
美桜 ◆kJmhGaf60.
現在なら言える。『お前を幸せにする』と。だから美桜、オレの傍に帰ってきてくれ。
2006-06-15 21:58:00 -
569:
美桜 ◆kJmhGaf60.
どれだけの時間が過ぎようとお前の帰りを待っているから……
2006-06-15 21:59:00 -
570:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。ありがとうございました。
2006-06-15 22:00:00 -
571:
コアラ
?しおリ?
2006-06-15 22:28:00 -
572:
美桜
コアラさん、しおりありがとうございますm(__)m
2006-06-16 12:59:00 -
573:
名無しさん
楽しみにしてます?頑張ってください??
2006-06-16 13:06:00 -
574:
名無しさん
この小説大好きです。頑張ってください!
2006-06-16 18:24:00 -
575:
美桜 ◆kJmhGaf60.
読んで下さっている皆様ありがとうございます。励ましのお言葉凄く嬉しいです。
今から少しだけですが更新させていただきます。2006-06-17 00:22:00 -
576:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side A〜美桜〜 皓輝と引き離されてどれだけの時間が経ったのだろう。……あの日、マンションのチャイムが鳴ったので、ドアを開けるとそこには厳しい顔をした父と、怯えたような母が立っていた。
2006-06-17 00:23:00 -
577:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「何の用?」そう言った美桜はいきなり父に殴られた。衝撃のあまり息が出来ず、頬を押さえる美桜に父は、「このマンションの契約は解約した。今すぐ引っ越しの準備をしろ」
2006-06-17 00:24:00 -
578:
美桜 ◆kJmhGaf60.
それだけ言い、部屋に入り荷物を持ち出そうとした。「ちょっと!!どういうことよ!?」慌てて父を追いかけ理由を問いただそうとする。
2006-06-17 00:25:00 -
579:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「どういうことだと!?藤沢家の娘が水商売で生計を立てるなんてそんなことが許されると思っているのか!?」と怒鳴りつける父。…バレたのだ。
2006-06-17 00:26:00 -
580:
美桜 ◆kJmhGaf60.
舌打ちをしたいほどの思いを押さえながら美桜は父に言う。「もう私は藤沢家とは関係の無い人間でしょ。そんな人間が何をやっていようとあんたには関係ない」と言うと、もう一度殴られた。
2006-06-17 00:27:00 -
581:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「事実がどうであれ、世間から見ればお前が藤沢家の娘であるということに変わりは無い。そんなこともわからんのか!」
2006-06-17 00:28:00 -
582:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「わからないわよ!私はあんたなんか知らない。もう藤沢の家は捨てたのよ!!」と美桜は全身で叫んだ。「美桜ちゃん…」とおろおろしながら母が声をかける。
2006-06-17 00:29:00 -
583:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「今はお父さんの言うことを聞いて…」「…お母さん。私は本当に家になんか帰りたくないのよ…またあんな地獄のような日々を過ごせというの?」と静かに美桜は母に言う。
2006-06-17 00:30:00 -
584:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…何の自由も無く、私に対する理解も無く、ただ人形のように日々を過ごす。そんな生き方に生きてる意味はあるの?」
2006-06-17 00:32:00 -
585:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜の言葉に母は目を見開きながらも、「それでも、死んでしまうよりは希望も持てるでしょう?」「…またあんな日々を過ごすくらいなら死んだ方がましよ」吐き捨てるように、美桜は言う。
2006-06-17 00:33:00 -
586:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その台詞を聞いた父が、「そうだな。いっそ死んでくれた方が藤沢家も恥をかかずに済む」と言った。
2006-06-17 00:34:00 -
587:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その台詞を聞いた途端、美桜の中で何かが切れた。『コノ人ハ本当ニ自分ノコトシカ考エテイナインダ』
2006-06-17 00:34:00 -
588:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…だったら、死んでやるわよ!」そう叫び、寝室に取って返し、化粧ボックスの中からカミソリを取り出し手首にあて一気に引いた。
2006-06-17 00:35:00 -
589:
美桜 ◆kJmhGaf60.
溢れ出す鮮血。叫ぶ母の声。それが美桜の『城』での最後の記憶だった。
2006-06-17 00:36:00 -
590:
美桜 ◆kJmhGaf60.
次に気がついたときには病院のベッドに寝かされていた。死ねなかったのだ。『死んでくれた方がまし』と言いながらも、いざその場面に直面すると、死なせることも出来ずに病院に運んだのだろう。
2006-06-17 00:37:00 -
591:
美桜 ◆kJmhGaf60.
自殺なんてされればまた藤沢家の対面が汚れるから。矛盾している。父の中で美桜は生きていても死んでしまっても『恥』なのだ。
2006-06-17 00:38:00 -
592:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう思うとおかしくなり美桜は独りベッドの上で声を出して笑った。美桜が生きていることで父を苦しめ続けることができるのであれば、それも良いかも知れない。
2006-06-17 00:39:00 -
593:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そこへ母が入って来た。「美桜ちゃん。どうしたの?」独り笑う美桜に母が心配そうに声をかける。「どうもしないわよ。何?」「美桜ちゃん、これ…」と言いながら美桜の携帯電話を差し出した。
2006-06-17 00:40:00 -
594:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「もうすぐこの携帯電話も止められてしまうの。だから今のうちにどうしても連絡を取りたい人に事情だけでも説明しておいた方が…」美桜は驚いて母を見る。
2006-06-17 00:41:00 -
595:
美桜 ◆kJmhGaf60.
どうせ携帯を止めろ、と父が言ったのだろう。だが、美桜は今まで母が父に逆らったところなど見たことが無い。その母が父に逆らって美桜にまだ使える携帯を渡すなんて…
2006-06-17 00:42:00 -
596:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「お母さん、どうしたの?そんなことがバレたらあいつに怒られるよ?」
2006-06-17 00:44:00 -
597:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「そうね…でも、お母さんだって美桜の幸せを望んでいないわけじゃないのよ?家を出ていた間に、美桜ちゃんにも大事な人はできたでしょう?せっかく出来た大事な人をこんな形で失って欲しくないから…」
2006-06-17 00:45:00 -
598:
美桜 ◆kJmhGaf60.
と母は寂しそうに微笑みながら言う。「ごめんね。お母さん頼りなくて…」あの大人しい母がそんなことを考えていたなんて。
2006-06-17 00:47:00 -
599:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…ありがとう…」美桜がそういうと母は、「いいのよ」とそれだけ言い病室を出て行った。
2006-06-17 00:48:00 -
600:
美桜 ◆kJmhGaf60.
渡された携帯を眺めながら美桜は考えた。連絡を取りたい人。そんな人はもちろん一人だけ。皓輝だ。
2006-06-17 00:49:00