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明日への後悔
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1:
柚子
あの日、後悔をしたから今がある
貴方も私も、あの日はもぅ無いけど今がある
沢山の人に囲まれて思い出す過去はどれもこれも綺麗すぎて、悲しい
後悔が明日へ繋がる様に、そう信じて悲しい過去を思い出してみる2006-01-29 00:24:00 -
2:
柚子
一月四日、雪。
去年の今頃は何をしていたんだろう
確か去年も雪がこうして降っていて、家族でカニ鍋をして、千鳥足のまま初詣に行った。
そんな事を思い出しながら、ブラックライトに照らし出される騒音と笑い声が入り交じる店内を見わました2006-01-29 00:29:00 -
4:
あと3時間はこうして座っていなくちゃいけないだろうと勝手に考え、少し憂欝になった
灰皿、シャンパンの空瓶、グラス、タバコにチョコレートにオシボリと目線を移し、一つため息
「アタシ何してるんだろ…」
そんな私の本音は、隣に座るすばるにさえ聞こえずにバカでかいBGMに消えてなくなる2006-01-29 00:45:00 -
5:
柚子
一方すばるは、だらしなく座って携帯をパカパカと開けたり閉めたり…
どーせ他の客に営業をかけているんだと、分かっていても口にはしない
「黙って飲んで笑ってろ」
一年前に言われた言葉を忠実に守る私は、バカで間抜けで悲しい女
明日やめよう、明後日やめよう。そう考えながら今日もこうして座っている2006-01-29 01:05:00 -
6:
柚子
すばるは世に言う色営で「スキだ」とか「会いたい」とか言って私をこの店に呼ぶ
それでいい、騙されていた方が楽だから
すばるは、ホストは、金を払えば愛をくれる。それが、その場限りの物だとしても女が望む形のまま、愛を与えてくれる。
そして要らなくなれば捨てればいい。金を払うのをやめるだけ
2006-01-29 01:08:00 -
7:
柚子
なんて簡単な関係なんだと思うでしょ?
言葉にすればそれはあまりに、ちっぽけでからっぽで薄っぺらくて…
なのに私達はいつもその関係に泣き、悩み、断ち切れず、王子に裏切られたシンデレラの様に泣き狂うんだ
分かっていても、覚悟していても、やっぱり同じように…2006-01-29 01:21:00 -
8:
柚子
煙草をくわえると、携帯を見ていたはずのすばるがライターを差し出した
「ホストなんだ」
そう思う瞬間
お前はいつの瞬間も客なんだ。と言われているような気がして嫌い2006-01-29 01:25:00 -
9:
名無しさん
文章ぅまぃ?頑張れ?
2006-01-29 01:26:00 -
10:
柚子
突然店内の音楽がアップテンポにかわった
―シャンパンコール
「ちょぃ、待ってて」
やかましいBGMにかぶせる様に大きな声で言い、クシャクシャっと私の頭をかき回してすばるが席を立つ2006-01-29 01:27:00 -
11:
柚子
「折角、髪の毛セットに行ったのに…」
二つ目のため息で、スーツ姿の背中を睨んだ
金メッシュの黒髪をツンツン直すその背中は、意味不明な言葉を喚き散らしている男達の輪の中に、紛れて消えた2006-01-29 01:36:00 -
12:
柚子
「帰ろッかな…」
そう呟いて、天井を目がけて煙草の煙をフーっと吐き出した
すばるがつけたこの煙草を、消してしまうのさえも勿体ないと思った時もあったのに…
今では隣にいるだけで息が詰まるのは何で?2006-01-29 01:52:00 -
13:
柚子
すばるは偽物だって気付いてしまったから
でも…淋しい、でも…誰かに必要とされたいから会いに来る
こんなのじゃ淋しさは拭えないよ、必要となんかされていないよ。
分かってる、苦しいの2006-01-29 02:10:00 -
14:
柚子
そんな気持ちをごまかす様に、彼がつけた煙草を灰皿に押しつけた。
幾つもの夜はこうして消えていく
2006-01-29 02:13:00 -
15:
柚子
―奈央。
最近はその名前で呼ばれた覚えがなかった
ゆな。それが今の名前で、大型風俗店でそこそこ有名、そこそこ古株。
彼氏はいない
ホストと買い物に時間と金を費やし、私の休みと携帯を埋めてくれるのは、すばるだった2006-01-29 02:27:00 -
16:
柚子
初めてすばると寝た日
やっぱり金メッシュの黒髪をツンツンと直しながら
「俺に一生付いてこい」
と真顔で私に言った
訳の分からん奴だ。と思いつつも黙って縦に頷いたら、彼は満足そうな顔をして百円ライターに火を灯した2006-01-29 02:34:00 -
17:
柚子
愛してくれる女がスキで、愛されたら愛せない、得てして男の心はそんなもの。特にすばるは…
一時も忘れられない日も、会いたくて日泣いた日もあった
だけどそれを口にはせず、彼の言葉通り懸命に店に通った
すばるはそんな私をホストとして愛して、私はそんな彼に振り回されて愛している錯覚に落ちていた2006-01-29 02:44:00 -
18:
柚子
二ヵ月もしたら振り回されるのに疲れ、掴みきれない彼の偽物の言葉に苛立ちさえ感じた
ただ…彼のいた場所を埋めるモノが見つからなくて、
今もまだここにいる2006-01-29 02:47:00 -
19:
柚子
それに文句も言わず、正月早々ホスクラに付き合ってくれているのは同じ店のあみチャン
今も向かいの席でヘルプに哀れな程適当な相づちを打っている。
何をしててもつまらなさそうに見える彼女のテーマは、付かず離れず、そしてハマらず
ベタベタの仲良しこよしが嫌いな私は、この性格を気に入っている2006-01-29 02:58:00 -
20:
柚子
午前6:00
すばるは相変わらず携帯を開けたり閉めたり、営業をかけた客からの連絡を待っている
あみチャンはもはやヘルプの話なんて聞かずに、チャージのチョコをいじり倒している2006-01-29 03:01:00 -
21:
柚子
「あみチャーン、かーえーろっ?」
少し早いとは思ったが、やっぱりなんだか隣のバカが胸クソ悪いので、そう言った
あみちゃんは、いじりすぎて溶けかけていたチョコをポンッと口に入れ、ぼんやりとうなずいて笑った2006-01-29 03:19:00 -
22:
柚子
それぞれチェックを済ませ、不満そうなすばるを
「また明日来るから!」
と説得して店を出た。2006-01-29 03:20:00 -
23:
柚子
「さむいなぁー」
まだ雪はうっすら気配を残していて、コートの前をグッと引き寄せて丸くなった。
「もぅ一件行く?口直しに…」
あみちゃんも丸くなり白い息を吐きながら言った。2006-01-29 03:21:00 -
24:
名無しさん
「あッ!ホンマにおもんなかったん?いっつもダルそうやからわかれへんかったぁ(笑」
「あみ、メッチャ我慢してたし(笑。行くやろ?」
「はいー、お供しますよー!」
そう言ってあみチャンを見たら、店からくすねてきたチョコを一つ私に差し出した。きっ、きびだんごですか?2006-01-29 03:27:00 -
25:
柚子
時間も遅いので新規開拓に決定した、世に言う初回巡り。
コンビニで雑誌を開き、あーだこーだと言っていたら店員が少し嫌そうな顔をしたので一番近い店の電話番号を控え、カフェオレを2つ買って外にでた。
相変わらず寒い
それからあみチャンが店に電話して場所を聞き、カフェオレを飲みながら並んで歩いた。どーしてアイスを買ったんだろうと後悔した。2006-01-29 03:30:00 -
26:
柚子
>>9さん
ぁりがとぅござぃます
初めて書ぃてるので、誉めて頂くのも初めてでスゴク嬉しぃ限りデス
完結まで頑張るので、続きも読んでくださいね2006-01-29 03:37:00 -
27:
柚子
―始まりの日―
6分後、目的地に到着。電話をしていたので、店の前でキンパツ頭が一人待っていてくれた。
彼はコッチに気付き、少し会釈をして笑った。笑顔がかわいい、男と言うよりは男の子2006-01-29 03:41:00 -
28:
柚子
「電話くれたあみちゃん?迷えへんかった?」
スーツでは厳しすぎるだろう寒さに耐え、柔らかくそう言って私とあみちゃんの顔を交互に見た。
どちらがあみちゃんなのか分からないのだろう。2006-01-29 03:42:00 -
29:
柚子
「あみちゃん」
と私はそれダケ言って、隣で足踏みをして寒さを紛らわせている女を指差した。
キンパツ頭は、私の指先に視線を送る
ジタバタしていたあみちゃんは、微妙に眉間にしわを寄せた2006-01-29 03:47:00 -
30:
柚子
『迷わなかったからここに来てんだろーよ』
そういいたそうな目。だけどそれを口にしなかった事に、多少なり感謝をした。まぁ、それも束の間、あみチャンは
「さッぶい!!」
と無愛想に叫んで、勝手に店に入って行った2006-01-29 03:56:00 -
31:
柚子
その後ろ姿を一応見送って、戸惑っているキンパツ頭に声をかけて私も店の中入れてもらった
店の一番奥のソファー
私とあみチャンは向かい同士に座り苦笑いを決め込んでいた2006-01-29 03:59:00 -
32:
柚子
ポカポカで、やかましい場所に移って50と3分経過
増えてゆくのは、名前と顔が一致しない名刺と繰り返される自己紹介
正面に座るあみチャンは、名刺をババ抜きのように抜き差ししながら、男メニューと照らし合わせていた。2006-01-29 04:00:00 -
33:
「いいの居た?」
私はすでに重ならない顔と名前に諦めて、ワインを一人グイグイ飲み続け聞いた。悪酔いしそうだ。
「きめてるんだけど…誰もこねぇーじゃん」
「えっ!ずるい!!どれにしたのさ?」2006-01-29 04:02:00 -
34:
柚子
まるで物のように男を選ぶこの状況を、男が見たらどう思うのだろう
私達も同じ
そうやって選ばれ生きる世界に生きていて、感覚は徐々に麻痺しつつあった2006-01-29 10:39:00 -
35:
柚子
「これかな?」
あみちゃんの指の下にある男は
新人・るぅ
と言う札を付けられ、少しあどけなく笑っていた2006-01-29 10:40:00 -
36:
柚子
「呼ぼー呼ぼー!はいはい、すいませーん!!るぅ君いますかー?」
酔っ払いの私が手を挙げて叫ぶ。こんなやかましい店では対した大声ではなかった。
出迎えてくれたキンパツ頭と目が合った。コッチを見ていたらしい。
ならさっさと来いよ2006-01-29 10:41:00 -
37:
柚子
「えっ!誰もついてないじゃん。るぅ君がいいの?」
と言いながら、彼は私達の席まで歩いてきた
「あみちゃんがぁ!!」
酔っ払っていますと言わんばかりに意味不明な手振りで伝える私2006-01-29 12:36:00 -
38:
名無しさん
是非このランキングサイトに登録お願いします?http://vl-o-l.jp/gaogaojgmjgp/
2006-01-29 13:21:00 -
39:
柚子
キンパツ頭は空中でヒラヒラとさまよう私の手を止め、それから
「了解」
とヒラリと裏返り、危なっかしい手つきでアイスとグラスを運んでいた下っぱにコソコソと耳打ちして、私の隣に腰をおろした。
「あみちゃんはいいけど、自分は?」2006-01-29 14:31:00 -
40:
柚子
手尺で飲み続けている私からボトルを奪い、ナミナミとワインを注ぎながらキンパツは言った
「ゆなちゃんは…」
わざと名前が分かるようにそう言ったのは、自己紹介が面倒だから…2006-01-29 14:42:00 -
41:
柚子
「酔ってんなぁー(笑」
あみちゃんの隣に座ったるぅ君には写真のあどけなさはなくて、一人前のホスト顔だった。
でも、あみちゃんは気に入った様でリシャを一本入れて、珍しくよく笑い、よく飲んでいる。
るぅ君は愉快そうにそう私に笑いかけた2006-01-29 14:48:00 -
42:
柚子
「えっ、アタシ酔ってる?」
そう言われて、私は頬を押さえながら隣に座るキンパツ、誠汰朗に聞いた。
「じゅりは来た時から酔ってたで(笑」
笑いながら私が頬に当てていた手をはずし、るぅ君にそう言った。2006-01-29 14:51:00 -
43:
柚子
「ゆなは来た時から酔ってたやん(笑」
彼は笑いながら私が頬に当てていた手をはずし、るぅ君にそう言った。
ハシゴを気付かれていたと知って、なんだか申し訳ない気になった
「ねっ?(笑」2006-01-29 14:54:00 -
44:
柚子
誠汰朗はあみちゃんにそう相槌を求め
「ゆな、さっきの店でも飲み続けてたし(笑」
とあみちゃんも笑う。
ハシゴ暴露2006-01-29 14:55:00 -
45:
柚子
「飲みにきてんでしょーが!」
私がそう叫んだら、それを皮きりに4人でさっきまで行っていたDの話や愚痴で閉店まで盛りあがった。
メアドを交換して店のドアを開けると、そこにはまだ寒い現実の世界が広がっていた2006-01-29 14:58:00 -
46:
柚子
初回2時間弱であみちゃんは200使った。
どっからでてきたんだ?
とツッコミをいれたら、笑ってごまかされた2006-01-29 15:01:00 -
47:
柚子
景気よく私も使うとは言ってみたものの
「酔っぱらいは現場を把握していない」
と誠汰朗とあみちゃんに止められた2006-01-29 15:03:00 -
48:
柚子
バカを捕まえた誠汰朗と、太客を捕まえたるぅ君に見送られ、千鳥足の早足で二人は並んで帰った。
店に一旦戻り、食料を買い込んで寮の空き部屋に潜り込む。
二人とも家はあるが、忙しい日や早出の日は、店長に許可を貰い寮に泊まる2006-01-29 15:06:00 -
49:
柚子
二人とも家はあるが、忙しい日や早出の日は、店長に許可を貰い寮に泊まる。
今日は特別、飲みすぎて帰れないので泊まることにした。
入店当初、店長と二ヵ月付き合った。が、女供にばれ「ゆなは体でのしあがっている」とか「色目を使った」などと言われ別れた。
その通りだったから、反論なんてしなかった2006-01-29 15:10:00 -
50:
柚子
店長と付き合っていれば得する事は多かった。
雑誌やネットで特集も組んでくれたし、しんどいと言えば休ませてくれた。
だけど一ヵ月すぎた頃から風俗を辞めてほしいと店長に言われ、見切りを付けた。こうなればただの足枷だ、もうメリットがない。だから別れた
それが真実2006-01-29 15:12:00 -
51:
柚子
「いんじゃない?得したなら」
真実を話した日、あみちゃんはあまり関心も示さずにそう言っただけだった。
「帰るのダルイからってココ泊まれるのはじゅりちゃんのお陰やね」
とコンビニでラーメンを買いながら今日も笑っていた。2006-01-29 15:15:00 -
52:
柚子
一時間後、太客あみちゃんは早速るぅ君にアフターに誘われ、ウキウキ出ていった。
「使った金は体で返して貰わないとな」
かわいい顔してヤクザ発言。コイツはこーゆーヤツだ。
はじめにガツンと使い、しばらく甘い蜜を吸って飽きたらサクッと捨てる。そのために風俗をしていると言っていた2006-01-29 15:18:00 -
53:
柚子
そんなウキウキあみちゃんを笑顔で見送り、鞄の底に沈めていた携帯を引きずりだした。
―不在・3件
―メール ・4件2006-01-29 15:19:00 -
55:
柚子
誠汰朗のメール一つを除き、すべてすばるだった。
思わず眉間に皺が寄るほど蕩々と、明日の予定、仕事が終わった、どこにいる、連絡をよこせと書き綴られていた。
すばるで埋まりつつある男の子ボックスに「誠汰朗」が一件。2006-01-29 15:23:00 -
56:
柚子
少しだけ…花が咲いたとおもったんだ
2006-01-29 15:24:00 -
57:
柚子
―夜更けの乱―
どれだけ眠っていたんだろうか。ここ最近は、夢さえも見ないほど深く眠る事が多い
夢なんて見れば見るほど虚しくなる。そう大人になった私が言う2006-01-29 20:11:00 -
58:
柚子
午後5:06
あみちゃんはまだ帰って来ていない
「そのまま仕事かな?」
そう考えながら、シャワーを浴び、化粧をして店に向かった。頭が痛い…二日酔いだ2006-01-29 20:14:00 -
59:
柚子
「ゆな、酒臭いで」
キスをした後に良サンに言われた
「マジ?昨日遅くまで飲んだからかなぁー」
良君はここ4ヵ月程通っているお客で、自分は特別だと思っているらしい。2、3回店外で食事はしたがそれだけ。その思い込みも特に害はないので否定はしていない2006-01-29 20:16:00 -
60:
柚子
基本アフターや店外は禁止。しかし、水面下では暗黙で行なわれている
「ごめんね?」
ご機嫌を伺いながら、良サンの顔を覗き込んだ2006-01-29 20:19:00 -
61:
柚子
「俺はいいけど、他のお客さんは気付けなよ」
お前に一体何様なんだ、と喉まででそうになるのをどーにか耐え
「うん、良君が一番でよかった」
とまたキスをした2006-01-29 20:21:00 -
62:
柚子
こんなもんだ、私たちの世界なんてものは
勘違いを利用し、騙し、騙され探り合いながら金を稼ぐ
―ピピッ
ッとタイマーが鳴ってタイムオーバー。名残惜しそうな良サンを尻目に時間厳守で次の仕事へさっさと迎った2006-01-29 20:23:00 -
63:
柚子
深夜12:00
決まってこの時間にすばるからの営業メールがくる
おはようだとか、今から仕事だとか、飽きもせず同じメールばっかり
と来ればそう思うけど、来なきゃそれは心配。今日はなぜか、すばるからの連絡はなかった2006-01-29 20:26:00 -
65:
柚子
―ぉはょ((*^∪^*))すば君今日休み?店行くつもりだったんダケド(*′艸`*)?―
私も似たようなもんだな。と呆れながら文字を打ち込み、彼と私を繋げる小さな送信ボタンを押した2006-01-30 12:12:00 -
66:
柚子
「ゆな、あみちゃん知らん?」
突然背後から声をかけられ、慌てて携帯を閉じた
なぜだかやましい気持ちになった2006-01-30 12:14:00 -
67:
柚子
振り向くと困った顔の店長が立っていた
「あみちゃん?まだ来てないの?」
店長に向き直り、少し驚いて逆に聞き返す。
「出勤確認もとれなくて…。ゆな、昨日一緒に寮泊まったんじゃないの?」2006-01-30 12:19:00 -
68:
柚子
あいかわらずの困った顔の店長にそう言われた
「いや、一回家帰るって言ってたから…」
思わず嘘をついたのは、あみちゃんではなく自分を守るため
ホストに行っているなんてばれたくない。その一心だった2006-01-30 12:28:00 -
69:
柚子
いつもはスッピンを見せたくないからと泊まらずに帰ってくるのにあみちゃんどーしたんだろう?
なんかあったのかな?とそう思い
「電話してみるわ」
と店長にそう言って、携帯を握り締め店の外にでた2006-01-30 12:31:00 -
70:
柚子
コートを持ってくるべきだったと階段を降りる途中で後悔したが、取りに行くのが面倒でやめた。
寒い。寒すぎる。
小刻みに震えながら、大量のメモリーからあみちゃんを引き出しコールをする2006-01-30 12:32:00 -
71:
柚子
―ただ今電話に出ることが出来ません―
繰り返される留守電メッセージを聞きながら、少し不安になった
誠汰朗にかけて、るぅ君に聞くということも考えたが、いくら同僚にでも他人のアフターを無闇にバラすのはどうかと考え直し、寒い空を見上げながら近くの自動販売機まで歩いた2006-01-30 12:36:00 -
72:
柚子
暗い夜空に光る電飾
それに人々は引き込まれてゆく。快楽に溺れ、欲にまみれ、人間の底辺を見る。
この街で幸せなんて見つからないと知っていても、抜け出せないでいるのは私だけじゃない
自販機のホットレモンがぬるくて、少しせつなくなった2006-01-30 12:38:00 -
73:
柚子
「連絡つかなかったから、メールだけしといたよ」
どうだった?と聞いてきた店長にそう言って、次の仕事に向かった
心配と言えば嘘になる。あみちゃんがどこにいるかなんて、私にはどうでもいい事だから
ホットレモンは飲み干してしまったのに、なぜかまだせつなくて不安だった2006-01-30 12:44:00 -
74:
削除削除されますた
あぼ~ん -
75:
柚子
急いで保留にしてカバンに押し込んだ。仕事中にこいつの電話は取れない
それから2分も立たないうちにまた携帯が鳴ったが、今度は無視をした
この電話を取っていれば何か変わって居たんだろうか?と今更ながら思ってみたりする2006-01-30 12:52:00 -
76:
柚子
こんな時間にすばるが電話をしてきた事に、畏怖を感じるべきだったと思う。
不在8件の最後の電話に
「これ聞いたら、店に来い」
とすばるの声で留守電が入っていた2006-01-30 12:58:00 -
77:
柚子
怒ってる?
何かしましたっけ私?
必死に行動を振り返るが、思い当たる節が無い
訳もなくハラハラしながら、客と別れた直後、道端ですばるに掛けなおした2006-01-30 13:01:00 -
78:
柚子
「なに?どしたの?」
おはようも、こんばんはもすっ飛ばして、通話になった電話口にそう切り出した
「…ゆな?俺やけど、わかる?」2006-01-30 13:04:00 -
79:
柚子
―すばるじゃない…
ユナ?オレ?ダレダ?2006-01-30 13:08:00 -
80:
柚子
「すば君…の携帯?だよね?」
携帯が30秒をカウントする頃、声の主に見当が付いた。
すばるにかけた事は確かなのに、電波の先から聞こえてくる声は…
ありえない事だと自分自身の耳を疑った2006-01-30 13:13:00 -
81:
柚子
「俺、誠汰朗。わかるやろ?」
2006-01-30 13:13:00 -
82:
柚子
―ホントのところ―
「なんで…この携帯…」
それだけ言うのが精一杯だった2006-01-31 11:40:00 -
83:
柚子
「今あみちゃん?も居て、ちょっとややこしいトコなんよ。」
あみちゃん??どして?つーかそこには誰がいるんだ?
「アンタどこおんの?俺がそっち行くわ」
と誠汰朗に言われて、店に呼ぶわけにも行かず、とりあえず自宅の場所を教えて電話を切った2006-01-31 11:41:00 -
84:
柚子
慌てすぎて、タクシーの運転手に自宅の住所が伝えられない。その時に、自分がひどく動揺していた事に気付いた
―なんで?なんで?なんで?
それしか浮かばない
給料を貰う事さえ忘れ、ガタガタと揺れる車内で目を閉じて、ひたすら気持ちを落ち着ける2006-01-31 11:55:00 -
85:
柚子
長い20分が過ぎた頃
先に家に着いて下で待っていた私の前に、誠汰朗一人を乗せたタクシーが止まった。
誠汰朗はありがとーと爽やかに運転手に伝えタクシーを降りた
「何があったの?」2006-01-31 12:00:00 -
86:
柚子
「何があったの?」
タクシーの戸が閉まるより早く、誠汰朗の腕を掴んで苛立った様に私が聞く。
「待って、待って!部屋あげてくんないの?俺寒いー!!」
誠汰朗は掴まれた腕をブンブン振りながら、笑っていた2006-01-31 12:06:00 -
87:
柚子
それがまた私を苛立たせた。
誠汰朗を引きずる様にの部屋に入れ、脱いだままにしていた服を片付けた
それから、ヒーターをつけ、コーヒーを2つ机に並べる
ソファーに座っているバカ男はやたらと寛いでいて「ドッキリ」なんじゃないか?とさえ思った2006-01-31 12:11:00 -
89:
柚子
インスタントのコーヒーを一口飲んだ頃には、私の焦りも少しは落ち着いていて、このバカ男が話し出すのを待とうと言う気になっていた。
「長くなるから」
そう言って誠汰朗が始めた話2006-01-31 12:12:00 -
90:
柚子
「るぅ分かるやろ?昨日あみちゃんに付いた子ぉな。あれが悪いねん。」
うん。と短く相づちを打って、先を促す
「アイツ前Dで働いてたらしくて…」
うん。…うん?山程悪口言ちゃってるよ!!2006-01-31 12:14:00 -
91:
柚子
「昨日話した時何も言ってなかったのに…」
そう私が口を挟むと
「俺もさっき知ってん。アイツ最近入ってきた新人やからあんま話せーへんかったし」
と彼は答え「でなっ!」と大きめの声で仕切りなおした2006-01-31 12:16:00 -
92:
柚子
「るぅは…あみちゃんとのアフターの最中に、Dの口座と連絡とって鉢合わせにさせてんやん」
「なんで、そんなん…」
と言い掛けたのを誠汰朗は右手で制して続ける
「初回で新人に200使うんやで?俺等やって分かるなら、正体知りたなるわ。るぅはそれを知ることができたわけやから」2006-01-31 12:18:00 -
93:
柚子
そんなもんなのかな…。私は客の正体なんて知りたくはない
どんなにイイ人ぶってたって、仮面を一枚ひっぺがせばただのスケベなおっさんに変わりはじゃないか
「そっか」
と一応、納得したフリをしてうつむいた2006-01-31 12:21:00 -
94:
柚子
「そんで、まぁDの子からしたら太客持っていかれてる訳やん?他店に。だからあみちゃんは未収バリバリ残ってるとかなんとか、るぅにおどしかけて、家まで乗り込んで来たらしいわ。」
「未収?あみちゃんが?」
「ちょっとな、十分回収できる程度やけど大きく言ったみたいやわ」
誠汰朗は、知らなかった?と言わんばかりに不思議そうに答えた2006-01-31 12:25:00 -
95:
柚子
いつもチェックは別々にしていたので全然知らなかったし、気にもしていなかった。
未収はしないのが私のすばるのルール
んっ?いつすばるは出てくるの?
誠汰朗はその心を察したかの様に続けた2006-01-31 12:27:00 -
96:
柚子
「乗り込んで来たのは、一人じゃなかった。あみちゃんが行ったなら、ゆなも行ったんだろう。ってすばるさんや他の人等も何人か来て…俺も呼ばれた」
「めっちゃタチ悪いわ…ホンマごめんな」
思わずそう言って、謝っていた。
信じられない、こんな事するなんて。すばるは私の何なの?少し鳥肌がたった2006-01-31 12:30:00 -
97:
柚子
「今は、お互いのオーナーが話ししてる。2、3回殴られたからやばいと思って俺が連絡したんよ(笑」
「殴られたって…」
誰が?と言いかけ、彼の左の頬が赤く腫れている事にやっと気付いた
あみちゃんじゃなくてヨカッタと安心したと同時に、殴られている本人を前に安堵の顔を見せるのは気が引けたのでもう一度、謝ってうつむいた2006-01-31 12:37:00 -
98:
柚子
「ボク、泣かなかったよ!」
と彼はふざけてはいたが、赤くなった頬は見るからに痛そうだった
すばるのやりそうな事なのに、何で気付かなかったんだろうと反省した2006-01-31 12:41:00 -
99:
柚子
今はオーナー2人、口座2人、あみちゃんで話し合っているらしく、誠汰朗は待っているダケだったので抜けてきたんだと説明してくれた。
私はタオルを水に濡らして、誠汰朗の頬に当てた
それから私は重大な問題に気付いた2006-01-31 12:43:00 -
100:
柚子
「すばるは?何ですばるの携帯に出たの?すばるはなんて?今どこ?」
「質問しすぎやからッ(笑!多分Dに一回戻ったんちゃうかな?報告に。大丈夫やで、アイツにはバシッと言うてきたったから」
一瞬パニックになった。え?バシってなに言ったのよ2006-01-31 12:44:00 -
101:
柚子
これで終わるの?
これで私とすばるは終わってしまったの?
ぬるくなったコーヒーを音をたててすする誠汰朗を前に、私は動揺する心を隠せずにいた2006-01-31 12:48:00 -
102:
柚子
嫌いなんだからもういいじゃん。
違う、スキだった時もあった、24時間すばるで構成されていた日も
どんなひどい扱いをされても、騙されていてもすばるがいなくなる事なんて考えられない。
彼がいなくなったらどうやってそれを埋めればいいの?どーしたら…2006-01-31 12:50:00 -
103:
名無しさん
リアルタイムやぁ?頑張ってなぁ??めっちゃおもしろい?
2006-01-31 12:53:00 -
105:
柚子
「アンタは…ゆなは彼女なん?」
誠汰朗は、タオルを押さえていた私の手の上から自分の手を重ね、今にも泣きそうな私の顔を覗き込んだ
「ただの色彼…」
そう答えたら涙が込み上げてきた2006-01-31 13:02:00 -
106:
柚子
本当は分かってた
たったの一度もすばるの彼女だった事はないって…
自分を隠し、いい客を都合のいい女を演じた私
バカらしい女。情けない女。2006-01-31 15:17:00 -
107:
柚子
涙がでる程好きなまま何も捨てられない私は、失うのを恐れて本当に愛を無くしてしまった
分かり切っている偽物にすがりついて、『嫌いなのに捨てられない』なんて矛盾が渦巻いてる
ねぇ、あたしはすばるの何だったの?2006-01-31 15:23:00 -
108:
柚子
━誰かの優しい腕の中━
私はすばるの中のただの一人で、すばるは私の中のたった一人だった
同じ一人なのにこんなにも違うんだな2006-01-31 15:25:00 -
109:
柚子
誠汰朗のあったかい腕に抱かれながらそう考えていた。
いつの間にか泣きそうな私は、誠汰朗に抱き締められていてそんな優しさにつられて吐き出した言葉
「アタシ…すばるがまだ好きなんだよ」
そう小さく呟いて、溢れてくる涙が零れない様に上を向いた2006-01-31 15:29:00 -
110:
柚子
誠汰朗の左頬はまだ少し腫れていて、私の頬を伝いその熱を鎮めつつあった。
この痛みは私が一番分かってるのに…ね
「すばるさんがうらやましい」2006-01-31 15:32:00 -
111:
柚子
急に誠汰朗はそう言って、私を抱き締める手に力を入れた。
「なぁ、俺にもそうやって思ってくれる子が居るのかな?」
顔は見えなかったけど悲しい声だった2006-01-31 15:33:00 -
112:
柚子
「いるんじゃない?セータロー優しいし」
そう言って私も抱き締め返す。
馴れ合いだって分かってる。この人だってホストなんだと分かってる。
だけど今はこの馴れ合いに溺れたかった、ずるい女2006-01-31 15:37:00 -
113:
柚子
私の肩に顔を埋め
「セータロウ君振られちゃったのよ」
誠汰朗は、そう話しだした。
「もーマジで疲れたわ。嘘や見栄に振り回されてさぁ。アンタはすばサンが好きで、きっとあの人がホストじゃなくても好きなんだろうと思う。だけど俺は、ホストとしてしか愛して貰えない。ホストじゃない俺はどこにも居ないんだよ」2006-01-31 15:38:00 -
114:
柚子
抱き締め合ったまま、狭い部屋でヒソヒソと語られる話。
それは誠汰朗の作り話しかもしれないし、仕事用のネタなのかもしれない
だけど例えばそうだとしても、私は彼の迫真の演技に感謝をした
誠汰朗は優しい。まだもう少しだけ、都合のいい客を脱ぎ捨てていたい2006-01-31 15:41:00 -
115:
柚子
そんな私の願いも虚しく、その静かな空間を打ち壊したのはやっぱり、すばるだった。
「アタシの携帯…かな?」
机の上に置き去りにされ、不機嫌そうに唸る携帯。
私は、彼の腕の中でそのぬくもりと優しさをヌクヌクと奪いながら彼を見上げた2006-01-31 15:43:00 -
116:
柚子
「やーだぁ!コッチも鳴ってるじゃん!!すばるサンの携帯勝手に取ったのバレたかも(笑」
1分前の真面目な誠汰朗は跡形もなく消え、ふざけながら片手で携帯を取出しそう言った
「勝手にッテ…アンタ。すばるだったらどーしよ?」
私はまだ彼の膝の間にスッポリと納まったまま、開けない携帯と誠汰朗を見比べた2006-01-31 15:56:00 -
117:
柚子
誠汰朗は何を思ったのか、彼を見上げている私にキスをしてニッコリ笑った
「電話出て、セイタロー君に乗り換えたって言いなさいよ。あっ!アタイはビシッと謝ったダケだから、すばサン、ゆなには怒ってないと思うよ?」
そう早口で言って立ち上がり、自分の携帯を手にベランダに出て行った
状況把握に30秒間を費やし、その後軽い殺意を覚えた2006-01-31 16:01:00 -
118:
柚子
涙に謝れ、後悔を取り消せ、そして私の唇を返してくれ
ガラス窓の向こう、携帯片手に私に手を振っているバカが一匹。
あのスーツが憎い、あのキンパツが憎い、あのお調子者が憎い…
ベランダを見下げる奴の背中を突き飛ばしてやりたい衝動に駆られた2006-01-31 16:04:00 -
119:
柚子
そう恨みがましい目で怨念を送りつつも、携帯を開く勇気をくれたのは誠汰朗だと分かっていた
ねぇ誠汰朗…今ならきっとがんばれるよね?2006-01-31 16:08:00 -
121:
柚子
━トライアングル━
勇気を出した結果は散々だった。すばるからのメールを開くと
―今から家行くわ―
たった7文字の電子文字が残されていた。ん?どこに行くって?2006-01-31 23:26:00 -
122:
柚子
―ピンポーン
抜群のタイミングで鳴り響くインターフォン
ゆっくり振り返ると、電話を終えコーヒーをすするバカが平然とソファーに座っていた2006-01-31 23:28:00 -
123:
削除削除されますた
あぼ~ん -
124:
柚子
携帯にはすばるからの着信。
こりゃぁ、まずいな…と気付いた時には、もう遅かった
「すばサン?そーいや、さっき似た人がベランダから見えたわ」
誠汰朗が私の隣に立ち言った2006-01-31 23:35:00 -
125:
削除削除されますた
あぼ~ん -
126:
柚子
居留守使おうかな…そんな事を考えている私を気にもせず、誠汰朗はオートロックを解除した
―ピッピ、ガチャ
「どーぞー入ってぇー」
そう言ったのはもちろん誠汰朗だった2006-01-31 23:46:00 -
127:
柚子
「お迎えに行ってきます」
と私に敬礼のポーズをとり、それから玄関へ走って行った。
「どーなん、それ…」
諦めというより観念して、ため息混じりに玄関につぶやいた2006-01-31 23:50:00 -
128:
名無しさん
「ゆなぁー、すばサンだよーん」
そう言って並んだ二人は、称して不機嫌王子と元気なバカ
「何してたん、コイツと」
低い声で王子は、気まずそうに笑う私と誠汰朗を交互に睨み聞いた2006-02-01 00:00:00 -
130:
柚子
「事情を…話に来てくれて、…話を…して、ました。」
そう答えた私を、納得できないと言う顔で睨むすばる。
誠汰朗と言えば、さっさとソファーに座り、部屋に置いてある雑誌をパラパラとめくり、ヘヘヘと笑っていた。
「…で、お前いつまでおるんよ」2006-02-01 10:59:00 -
131:
柚子
不機嫌王子の怒りの矛先は誠汰朗に向けられる
「後から来た奴が、偉そーに」
態度を一変させ、なぜか誠汰朗まで不機嫌になってしまった2006-02-01 11:02:00 -
132:
柚子
―挑発しないでよ
顔の前で手を合わせ、困った様に誠汰朗に見つめた2006-02-01 11:04:00 -
133:
柚子
「二人で話し、させて?」
紅茶を二つ、テーブルに置いて無言を打ち破ったのは私。
紅茶の湯気が揺れ、私の心も揺れる。
覚えてる?このティーカップはすばると買いにいったんだよ?2006-02-01 11:08:00 -
134:
柚子
立ち上っては消えてゆく紅茶の湯気の様に、私の心も消えてなくなってくれ。
神様なんて居ない…と分かってはいても、そう祈らずにはいられなかった
一度は打ち破ったはずの沈黙は、この奇妙なトライアングルに再び襲い掛かっていた2006-02-01 11:17:00 -
135:
柚子
午前4:00
誠汰朗はソファーから立ち上がったのは、置時計が四時の時報を知らせた時だった。
すばるの前に置いた紅茶を一気に飲み干し、口を開く
「玄関まででいい、送って」2006-02-01 11:27:00 -
136:
名無しさん
http://01.xmbs.jp/kasegijgm/
2006-02-01 11:32:00 -
137:
柚子
誠汰朗は私にそう言って、誇らしげに笑ってたすばるを見下ろす
「タクシー呼ぼうか?」
玄関のドアを開ける誠汰朗の背中に小さく聞いた2006-02-01 11:33:00 -
138:
柚子
「外で待ってる」
「寒いから」
「どっか入るよ」
「今日も仕事でしょ?」2006-02-01 11:34:00 -
139:
柚子
「休むもん」
「でも…」
「でもじゃない」
―バタンッ…2006-02-01 11:35:00 -
140:
柚子
「でも…」
閉まってしまった扉に、もう一度呟いた
かわいい誠汰朗の笑顔はどこにもなくて、その時グッと胸が痛くなったのを覚えてる2006-02-01 11:39:00 -
141:
柚子
━俺のココロ━
「何やってんだ…俺」
テーブルに俯せ、一人呟く。ゆなの家の傍にあるマンガ喫茶の一室だった2006-02-01 11:45:00 -
142:
柚子
彼女と出会った日、佐奈と別れた日だった。
「せーちゃんの優しさは偽物だよ」
それが最後の言葉で別れだった
好きかどーかも分からないまま、一ヵ月で終わってしまった恋2006-02-01 11:46:00 -
143:
柚子
―アンタが俺の事好きやって言ったんやん…
俺だって好きになろうとしてた、偽物で何が悪い。
ホストと言うだけで嫌いになる女が居て、ホストと言うだけで好きになる女が居て。俺はいつもそこには居なかった2006-02-01 11:50:00 -
144:
柚子
何だってした、偉くなるために。
その犠牲になったのは俺の毎日
疲れて眠るだけの日々を過ごしながら、愛を水で溶かして薄っべらにしてしまった俺は、何も分からなくなっていく
愛ってなに?誰のもの?どこにあって、どこに行く?2006-02-01 12:00:00 -
145:
柚子
苛立ちの中でも、仕事に行かなきゃいけない自分にまた腹がたった
1月4日、午前7:102006-02-01 12:08:00 -
146:
柚子
「セータロー全然連絡くれないじゃーん!」
「マジで!?メアド間違ってんじゃない?それ(笑」
「間違ってねぇーよ!(笑」
優が大口でバカそうに笑う2006-02-01 13:12:00 -
147:
柚子
気ィ狂いそうだった
ドリンク一本で、いつまで居る気だよ
そう思いながらも笑顔を作る
しばらくしてから席を立ち、バックヤードの暇そうな新人に声を掛けた2006-02-01 13:14:00 -
148:
柚子
「優の席、ヘルプでチェック釣り上げて。るぅ君だっけ?お願いできる?」
ハイ。と答え、るぅはフロアーに出て行く。
ホントに息つく暇もない2006-02-01 13:17:00 -
149:
柚子
「道が分からん」
そう不機嫌な声で電話してきた新規2名席を、柱の影覗いた
淋しそうに笑い、つまならそうに酒を飲む女がそこにいた2006-02-01 13:19:00 -
150:
柚子
寒空の中、ワザワザ下まで迎えに行ったのに不機嫌な女は勝手に店に入って行った。
その時俺に
「寒い中ありがとう」
とまだマトモな対応をした方の女だった2006-02-01 13:21:00 -
151:
柚子
━俺に似てる
彼女を見てそう思った。
何が悲しいんだ?そう感じさせるはしゃぎっぷりだった2006-02-01 13:23:00 -
152:
柚子
手を握った時。
ゆなの手を捕まえた時。その手があまりに冷たくて、迷信を確かめたくなった
―冷たい手の持ち主は、ココロがあったかい―ってヤツ2006-02-01 13:25:00 -
153:
柚子
俺に指名を決めた時
ボトルを卸すと騒いだ時
まるで心が何処かに奪われた様に笑っていた
なぜか分からない…ただ君が自分に重なって見えたから、俺を知りたくて君に近づいた2006-02-01 13:30:00 -
154:
柚子
翌日―午後11:25
まだ開店前の店に従業員が集まり始める。
「るぅは無欠かよ」
その集団を覗き、ぼやく俺。2006-02-01 13:33:00 -
155:
削除削除されますた
あぼ~ん -
156:
柚子
昨日の不機嫌女は意外な程金を使い、るぅを喜ばせた。
―余裕ぶっこきやがって…続くようなら注意しなきゃな
「Dですか?何もないと思いますけどぉ?」
るぅへの苛立ちを体の底に押し込み、代表の質問に答える2006-02-01 13:49:00 -
157:
柚子
「すばるって知ってんの?女取られたとかなんとか…」
自慢じゃないけど取ってないです。すばる…すばる…?
「あー、昨日の新規の!」
ゆなの口座の名前が確かすばるだった。と思い出した2006-02-01 13:50:00 -
158:
名無しさん
頑張って下さい?
楽しみにしています?2006-02-01 14:19:00 -
160:
柚子
「やっぱお前じゃーん!店いいから、セータロー行って片付けて来い。絶対モメんなよ?あっ、偉いサンらしいから、敬語使ってね」
そう言って代表は、さっさと奥へ引っ込んでしまった。
「俺だって役職やん…」
相変わらずぼやきながら、うだうだとタクシーに乗り、るぅの家に向かった。ホントねみーよ2006-02-01 16:08:00 -
161:
柚子
るぅの部屋は寿司詰め状態で、黒服の恐いお兄さん達が何やらモメていた。
その中でも一際、威張り散らしていたのがすばるサンだった
「お前がセータロー?」
俺の3、4コ上くらいだろうか?そいつは玄関に立っている俺に、眉を潜めそう言った2006-02-01 16:09:00 -
162:
柚子
「ですけど?」
代表に言われた通り敬語を使う
「あの女、俺のエースやからちょっかい出すなよ」
あの女…あぁ、ゆなか?へぇ、エースなんだ。だから何?2006-02-01 16:10:00 -
163:
柚子
「ちょっかいって(笑」
バカにしたような俺がそう言うと、すばるが更に台詞を重ねた
「アイツなぁ、アホやからしばかな分からへんのよ。お前もやってみ?2、3発殴ったらゆー事聞くから」
ニタニタ笑うこいつの顔をぶっとばしてやりたいと思った。まぁ昨日、今日会ったばかりの女にきれてやる事はない、とは思う。だけどもう止まらない2006-02-01 16:17:00 -
164:
柚子
「アホはアンタと違います?ゆなにも選ぶ権利はあるし、オタクは一体何様ですか?って話し。女殴って偉そうにしてんな、ジジィ!!」
正直ジジィは言いすぎた。
そう思った時には俺は、大きな音をたてて床に倒れた後だった。2006-02-01 16:19:00 -
165:
柚子
―ゆな…アンタはこんな奴のドコが好きなんだ
倒れたままそんな事を考えていた
それから、代表を呼び出し主要者以外は解散になった。一応、被害者の俺も残る2006-02-01 16:19:00 -
166:
柚子
「モメんなって言ったのに…。顔腫れてるし、今日は休みやな」
駆け付けた代表にそう言われ、少しヘコんで部屋の隅でうずかっていた俺は、
―着信・ゆな(風俗)
すばるサンの携帯が震えながら、そう点滅するのを見つけた2006-02-01 20:54:00 -
167:
柚子
怒られているすばるサンのまだ着信に気が付いていない。
それをいい事にその携帯を持ってこそこそと外へ出て電話をとった
―ゆなは風俗嬢
少しショックだったものの、そんな事より表示に腹が立つ俺がいたんだ2006-02-01 23:11:00 -
168:
柚子
―「すば君…の携帯…だよね?」
電波の先に俺は居るのに、アンタはどうして、コイツの名前を呼ぶの?
アンタが悲しく笑うのは、コイツのせいなんだろう?2006-02-01 23:12:00 -
169:
柚子
アンタが悲しく笑うのは、コイツのせいなんだろう?
仕事着だろうワンピースから覗く肩に、幾つものアザある事を知った時、俺まで悲しくなったんだ。
ゆなには心がない訳じゃなくて、アイツに取られたままなんだと気付いた日2006-02-01 23:13:00 -
170:
名無しさん
午前8:01
あれから2時間…
マンガ喫茶で寝こけていた俺は携帯を開いた
ゆなからの連絡は…なかった2006-02-01 23:15:00 -
171:
柚子
━独りぼっちのティーカップ━
そんな誠汰朗の心の中も分からないまま、私とすばると向かい合って入れ直した紅茶をすすっていた。
「アイツが好きなん?」
「誠汰朗の事?なんでよ、会ったばっかやん(笑」2006-02-01 23:17:00 -
172:
柚子
「アイツはお前好きなんちゃん?」
「だから何で(笑?」
そんな話しを繰り返していた2006-02-01 23:18:00 -
173:
柚子
―ガチャンッッ
2006-02-01 23:19:00 -
174:
柚子
私はソファーに押し倒され、不自然な態勢ですばるを見上げていた
ティーカップが片方、床へとすべり落ち割れてしまったのが見えた。
絨毯へと滴り落ちる紅茶。
それがまるで私の心が割れた様で、私の流した涙の様で2006-02-01 23:27:00 -
175:
柚子
でも心とは裏腹に
―シミ抜きあったかな。
そんな事を考えていた2006-02-01 23:28:00 -
176:
柚子
「アイツと…やったん?」
嫉妬じゃないと、わかってる。だから苦しい。
「何それ?」
私は呆れたように、上にかぶさったままのすばるに言った2006-02-01 23:30:00 -
177:
柚子
「スグ分かる事やから今のうちに白状してよ」
意地悪な顔。要するにやれば分かるって事でしょ?
「しないから…」
そう言ってすばるの肩を押し上げた2006-02-01 23:31:00 -
178:
名無しさん
―バシンッ
「やましい事あんの?」
左の頬が痛かった2006-02-01 23:34:00 -
179:
柚子
―誠汰朗も痛かったんだろうな
そう思いながら、すばるに抱かれた2006-02-01 23:36:00 -
180:
柚子
私はすばると、何度こうして体を重ねてきたんだろう。
泣きもせず、笑いもせず、喘ぎもせず、ただすばるの下敷きになったまま、ゆっくりと紅茶色に染まってゆく絨毯を眺め
たすけて…誰かタスケテ…
そう叫び続けた2006-02-01 23:40:00 -
181:
柚子
愛のないセックスは嫌
例え嘘でも、薄っぺらな愛でもいいから与えて欲しいと、彼の背中にしがみ付く。
ついさっき抱き締めたばかりの誠汰朗の背中を思い出したら、やっと涙が溢れだした2006-02-01 23:48:00 -
183:
柚子
━消えない染み━
染み抜きはやっぱり見つからなかった。
すばるが帰った後、私は割れたガラスを拾い集め、拭けば拭く程ひろがる染みを何度もこすっていた。2006-02-02 12:57:00 -
184:
柚子
あっ、誠汰朗…―
そう思い出して、まだ少し痛む頬に手を当てた
「ごめん、遅くなって。」そう言って誠汰朗に電話をかけたのは、8:30を過ぎた頃。2006-02-02 12:58:00 -
185:
柚子
「今から会おう」
何度もそう言う彼をなだめ、電話を切ったらまた一人ぼっちになった。
腫れが引くまで誰にも会わない、そう決めていた2006-02-02 12:59:00 -
186:
柚子
すばるの手癖はあみちゃんにも言っていなかった。
―それでいい
カッとなると口より先に手が出る男なんだと諦めたのは、もうずっと昔のこと。
シャワーを浴びて、毛布に包まると地面に吸い込まれるように目をつぶった2006-02-02 13:01:00 -
187:
柚子
と急に、給料を貰ってない事を思い出した。
もう財布は空っぽ、寮の部屋も散らかしっぱなし。
面倒くさいと思いながらも、よっこらせっと起き上がり毛布から這い出した2006-02-02 13:02:00 -
188:
柚子
午前9:01
部屋着にコートを羽織り、帽子を深くかぶってタクシーに乗り込んだ
店長には、寮を片付けに行くから給料を部屋の新聞受けに入れるように頼んでおいた。
これなら誰にも会わなくて済む2006-02-02 13:03:00 -
189:
柚子
部屋を片付け、給料を取り、鍵をポストに入れて無事任務は終了
さっさと帰ろ…
タクシーを拾いに大通りへ向かった2006-02-02 13:05:00 -
190:
柚子
冷えた手で耳を覆ったら少しだけ街が静かになって
―全部夢ならいいのに
そう祈り目を閉じた。
弱くなったな私2006-02-02 13:06:00 -
191:
柚子
「ちょっ…!あれ?ゆなちゃん?」
やばい!!
私は瞬間的にそう思い、後ろも振り向かずに走った2006-02-02 13:07:00 -
192:
柚子
―こんな時に知り合いに会うなんて、まるでお約束じゃないか…
「ハァハァッ…ッ待ってって…」
腕を掴み、息切れしながら追い掛けてきたのは、意外にもスーツ姿のるぅ君だった。
まずそれにビックリし、なんで?と無意識に聞いていた。2006-02-02 13:16:00 -
193:
柚子
「タクシー拾おうと思って…、そしたらゆなちゃん居たから…」
タクシーかぁ、そっか…
「スッピンなのに分かった?」
と意味不明な納得と共に、一応るぅ君にそう尋ねたら「対して変わらんやん」と言って、すぐに「ごめんなさい」と俯いた2006-02-02 13:17:00 -
194:
柚子
それからもう一つ
「昨日は迷惑かけてごめんなさい」
そう言って深く頭を下げた。
昨日…?そういえばるぅ君が発端だったんだっけ2006-02-02 13:22:00 -
195:
柚子
「私は…あんま関係ないし、誠汰朗に謝りなよ」
そう言ってから、少し冷たかったかなと思ったけど、すばるを想うと今でも泣きそうな自分を押さえるのに必死だった。
「でも…」
とるぅ君は続ける2006-02-02 13:25:00 -
196:
柚子
「殴られたんじゃないんですか?」
私を見ながら、自分の左の頬を指差して言った
―頑張れ!私!2006-02-02 13:27:00 -
197:
柚子
「エッ?違う、違う(笑」
そう笑ってから、良い言い訳も思いつかず
「セ-タローさんっすか?」
とまだ聞き続けるるぅ君を通りかかったタクシーに押し込み帰らせた2006-02-02 13:28:00 -
198:
柚子
はぁ…何とかなった。
なったのか?
まぁ、いいや。早く帰って寝よう。
暖房の効きすぎたタクシーの車内は、私の眠気に拍車をかけた2006-02-02 13:29:00 -
199:
名無しさん
???
2006-02-02 13:53:00 -
200:
柚子
午前8:13
満喫を出て、俺はゆなのマンションの下に来ていた。
いい加減寒い。朝はこれまた寒い。
「俺が連絡するって言ったンだっけ?」2006-02-02 16:39:00