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151:
前方からホストと歩いて来る女に雅也は目をやった。
『あの子…どっかで見た事あるっ…け。』
べつに不思議な事でもなんともない。しかし、雅也はなぜかその女が気になった。2006-03-03 11:33:00 -
155:
まるで人形に触れているかのように冷たい二の腕。
凍ったように、生気のない大きな目。
雅也は背中に走る嫌悪感に、少し手に汗を感じた。2006-03-03 11:36:00 -
156:
『あ、ありがとう☆ごめんね〜酔っちゃって〜』
その女はヨロヨロとよろけながら立ち上がる。
パンパンッッと細い足を包むデニムを叩き、雅也を見上げる。2006-03-03 11:37:00 -
157:
まるで人形が人間になったかのように、
女は微笑ましい笑顔で雅也に笑いかけた。
『あ、ホスト〜!?飲み足りないし君の店行くわ〜☆どこ?行こ行こ(。゚∀゚。)』
一人でキャラキャラと女は喋る。2006-03-03 11:38:00 -
158:
『…お兄さん?聞いてるー!?名前は!?』
----突如覗き込まれて、雅也ははっとする。
『あ、カズ…キ。カズキやで。名前は?』
なぜか本名を言いそうになり、雅也は我に帰り焦ると源氏名を告げた。2006-03-03 11:39:00 -
160:
『ドンペリは渋いから嫌い。そーやなぁ…。クリュグ持ってきて☆ピンクね☆
コールはうるさいから嫌い。グラス持って来て。
あ(。゚∀゚。)カズキは?頼んで頼んでッッ。』2006-03-03 11:42:00 -
161:
『あの客新規すか!?えらい上玉っすねカズキさんッッ!!しかもベッピンやしー!!!!オレなら枕歓迎!!!』
──バックルームで新入りのマサトが鏡に写る自分の頭をいじりながらはしゃいでいる。
『アハハ。何言ってんの。お前早くしなょー』2006-03-03 11:43:00 -
162:
『カズキは何歳なんー?』
----ヘラヘラと、
まるでさっきの異常なまでも凍てついた表情など微塵も見せずに、サリは笑いかける。
『23やで。サリは?』
『サリは21☆老けてるやろ?26とか普通にゆわれるねんヶド!!!ダッヒャッヒャ!!!』2006-03-03 11:44:00 -
163:
【サリ】は本当によく笑っていた。
------数時間して、
『あ、ソロソロ帰ろかな』
とサリはいきなり告げ、財布から分厚い現金を出すとテーブルに置いた。
『多いって、笑。こんだけ貰うわな。ありがとう。』2006-03-03 11:46:00 -
164:
エレベーターに乗る。
うるさい店内から解放され、静か過ぎるエレベーターの中では慣れずにまだ耳が少しキーンと鳴っている。
雅也は?のボタンを軽く押し、振り返ると…2006-03-03 11:47:00 -
165:
ポスッ・・・・・
『え…サリ?…大丈夫?』
----いきなりフワッともたれかかってきたサリに、躊躇いながら雅也は背中に手をあてた。2006-03-03 11:48:00 -
166:
『…………ん。』
腕の中で小さくコクリとサリは頷き、軽すぎる重心を雅也にかけている。
雅也は何もかける言葉が浮かばない。
刻一刻と、エレベーターは下へと向かう。
──?・?・?・?・・・・2006-03-03 11:50:00 -
167:
──?・・チーン!!!
タイムリミットを告げるエレベーターの音が響いた時。
ふぁッ・・・と軽い体が腕から離れてゆく。
『ふふ。今日はありがとう☆バイバイ…』2006-03-03 11:50:00 -
168:
むず痒いような、少し息が詰まるような。
ほんの数時間で、雅也はサリに恋をしていた。
愛おしく、生暖かい感情が言葉に出来ない。
ゆっくりと離れて行ってしまうサリの背中。
----気がつくと雅也は足を動かしていた。2006-03-03 11:52:00 -
169:
グイッと細い腕を掴む。
『へッッ!?あ、カズキ?どーしたん☆びっくりするやんー!!』
素っ頓狂な笑顔を作り、サリは雅也にそう言った。
『……腹…』
『腹!?痛いん!?飲ませ過ぎたかなあたし!?大丈夫!?』2006-03-03 11:54:00 -
170:
『腹減ったやろ(`∀´*)飯行こ飯!!!』
"なんてダサい誘い文句だ"
と、本人も思っているのか雅也の頬は真っ赤になっていた。
『*゚Д゚)・・・・・。』
サリはポカンとした顔で、少し口を開け立ちぼうけている。2006-03-03 11:55:00 -
171:
真っ赤だった雅也の頬は次第に青ざめて行く。
《うわ…俺ダッサ…最悪・・》
心の中では恥ずかしい余り、のたうちまわる雅也。
『*゚Д゚)・・・・・・・』
サリはしばらく立ちぼうけ、2006-03-03 11:56:00 -
172:
『・・・・・・ぶッッ』
ついに口が動いた。
『ぶッッ!!!(`ε`*)……ダッヒャッヒャッヒャッヒャーー!!』
そして笑い出す。
『?3?やっけ?カズキって。ァヒャヒャ!顔が!!顔が赤い!!アハハ!』2006-03-03 11:57:00 -
173:
『…うま!!!』
『やろー(。゚∀゚)ここ、あたしの1番のお気に入りやねん☆』
----スカスカの店内で、サリは指揮者のように自慢げに箸を振り回す。
『アハハ。サリ、お箸から米が飛んでくるよ(。´v`。)うん。でもほんと旨い。』
『友達にも内緒やねんで☆ここのご主人堅物やし、流行ったら嫌やしカズキも内緒なッッ』2006-03-03 11:58:00 -
174:
『ハハっ。でも客連れてはこれそにないね。』
----古ぼけたパイプ椅子はガタガタと不安定。
壁はガランと萎びたコンクリート。
見渡して俯き加減に雅也は笑った。
『ダッヒャッヒャ!!確かに☆じゃあ、二人の秘密基地ね。』2006-03-03 11:59:00 -
175:
…《秘密基地》
なんだかその言葉が嬉しくて、雅也は照れる気持ちを隠そうと煮っころがしをほうばった。
でもなぜか、時折見せるサリの淋しげな笑顔に雅也は目には見えない不安を抱いていた。2006-03-03 12:00:00 -
176:
それから何度も雅也とサリは会っていた。
電話番号は交換していたが、
サリは気まぐれで。
《秘密基地》でご飯を食べては他愛もないお話をする。
雅也は、心がホワリと温かくなる日々に、すごく幸せを感じていた。2006-03-03 12:02:00 -
177:
──そんなある日。
『…って事が有ってー本当びっくり…、…サリ?』
その日のサリは何かがおかしくて、雅也は口を紡いだ。
『あ!?ごめんごめん。なんか寝不足で。ァハ(。゚∀゚。)で、なんですって?』2006-03-03 12:03:00 -
178:
『…顔色悪ない?』
『そー?大丈夫やで(。´v`。)カズキは気にしすぎやいッッ。ホレホレ早く食べなされっ!!』
そう言って笑うと、サリは雅也の皿に唐揚げや煮物をドカドカ乗せる。2006-03-03 12:04:00 -
179:
『さて、腹ごしらえもしたし、どっか行く?』
雅也は小銭をチャリチャリと手のひらで踊らせながら言う。
『眠いから帰る(。゚∀゚。)』
サリは雅也を見つめ返す事もなくそう言った。2006-03-03 12:05:00 -
180:
『そ。じゃタクシー拾おーか』
チャラつく小銭を乱雑にポケットに仕舞い込み雅也はサリを追い越し歩き出した。
朝の南はタクシーも諦め気味に走る。
手を上げるとすぐに止まり、サリは乗り込む。
『ありがと。』少しはにかんでそう呟くとドアがしまった。2006-03-03 12:07:00 -
182:
『カズキ電話。』
八重歯がチャームポインツな隼人がタバコをくわえながら差し出しす携帯を受け取り、少し気だるさの漂う表情を浮かべ雅也は画面に目をやる。
『?(゚Θ゚。)!!』
雅也は携帯の画面を凝視した。2006-03-03 12:09:00 -
183:
【【着信-**サリ**-】】
こちらからかけたって気まぐれで出ない確率9割のサリからの着信。
今朝の飯屋での表情も頭を過ぎり、雅也は嫌な予感がした。
──直感は時に残酷な程に的確だ。…あの時のように・・・・2006-03-03 12:10:00 -
185:
雅也の母は、
雅也なしでは生きていけないような人だった。
ただでさえ父の居なかった雅也はそんな母を世界中の誰よりも愛していた。
17歳まで。
雅也の母は雅也が17の時に、自殺。2006-03-03 12:13:00 -
186:
少し浮世離れした女性だった、と周りは葬式の時に囁き合っていた。
自殺した理由はいまだにわからない。
しかし、ただ一つだけ雅也が抱え続けて居る事がある。
──ピッ!!『もし、サリ?どうしたんやー・・・・?サリ!?…泣いてんの?』2006-03-03 12:14:00 -
187:
─ブッ!!!…ツーッツーッ・・・・
『カズキ?ってオイ、カズキー?どこ行くねんミーティングはじまる…』
----隼人の声が遠退く。
雅也は突然かかってきた揚句、啜り泣くサリの声が、まるで気を使うように切れた携帯を握り締め店の重く白いドアを抜け出て走り出した。2006-03-03 12:15:00 -
188:
ダラダラと走るタクシーを捕まえると乗り込む。
ドライバーは意気揚々と俊敏にアクセルを踏む。
目的地はサリの家。
以前に一度きり、酔ったサリを送った場所まで、記憶を辿り伝えるとタクシーは走りゆく。
リダイヤルからコールするサリの電話は圏外。嫌な予感が頭を駆け巡る。2006-03-03 12:15:00 -
189:
『…急いで貰えます?』
苛立ちがタクシーを覆い尽くして行く。
『ちょっとねー混んでるみたいやね〜』
苛立ちをまさぐるかのようなドライバーの声。
『お客さん〜ホストかなんかか?男前やもんなぁ。女とくっちゃべって銭稼げりゃ…』2006-03-03 12:16:00 -
190:
『…止めて。』
雅也は胸から長い色とりどりの色が散らばったプッチ柄の財布を取り出した。
『へ?もう着くでー。のっときい…』
『ええから。コレ。釣り銭いらんし。開けて。』
雅也は隠し切れない苛立ちを静かに彷彿させていた。早くサリの元へ…。早く早く…。2006-03-03 12:17:00 -
191:
タクシーから降りた雅也は
まるでドラマの様に走り出し、週末だと言うのに
繁華街から抜けて静まり返った街を走り抜ける。電話を耳に宛て、なんども通話ボタンを押し続ける
──オカケニナッタ電話ハ電波ノ届カナ …2006-03-03 12:18:00 -
193:
エレベーターすらもどかしい。早く早くと鼓動が急かす。
──マサヤ…アイシテルヨ…
苦しい。もうやめてくれよ。聞きたくないんだ。お願い…2006-03-03 12:20:00 -
196:
何分も、雅也はドアを叩いた。手は赤く擦れ、
吹出してしまいそうな恐怖を噛みしめながら、
フラッシュバックで震える声を荒げながら。
……何分も何回も。2006-03-03 12:23:00 -
201:
『サリ?大丈…』
完璧に、ドアと言う壁を開いた所に、サリを見つめる。
『…………』
そしてドアから雅也を見つめたサリは、ふわりと雅也に倒れ込んだ。
──冷たい。冷え切った体からは異様な違和感が漂う。2006-03-03 12:27:00 -
202:
『…ウッ!!ッッ!!ゲホッゲホッ!!』
──下を向いて、黄色い液体を唇から伝っては落ちてゆく。
白いタブレットが液体に包まれて何粒もポタリポタリと落ちる。2006-03-03 12:29:00 -
203:
『サリ!?ちょっ!!』
雅也の腕からスルリと抜け落ちて、サリがうずくまる。
瞬時にフワッとサリを持ち上げると、雅也はドアを押しあけて走り出していた。
『ゲホッ…』
『…大丈夫やからな。すぐ楽なるから。』2006-03-03 12:31:00 -
204:
静かな住宅街は、タクシーなんて走っていない。
雅也は小さく軽すぎるサリの体を抱き抱えて走る。
タクシーが捕まり乗り込む。
ドアが開く時間すら惜しい。
『救急の…日赤行って!!上六の日赤病院!』2006-03-03 12:32:00 -
205:
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━パチッ…
『あ、目ぇ覚めた?』
まだ少し朦朧とする意識の中でサリは耳をすました。
『先生が、たいしたことないって。もうすぐ帰れるって。…もう苦しくない?』2006-03-03 12:36:00 -
206:
聞き慣れた声に鼓動が和らぎ、パリパリの真っ白なシーツから腕を出す。
『…‥手…握っ‥?』
掠れた声に耳を傾け、雅也は、白くて今にも折れそうな手をそっと掴む。
サリは、冷え切った腕に力を伝わせ、言葉をゆっくりと並べ始める。2006-03-03 12:37:00 -
207:
『…ごめん…なァ‥仕事…やのに…』
『はいはい。わかったから寝とき。』
『あたし…』
『喋るんかい(。´v`。)ノ』
『…娘が居てるねん。』2006-03-03 12:37:00 -
208:
『………ん?』
雅也は、繋がった手を一瞬ピクッッと動かした。
『娘が居るねん。』
しっかりと目を開けてサリはそう言った。
『…うん。』2006-03-03 12:39:00 -
210:
その笑顔はどれほど苦しい中で創られたモノだっただろう。
ベットにもたげた横顔は
真っ白な天井を見つめたまま言葉を続ける。
『何回も何回も、会いに行ったよ。雨の日も、綺麗な青空の日も、何回も何回も…1日、ううん…、1分だって忘れた事なかった。…』2006-03-03 12:40:00 -
211:
ムクムク
見っけた?初カキコ?
楽しみにしてま〜す☆頑張って?2006-03-03 12:41:00 -
212:
雅也はパイプ椅子を支えながら黙っている。
『でも…いつも通り、会いに行った日、マンションは…空いてた。二日後…ハガキが来たの。アハハ…素っ気ない字で…書いてた。『東京へ引越します。』
だってー。ハハー。笑ってまうやろー?アハハ…』
静かで目がチカチカする程に白い部屋の中、サリの声は震えだして行く。2006-03-03 12:41:00 -
213:
『‥…会いたいょぉ…。会いたい会いたい…会いたい…。
笑う顔も‥プクっとした腕や足も‥グラタンが大好きなのも‥オマセで…お化粧が好‥きで‥
……ッッ!!会いたい…』
横顔を這う水滴は、規則的に頬を伝っては落ちて行き、相変わらず白過ぎる枕に染みて行く。2006-03-03 12:42:00 -
214:
『会わして…!!‥なんだってするから‥ァア!!あた…しから…あたしから‥あの子を‥奪わ…ッッ…!!‥アァァア!!ウァア!!』
━━細い腕は顔を覆い隠し、何かが溢れ出したサリは子供の様に泣きじゃくる。
雅也は黙ってその腕をふわりと持ち上げ抱き包めた。
それは恋人同士の抱き合いなんてものではなく、暴れる子供を抱き締める親のような抱擁。2006-03-03 12:43:00 -
216:
『イヤァァア!!!!…行かんと…いてぇ…!!イャア…』
──カリカリと、爪を立てて雅也のシャツを物凄い力で掻きむしる。
もがいて、もがいて、必死に何かから抜け出そうと。何かを見ている様に、
発狂しながらサリは雅也の首に爪をはわす。2006-03-03 12:44:00 -
217:
『…ッ‥!!』
雅也の首に血が滲む。
余りの声に看護婦が部屋へ入って来る。
『矢竹さん!!なにが有ったんですか!?』
看護婦が近寄ろうとする。2006-03-03 12:45:00 -
218:
『大丈夫。…すぐ落ち着きますから。』
----雅也が看護婦に向かい手を張る。
『でも…』
『いいから。お願い、ちょっと待ってて下さい。』2006-03-03 12:46:00 -
219:
『ウァアァ…』
視点の合わないサリの顔すべてを濡らす涙を優しく拭う。
『大丈夫。我慢してたんやな。大丈夫大丈夫…』
泣きじゃくる子供にかける様に言葉を囁き、背中をポンポンと叩く。
『アァアァア…』2006-03-03 12:47:00 -
220:
━━━なぁ母さん?あの時、
俺が、こうして抱き締めてやれてたら…、母さんはまだ笑ってられたんかなぁ。
こんな風に、泣きたかったんかな?
こんな風に…抱き締めて欲しかったんかなぁ…?2006-03-03 12:48:00 -
221:
後に落ち着きをサリが取り戻した時、
帰りのタクシーから覗く景色は深夜から朝へとゆっくりと動き始めていた。
『あ、そこ左で。』
腕の中で眠るサリを抱き寄せる2006-03-03 12:49:00 -
224:
--受信BOXを開こうとする。
『…カズキ…‥』
腕の中から声が聞こえ、なぜか雅也は携帯を閉じた。
『ん?気分悪い?』
邪魔物のように、雅也は携帯をポケットの奥の奥の奥に仕舞い込んだ。2006-03-03 12:53:00 -
225:
『あり…ぁと‥』
『え、何。ありがとって言いたいん?笑。言えてへんで』
『やかぁし』
『ハハッ。わかったわかった。どーいたしまして。』
──ポケットの中では、携帯はチカチカと蛍光色を光らせている。2006-03-03 12:54:00 -
226:
──サリを好きになればなる程に、自分が汚く思える。
サリに近づけば近付く程、身をくるめる鋼鉄の鎧だったスーツに締め付け苦しめられる。
夜の輝くネオンが、人が、女の子が、金が、怖くなる。2006-03-03 12:55:00 -
227:
サリは見つめていた。
そこに産まれていた雅也の恋心にも、気付いていた。
腕の中から、外の世界に目をやる雅也を見る。
淋しそうな、苦しそうな、雅也の横顔は、…朝が近付く薄暗がりの中で際立った虚無感を醸し出す。2006-03-03 12:56:00 -
228:
その日、初めてと言うのかやっとと言うのか、
サリと雅也は《恋人》になる。.
淡い黄色の陽射しがカーテン越しに差し込む中、
二人は穏やかに微笑んで、ベットは久方ぶりに狭くなった。2006-03-03 12:57:00 -
229:
『雅也…?』
『はい?』
『変な感じー笑。』
『カズキでもィィですょー』
笑いながら、名前に戸惑いながら、二人はお互いを深めようと喋り明かした。2006-03-03 12:58:00 -
230:
雅也はゆっくり話し出す。
──お母さんが亡くなった事、そしてその日、一度だけ鳴った着信を、雅也は無視してしまった事、今でも忘れる事のない母の笑顔。
『…だからな、』2006-03-03 12:59:00 -
231:
『メリチャンも忘れる事ないょ。サリが、想い続ける限り、メリチャンは忘れへんょ。』
雅也はそう言って大きな掌でサリの髪をなでた。
『…‥そかなぁ…』
『サリーチャン…』
『え?』2006-03-03 13:00:00 -
232:
『サリィチャン。魔法の国の。サリィチャンは魔法使いやろ?』
『あぁ!!ちっさい頃アニメで見た見た…。』
『魔法使いサリィは、みんなを笑顔にするんでしょー』
──プニッとサリの頬を掴み、ウニュッと口角を上げ、雅也は笑う。
『…‥』2006-03-03 13:01:00 -
233:
『《メリ》は《Merry》?』
━━雅也は頬から手を離してアルファベットを空中に描くふりをする。
『…うん、そう。《Merry》やで…。《楽しい》《幸せ》《笑顔》だから《MERRY》から、メリ。』
シーツから顔を出し、サリは天井を眺めた。2006-03-03 13:01:00 -
234:
『…いくら泣いても、お金を持っても、時間だけは帰ってきてはくれへんょ。』
雅也はそう言って起き上がるとベット前のテーブル前に腰を降ろした。
浮き彫りになった雅也の背中は柔らかな光りにぼかされてサリは目を細める。2006-03-03 13:02:00 -
235:
───それはお母さんの事を言ってる?
サリは細めた目をしっかりとピント合わせ心の中で言葉を並べた。
『‥やし、笑ってみ?』
雅也が振り返る。2006-03-03 13:03:00 -
236:
『は(゚Θ゚・)?』
サリはまた目を細める。
『だから、笑ってみ!!例えばもしさぁ、メリチャンがいきなり現れたら(。゚∀゚。)』
『…‥?』
『その時、お母さんが暗い顔してたら嫌くないー?でももし、笑ってたら。』2006-03-03 13:04:00 -
237:
『…‥生きてたら、きっと会えない《絶対》はないょ。笑ってたらいつかきっとまた《絶対》会えるょ。』
少し諦めたかのように、笑顔は光に透けて悲しげに。
『雅也…。』
『まぁ、多分やヶド。ァハハ』
雅也ははにかんで又テーブルに目をやる。その時かすかに聞こえたのは小さな鼻をすする音。2006-03-03 13:05:00 -
238:
*+*+私はあの日を忘れる事はないだろう。
それは一生涯、きっと忘れる事はない。
緩やかな光に照らされた、歯痒い幸せを感じた日。2006-03-03 13:06:00 -
239:
━━2005年4月夏━━━
『あっちー!!!まじで溶けるて!!アヂーょーォォ!!』
『サリは本当に毎年毎年…。それしかいわんね(。´v`。)』
----暑い暑い空の下、片手にはパピコを持つ女が二人。2006-03-03 13:07:00 -
240:
『メイこそ。旦那に子育て押し付けてー(。 ̄∀ ̄。)』
『押し付けてまてんー!!!アヤツが休みやし二人で海遊館行きたいって置き手紙して出てっちゃったの。可哀相なんはワチー』
----ジャリジャリ。。。。
砂利を擦りながら、数年前お決まりだった、相変わらずだだっ広い公園を歩く。2006-03-03 13:08:00 -
242:
『うわ!!メリ凄い汗!(。゚ロ゚。)!拭いてー!!』
あくせくとハンカチをポケットから取り出すメイを横目にフッと笑い立ち上がる。
『お便所?』
メイが眩しそうに喋りかけてくる。
『そ。尿(。゚∀゚。)』2006-03-03 13:10:00 -
243:
『じゃコレ、捨てといて』
メイがパピコの亡骸を手に延ばす。
『あぃあーい。』
ジャリジャリ。。。。ジャリ。。。ジャリ2006-03-03 13:11:00 -
245:
━━━━画面に輝く、あの日の写真。
二人寄り添って、恥ずかしそう笑い会っている。
『また、絶対会えるやろ?』
画面に呟く。2006-03-03 13:12:00 -
246:
『雅也らしいなぁいきなり消えるとか。笑。今はどこで笑ってんの・・・?』
まるで全てを悟っていたかのように、
メリが帰って来た日から、雅也の携帯が《圏外》から解かれる事はなかった。
あれからずっと、サリは毎日雅也に電話をかけている。2006-03-03 13:13:00 -
247:
いつの日か、コール音が耳に響くまで。
あれからずっと。
『笑ってるょ。あたし。笑ってるから。いつかのその日まで、笑ってるから。』
困りながら笑うと、サリは携帯を閉じた。2006-03-03 13:14:00 -
254:
名無しさん
メチャ良かった(;_;)おまめサンの作品ずっと陰で見さして貰ってて初めてカキコしてみました("・ω・`)おまめサンの小説ホンマ好き(*'3^)-☆お疲れ様でした★(*^∀^*)★
2006-03-03 13:29:00 -
255:
名無しさん
うちはおまめきらぁい?だってぇつまらんもぉぉん??
2006-03-03 22:31:00 -
256:
名無しさん
うん?
2006-03-03 22:32:00 -
257:
名無しさん
上の人らまったくID一緒ゃん‥苦笑 ぅちはぉまめ好き
コピペしてくれた人もぁりがとぅ2006-03-03 22:34:00 -
258:
名無しさん
自作してまで妬みたいって位人気者な豆タンがスチ?
2006-03-03 22:42:00 -
259:
名無しさん
259ですが、260と261はあたしじゃないですョ(*_*)
2006-03-04 10:00:00 -
263:
名無しさん
あげとくね?
2006-03-31 16:42:00 -
265:
名無しさん
ら
2006-04-01 04:45:00 -
266:
名無しさん
完結おめでとうございマス?ッてか雅也なンで消えたン??せっかくメリ戻ってきたのに??
2006-04-01 16:48:00 -
267:
名無しさん
あげ??
2006-04-02 00:26:00 -
268:
名無しさん
?
2006-04-02 05:52:00 -
269:
名無しさん
頑張ったね?
2006-04-04 16:52:00 -
270:
名無しさん
あ
2006-04-07 09:34:00 -
274:
名無しさん
?
2006-10-06 07:17:00 -
276:
名無しさん
あげ
2006-11-21 19:41:00 -
277:
名無しさん
あげぇぃ(?-∀-)??
2006-12-12 22:25:00 -
278:
名無しさん
おまめあげ
2007-01-13 03:05:00 -
279:
名無しさん
いい男
2007-01-13 08:09:00 -
280:
名無しさん
?
2007-01-13 22:54:00 -
281:
名無しさん
?
2007-01-19 02:39:00 -
282:
名無しさん
.
2007-05-30 14:44:00 -
283:
名無しさん
あげ
2007-06-13 21:14:00 -
284:
名無しさん
あげ
2007-06-22 08:07:00 -
285:
名無しさん
?
2007-06-22 10:54:00 -
286:
名無しさん
あげ
2007-06-24 13:49:00 -
287:
名無しさん
あげ?
2007-08-03 03:26:00 -
288:
名無しさん
ag
2007-10-12 13:41:00 -
289:
名無しさん
ag
2007-10-12 13:41:00 -
291:
名無しさん
?
2007-11-01 17:16:00 -
292:
名無しさん
あ
2008-02-08 00:04:00 -
293:
名無しさん
あ
2008-02-08 00:05:00 -
294:
名無しさん
???
2008-02-09 00:59:00 -
295:
名無しさん
299
2008-02-11 13:58:00 -
296:
名無しさん
?????
2008-04-02 04:10:00 -
297:
名無しさん
上げ
2008-11-13 05:55:00 -
298:
名無しさん
おまめってほんまに豆やな?
定期的に必死に自分のスレあげしとるわ(笑)可哀想2008-11-13 21:03:00 -
299:
名無しさん
ぉまめヽ( *・∀・)ノage
2008-11-30 17:28:00 -
300:
名無しさん
あげぃ
2010-10-09 14:27:00