小説掲示板3Ldkの城・?のスレッド詳細|夜遊びweb関西版

夜遊びweb掲示板 関西夜遊びweb掲示板 関西
エリア選択

夜遊び掲示板を検索する

スレッドタイトルを対象とした検索ができます。※スペースのあり、なしで検索結果は異なります。

掲示板リストメニュー

3Ldkの城・?

スレッド内検索:
  • 1:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ?は、↓です。
    http://bbs.yoasobiweb.com/test/mread.cgi/yomimono/1132987687/-5

    2005-12-19 14:05:00
  • 400:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    2人は、そろそろとリビングへと向かった。
    隣にある彼の部屋は、電気がついている。
    花は、その扉を開けようとした。
    だが、千草がその手を止める。

    2006-01-12 07:43:00
  • 401:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    振り返ると、千草は首を横に振っている。
    “そっとしとこう”というかのように、真顔を見せる彼。
    花は、扉から手を放し‥うつむいた。

    2006-01-12 07:45:00
  • 402:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    だが、居ても立ってもいられず‥花は勢いよく扉を開く。
    彼女の突発的な行動に、千草は驚いた顔で目を向けた。
    2人の目に入ってきたのは、肩を落として座る‥後ろ姿。

    花は、唇をかみしめた。

    2006-01-12 07:48:00
  • 403:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    自然と動く体。
    花は、彼を後ろから抱きしめた。
    顔の下に巻き付けた手の甲が‥次第に濡れていく。
    花は、陽平の涙を感じ‥瞳を潤ませた。

    2006-01-12 07:52:00
  • 404:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼を支えようとする花を見て、千草は震える手で拳を作る。
    「‥陽平っ」
    花は、必死に彼の名を囁いた。
    あんなにも‥楽しみにしていたのに。
    娘を引き取ることを夢に‥頑張ってきた姿が頭に焼き付いている。

    2006-01-12 07:56:00
  • 405:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥‥離れて」
    陽平は、花にポツリと囁く。
    慰められている‥この状態に、彼はすべてを察していた。
    コイツらは、どこかで‥あの光景を見ていた。
    そう思うと、浮かれていた自分が恥ずかしくなる。

    2006-01-12 08:00:00
  • 406:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「出ていけやっ!」
    離れない彼女に、八つ当たりする彼。
    陽平は、花の腕を振りほどき‥怒鳴り散らした。
    跳ね飛ばされた彼女は、その場から動けずに彼を見つめる。

    2006-01-12 08:03:00
  • 407:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、そっと彼女に手を伸ばし‥彼から遠ざけた。
    そして、大粒の涙を流す彼女を‥部屋へとつれていく。
    「もう‥今日は寝いや」
    沈んだ表情で呟く千草は、少し間を置いて‥彼女の部屋から出ていこうとした。

    2006-01-12 08:07:00
  • 408:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    だが、背後から鼻水をすする音が聞こえてくる。
    千草は、ドアの前で彼女へと振り返った。
    肩を震わせ‥泣き崩れる背中。
    彼の決心は、もろく消えていく。

    2006-01-12 08:11:00
  • 409:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥俺が‥おるよ」
    プライドも何もかも捨てた‥情けない表情で囁いていく。
    その言葉で、彼女の肩はピタリと震えを止めた。
    だが数秒して、再び崩れていく。

    2006-01-12 08:16:00
  • 410:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、彼女を背後から抱きしめた。‥そう、彼女が彼を抱きしめたように。
    彼女の震える肩が、千草の体を揺らし‥胸を締め付けていく。
    「‥頼むから。もう‥アイツのことで泣くなや」
    千草は、今でも減ることのない想いを一気に吐き出していく。

    2006-01-12 08:22:00
  • 411:

    名無しさん

    2006-01-12 14:28:00
  • 412:

    名無しさん

    ぱぱらっち

    2006-01-12 18:29:00
  • 413:

    きさ

    しぉり?主さん頑張ってね(^-^?)

    2006-01-12 19:54:00
  • 414:

    名無しさん

    2006-01-13 01:49:00
  • 415:

    名無しさん

    2006-01-13 02:19:00
  • 416:

    名無しさん

    あげ?

    2006-01-13 19:52:00
  • 417:

    名無しさん

    あげ!!!

    2006-01-14 17:35:00
  • 418:

    名無しさん

    書いて?

    2006-01-15 16:32:00
  • 419:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    皆さん、いつもありがとうございますo(_ _*)o今から書きますφ(._.)

    2006-01-15 19:15:00
  • 420:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    あ、すみません。用事が(>д

    2006-01-15 19:22:00
  • 421:

    ??

    頑張ってはよ書いて??毎日見て更新されんの待ってんねん??

    2006-01-16 00:39:00
  • 422:

    ゆな

    夜中更新するんじゃないんですか?寝むいけど待ってるんですが。

    2006-01-16 05:12:00
  • 423:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    やっと落ち着きました(_

    2006-01-16 05:39:00
  • 424:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「もう泣くな。俺のこと…見てや」
    千草は、彼女の髪の毛に顔を埋めた。
    熱い想いに包まれながら、花はまぶたを下ろした。
    まつげを濡らした粒は、顎へと流れ落ちる。

    2006-01-16 05:47:00
  • 425:

    名無しさん

    2006-01-16 07:45:00
  • 426:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「千草…」
    「家見つけんの…難しいんやったら、俺と住もう」
    彼女は、絡みつく腕を振り払うかのように、体をねじった。しかし、千草は彼女が離れないように、腕に力を込めていく。
    「放し…」
    「俺がおるやん!!」

    2006-01-16 15:08:00
  • 427:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、逃れようとする彼女に叫んだ。
    花は、ゆっくりと顔を上げる。
    「…俺を見て」
    うずくまるかのように体を伏せて、小さく呟く千草。

    2006-01-16 15:15:00
  • 428:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼の強い想いが、花の胸を苦しくさせていく。
    彼女の表情は、険しく歪んでいく。

    …こんなにも強く想ってくれてるのに、心は…陽平を欲してる。
    答えてあげれない悔しさに、花は唇をきつく噛みしめた。

    2006-01-16 15:28:00
  • 429:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ごめん…」
    乾いた喉に…掠れた声を流していく。
    「…イヤや」
    断られても、千草は諦めようとしない。
    小さな子供のように、彼は彼女の背中にしがみついた。

    2006-01-16 15:33:00
  • 430:

    名無しさん

    切ないなぁ(;Д;)千草も花のも気持ちわかるぅセツナイ…

    2006-01-16 21:51:00
  • 431:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    感想ありがとう。最近バタバタしてて、書くの遅くてごめんなさい。

    2006-01-17 00:50:00
  • 432:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「……ごめん」
    引き下がらない彼を前に、花はうつむく。
    「イヤや」
    千草はギュッと彼女を包み、眉間にシワを寄せた。
    自分が欲しがっている…相手。悲しいことに、2人の気持ちは絡み合うことがない。

    2006-01-17 00:57:00
  • 433:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    無理と解っていても、千草は身を引きたくなかった。
    “好きな人の幸せを願う”
    そんなのは、テレビやマンガだけの話。
    千草は、そんな気持ちになることができない。

    2006-01-17 01:00:00
  • 434:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    好きなら、やっぱり…自分の手で幸せにしたい。
    これが、ここ数日悩んで…出た答え。
    陽平が好きなら、身を引こう。応援しよう。
    そう思ったりもした。

    2006-01-17 01:02:00
  • 435:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    でも、素直にそう思うことが出来ない。
    花が欲しい。
    花といたい。
    花がいい。
    俺をみて。

    2006-01-17 01:04:00
  • 436:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平のことで泣き崩れる彼女を見て、頭の中に浮かんだ言葉は…

    “俺ヲ選ンデ”

    …これだった。

    2006-01-17 01:06:00
  • 437:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    何の音もない静けさに、2人の吐息だけが熱を絡ませ…唇の外へと広がっていく。
    花は、言葉が見つからず…困り果てていた。
    「ごめん。困らせてるんは…解ってる。でも、花だけは渡したくないねん。花だけでいい。他は…何もいらんから」
    千草は、彼女をチラリと見て…顔を歪めた。そして、駄々をこねる自分を恥じていく。
    でも、気持ちは撤回しない。

    2006-01-17 01:19:00
  • 438:

    名無しさん

    うわぁもうたまらん??切なすぎる?胸痛いやん?芽衣チャン頑張って書いてな?この小説ほんま好きやわ?

    2006-01-17 02:34:00
  • 439:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ありがとう(>д

    2006-01-17 15:36:00
  • 440:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、瞳を閉じて…深く息を吸った。
    小刻みに震える彼の手を、握り返してあげれない…悔しさ。
    もう…嘘はつきたくない。
    花は意を決し、彼の瞳を強く見た。

    2006-01-17 15:40:00
  • 441:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「…千草。落ちついて…聞いて」
    優しく…彼の髪の毛を撫でていく。
    千草は、怯えるような目を彼女に向けた。
    「…あたし、千草のこと…大事に思ってるねん。……最初は嫌な奴やと思ってたけど、今は…ほんまに大切な人」

    2006-01-17 15:44:00
  • 442:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花の優しい口調に、千草は潤ませた瞳を落とし…下唇を噛んだ。
    「だからこそ、利用したくないねん。…つらいから、しんどいから…千草と付き合う。そんなんは…間違ってるから。」
    花は、胸に詰まる彼への思いを…途切れ途切れに囁いていく。
    「だから、千草とは付き合われへん。千草を大事にしてるからこそ、そんなことは…絶対にしたくないねん」
    力強く答える彼女に、千草は崩れるかのように…肩を落とした。

    2006-01-17 15:53:00
  • 443:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    力を抜いた腕が、体からスルスルと離れていく。
    花は、彼の髪に触れていた手に、やるせない思いを込めた。
    指と指の隙間から、柔らかな髪の毛が流れる。
    「…わかって」
    彼を映した視界は、次第に歪んでいく。

    2006-01-17 16:01:00
  • 444:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    まばたきと共に、頬は濡れていく。
    花は、静かに涙を流した。
    タタミに滲む…涙の粒。
    それを眺め、千草は唇から歯を放し、深いため息をついた。

    2006-01-17 16:07:00
  • 445:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    受け入れたくない…結果。
    出来ることなら、もう一度…駄々をこねたい。
    でも、きっと…そんなことをしても、花は俺を選んでくれない。
    千草は、涙を浮かべた目に彼女を映す。

    2006-01-17 16:15:00
  • 446:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そして、最後のワガママとして…彼女を抱きしめた。
    …強く…強く、想いを込めて。
    この腕を放せば、もう…こんな風に彼女を想うことも出来なくなる。
    千草は、微かな時間を胸に刻み込んだ。

    2006-01-17 16:18:00
  • 447:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「…わかった」
    彼女の髪の毛に顔を埋め、噛みしめるかのように…その台詞を呟く彼。
    …手に入らなくても、自分を大切にしてくれている気持ちがある。
    叶わぬ想いは、彼女の優しさで溶けていく。
    彼の言葉に、花は目を見開き…そして優しく視界を塞いだ。

    2006-01-17 16:24:00
  • 448:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2006-01-17 16:30:00
  • 449:

    名無しさん

    2006-01-17 18:53:00
  • 450:

    あすか

    しおり??

    2006-01-17 18:54:00
  • 451:

    名無しさん

    2006-01-17 19:21:00
  • 452:

    名無しさん

    2006-01-17 21:00:00
  • 453:

    頑張ってね?

    2006-01-18 06:54:00
  • 454:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    皆さん、本当にいつもありがとうございますo(_ _*)o

    2006-01-18 08:54:00
  • 455:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    コトン…。
    部屋へと戻った千草は、棚の横に立ててある鏡に自分を映した。
    頬を縦に切る…一筋の跡。
    彼は、指先でそれを消していく。
    もう…彼女を忘れなければならない。

    2006-01-18 14:43:00
  • 456:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は濡れた指先を擦り、ポケットから煙草を取り出した。
    煙を吸い込み…ゆっくりと吐き出す。
    だが、うまく吸うことが出来ない。
    吸って吐く中で、唇は震え…涙が溢れてくる。
    彼は声を押し殺し、一晩中…涙に溺れていた。

    2006-01-18 14:47:00
  • 457:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「俺もこの部屋出ていくから、3月の末までに…部屋見つけといて」
    朝を迎え、2人がリビングに顔を出すと…陽平は玄関で靴を履いていた。
    背を向けたまま、淡々と用意を済ませた彼は、先に部屋を出ていく。
    残された2人は、数回会話を交わし…仕事場へと向かった。

    2006-01-18 14:56:00
  • 458:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「桜井、これ。基盤先のリストや」
    騒がしい社内で、上司から束ねた資料を受け取る陽平。
    彼は、デスクにヒジをつき…それを眺める。

    2006-01-18 15:00:00
  • 459:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    紙を持つ手は、脳内に浮かぶ記憶によって停止する。
    …元嫁が言った…最後の言葉。
    震える指先は、紙にシワを作り出す。
    陽平は、険しい顔で…一点を見つめていた。

    2006-01-18 15:04:00
  • 460:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    確かに、妊娠がキッカケで…俺たちは結婚した。
    でも、愛してなかった訳じゃない。
    …若すぎたから、余裕がなかっただけ。
    俺は…俺なりに頑張っていた。

    2006-01-18 15:07:00
  • 461:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    生活費を稼ぐ為に…仕事に打ち込んできた。
    でも…彼女の言うとおりかもしれない。

    心のどこかで、自由を失ったことを…恨んでいたかもしれない。

    2006-01-18 15:10:00
  • 462:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    昔から…そうやった。
    俺は、いつも同じ理由で人を失ってきた。
    自分でも…自覚している理由。

    …俺は、人と…深く付き合えない。

    2006-01-18 15:12:00
  • 463:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    人に近づくときも、触れ合うときも、いつだって…俺は一線を引いている。
    別に意識をして…引いているわけじゃない。
    ただ、深く…込み入ることが出来ないだけ。

    そうやって、何人もの人間を振り払ってきた。

    2006-01-18 15:15:00
  • 464:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    元嫁にも…花にも、同じ理由で突き放してきた。
    自分にいっぱいいっぱいで、自分が一番大切で、面倒なことから…逃げてばかり。
    でも、愛してなかったわけじゃない。
    こうするしか…出来なかった。
    こんな風にしか、愛せなかった。

    2006-01-18 15:18:00
  • 465:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    …その日から数日間、3人は別々に…部屋を見つけていく。

    「ここと…ここに書いてほしいねん」
    3月の末を目前にした…休日。
    花は、父親の家に訪れていた。

    2006-01-18 15:23:00
  • 466:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そこは、以前とは打って変わった空気が佇んでいる。
    あの親子が出ていった…殺風景な家。
    保証人を原因に部屋は見つからず、花は唇を噛んで…父親に連絡をした。
    予想外に、事は淡々と進んでいく。
    父親は嫌がることもなく、静かに受け入れてくれた。

    2006-01-18 15:31:00
  • 467:

    きさ

    主さん頑張ってね?

    2006-01-18 15:33:00
  • 468:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「…また、家に…遊びにおいで」
    最後の箇所にハンコを押しながら、父親は…弱々しく囁いた。
    その言葉を耳に、花は父親をジッと見つめた。
    こぢんまりとした…体。
    あんなに大きく威圧感を漂わせていた父親は、いつのまにか…こんなに小さくなっていた。

    2006-01-18 15:40:00
  • 469:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    きさサン、いつも応援ありがとo(_ _*)o

    2006-01-18 15:41:00
  • 470:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ちゃんと…ご飯食べてるん?」
    花は、ポツリと小さく声をかけた。
    「最近は…コンビニ弁当やな」
    父親は下を向いたまま…答える。
    家に訪れてから、初めて交わす…まともな言葉。

    2006-01-18 15:47:00
  • 471:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ありがと。じゃあ、また…来るわ」
    玄関のドアノブを手に、花はクルリと後ろを振り返る。
    父親はコクリと頷き、優しく微笑んだ。
    少し開けたドアの隙間から…明るい光が射し込んでくる。
    花は腕の動きを止めて、顔をしかめた。

    2006-01-18 15:51:00
  • 472:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そして、鞄の中から書類を取り出す。
    不思議そうに見る父親の視線を背に、彼女はそれをゆっくりと破いた。
    「お前っ…」
    突然の行動に、父親は身を乗り出し…草履を履いた。

    2006-01-18 15:54:00
  • 473:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「お父さん、あたしの料理…食べたことなかったよな?」
    花はニコッと振り返る。
    父親は眉間を寄せたまま、口を少し開いた。
    「…コンビニ弁当よりは、おいしいと思うで」
    そう言って、彼女は優しく笑みを見せた。

    2006-01-18 15:58:00
  • 474:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    外から入り込んでくる、暖かい季節の風。
    …もうすぐ春。
    まだ…それは冷たくて、肌は慣れていない。

    花は、父親と住むことを…決意した。

    2006-01-18 16:02:00
  • 475:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「誕生日、おめでとう」
    3人で過ごす最後の夜、花は千草と2人で…陽平を祝う。
    そこは、花のときみたいに…出来る限り部屋を華やかに飾っていた。
    玄関口で立ち尽くす彼は、驚いた表情で足を近づけてくる。

    2006-01-18 16:14:00
  • 476:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    鮮やかな色を広げた料理、数本のローソクに灯る…暖かな赤。そして、それに照らされた柔らかな微笑み。
    視界に映る…淡い空気に、陽平の胸は罪悪感を点滅させていく。
    「ほら、火ぃ吹いてっ」
    花は、呆然と立つ彼に声をかけた。

    2006-01-18 16:22:00
  • 477:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平はゆっくりと腰を下ろし、息を吹いていく。
    火が消えると共に、真っ暗になる部屋。
    千草はスクッと立ち上がり…電気をつけようとした。
    そのとき、陽平の声が微かに聞こえてくる。

    2006-01-18 16:26:00
  • 478:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「…ごめんな」
    乱れた呼吸に揉まれながら、囁かれる言葉。
    静かな空間に、鼻水をすする音だけが流れていく。
    …今まで自分のことばかり考えてきた。
    そんな俺に、2人は最後まで優しく…過ごそうとしてくれる。

    2006-01-18 16:30:00
  • 479:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    泣き崩れる彼に心を打たれながらも、2人は賑やかに振る舞っていく。
    3人で過ごす最後の夜は、今までで1番…心を通わせることの出来た時間になった。

    2006-01-18 16:35:00
  • 480:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「じゃあ、これ」
    「今までありがと」
    翌朝…最後の荷造りをする陽平に、花と千草は鍵を手渡していく。
    赤と水色のリボンをくくりつけた…同じ鍵。
    陽平は、それを受け取ると…ポケットにしまい込んだ。

    2006-01-18 16:41:00
  • 481:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、彼のポケットを眺め…深呼吸をする。
    そして、足元に置いていたバックに手を伸ばした。
    「じゃあ、俺…行くわ」
    そう言って、部屋を後にする。

    2006-01-18 16:44:00
  • 482:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼を見送った後、残された2人は顔を見合わせた。
    「…じゃあ、あたしも」
    気まずさが広がる前に、花は彼から目を逸らし…荷物を背負う。
    「また、遊ぼな」
    花は、その言葉を置いて靴を履いた。

    2006-01-18 16:47:00
  • 483:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    …この部屋の匂いも、最後。
    花は、ゆっくりとそのドアを閉めた。
    …初めてこの場所にきた日が、つい最近のことのように思えてくる。
    一段一段…階段を踏みしめる度に、今までの数ヶ月が蘇っていた。

    2006-01-18 16:53:00
  • 484:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「100均…行こっかな」
    花は、階段を下り終わると…ポツリとつぶやいた。
    そして、コンクリートの建物に背を向け…歩き出す。

    一方、ひとり残された陽平は…再度荷造りを進めていく。

    2006-01-18 16:58:00
  • 485:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    電気を消した…数々の部屋には、たくさんの思い出が詰まっている。
    元嫁や子供と過ごした日々。そして、花や千草との…賑やかな空気。
    それは、全て…ダンボールの中には入らず、今も余韻を広げている。
    違う形にすることが出来たのかもしれない。
    彼の中で、様々な悔いが込み上げていた。

    2006-01-18 17:03:00
  • 486:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ありがとうございました。またお越しくださいませぇ」
    店員の声を途切る…自動ドア。
    花は、百円均一の店を後にし…父親が住む家へと足を進めていく。
    そして上を向いた。

    2006-01-18 17:06:00
  • 487:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ふんわりとした雲を浮かべる、青の空。
    彼女は白いナイロン袋をギュッと握りしめ、瞳を閉じた。

    …長い冬が終わっていく。

    2006-01-18 17:09:00
  • 488:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    この数ヶ月、陽平と住んだことによって…素直な気持ちをもてた。
    何年もの間、塞ぎ続けてきた想い。
    結果は、実らなかった。
    でも、後悔はしていない…。

    2006-01-18 17:12:00
  • 489:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「やっと、前に進める…かな」
    太陽の光に照らされた…彼女の表情は、どこかスッキリとしていた。
    「さぁ、さっさとこれ片づけて…手料理食わせらな」
    父親とは、少しずつ…話せるようになってきた。きっと、いつか…本当の親子に戻れる日が…絶対にくる。
    花は、凛とした表情で家へと向かった。

    2006-01-18 17:17:00
  • 490:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「よしっ、後は事務局行くだけやな」
    荷物を全て運び終えた陽平は、ポケットに手を入れた。
    2人から受け取った鍵を、手のひらで包み…眺める。
    そして、リボンを外していく。

    2006-01-18 17:20:00
  • 491:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「はぁ、やっと取れた」
    きつく結びつけられた赤いリボンを外し、一息つく。
    そして、千草の鍵に目を向けた。
    「…あ、こっちはメッチャ緩い」
    独り言を呟きながら、緩んだ結び目を解いていく。

    2006-01-18 17:24:00
  • 492:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そして、目を見開いた。
    水色の布には、鉛筆で記された…薄い文字。
    それを眺め、彼の表情は重く化していく。
    そして、リボンを強く握りしめ…部屋を飛び出した。

    2006-01-18 17:27:00
  • 493:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「そろそろ気づくかな」
    新しい部屋にたどり着いた千草は、時計を眺める。
    彼は、昨夜…鍵を彩るリボンに願いを込めていた。
    「…ほんまに、面倒くさい奴ら」
    そう言って、ダンボールに入っている荷物を片づけていく。

    2006-01-18 17:32:00
  • 494:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そのとき、突然…インターホンの音が部屋中に広がっていく。
    千草は不思議そうに立ち上がり、玄関のドアを開けた。
    そして、ポカンと口を開く。

    2006-01-18 17:34:00
  • 495:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼の元に訪れたのは、事務員の彼女だった。
    驚いた表情の千草は、少し下を見て…優しく微笑んだ。
    「部屋片づけんの…手伝ってくれる?」
    その笑顔は、昔の彼を映し出すかのようなものだった。
    微かな希望の光が、彼に差し込んでいく。千草は、彼女に心を開き始めていた。

    2006-01-18 17:41:00
  • 496:

    名無しさん

    2006-01-18 17:42:00
  • 497:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「買いすぎたかも…」
    帰りしなスーパーに寄った花は、ナイロン袋を覗きながら歩いていた。
    自然と3人分買う癖がついている。
    花は、そんな自分をクスクスと笑いながら…顔を上げた。

    2006-01-18 17:44:00
  • 498:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE



    そして、目が点になる。

    2006-01-18 17:45:00
  • 499:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    “松浦”と記した表札は、陽平の背中で隠されていた。
    立ち止まる彼女は、呆然と彼を眺めている。
    「…ごめん」
    ポケットの中のリボンを強く握り、陽平は気まずそうに目を伏せた。

    2006-01-18 17:50:00
  • 500:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼女の瞳は次第に潤んでいく。
    「夕飯…食べてってよ。多めに買ってもたから…」
    涙に濡れた笑顔で、彼へと走っていく。
    花は、後悔を抱えた彼の胸へと飛び込んだ。
    春を描くアスファルトには、ポトリと落としたナイロン袋と…重なる影。

    2006-01-18 17:56:00
新規レスの投稿
名前 (8文字まで)
E-mail
必須本文 (750文字まで)
3Ldkの城・?を見ている人におすすめの掲示板

スレッドタイトルを対象とした検索ができます。
※スペースのあり、なしで検索結果は異なります。