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水商売の変貌

スレッド内検索:
  • 1:

    名無しさん

    1 名前:杏奈:05/09/09 06:58
    夜の世界ではでも耳にしたことがありますよね?突然の変貌や変身って言葉を。そしてその世界に入ってくる約七割が心に何らかの闇を抱えていることを。
    つかればつかる程変わっていく。これは本職ホストの彼氏の実話を元にした話。

    2006-09-07 14:29:00
  • 2:

    名無しさん

    2 名前:杏奈:05/09/09 07:04
    私の彼氏は某ホストクラブの代表。水商売歴は○年と長い。夜の街ではちょっとした有名人。
    私が彼、光輝と出会ったのは今から五年も前のことだった。

    2006-09-07 14:31:00
  • 3:

    ?まぁゃ?

    前も書いてましたょねぇ?

    2006-09-07 14:36:00
  • 4:

    杏奈

    光輝を初めて見た時、体中に電気が走ったようにドキッとした。
    うわっ…めっちゃカッコイイやん。
    それが光輝の第一印象やった。初めて会ったのにすぐに意気統合して、お互いの友達も交えてそのままカラオケへと移動した。

    2006-09-07 14:37:00
  • 5:

    名無しさん

    コピペさしてもらってるんです、すいません

    2006-09-07 14:41:00
  • 6:

    名無しさん

    光輝には不思議な影があった。時々ふと淋しげな顔をする。初めて会った時からずっとそれが気になってた。
    歌う曲も淋しげなバラードばかり。私はすぐに光輝に吸い寄せられるようにひかれていった。

    2006-09-07 14:44:00
  • 7:

    杏奈

    『光輝君って何してる人なん?学生?』
    同じ歳ぐらいかと思ってた私はとりあえず年齢を知りたくて聞いた。
    『え?全然。めっちゃ引く仕事かも。ホストやねん。まだ始めたとこやねんけどな。二週間目。ちなみに19歳やで。杏奈の一個上』
    一個上かぁ。あんまり変わらんねや。

    2006-09-07 14:46:00
  • 8:

    杏奈

    でも見えない壁を感じた。光輝は何かを抱え込んでるように見えた。そして私はあまり接点のなかったホストとゆう夜の世界の人間を光輝を通して知っていくことになった。
    『杏奈引いたやろ?』
    『全然☆光輝君カッコイイしいいんちゃう?』
    私は最初は本当にそう思ってた。

    2006-09-07 14:48:00
  • 9:

    杏奈

    それから携帯番号を交換して、その日はカラオケが終わると普通にバイバイした。
    毎週日曜は光輝と会うようになってそれ以外は電話をする日々が続いた。いつの間にか光輝を好きになっている自分に気付いた頃、突然の光輝からの告白。

    2006-09-07 14:51:00
  • 10:

    杏奈

    ちょうど出会ってから二ヵ月目の日曜日やった。
    『杏奈のこと好きなってもうた。付き合ってくれ』
    私は迷うことなくオッケーした。大好きな光輝の彼女になれた。それだけで幸せやった。
    その頃まだ光輝は駆け出しの新人ホスト。毎日酔い潰れながら給料と呼べる額には程遠いぐらい薄っぺらい給料袋を私に見せてくれた。


    2006-09-07 14:55:00
  • 11:

    杏奈

    え?こんな少ないん?明細を見てびっくりした。手取りで六万円弱。日曜日以外毎日働いて六万円。
    想像してた夜の世界とは全く別なものやった。それでもそのわずかなお金で給料日のあった週の日曜日は、おいしい物を食べに少しリッチなお店に連れてってくれた。
    私はそんな優しい光輝がほんまに好きやった。

    2006-09-07 14:58:00
  • 12:

    杏奈

    でも私は付き合って半年ぐらいまで光輝のお店の場所がどこにあるかも知らず、次第に興味をいだくようになった。
    ホストをしてる光輝も見てみたい。どんなとこで働いてるんやろうって。
    何回か頼んでやっとオッケーをもらい、仕事が終わるとバイト仲間の桜ちゃんと一緒に遊びに行った。もちろん支払いは私もちで。

    2006-09-07 15:05:00
  • 13:

    杏奈

    近くまで行くと光輝が迎えに来てくれ、お店まで三人で歩きながら向かった。
    『俺の彼女ってゆったら代表がセットだけでいいって言ってくれたし俺出すから金払わんでいいで』
    光輝が私達に言ってきた。
    『いいって☆無理ゆって来たしセットぐらいなら全然払えるから』

    2006-09-07 15:08:00
  • 14:

    杏奈

    『いいから!出すな』
    光輝に言われて渋々うなずいた。そしてお店に着くと黒いスーツに身をまとった人達がたくさんいた。
    男前な人や可愛い人、三枚目系の楽しそうな人、いっぱいいたけど私はやっぱり光輝が一番やなぁと思った。
    お店にいる時の光輝は少し大人に見える。暗がりな店内なせいもあってキレイな顔に見えた。

    2006-09-07 15:10:00
  • 15:

    杏奈

    『初めまして!代表のアースです。地球って書いてアースって読むねん。英語ではEarthってゆうやろ?』
    突然席に入ってきて光輝の隣に座った代表、アースさんは座った途端にマシンガントークが炸裂やった。
    『杏奈ちゃんやっけ?よう光輝が話してるで。僕の彼女は可愛いって。こいつ今めっちゃ頑張ってるわ。今月ナンバー4ぐらいいくんちゃうか?』

    2006-09-07 15:12:00
  • 16:

    杏奈

    『えー♪光輝凄いやん。めっちゃ頑張ってるもんなぁ』
    嬉しかった。ナンバー入りできる光輝を素直に喜んだ。でも内心は違ってた。
    最近は日曜日でも会えるのは夜中から。私はバイトをわざわざ日曜、月曜を休みにしてたのに。
    日曜の夜遅くに会って、月曜日の光輝の仕事の時間までしか会えなくなってた。

    2006-09-07 15:18:00
  • 17:

    名無しさん

    読んだことないから続き読みたい!!おも白い(^^)

    2006-09-07 15:19:00
  • 18:

    杏奈

    私はその言葉の意味が分からなかった。でも少しずつその意味が分かっていくようになる。
    初めて光輝のお店に行った日から一ヶ月。私はあれ以来お店には行ってなかった。光輝はアースさんの家に他のホスト二人と転がりこんで生活していた。

    2006-09-07 15:25:00
  • 19:

    杏奈

    すれ違いの毎日の中でも唯一の救いは朝、光輝が電話で起こしてくれることだった。毎朝9時ごろ、光輝は毎日電話をしてくれた。
    光輝にとってはモーニングコール兼おやすみコール。電話を切る時はいつも決まって『おやすみ』だった。

    2006-09-07 15:27:00
  • 20:

    杏奈

    でもギリギリうまくいってた付き合って八ヵ月がたつ頃、状況が変わってくる。
    朝の電話も途切れるようになり、日曜も会ってる間ずっと寝てることが多くなった。私はまだ実家だったし光輝はアースさんの家に居候だったからお泊りはいつもホテル。
    光輝が仕事が終わった日曜日の朝から月曜日の夜まで丸二日間ずっとホテルにいた時もあった。

    2006-09-07 15:29:00
  • 21:

    杏奈

    それでも一緒にいる間は良かった。安心できた。光輝のそばにいることで不安からも開放された。
    その頃は光輝はナンバー3になっていた。そしてある日曜日、いつものように光輝と会ってその日は久しぶりにデートらしいデートをした。
    映画見たり買い物したり、プリクラ撮ったり。その時買い物中に光輝に初めて指輪ももらった。

    2006-09-07 15:33:00
  • 22:

    杏奈

    『お前が不安にならんようにつけとけ。ごめんな最近あんまり時間作ってあげれんくて』
    って言ってくれた。私は嬉しくて店の中やったのに泣いてしまって光輝は恥ずかしそうにしてた。
    光輝の彼女は私なんや、信じてたら大丈夫。光輝だって頑張ってんねんから。
    そしてまたいつものようにホテルでお泊りしてると光輝が言ってくれた。

    2006-09-07 15:35:00
  • 23:

    杏奈

    『一年目の記念日きたら一緒に住もっか』
    私は光輝の突然の言葉に頭がいっぱいになった。一緒に住もっかって…?光輝と私が?二人で?嬉しさと喜びでいっぱいになった。
    『あと四ヵ月ガマンしとけよ。今金もためてるし。一緒に住んだら毎日飯作ってな。アースさんの彼女めっちゃ飯うまいねん』
    『彼女…?』
    『あれ?ゆうてへんかった?彼女も最近一緒に住んでんねん』

    2006-09-07 15:37:00
  • 24:

    杏奈

    全然知らんかった。ってことは毎日生活してる場に女がおったんや…いくらアースさんの彼女とはいえ少し嫌な気分になった。
    でも四ヵ月、あともう少し頑張ろう。そうすればきっと今みたいな不安からも開放される。
    でも私の不安は予想外な展開を引き起こす種になってしまった。

    2006-09-07 16:06:00
  • 25:

    杏奈

    いつものように光輝は先に寝てしまい、私は脱ぎっぱなしにしてたスーツのジャケットをハンガーにかけようとした。
    その時、内ポケットからピンクの封筒を見つけてしまった。今まで感じたことない嫌な勘がはたらいた。
    なんなんやろコレ。私は少しためらいながらも気付けば封筒を手にしてた。

    2006-09-07 16:09:00
  • 26:

    杏奈

    封筒の表にはダーリンへ?と書かれてあった。寒気がした。裏を見ると愛子と書かれてた。
    見ちゃだめだ。頭では分かっていた。でももう理性は働かなかった。
    内容は意外に普通なことだった。最後の二行を見るまでは。
    ━━省略━━
    もうすぐ付き合って一ヶ月だね?今度また家に遊びに来てな?一回来てくれてからずっと来てくれへんし。忙しいのは分かってるけど。ワガママ言ってごめんね。愛子より?

    2006-09-07 16:11:00
  • 27:

    杏奈

    愛子…って誰よ…。私の中の何かがプッツンと切れた。寝ていた光輝を起こして手紙を投げ付けた。
    『ど…したん?杏奈も一緒にねよぉ』
    寝ぼけた光輝は気付かないまま私にそう言ってきた。
    『愛子って誰なん』
    『えっ?なんて?』

    2006-09-07 16:13:00
  • 28:

    杏奈

    『愛子って誰なんよ!!』
    私は初めて光輝に怒鳴った。怒った私を見て驚いた光輝は跳び起きた。そして投げ付けた手紙を見ると顔が青ざめていくのが分かった。
    『ちゃうねん』
    『何が違うんよ!また家に来てってどーゆうこと?一ヶ月記念って何なん!』
    『客やねんって。店の客。色で引っ張ってるからしゃあないねん信じてくれや』

    2006-09-07 16:16:00
  • 29:

    杏奈

    色…?私は意味が分からなかった。夜の世界とは無縁やったしそんな客とのルールみたいなものがあることすら理解できひんかった。
    『信じれるわけないやん』
    『ちょっと待ってくれや!全部お前とのこれからのためやん。マンションの契約にも金いるし。色なんか当たり前にあんねんから』

    2006-09-07 16:33:00
  • 30:

    杏奈

    当たり前?そうゆう風に人に嘘つくことが当たり前?私はこの時初めて光輝に対して不信感をもった。
    『杏奈のためって何なん?そんなことしてまでお金作ってマンション契約なんて望んでないわ。杏奈は…光輝と一緒におれるだけでいいのに…そんなんしてまで同棲なんてしたくな…』
    声がでえへんかった。悲しくて悔しくて寂しくて。

    2006-09-07 16:35:00
  • 31:

    杏奈

    光輝がどんどん変わっていく。悪い悪魔のように変貌を遂げていく。涙がとまらんかった。
    『信じてくれ。家には行ったけどなんもしてないし、一切触れてもない。休みの日だって絶対杏奈とおったやん』
    そうやった。休みの日だけは私のそばにいてくれた。でも他の日は…そう思うと泣き止むどころかワンワン泣いてた。

    2006-09-07 16:39:00
  • 32:

    杏奈

    愛子って人だけじゃないかもしれん。光輝は今ナンバー3。もっと他にもたくさんお客さんがおる。
    もしかしたら…いや、そうは思いたくない。でも…。途切れた糸は繋ぎ合わせるまで時間がかかった。
    その日は結局、一応仲直りした。でもそこから私は変わってしまった。光輝をしばるようになっていった。不安で苦しくて光輝をしばることで安心するようになって。

    2006-09-07 16:41:00
  • 33:

    杏奈

    バイト中も暇を見つけてはトイレに行き昼も電話をかけた。光輝はあの時以来、私が余計な心配をしないように寝てても絶対に電話に出てくれた。
    なにやってんねやろ私…。光輝にとって重い存在になってる。それが分かってるのに気持ちのブレーキがきかんかった。

    2006-09-07 16:44:00
  • 34:

    杏奈

    そうこうしてるうちに付き合って10ヵ月目が過ぎた。ある日、私は仕事が終わった時に見知らぬ携帯番号から電話が鳴った。
    『はい』
    『もしもし杏奈ちゃん?俺オレ、アースですけど』
    『アースさん?あっどうしたんですか!?』
    『今からちょっと時間ある?話したいことあって』

    2006-09-07 16:46:00
  • 35:

    杏奈

    私は言われるがままに指定された場所に向かい、アースさんを待っていると走りながらアースさんは現れた。
    『行こっか』
    そう言うとアースさんは歩きだした。夜の街をゆっくり歩いたのは初めてやった。すれ違う人はアースさんに挨拶したりジロジロ見てたり、違うオーラみたいなものを感じた。

    2006-09-07 16:50:00
  • 36:

    杏奈

    でもアースさんが入ったのは焼肉屋…え?
    『腹減ってない?俺めちゃめちゃ減りまくりんこ』
    私は思わず笑ってた。りんこって(笑)そしてテーブル席に座った私とアースさんは飲み物を頼み、とりあえず食事した。その間アースさんは普通の話をしてた。
    やっと食べ終わる頃、アースさんは私をじっと見るとこう言った。
    『杏奈ちゃんは光輝のこと信じられへん?』

    2006-09-07 16:52:00
  • 37:

    杏奈

    『えっ?あ、あぁ…光輝から何か聞いたんですか?』
    『うーん、まぁ聞いたとゆうか最近光輝がちょっと元気なさそうに見えたから、俺から聞いてみてんな。そしたら杏奈ちゃんと喧嘩ばっかりやって言ってたから。原因は仕事やって言ってたしナンバーのプレッシャーかけてた俺にも責任あるかなぁと思って』

    2006-09-07 16:54:00
  • 38:

    杏奈

    『そんな…ことないです。アースさんのせいとか。ただ杏奈が、あ、私が光輝に色のこととか言われて理解できなくて…』
    『そっか。でもあいつ頑張ってんで。杏奈ちゃんと一緒に住むためって給料も使わんとおいてるし多分今月ナンバー2になるやろうな。来月は物件見に行くって張り切ってたわ』

    2006-09-07 16:56:00
  • 39:

    杏奈

    私は恥ずかしかった。光輝は私に嫌な想いばっかりさせるって思ってた。でも…安心させたいってゆう言葉に嘘はなかったんや…。
    情けなかった。
    『信じてあげてくれな。一番大事な人間に信じてもらわれへんのってかなり辛いもんやから』
    アースさんはそう言うと私にニコッと微笑んだ。
    『あの、アースさんも彼女さんと喧嘩したりするんですか?』

    2006-09-07 16:58:00
  • 40:

    杏奈

    『俺?うーん…めちゃめちゃすんで。今の女とは三年になるけど殴り合いにもなったし何回も別れたし。同棲しても何回も出て行ったりしたし俺の女気強いから客に電話したりもしたわ』
    『そう…なんや』
    私はびっくりした。そんなこともあるんやって。
    『まぁそれも最初だけやけどな。女も水商売やってたし仕事のこと分かってくれるようにもなって今じゃ何にも言わん(笑)だから逆に怖いわ。』

    2006-09-07 17:00:00
  • 41:

    杏奈

    『何で?何も言われない方がラクじゃないの?』
    私は不思議に思った。
    『最初はそうやったよ。でもガマンしてんねんなぁってだんだん変わってきた。こいつは絶対何があっても守っていこうって。何も言われんかったら逆にこっちが不安になってもうた』
    そうなんやぁ…。
    『でも結局は信じてもらえたってこと。お互いの間に信用がなくなったら終わったも同然やから』

    2006-09-07 17:02:00
  • 42:

    杏奈

    信用…。私は光輝を信じてるの?自分自身に問い掛けた。ただただ自分の不安さばかりを光輝に押し付けてただけや…。
    『まぁ杏奈ちゃんも光輝もまだ若いしゆっくり作りあげたらいいよ。信頼関係を。焦ってたらうまくいくもんもいかんようなるから、何かあった時はとりあえず落ち着いて考えてみ。喧嘩する前に絶対もっと違う答えが見つかるから』

    2006-09-07 17:04:00
  • 43:

    杏奈

    アースさんの話すことは奥が深い。そして必ず当たってる。私はアースさんに言われた言葉をちゃんと胸にしまった。
    『杏奈ちゃん店ちょっと寄っていきーや。金は俺付けでいいから。日曜まで待たれへんやろ?光輝びっくりするやろな』

    2006-09-07 17:06:00
  • 44:

    名無しさん

    もー読んだわぁ↓↓

    2006-09-07 17:38:00
  • 45:

    名無しさん

    うちも読んだけど もう一度読みたいわ 読んでない人もいてるやろうし

    2006-09-07 17:53:00
  • 46:

    杏奈

    私は何度も断ったけど、アースさんの押しに負けて結局アースさんとお店に向かった。お店に入るとアースさんは席に案内してくれ私の隣に座ってくれた。
    誰も私だと気付いてない。はたから見ればアースさんのお客さんに見えたのだろうか。
    『杏奈!?ちょっ、お前何してんねん』
    突然少し離れた席から大きな驚いた声で光輝がこっちに向かってきた。

    2006-09-07 20:10:00
  • 47:

    杏奈

    『杏奈ちゃんな、お前しょうもない男やから俺にのりかえるって。な?』
    アースさんはそう言うと私にウインクしてきた。あ、冗談か…。私は冗談にのってうんっとうなずいた。
    『ちょっと待って下さいよー。嘘でしょ?おい!杏奈嘘やんな?』
    オドオドしてる光輝を見てアースさんは爆笑していた。

    2006-09-07 20:12:00
  • 48:

    杏奈

    『ハハッ当たり前やんけ。お前もまだまだ青いなぁ。ちょっと座っとけ、俺からのサービスや』
    そう言うとアースさんは光輝の座ってた席へ向かい、そこに座った。
    『マジで何で代表と一緒に来たん?ほんまに口説かれたりせんかった?何もされてない?』
    こんなに心配そうな光輝は初めて見た。でもちょっぴり嬉しかった。

    2006-09-07 20:14:00
  • 49:

    杏奈

    『アースさんめっちゃいい人やで。光輝が元気ないの心配してたし…杏奈にも色々アドバイスしてくれてんやん。てゆーかごめんな。自分のことばっかり考えて光輝の重荷になってたわ』
    光輝は私の頭をなでながら
    『やっぱりお前可愛いわ。俺ちょっと考えててん。お前苦しめるぐらいなら辞めようかなって。でももうちょっとで一緒に住めるし頑張ってきて良かったわ』

    2006-09-07 20:17:00
  • 50:

    杏奈

    『杏奈も嬉しい☆』
    私がそう言うと、光輝は耳元で『毎日チューもHもできるな』
    ってささやいた。少し照れくさかったけど嬉しかった。でも、店内の周りの女の子達の目が少し怖く見えた。じーっと見て睨んでるようにも。
    その頃はサイトなんてものはなかったから時代的にはラッキーやったんかもしれん。光輝のお客さんは光輝を目で追い、痛いぐらいの視線を浴びせるから。

    2006-09-07 20:18:00
  • 51:

    杏奈

    光輝のお客さんは若い女の子もたくさんいた。クラブのママさんクラスの人も。その日も光輝のお客さんは三組も来てた。
    視線に耐えられなくなり、私は帰ろうとしたけど終電もなくなりどうしようかと悩んでいた。
    『明日もショップのバイトあるし帰るわ』
    光輝にそう言うとそのまま一緒に席を立ち、お店を出てくれた。エレベーターをおりてもくっついたまま。

    2006-09-07 20:20:00
  • 52:

    杏奈

    『もういいよ?早く戻ってあげて。お客さんめっちゃ来てるんやし』
    私はそう言うと光輝に背を向けて歩いた。でも私の後をついてくる。
    『あの通りまで一緒に行くわ。タクシー乗るまでゆっくり歩こう』
    光輝はそう言うと私の隣にピタッとくっついた。
    そしてタクシーを拾ってくれると私に一万円渡して帰ったら電話しろよって笑ってバイバイしてきた。

    2006-09-07 20:26:00
  • 53:

    杏奈

    行き先を告げるとタクシーは走り出した。私は何度も後ろを振り返った。光輝は見えなくなるまでずっと見送ってくれていた。
    バイバイしたばかりなのに胸がしめつけられる。光輝のことが好き。はっきりとそう思った。
    もっともっと時間がほしい。でもあと少し我慢すれば毎日一緒にいれる。そう思うと耐えられた。

    2006-09-07 20:28:00
  • 54:

    杏奈

    家に着いて光輝に電話をした私は電話を手にしたまま寝てしまってた。
    次の日からは変わらないいつもの日々。日曜日が待ち遠しくて、それだけを楽しみに毎日頑張ってた。
    そして、一年記念を控えた日曜日、やっと待ちに待った物件探しの日が訪れた。その日は光輝は寝ないで夜の仕事をしている人を専門とした不動産屋の人と朝から二人で待ち合わせをした。
    『何件かリストアップしてるんで絞っていきましょうか』

    2006-09-07 20:31:00
  • 55:

    杏奈

    私は不思議に思った。普通は不動産屋ってお店に行って色々調べるもんだと思ってたから。こんなこともできるんやって少し感心してしまった。
    喫茶店で物件資料を広げ、十件近くあるマンションから設備や場所、環境を考えて三件まで絞った。
    そしてお昼前には物件めぐり。まるで新婚さんにでもなったかのように私達ははしゃいでた。

    2006-09-07 20:33:00
  • 56:

    杏奈

    一件、二件、三件と見たけど私は絶対に二件目が良かった。光輝はどうなんだろうなぁ?そう思ってるとニコニコした光輝が私に話してきた。
    『杏奈の気に入ったとこでいいで☆杏奈が選んでくれや』
    『えー?光輝はどこが良かったん?杏奈もゆうから教えてや。どこも良かったしなぁ…』
    『うーん俺は二番目に見たとこが良かったかなぁ。キッチンも広かったしベランダも日当たり良かったし』

    2006-09-07 20:35:00
  • 57:

    杏奈

    『ビンゴ!杏奈も二件目が良かったぁ!じゃあ決まりい☆』
    『ほんまに二件目か?俺に合わしてない?まぁいっか。じゃあ決めよか』
    そしてその日のうちに仮契約をすませた。ずっと待ち続けた夢が叶った。私は飛び上がりそうになるぐらい嬉しかった。

    2006-09-07 22:05:00
  • 58:

    名無しさん

    見てます?

    2006-09-07 23:31:00
  • 59:

    杏奈

    審査にも無事通過し、一週間後の日曜日に本契約した。その日にカギをもらうと私達は喜んですぐスペアキーを作りに行った。
    なんだかくすぐったい気分だった。とりあえず何もない部屋に二人で行った。
    電気やガスの契約をし、明日からでも住める用意を整えた。
    『なぁ杏奈の荷物取りに行こか。今日しかないやろ。ついでに何か挨拶しとかなあかんやろし。同棲すんねんから』

    2006-09-07 23:51:00
  • 60:

    杏奈

    『うん☆どうせ服とかそんなもんしかないけど』
    私は嬉しくて声が弾んでた。『ついでに帰りに家具とか電化製品見よか。俺かなり金貯めてたから保証金とか払ってもめっちゃ残ってるし』
    そして、お店の店長にハイエースを借りた私達は、とりあえず私の実家に向かった。日曜日ってこともあったし、家に着くとお父さんの車が止まったままだった。
    うちの家は普通の家庭だ。平凡な楽観主義な両親と、もう結婚している歳の離れたお姉ちゃん、年子の弟の五人家族。

    2006-09-07 23:53:00
  • 61:

    杏奈

    光輝と付き合っていることは家族みんな知っていた。お父さんもお母さんも光輝がホストだと知っても何も言わなかった。
    一度家に遊びに来た時の挨拶の声の大きさや礼儀正しい印象が良かったらしい。だから私が最近同棲する話をした時も、軽く流してくれた。

    2006-09-07 23:57:00
  • 62:

    杏奈

    『ただいまぁー』『おじゃまします!』
    私と光輝が家に入るとリビングにはお父さんとお母さんが待ってくれていた。
    『座って座って』
    お父さんは少し嬉しそうだった。普通、娘が彼氏連れて来たら怒ったりするのが普通やのになぁ…私は笑いそうになった。
    『契約大丈夫やったんか?』
    お父さんがそう言うと私達は二人でカギを見せ合った。

    2006-09-08 00:00:00
  • 63:

    杏奈

    部屋に行って荷物をまとめてる間、光輝はお父さんの釣りの話に付き合わされていた。まぁ幸い光輝も釣りが好きだったから話も合ってて一安心だった。
    玄関に荷物もまとめ終わりリビングに戻ると、お父さんが今度みんなで釣にいこうとゆう話にまでふくれあがってた。
    意外と光輝も乗り気でお父さんは上機嫌だった。

    2006-09-08 00:11:00
  • 64:

    杏奈

    そしてもう夕方になってしまったから帰ることにした。また今度遊びに来てねと言って実家をあとにすると私達はハイエースに荷物を積み、電化製品を買いに向かった。
    コンポは私の部屋から持ってきたけど、それ意外全部揃えなきゃならなかった。テレビに冷蔵庫、洗濯機に炊飯器。一通り揃えて明日配達してもらうことになり私達は家へと帰るために車に乗り込んだ。

    2006-09-08 00:22:00
  • 65:

    杏奈

    『あっ!!』
    光輝が急に大声を出した。『なんなん?びっくりするやん…』
    『肝心なこと…ベッド…ってゆーか布団のこと忘れてた。どうしよ?今なら間に合うかな?』
    時計を見ると8時前。ぎりぎり開いてるだろうってことで急いでお店を探した。そしてやっと見つけたホームセンターで布団を買うことができた。ダブルサイズで枕が二つ。
    ベッドを買うまで布団でいいやん☆そんな会話をしながらも幸せいっぱいやった。

    2006-09-08 00:25:00
  • 66:

    杏奈

    付き合って一年目は二人で迎えることができた。もう日曜日じゃない普通の日でも記念日は一緒にいられる。
    私はバイトを週三日に減らし、なるべく光輝と生活リズムを合わせるようにした。一日二回は家でご飯を食べるように毎日料理も頑張ったし光輝も仕事が終わったらすぐに帰ってきてくれた。

    2006-09-08 00:36:00
  • 67:

    杏奈

    その頃の光輝はナンバー2をキープしてた。ナンバー1は、もちろんアースさん。代表だけあってやっぱりアースさんは凄かった。
    『いつかアースさん抜くのが夢やねん』
    光輝はこれが口癖やった。でもそんな夢もそれから二ヵ月後、すぐに叶ってしまった。
    光輝がホストを始めて1年4ヵ月目のことやった。その頃私とは付き合って1年2ヵ月がたっていた。

    2006-09-08 00:38:00
  • 68:

    杏奈

    ガチャ…バタバタ
    帰ってくるなり急いで私に駆け寄った光輝は嬉しそうな顔で『俺今月のナンバーワンなれてん!!』って。
    私は一緒に喜んだ。そしてアースさんも喜んでくれていた。でもこれを機にアースさんは現役を引退し、裏の経営者になることになった。
    常日頃からアースさんはよく言っていたとゆう。
    『ナンバーワンじゃなくなった時が俺の引き際や』って。

    2006-09-08 00:40:00
  • 69:

    杏奈

    寂しい気がした。でもそれがアースさんにとっての、ホストのプライドだった。そして、光輝に抜かれるなら本望だと。
    それからアースさんは表舞台からは引退した。光輝は有名になった。アース代表を引退まで追いやったやり手ホストって。
    そしてチーフから店長に、その一ヶ月後には常務になった。全てが順調に進んでいった。

    2006-09-08 00:41:00
  • 70:

    杏奈

    でも毎日ベロンベロンになって帰ってくる光輝を見ていると心配やった。同棲を始めて三ヵ月がたつ頃には食事を作って待ってても、お酒飲んで帰ってきて気分が悪くなって吐いてる光輝は
    『ごめん明日くうわ』
    って言うようになってた。そんな日々が続くと食事を作って待ってることがアホらしくなっていった。

    2006-09-08 00:42:00
  • 71:

    杏奈

    私の悪いクセ。自分のことばっかり考えるようになっていった。ナンバーワンになった光輝は毎月の給料も半端じゃないぐらい持って帰ってきてくれたけど、その分少しずつ変わっていくのが分かる。
    このままで大丈夫なんかな?私は毎日そう思うようになっていった。

    2006-09-08 00:43:00
  • 72:

    杏奈

    でもそのたびに信じること、アースさんに言われた言葉を思い出してた。あかん、私が光輝の一番の味方で理解者でおらな…そう思うようにした。
    その頃、私は光輝に言われて服屋のバイトもやめることになり、毎日家にいる日々。光輝のいない夜はたまに暇を見つけては友達と遊んだりしてた。

    2006-09-08 00:45:00
  • 73:

    杏奈

    『いいなぁ杏奈は。仕事せんでも遊ぶお金もらえて。めっちゃ羨ましいわ』
    友達はみんな私にそう言ってた。でも充実なんてしてなかった。なにかが違う、そう思ってた。
    心のどっかにポッカリ穴があいてるみたいに足りない何かを考えるようになっていった。
    光輝は酔い潰れて店で寝てしまう日もあるようになってたし、家で一人でおる時間がすごく苦痛やった。

    2006-09-08 00:46:00
  • 74:

    杏奈

    ナンバーワンになってからの光輝はキープするために前以上に必死で頑張ってた。家におる時もお客さんと電話したりするようになってて。
    私はいい気はせんかったけど何も言わんようにしてた。そんなある日、光輝はたまにいつもより早く用意をして出勤しようとする。
    『何で今日は早いん?』
    私は最近不思議やなぁと思ってたから聞いてみた。

    2006-09-08 00:47:00
  • 75:

    杏奈

    『あぁ、同伴やねん客と』
    よく分からなかった。
    『同伴ってなになん?なんかするん?』
    『客と店入る前に飯食ったりちょっと店の近くで会ったりしてから一緒に出勤するってこと』

    2006-09-08 00:48:00
  • 76:

    杏奈

    『ふーん』
    そっかそっか…って?え?なにそれ?私は始めて知った“同伴”の意味に少し疑問をもった。
    『大丈夫やって。心配せんでも客やねんから』
    光輝はそう言うといつものように出勤していった。私は分からなかった。仕事とはいえそんなことする必要があんのかって。
    水商売を分かってなかった私には理解できないことが多すぎた。

    2006-09-08 00:50:00
  • 77:

    杏奈

    だから光輝が出掛けてからも不安やった。今なにしてんねやろ?どこなんやろ?って。同伴のことを知らんかっただけで、今までも同伴してたんかな?って。
    心配になりすぎて私は電話をかけてしまってた。
    光輝はちゃんと電話に出た。でもいつもとは話し方も違う。『もうすぐ店やし後でかけるから待ってて』って。律義な話し方。

    2006-09-08 00:51:00
  • 78:

    杏奈

    ホストってゆう仮面をかぶった光輝になってた。ホストの彼女ってみんなこんなん思うんかな?もしかして私だけ?
    毎日心配して不安になって一人で空回りして…。安心できるのは光輝の寝顔を見てる時だけ。

    2006-09-08 00:52:00
  • 79:

    杏奈

    光輝と同じ生活、環境になれば私にも何かが分かるかもしれん。私はいつからかそう思うようになっていった。
    『なぁ杏奈も夜の仕事したいなぁと思ってんねん』
    私が話をした時、光輝はびっくりした顔をした。
    『なにゆってんねん!?ちゃんと生活費だってあるしやる必要ないやん。やらんでいいって』

    2006-09-08 17:30:00
  • 80:

    杏奈

    ソッコー却下。私も光輝に言われるがままに毎回そう言いくるめられた。
    でも付き合って一年半が過ぎたある日、光輝のシャツの胸ポケットから名刺を見つけてしまった。
    三枚ある名刺は全部違うお店。そしてそれは全部女の子の名前が書かれていた名刺やった。

    2006-09-08 17:32:00
  • 81:

    杏奈

    携帯番号が書かれてある名刺にはClubやLoungeと書かれてあった。飲み屋さん?そう光輝は今でゆうキャバクラに行っていた。
    『この名刺なに?』
    『あ、違う店やけど仲いいホストの代表さんと付き合いで飲みに行っただけ。あと営業がてらな』
    光輝は平然と私にそう言った。前なら少し焦ってあたふたしながら言い訳も考えたりしてくれたのに。

    2006-09-08 17:33:00
  • 82:

    杏奈

    私ばっかり一人で必死になってた。ただでさえ光輝の周りには女の子がいっぱいやのに飲みにまで行ってるなんて…。
    『光輝おかしいわ。なんで平気なん?こんな名刺見て嫌な気なんの分からん?持って帰ってこんといてよ』
    私はまた光輝に強く言ってしまった。

    2006-09-08 17:34:00
  • 83:

    杏奈

    『あーうるさいなぁもう。しゃーないやん仕事やねんから。いいやんけ。こうやってお前と付き合って一緒に住んでんねんぞ?』
    光輝はだるそうに私にそう言うとベッドに入り、背中を向けて寝てしまった。
    な、なんなん…一緒に住んでんねんから文句ゆうなみたいなこと言って。私は光輝の考えてることが、だんだん分からくなっていった。

    2006-09-08 17:36:00
  • 84:

    杏奈

    水商売に慣れ、味をしめ、そこにつかりつつある光輝は少しずつ嫌な男に変貌をとげていく。
    そして私と光輝の間には見えない溝ができてしまった。二日帰って来ない日ができたり、帰ってきても一言も話さない日があったり。
    私と一緒にいる意味があるのかと疑問を抱くようになっていく。

    2006-09-08 17:37:00
  • 85:

    杏奈

    何か話せばケンカになり、まともに話すことすらなくなっていった。それでも私は嫌いにはなれなかった。優しかった頃の光輝の面影だけをずっと支えに我慢できた。
    その頃もずっと光輝はナンバーワンやった。雑誌に出るようにもなった。光輝の飛躍とは裏腹に私達の距離は少しずつあいていく。
    そして付き合って二年目の日は光輝は家に帰ってこなかった。

    2006-09-08 17:38:00
  • 86:

    杏奈

    二年目の記念日。一人ぼっちで待ってた。去年の同じ日はあんなに幸せに満ち溢れてたのに…。
    苦しかった。寂しかった。こんなにも変わってしまうものなんだと思うとはがゆかった。
    二年目を迎えて私はちゃんと話をしようと思ってた。話すことも一生懸命考えた。今なら間に合うって。まだ光輝を元の光輝に戻せるかもって。

    2006-09-08 17:39:00
  • 87:

    杏奈

    そんな私の気持ちや期待すらあっけなく終わった。もうあかんなぁ…私も疲れてしまってた。
    こんな思いしながら一緒におる意味なんてない。もう疲れた…。
    二年目の記念日の翌日、私は家を出た。一年で増えた物は多すぎて、軽くいる物だけを袋につめて実家に戻った。
    期待してたから。すぐ迎えに来てくれるって。だから大丈夫やろうって。

    2006-09-08 17:40:00
  • 88:

    杏奈

    でもそんな私の期待もまたはずれてしまった。一週間たっても連絡がなかった。私はお父さんやお母さんにも何かあったんか?って聞かれるようになった。
    そりゃそうだ。同棲してるはずの娘が一週間も家に帰ってきてるんだから。でも何もないって話を流してた。
    私は家にもいずらくなり、八日目の朝、しかたなくマンションに帰ることにした。

    2006-09-08 17:42:00
  • 89:

    杏奈

    帰るのは悔しかったけど…かっこわるいけど…でも帰るしかなかった。
    家に帰るとあまり変わらないままの部屋だったけど、光輝は帰ってきてた。でも私はベッドで見つけてしまった。
    長いつけマツゲ。私は嫌な予感がした。ごみ箱を見た。あんな脱力感を味わったのは初めてだった。

    2006-09-08 17:43:00
  • 90:

    杏奈

    実家に帰る前に空にしておいたごみ箱の中に、ゴムとティッシュが入ってたのだ。
    紛れも無い事実。私は信じたくない現実と向き合うしかなかった。信じてたのに…アースさんの嘘つき…信じてたって何もいいことなかったやんか…。
    どうしようもできない気持ちを誰かのせいにすることで私は逃げ道がほしかった。

    2006-09-08 17:44:00
  • 91:

    杏奈

    その時だった。ガチャっとドアが開く音がした。光輝が帰ってきたのだ。誰かと話してる。そして女の子の声も聞こえた。
    そして廊下につながる扉が開いた。私はリビングに座ってた。光輝は顔が真っ赤でいつものようにベロベロに酔っていた。
    『お前なにしてんねん帰ったんちゃうんか。勝手に自分から出て行ったくせに帰ってくんなや』
    『光ちゃん誰なん?前の彼女?』

    2006-09-08 17:45:00
  • 92:

    杏奈

    光輝が連れて帰って来た女は私を見ながらそう言った。キツイ香水の匂いで息がつまりそうだった。
    『いちいちうるさいねん!しゃしゃんな腐れホステスが!お前も帰れ!』
    光輝はその女にも大声で怒鳴ると突き飛ばして倒れさせた。びっくりしたその女は
    『もう知らんわ!』
    と言ってバタバタと帰って行った。

    2006-09-08 17:46:00
  • 93:

    杏奈

    光輝は目が死んでた。酔っていたからとかじゃない。目に光がなくなってしまってた。心を持たない人形のように。
    そして私を見ると何も言わずにベッドに入り、何も言わずに寝てしまった。
    光輝は少しやつれた気がした。痩せてしまったようなそんな気が。
    寝てしまった光輝の寝顔を見ながらそう思った。寝顔さえも前みたいな穏やかな顔をしてない。疲れきった顔…。

    2006-09-08 17:47:00
  • 94:

    杏奈

    可哀相…こんな顔して…。でも私は信じてた光輝の裏切りに心を傷付けられた。それだけは変わらない事実。本当に腹立たしかった。嫌いになった。でも…それでも私は光輝をほっとけなかった。
    せめてちゃんとご飯食べさせないと倒れてしまう。光輝の周りの人は誰も気付かんの?こんなにボロボロになってまでナンバーワン続けて…そんな“1番”に何の意味があるんやろう。

    2006-09-08 17:48:00
  • 95:

    杏奈

    私はその日、久しぶりに家中を掃除した。綺麗にすることで気持ちを晴らそうとするかのように。光輝のために久々に食事も作った。二日酔いでも食べれるようにあっさりとしたものを考えて。
    もう我慢とか感情とかの問題じゃなかった。多分、ただ必死やっただけ。ヒドイ男に変わってしまっても、光輝をほおっておかれへん。
    私しかおらんから…。

    2006-09-08 17:49:00
  • 96:

    杏奈

    周りの同僚ホストや仕事の関係者、お客さん達はみんな光輝の表面しか見てない。ホストの仮面をかぶった光輝しか見てない。
    だから分かんねんや…。私は一人でずっとそんなこと考えながら食事の用意をしてた。
    その日夕方6時過ぎ、光輝は起きてきた。キッチンに立つ私を見ても何も言わない。キッチンも素通りしてお風呂に入っていった。

    2006-09-09 00:39:00
  • 97:

    杏奈

    ちょうど食事の用意も終わり、お皿をテーブルに並べると私はひとつ深呼吸をした。
    多分光輝は食べないかもしれん。いらんって言う。でも体のため光輝のためにちゃんと食べさせなあかん。そう思いながら。

    2006-09-09 00:40:00
  • 98:

    杏奈

    光輝がお風呂から上がると私は何もなかったかのように普通のテンションで言った。
    『ちょうどご飯できたから食べよう』って。
    でも光輝はこっちも見ずに何も言わずベッドに向かうとリビングとつながってるドアを絞めてしまった。
    私はイライラした。何も言わない光輝が逆にむかついた。でも、黙って目をつぶり自分に言い聞かせた。
    “私は頑張れる。私が頑張らな光輝はどんどん変わってしまうんや”って。

    2006-09-09 00:42:00
  • 99:

    杏奈

    その時、スーツに着替えた光輝が部屋から出てきた。
    『ちゃんとご飯食べて行ってよ。光輝めっちゃやつれてるやん…』
    私がそう言うと光輝は黙って座ってる私をジッと見た。一分…二分もずっと。
    少し怖かった。光輝の目は色がなく、冷却な感じがしたから。

    2006-09-09 00:42:00
  • 100:

    杏奈

    『お前あほやろ?何やねん何がしたいねん?こんなことして楽しいか?俺に振り回されて。昨日の女と俺、やったで。お前と寝てたあのベッドで俺は違う女と寝たんや』
    『分かってるわ!』
    私は大声で叫んだ。分かってた。知ってた。でも光輝の口から聞きたくなかった。もし違うって言ってくれたら私は事実と異なってもそれを信じれたかもしれんのに…。

    2006-09-09 00:44:00
  • 101:

    杏奈

    『分かってるんやったらこんなことすんなや』
    私はそれでも我慢した。光輝のためやねんから…。
    『もうそんなんいーからさご飯だけ食べて行ってよ。せっかく作ってんから』
    私がそう言うと光輝はテーブルに並べてた料理を全部手で払いのけた。ガチャーンガチャンとお皿の割れる音が部屋中に響いた。

    2006-09-09 00:45:00
  • 102:

    杏奈

    私はもう無気力やった。心なんてなくなってしまえばいいのにって。なかったら何も考えんで済むのに…。悔しさも苦しさも苛立ちも全部とおり越してた。
    ただ悲しかった。
    悲しくてどうしようもなかった。ずっとずっと我慢してたのにもう止まらんかった。
    涙が出た。もう限界やった。いくら頑張っても、もう光輝は前の光輝には戻らない。

    2006-09-09 00:46:00
  • 103:

    杏奈

    『あ、杏奈…ごめ…』
    光輝は泣いてる私の肩に手を触れようとしてきた。
    『触らんといて!』
    発作的にでた言葉だった。狂ってしまった歯車はもう元には戻らなかった。
    『か、勝手にしろや!』

    2006-09-09 00:47:00
  • 104:

    杏奈

    光輝はまた怒鳴り声をあげるとバンっとドアを閉めて出て行った。
    (杏奈…ごめ…)
    光輝の言葉が頭に何度も繰り返された。…さっき一瞬つながりかけた光輝との隙間を、私は自分から断ち切ってしまったんや。
    自分が楽な道を選んだんや。逃げたんや光輝から…。頑張るって決めたのに…私が助けなあかんって思ってたのに…

    2006-09-09 00:48:00
  • 105:

    杏奈

    でももう何もできんかった。私には強さがなくなってしまった。心の中の色んなところに穴を開けられて色んな物を突き刺されて。
    割れたお皿や料理を見ながら“これで良かったんや”って何度も自分に言い聞かせた。

    2006-09-09 00:49:00
  • 106:

    杏奈

    割れた食器を片付けると、お母さんに電話をかけた。
    『はい工藤です』
    お母さんの声を聞くと少しホッとした。
    『お母さん?杏奈やけど迎えに来てくれへん?もう光輝とは別れたから』
    『えっ!?急にどうしたんよ。ケンカでもした?』

    2006-09-09 00:51:00
  • 107:

    杏奈

    『違う。もういいねん。荷物も手伝ってほしいから2時間後ぐらいに来て』
    私はお母さんの話も聞かずに電話を切った。
    別れた…わけじゃない。ちゃんと別れたわけじゃ。でももう終わったも同然。このままサヨナラするほうがラク…。
    私は荷造りしながらそう思ってた。でも片付ければ片付けていくほど辛かった。どんどん出てくる懐かしい物たち。

    2006-09-09 00:52:00
  • 108:

    杏奈

    そのひとつ一つに光輝との思い出があった。たくさんの楽しかった日々が。
    そんな思い出も断ち切らなきゃならない。そうしないと自分が壊れてつぶれてしまうから。
    お母さんは迎えに来てくれた。お父さんもいた。私はびっくりした。
    『ほんまお前がようもったわ一年も。飯食ったか?』
    お父さんはケロッとした顔で私にそう言った。

    2006-09-09 00:53:00
  • 109:

    杏奈

    『二年やろ?光輝君と付き合ってたのは』
    お母さんがお父さんにそう言った。私はそんなことは聞こえないフリをして聞き流した。
    『ご飯食べてないわーおなかすいた』
    『じゃあ帰りにどっかで食べて帰ろうか』
    お父さんはそう言って荷物を持つと先に玄関から出て行った。残りの荷物を私とお母さんは持ち、最後に鍵を閉めた。

    2006-09-09 00:54:00
  • 110:

    杏奈

    置き手紙も何もない。鍵はポストに落とした。
    “バイバイ…光輝”私は心の中で言うと振り返ることなくエレベーターに乗り、下で待っていたお父さんの車に乗り込んだ。
    帰りはイタリアンレストランに寄り、普通に食事した。私は笑ってた。何もかも忘れたくて。笑うことで自分の気持ちを殺した。
    空元気でもいい、笑ってたら大丈夫だや。

    2006-09-09 00:56:00
  • 111:

    杏奈

    それから次の日、私は起きてからずっとぼーっとしてた。でもお昼前ごろ光輝から携帯に電話がかかってきた。
    『ハイ』
    『俺やけど…』
    『うん…分かってる』
    『…杏奈いまどこ?』

    2006-09-09 00:58:00
  • 112:

    杏奈

    『実家…帰ってきた』
    ぎこちなかった。しばらく沈黙にもなった。光輝は何も喋らんかった。
    『光輝?あのな、もう杏奈達あかんかってん。無理してずっと一緒におったんやって分かった。光輝に言われて気付いてん。ほんまにアホやったなって…必死でご飯作ったりして。でもな自分のこともっと大事にして。体も今みたいな生活してたら絶対壊れるから』

    2006-09-09 00:58:00
  • 113:

    杏奈

    光輝は黙って聞いてた。
    『確かに1番はカッコイイことやで?でもその1番のために自分を失ってしまったらどうしようもないよ?光輝が何のためにナンバーワンを求めてるかは分からんけど、自分をちゃんと持ってないとただの人形と同じやから。光輝の目…今は死んでる。気持ちをもたへん人形みたいに。自分で分かってる?分かってないやろ?』

    2006-09-09 01:02:00
  • 114:

    杏奈

    『俺は…怖いねん。自分の場所がなくなるんが。居場所がなくなるのが』
    光輝はやっと話した。
    『居場所って…杏奈は作ってあげれんかったんかな?光輝にとっての安心できる場所、作ってあげられへんかったんかな…』
    『違うそうじゃないねん。俺は…自分の親が仕事が……たから』
    肝心なところが聞こえなかった。

    2006-09-09 01:03:00
  • 115:

    杏奈

    『なんて?聞こえんかったもう一回ゆって』
    『いや…いいわ。もう。ごめんな…』
    そう言うと光輝は電話を切った。何を言ってたんやろう…でも声、声が光輝の声やった。冷めた声じゃない、暖かい光輝の声に戻ってた。
    最後に聞くなんて…皮肉やなぁと思った。

    2006-09-09 01:04:00
  • 116:

    名無しさん

    今日ゎ終わり?

    2006-09-09 01:15:00
  • 117:

    名無しさん

    ぁげ??

    2006-09-09 04:34:00
  • 118:

    名無しさん

    めっちゃ懐かしい??
    この話めちゃ好きゃった?長いけどコピペの人頑張ってください??
    完結までお願いします??

    2006-09-09 08:51:00
  • 119:

    名無しさん

    まじ続ききになる・・

    2006-09-09 17:09:00
  • 120:

    名無しさん

    気になるぅ??

    2006-09-09 22:14:00
  • 121:

    名無しさん

    親が…って言ってた。光輝の親?そういえば付き合ってた間、会ったこともなかった。話を聞くことも。
    私はあえて聞くことをしなかった。何か聞いたらあかんようなそんな感じがしてたから。
    唯一光輝がよく話すのは、小学校三年の夏にオーストラリアに行ったってことぐらいだった。光輝はひとりッコで兄弟が欲しかったとも言ってたなぁ。

    2006-09-10 11:04:00
  • 122:

    名無しさん

    でもそれ以外何も知らなかった。私は唖然とした。光輝のことちゃんと分かってなかったんだなって。
    初めて光輝に会った時、私は何かを感じてた。何かをかかえてる影、時々見せる淋しげな目。
    だから光輝にひかれてた。何でこんなに寂しそうなんやろうって。何でそれやのに笑ってんねんやろうって。

    2006-09-10 11:05:00
  • 123:

    名無しさん

    光輝のかかえていた心の闇は、この時の私には分かってなかった。想像しているよりも遥かに深い傷も何もかも…知らずにいた。
    そして私は、そんな光輝の心を分からずに離れてしまった。逃げだしたのだ。
    光輝はきっと私に気付いて欲しかったのかもしれない。心の闇から助けてほしかったのかもしれない。
    私はこれから起こる数々の出来事を通して“その闇”を知っていくことになる。

    2006-09-10 11:06:00
  • 124:

    名無しさん

    光輝と離れてから一週間がたった。私は仕事もせずに毎日友達と遊んでた。光輝からはあれ以来電話もないまま、私もかけることもないまま。
    そんな時、携帯にアースさんからの着信が入った。
    「もしもし杏奈ちゃん?」
    「久しぶりですアースさんどうしたんですか?」
    「光輝知らん?一緒におる?」

    2006-09-10 11:27:00
  • 125:

    名無しさん

    「え?いないですけど。もう別れたんです。あの、どうかしたんですか?」
    「いや、じゃあいいわ分かったごめんな」
    私は嫌な予感がした。裏の経営者アースさんが私に電話をしてくるなんておかしいと。
    「教えて下さい」
    「いや・・・実はおらんようなってん。ちょうど一週間ぐらいになるかなぁ?」

    2006-09-10 11:30:00
  • 126:

    名無しさん

    「一週間ですか?」
    「そうやねん。携帯もずっと即ルスで繋がらんし家行ってもおらんみたいで。まぁ連絡取れたら一回連絡ちょーだいって言っといて。事故とか病気やったら心配やから」
    電話は切れた。一週間?って…そう。光輝は私と別れた日からいなくなっていた。私は何も知らなかった。
    不安になった。まさかホントに事故や病気やったらどうしようって…

    2006-09-10 11:32:00
  • 127:

    名無しさん

    私は電話をかけた。
    【留守番電話サービス…】
    アースさんの言っていたとおり携帯は即ルスやった。光輝…どこにおんの?断ち切ったはずの光輝への思いが溢れ出てくる。
    私はその日、同棲していたマンションに行った。インターホンも連打した。カギは返してしまってたし開けることはできなかった。
    反応もなかった。そして光輝はここにはいない、何故かそう思った。

    2006-09-10 11:33:00
  • 128:

    名無しさん

    私は電話をかけまくった。光輝が仲良くしてた他店のホスト達や友達みんなに。でも、誰一人として光輝の“居場所”を知る人はいなかった。
    逆にみんなに聞かれた。
    「光輝の居場所分かったらすぐに教えて」と。
    “居場所”最後に光輝が電話で言っていた言葉を思い出した。光輝が求めてた居場所とゆう意味は何だったのか。あんなに必死でナンバーワンを継続し続けていたのに。こんなにアッサリと捨てられたんだろうか。

    2006-09-10 11:34:00
  • 129:

    名無しさん

    そして誰も…私でさえも本当の光輝を知らなかった。光輝は地元の話もほとんどしなかったし、家族の話も聞くことはなかったから。私は初めて気付いた。
    光輝のこと分かったふりしてただけで何も分かっていなかったことを。
    何であの時光輝から離れてしまったんだろう。私はズルイ逃げ道に走った自分を後悔した。

    2006-09-10 11:38:00
  • 130:

    名無しさん

    その日から私は動いた。動き回った。光輝を探すためだけに必死だった。
    そしてアースさんから電話があったあの日から五日目、ようやく光輝と再会することになる。
    探して見つけたんじゃなかった。光輝は私に会いにきた。実家にいた私は家のピンポンが鳴り、窓から外を見ると光りに照らされた光輝の茶色い髪が見えた。
    光輝っ!?

    2006-09-10 11:53:00
  • 131:

    名無しさん

    気になるっ?

    2006-09-10 12:06:00
  • 132:

    名無しさん

    私は急いで家を飛び出した。光輝は私を見て「ごめん」と謝った。私は聞いた。
    「何で謝るん?」って。
    「会いに来てごめん」と光輝は言った。意味が分からなかったけど私はホッとした。光輝が無事でいてくれてちゃんと私の目の前にいる。ただそれだけで救われた気がした。
    「今誰も家おらんから入って。とりあえずこんなかっこじゃ寒いやろ」
    光輝は何故か11月半ばやったのにカットソー一枚やった。

    2006-09-10 14:36:00
  • 133:

    名無しさん

    家に入った光輝は黙ったままだった。私は何も言わなかった聞かなかった。
    光輝は話してくれる、そんな気がしたから。
    しばらく二人して黙ってた。ちょっとおかしかった。「杏奈なに笑ってるん?」
    光輝は不思議そうな顔で私を見ていた。
    「なんもないよ」

    2006-09-10 14:40:00
  • 134:

    名無しさん

    私はそう言うとまた少し笑った。
    「俺…富山県行っててん。今日の朝まで。おかんに会いに。ってゆっても10年ぶりぐらいやってんけど」
    「富山県?」
    「うん。ちょうど五ヵ月前かなぁ?親戚から預かった手紙もらってん」
    五ヵ月…前か。あ、光輝がおかしくなり始めた頃じゃなかったっけ?私は一人で考えながら黙って話を聞いていた。

    2006-09-10 14:41:00
  • 135:

    名無しさん

    「会おうかどうか悩んでてんずっと。でも誰にも相談できんかった。お前にも恥ずかしくてよう言わんかった。俺は…ずっと一人やったから。何でも一人で考えてやってきてた。小学校ん時からずっと」
    私は初めて聞く光輝の過去にびっくりした。なにより聞いてて悲しくなった。

    2006-09-10 14:42:00
  • 136:

    名無しさん

    「俺な、隠してたわけちゃうけど福祉施設に入っててんやん。昔からじゃないで。多分小学校三年の終わりぐらいかなぁ」
    福祉施設…?あぁ親がいない子供達がたくさん集まって生活するところやったっけ。光輝の“過去”は深い闇だった。

    2006-09-10 14:43:00
  • 137:

    名無しさん

    なんで名無しに変わってるん?

    2006-09-10 18:17:00
  • 138:

    杏奈

    「俺の親父はすごいやつやってん。仕事人間やったけど会社経営してたし周りからめちゃめちゃ必要とされてた。そんな親父が俺はカッコイイと思ってた。だから周りの友達みたいにキャッチボールできんでも遊園地にいけんでも俺は平気やった。みんなに必要とされてる親父は俺にとって憧れってゆうか目標みたいな感じになってて」
    光輝は静かに淡々と話していく。

    2006-09-10 21:00:00
  • 139:

    杏奈

    「オーストラリアに行った話したことあったやろ?小学校三年の夏に行ってんけどな。その間にこっちでは色んなことが起きてて…。経理課の人間が横領して逃げてん。まぁそれで済めば良かったんやけどバブルもはじけて終わってもーた上におまけに不渡りまで出して。一瞬やったなぁ潰れるまでは。」
    光輝のお父さんの会社は倒産していた。

    2006-09-10 21:00:00
  • 140:

    杏奈

    「そっからが終わってたわ。親父は負債かかえて毎日資金繰りに走り回ってな。でもあんなに親父にベッタリやった同業者とか卸業者は手の平返したように冷たかった。俺はあんま覚えてないねんけど一個だけちゃんと覚えてるねん。どっかの奴が親父に向かって、人間地位と名誉がなくなったら終わりやって言ったんや。」

    2006-09-10 21:02:00
  • 141:

    杏奈

    「そいつは親父と1番仲良かった奴やった。だから親父は唇かんで一粒だけ涙こぼしてん。あの姿だけが忘れられへん。家も差し押さえで競売にかけられてなくなった。それからは親父の兄貴の家に居候させてもらった。そしたらおかんは離婚届け置いて出て行ったんや。人の世話になるようなこんな生活は嫌ですって」

    2006-09-10 21:10:00
  • 142:

    杏奈

    「俺は理解できんかった。一緒に来いって言われたけど親父から離れたくなかった。だから行かんかった。親父は気付いたら二ヵ月で11キロも痩せてた。頬もこけてやつれて。俺の見て来てた親父とは別人やった。」

    2006-09-10 21:13:00
  • 143:

    杏奈

    光輝の深い闇を知っていくごとに少しずつ分かってくる。
    どうして光輝があんな目をするのか、どうして時々いなくなったかのように心をなくしてしまうのかが。
    閉ざしていた心の扉は開かれた。でもその闇は深く深く見えないものに包まれていた。

    2006-09-10 21:14:00
  • 144:

    杏奈

    「んでな、親父も野球好きやってん。全然知らんかってんけど。だからキャッチボールも初めてできた。俺は嬉しかったほんまに。そんな状況でも幸せやなぁと思えた。親父は相変わらず朝から晩まで色んなとこ毎日走り回ってたけど、夜はキャッチボールしてくれた。でな、ほんまに金もなかったんやろうけど誕生日には新しいグローブ買ってくれてん」
    そう話す光輝の目は楽しかった頃を思い出すかのようにキラキラしていた。

    2006-09-10 21:16:00
  • 145:

    杏奈

    「そんな時に親父が知り合いか何かに仕事頼みに行ったんやけど結局断られて。でも野球のチケットを二枚貰ってきたんや。それを俺に見せながら嬉しそうに笑ってた。見にいくぞって。その試合の日は電車に乗って行った。おばさんにおにぎり作ってもらって水筒持って。初めての野球場やったからドキドキしてた。それに親父と二人でどっか行くの初めてやったから」

    2006-09-10 21:18:00
  • 146:

    名無しさん

    しおり

    2006-09-11 02:49:00
  • 147:

    杏奈

    「でな、着いたから係員に見せて入ろうとしてん。そしたら待って下さいって言われて。窓口でお金払って下さいって。そのチケットは入場券やなかってん。優待券やった。まぁ安くなる券やってんけどな。二人で1600円はらわなあかんかった。1600円やで?笑うやろ。でも入られへんかった。親父は900円しか持ってなかったから。帰りの電車代もぎりぎりやった。でも親父は俺に一人で入れば800円やから入ってこいって言った」

    2006-09-11 07:31:00
  • 148:

    杏奈

    「俺は入らんかった。俺が見たかったのは野球じゃない、親父と見る野球やったから。だから俺は親父に言った。大きくなったら僕が連れて来たるからなって。そしたら親父は黙って俺の頭を撫でてくれた。」
    私は聞いてて涙が出た。光輝のお父さんはきっと素敵な人なんやろうなって。そう思った。

    2006-09-11 07:32:00
  • 149:

    杏奈

    「その日は結局電車で帰って近くの公園で親父とおにぎり食うたわ。でも楽しかったで。一日中二人で遊んでくれたの初めてやったから。ほんま嬉しかった」
    光輝はそう言うとそっと目を閉じた。何かを思い出しているかのように。そして悲しい淋しげな顔をした。初めて会ったあの日に見たあの顔を。

    2006-09-11 07:33:00
  • 150:

    杏奈

    「光輝…?大丈夫?」
    私は光輝が今にも壊れてしまいそうに見えた。
    「大丈夫やで。まだ話さなあかんことあるから」
    光輝は目を閉じたままそう言った。
    「でもな、それが親父と遊んだ…話した…最後の日やった」

    2006-09-11 07:35:00
  • 151:

    杏奈

    「さ、最後?って…」
    私は分からなかった。その意味が。
    「次の日死んだんや。自分で…親父は自殺した。睡眠薬やったから眠ってるみたいに死んでた。でも俺はまだ死ぬってことがちゃんと分かってなかった。でな、遺書みたいな紙があって。今も持ってんねん俺」
    そう言うと光輝は財布の中のからボロボロになった折られた紙を取り出した。

    2006-09-11 07:36:00
  • 152:

    杏奈

    そして私に手渡した。
    「見ていいん?」私が聞くと光輝はうなずいた。
    紙を開いて行くとハガキサイズのメモ用紙だった。
    そこには綺麗な達筆な字で光輝への思いが綴られていた。
    切なくなりました。

    2006-09-11 07:38:00
  • 153:

    杏奈

     光輝へ

    2006-09-11 07:38:00
  • 154:

    杏奈

    まず、野球ごめんな。お父さんは情けなかった。お前に恥ずかしい思いをさせたことがお父さんの一番の恥や。何もしてやれんでごめん。許してくれな。
    光輝の名前はお父さんが付けたんやぞ。いつまでも光り輝くようにって想いを込めて。そんな想いの通りに育っていた光輝を見てお父さんは今日安心しました。これからもずっと今のまま光り輝いていけよ。お父さんはずっと見守ってるから。     菅原正輝

    2006-09-11 07:39:00
  • 155:

    杏奈

    読み終わった私の目には、ただ涙が流れ続けた。止まらない涙と行き場のない感情。ボロボロになった紙切れを見て、もう私は悲しいだけだった。

    多分光輝はお父さんからのこの手紙を何度も何度も読み返してたんだろう。

    こんな手紙をまだ十歳にもならない子供が読んだのかと思うと胸が痛くなった。

    2006-09-11 07:42:00
  • 156:

    杏奈

    小さい頃からお父さんの大きな背中を見て憧れ続けた光輝。一緒に遊ぶ時間がなくても仕事で一生懸命な姿を見て、いつかああなりたいと目標にしてた光輝。

    やっと…やっと共有できる時間ができたって嬉しかったはずなのに…。

    自ら命を断った光輝のお父さんは、強すぎて優し過ぎたのかもしれん。光輝のことが大好きやったから…だから光輝に恥ずかしい思いをさせた自分が許されへんかったんや…。

    2006-09-11 07:44:00
  • 157:

    杏奈

    金策に走り回って頭を下げたり、プライドを捨てて仕事を頼みに行くことはできても、子供にはそんな思いさせたくないって思ったのかな…。

    でもそれって本当に寂しいことだね。
    大切な人のことを思ってしたことが大切な人を苦しめてしまうことになった。

    2006-09-11 07:46:00
  • 158:

    杏奈

    「泣くなよお前が。可哀相とか同情されんの一番嫌やねん俺」

    光輝がうつむいて私に言った。

    「ち…がうもん…。同情なんかじゃない。ただ…光輝のこと…光輝のそんな過去とか気持ちに気付いてあげられへんかった自分が悔しいねん」

    2006-09-11 07:47:00
  • 159:

    杏奈

    「みんなそう言うねん。でも内心ではムゴイとか可哀相とか思ってんねん絶対。俺は中学一年から今まで誰にもこの話したことなかった。何でか分かるか?」

    光輝の問い掛けに私は分からず首を振った。

    2006-09-11 07:48:00
  • 160:

    杏奈

    「俺な、施設おったって言ったやろ?親父が死んでからおかんにおかんの田舎の富山で一緒に住もって言われてん。けど俺は行かんかった。肩書も金もなくなった親父を捨てたおかんが嫌やったから」

    光輝は淡々と話してく。

    2006-09-11 07:49:00
  • 161:

    杏奈

    「だからそのまま親戚の家で世話なっててんけどな。でも幼いながらにも気とか使ってまうねん不思議と。ほんでそん時にちょうど施設の話してんの聞いてもうてんやん。あー俺ジャマやねんなぁって分かって。だから自分から施設入れてくれってゆうてん」

    小学校三年生の子供が…?信じられない、信じたくない衝撃的な言葉やった。

    2006-09-11 07:50:00
  • 162:

    杏奈

    「そしたら止められることなくすんなり入れられた。親父の兄貴のおじさんはたまに会いに来てくれたりしたけど俺に会いにくるやつなんか他には誰もおらんかった。おかんも俺が富山行くの断ってから連絡もなかったし…。まぁでも似たような境遇のやつとか生まれた時から施設おったやつとかおったし、施設じたいは嫌じゃなかったで」

    2006-09-11 07:51:00
  • 163:

    杏奈

    「でもな、中学なってすぐに友達になったやつがおってん。そいつと野球部入って仲良うしててんな。めっちゃいいやつやって思ってた。だから俺は施設おることとか親父が自殺した話とか隠さんと全部話してん。そしたら目に涙ためて聞いてくれてた。でも次の日学校行ったらみんなに言いふらして笑っててんでそいつ。悪気があったんかとか知らんけど俺めっちゃ悔しくてな。恥ずかしいとは思わんかったけど、ただめっちゃ悔しかってん」

    2006-09-11 07:53:00
  • 164:

    杏奈

    「そっから周りは同情の目やし腫れ物に触るみたいな扱いやったわ。“可哀相”って。でもそんなんはどーでも良かった。でも信じたやつに裏切られたのはきつかったわ…。好きやった野球部もそれからやめたし俺には何もなくなってしまってた。」

    2006-09-11 07:54:00
  • 165:

    杏奈

    光輝はまたあの目をしていた。時々見せるあの淋しげな目を。私はどうしていいか分からなかったけど、光輝の手を握った。
    少しでも気持ちを分けてほしくて。一人で抱え込む辛さを半分でいいから取り去ってあげたかった。

    2006-09-11 07:55:00
  • 166:

    杏奈

    「何で自殺したん?」って聞いてきたやつとかもおった。何でってめちゃくちゃやろ?でもな、俺が殺したんかなて思うようになっててん。俺があの時、一人でも球場入ってたら親父は死なんですんだんかなって」
    「それは違うって。光輝のせいじゃないやん」

    「ほんなら誰のせいやねん?誰が親父を殺してん」

    2006-09-11 07:57:00
  • 167:

    杏奈

    「光輝ちょっと落ち着こ。大丈夫やから。杏奈はちゃんと聞くから。光輝がお父さんのことでずっと苦しんできたのは分かった。でもずっとそうやって自分のこと責め続けんの?」

    「お前に何がわかんねん!俺はおかんにも言われたわ。あの時オーストラリアに行かんかったらこんなことにはならんかったのにって。オーストラリア行ったんは俺の誕生日があったからやって。結局全部俺のせいやんけ!」

    2006-09-11 07:58:00
  • 168:

    杏奈

    お母さんがそんなこと言ったん?自分の子供に向かって責任おしつけたん?いくら何でもひどすぎる。
    その一言が光輝をどれだけ傷つけてどれだけ苦しめたか。自分は離婚届け置いて別れて逃げて…自分だけ楽な道を選んだん?

    助けてあげなきゃ守ってあげなきゃならない夫を捨てて愛してあげなきゃあかんはずの子供から逃げて。

    2006-09-11 08:00:00
  • 169:

    杏奈

    「中学からは散々やったわ。友達って呼べるやつがおらんかった。うわべで遊ぶ奴らはおったけど心底付き合いできるやつなんか誰一人おらんかったから。信じて裏切られるぐらいなら信じんほうがマシやって。信じんかったら楽やんって。みんな自分のことしか考えてないねん結局。自分だけが大事やねん。そんなんもういらんねん」

    2006-09-11 08:01:00
  • 170:

    杏奈

    「でも…親父だけは嫌いになれんかった。親父だけは俺のこと考えてくれてた。だから悔しいねん。何もできんかったのが…もう何も言われへんのが…」

    光輝は初めて泣きました。初めて私の前で声を出して泣きました。

    「俺怖かってん。親父みたいになりたいけどなるのが。居場所が欲しいけど手に入れてもなくったらどうしよって怖かった」

    2006-09-11 08:02:00
  • 171:

    杏奈

    「どうゆう意味?」

    「ホストになってすぐにお前と付き合ったやん?もちろん好きやったで。でも初めは信じてなかった。お前も俺から離れていくって思ってたし。それから客がつくにつれて役職ももらえるようなったし上の人に頼りにされるようになったやん。客も俺を必要としてくれて。だんだん自分の居場所ができてくるにつれて嬉しかった。俺のことちゃんと見てくれてる人がおるんやって思えた。」

    2006-09-11 08:04:00
  • 172:

    杏奈

    「うん。そうやなぁ」

    私は静かにうなずいた。

    「でもな、もし居場所がなくなってしまったらどうしようって…俺がなんか下手うったりしてみんなに必要とされんくなった時のこと考えたら怖なった。俺がホストやから…ナンバーワンやからみんな周りにおるけど何もなくなってただの人になってもうたら親父ん時の周りみたいにお前とか仕事仲間とか同業者とか客とか、みんなおらんようになるんやろなって」

    2006-09-11 08:05:00
  • 173:

    杏奈

    「そんなことないって。杏奈はそんなんで離れへんしホストの光輝が好きなんじゃないもん。お金がある光輝とかナンバーワンの光輝が好きなんじゃないねんから。みんなもそうやって。光輝のこと、みんな大切に思ってるって」

    光輝は少し黙りこんでしまった。

    繋いだ手は強く握られたまま何かを考えながら。

    2006-09-11 08:07:00
  • 174:

    あ◆YFg3Sf4Pw.

    2006-09-11 11:09:00
  • 175:

    杏奈

    「信じてよ。杏奈は絶対裏切ったりしいひん。絶対に光輝のこと傷つけたり悲しませるようなことせえへんから」

    「あのな、俺ちょっとここ何ヶ月かおかしかったやろ?ずっと。お前に八つ当たりしたりして。さっきゆうたやん?おかんから手紙きて富山行ってたって」

    2006-09-11 13:18:00
  • 176:

    杏奈

    光輝は確かに変やった。一日中話さないままの日があったり、何かあればウルサイ、ダマレの答えだけ。

    いつも二人で寝てたベッドで他の女と浮気もされたし喧嘩ばっかりやった。

    「ずっと考えててん。会うかどうしよか。けど杏奈にも言われへんかってん。杏奈に昔の話も話されへんかったままやったから。今更になって会いたいとか手紙送られて気狂いそうやったしな」

    2006-09-11 13:21:00
  • 177:

    杏奈

    光輝のお母さんは今になってやっと連絡をしてきた。何の理由があって手紙を書いてきたのかは私には分からなかった。

    「せっかく今俺はやっと自分の場所見つけたのに手紙のせいで壊れてまいそうやった。また昔のこと思い出すようになったから。考えたくなかった。だから酒飲んでた。飲みまくって酔ったら考えんで済むと思って。だから毎日潰れるまで飲んでた」

    2006-09-11 13:24:00
  • 178:

    杏奈

    そうやった。光輝は一時期から毎日酔い潰れて帰ってきてた。帰って来ない日もあった。お店で酔い潰れて寝てしまってたり。

    「帰ったらお前に当たってまうやろ。それ分かってたから帰れんかった。帰った時でもずっと喋らんかったりしてたやん俺。ほんでお前と喧嘩して。」

    2006-09-11 13:27:00
  • 179:

    杏奈

    「でもお前はずっと家におったやん。俺が帰らんでもずっと家で毎日待ってたやん。帰らんかった日は朝から晩まで電話鳴ってたし。いくらキツイことゆうてもおらんようにならんかったやん。だから甘えててん。お前は離れていかんかもしれんって」

    2006-09-11 13:30:00
  • 180:

    杏奈

    「だから杏奈になら過去のこと話せるかもって考えるようになってた。手紙のこともどうしたらいいか考えてもらおうって。でも二年目の記念の日に俺帰らんかったやん。で次の日帰ったら杏奈おらんようなってて。俺のワガママやったけどあーやっぱり杏奈も離れて行ったんか…と思って」

    私はその時出て行ってた。光輝が迎えに来るのを信じて光輝から連絡あるのを待ってた。

    2006-09-11 13:33:00
  • 181:

    杏奈

    でも光輝は一週間待っても実家に迎えに来なかった。電話さえなかったっけなぁ。だから帰った。自分から家に戻った。
    その間に…浮気してた。

    「俺もうめちゃくちゃになってた。お前おらんようなっておかしなってた。他の女…連れこんだりして。俺何やってんねんって分かってたで。でもどうしようもなかった…ごめん」

    2006-09-11 13:35:00
  • 182:

    杏奈

    「許すわけないやん。嘘ついてくれたほうが良かった。ゴムがあっても証拠あっても違うって…言ってほしかった」

    「ゴメン…な」

    2006-09-11 13:37:00
  • 183:

    杏奈

    「許さんってば。光輝は自分が一番嫌いな裏切りを杏奈にしてんで。信じた人に裏切られた気持ち光輝なら分かるやろ?めっちゃキライ…キライになりたかったわ」

    「えっ…?なりたかったって?どうゆう意味?」

    「なられへんかったってこと。光輝のこと、キライになられへんかった。」

    2006-09-11 13:40:00
  • 184:

    杏奈

    光輝はまた手をぎゅっと強く握った。それから手を引っ張られて抱きしめてきた。
    「ごめん…ごめんな…」

    何回も何回も光輝はずっと謝り続けた。

    2006-09-11 13:42:00
  • 185:

    杏奈

    「メシ作ってくれたのにあの時あんなんしてごめん。浮気して…浮気じゃないな。気持ちは浮ついてたわけちゃうから。けど他の女とあんなんしてごめん。あと今までほんまの俺のこと隠しててごめん。とにかくごめんなさい」

    光輝は謝りっぱなしやった。

    2006-09-11 13:58:00
  • 186:

    杏奈

    「もう謝らんでいいよ。許さんけど光輝のこと信じてるから。杏奈ずっと思ってたことが今日やっと分かった気がした。ほんまの光輝が見えた気がしたから…。光輝はもう一人じゃないで。杏奈だって周りの人達だってみんな光輝のこと好きやねんから」

    2006-09-11 14:01:00
  • 187:

    杏奈

    「富山行ってきたんやろ?会ったん?てゆうかアースさんからも連絡あったしホストさん達からもいっぱい連絡あったで。心配してたよみんな」

    それから光輝は私が出て行った次の日に富山に行ったことを話してくれた。

    2006-09-11 14:02:00
  • 188:

    杏奈

    「会ってきた。めっちゃ変わってたわ。おばはんなってた。ずっと謝ってきた。俺ずっと憎んできてたしキライやったけどもう許すって言ってん。でももう会いませんって言った。最後にするって。俺の中ではあの出て行った時にもう母親じゃなくなってたから…。だから一日だけ会って、そのまま富山から石川県の金沢行って何日も旅館泊まって温泉つかってた」

    2006-09-11 14:08:00
  • 189:

    杏奈

    「温泉?十日以上も?」

    「うん。頭おかしいやろ。なんやろな…ゆっくり考えて整理したかった。だから携帯も切って毎日滝見に行ったり川行ったり温泉つかったりしてた。全部スッキリしたで。おかんのことも全部終わったし過去にも区切りつけれたし。でもな、杏奈のことだけがずっと頭から離れんかってん」

    2006-09-11 14:09:00
  • 190:

    杏奈

    「はいはい」

    「いやほんまの話やから。なんかずっと今までのこと考えてたら俺めっちゃ最悪やったなぁと思ってんな。自分の気持ちばっかりで杏奈のこと振り回して傷つけてた。人のこと言われへんよな俺も。だから嫌いになられててもいい、杏奈には全部話しておこうと思って今日来てん」

    2006-09-11 14:10:00
  • 191:

    杏奈

    「そうやったんや…でも良かった。アースさんからおらんようになったって連絡もらった時めっちゃ後悔してたから。何で光輝のことほっといてしまったんやろって。だからさっき光輝の顔見てほっとした」

    私がそう言うと光輝はニコッと笑って私の肩をとんとんと優しくたたいてくれた。

    2006-09-11 14:14:00
  • 192:

    杏奈

    「とりあえずアースさんに連絡しとき。めっちゃ心配してたから」

    光輝は私にそう言われると携帯の電源を入れてアースさんに電話をかけた。

    「もしもし、ハイ。あ…すいませんでした。ハイ。ちょっと色々あったんすけど話せば長くなるんで…明日時間ありますか?明日からまた行くんでその時に。ハイ…ハイ分かりました。ハイ。じゃあ明日…」

    2006-09-11 14:15:00
  • 193:

    杏奈

    電話を切った光輝は、少し落ち着きを取り戻してほっとした顔をしていた。
    光輝がホストになって二年二ヶ月。初めて無断欠勤したこの12日間。きっとたくさんのことが光輝を苦しめ、悩ませ、追い詰めた。でも…きっともう大丈夫。光輝には私がついてるんやから。

    2006-09-11 14:16:00
  • 194:

    杏奈

    (ガチャ…)
    その時玄関が開く音が聞こえた。パタパタとした足音も。

    「ただいま。あっ光輝くんやん。どうしたん仲直りしたん?」

    2006-09-11 14:20:00
  • 195:

    杏奈

    帰ってきたのはお母さん。びっくりすることもなく光輝に普通に話しかけた。

    「すいませんでした。僕が悪かったんです。仲直りってゆうかとりあえず杏奈に謝りたくて来たんすけど。もうそろそろ帰るんで…すいません」

    光輝が緊張気味にそう言うとお母さんはクスッと笑ってた。

    2006-09-11 14:21:00
  • 196:

    杏奈

    「若いなぁほんまに。まぁ何があったかは知らないけど、一年も同棲しててんから喧嘩なんかしかたないわ。杏奈今日向こう戻るんやろ?」

    「えっ…あ、あぁ…」

    2006-09-11 14:23:00
  • 197:

    杏奈

    「えっ杏奈帰ってきてくれるん?いいん?」

    光輝は目を丸くしてびっくりしていた。その顔を見て私も笑ってしまった。

    「お父さんにはお母さんからゆっとくから。帰ってくるまでにもう行き。説教されたくないやろ光輝君も」

    2006-09-11 14:24:00
  • 198:

    杏奈

    「いえ。説教されてから行きます。杏奈を迎えに来たわけやしまた同棲するわけやからちゃんとゆってから戻ります」

    「ははっ変な子やなぁ。じゃあご飯食べて行き。杏奈も行くまでにまた荷物用意しときや。光輝くん車?」

    2006-09-11 14:25:00
  • 199:

    杏奈

    「はい。近くの駐車場に停めてます」

    「荷物とかほとんど持って帰ってきてそのままにしてるからすぐ出せるで。てゆうかもういいやん。お父さん遅いやろうし向こう帰ろうや」

    「うん、多分今日遅いよ。光輝くんまた日曜日でも遊びにおいで。」

    2006-09-11 14:27:00
  • 200:

    杏奈

    光輝は渋ってたけど、しかたなく帰ることになった。車を家の前に停め、荷物を積むと私達は一年前のあの時のようにお母さんに見送られながら実家をあとにした。
    帰りの車の中は穏やかな空気で何も話さなくてもすごく心地良かった。

    「布団買いに行こうや」

    2006-09-11 14:30:00
  • 201:

    杏奈

    「えっ?なんで?」

    光輝は意味が分かってなかった。

    「なんでじゃないやろ。新しい布団買いに行くねん。あんなサイテーな布団で寝たくないし」

    2006-09-11 14:32:00
  • 202:

    杏奈

    「あっ…そっかごめん。じゃあ買いに行こか」

    状況を理解した光輝は苦笑いをしながら運転してた。布団…光輝があの香水くさい女とやった布団。そんな布団早く捨てたかった。

    無事新しい布団を買った私達は、家に帰るとバタバタと動き回りながらなんとか終了。買ったばかりのふかふかの布団は今の自分の気持ちのように暖かい空気に包まれてた。

    2006-09-11 14:34:00
  • 203:

    杏奈

    「なーあの女って客なん?聞きたくなかったけど気になるから教えて」

    「えっ…客…やで。クラブのホステスやけど。てゆうか俺ほんまあんなん浮気やと思ってないから。なんつーか…間違い…やし何の感情もなかったし。お前がおらんくなってやけくそやってん」

    「ふーん、あっそ」

    2006-09-11 14:36:00
  • 204:

    杏奈

    私はちゃんと分かってた。光輝の過ちを。光輝はきっと後悔してるって。だからもう忘れてあげよう。

    「俺…ちゃんと幸せにするからお前のこと。もう全部過去のことも整理できたし自分を見つめ直せたから。今度は俺が杏奈のために頑張っていくからな。そばにおってくれよ」

    2006-09-11 14:36:00
  • 205:

    杏奈

    「なに真面目な顔してるん変なのー。おなかすかん?なんか作ろっか」

    「あ…うん。っつーかお前俺が真面目に話してんのにちゃんと聞けよ(笑)ほんじゃスーパーでも行こか」

    「もうお皿とか割らんといてや。あんなん昭和の親父がちゃぶ台ひっくり返すのと同じやで」

    2006-09-11 14:38:00
  • 206:

    杏奈

    「分かってるって。ごめんってゆうたやん」

    私と光輝は、あの日のことが笑い話になった。その日は二人でスーパーで買い物して一緒に晩御飯作って…久しぶりに二人でゆっくりテレビ見たりして。

    何もすることなくただ手をつないでた。長く付き合ってると体を求めるよりも心を求めるようになる。繋がってるのは体じゃなくて心。きっとそれが本当の幸せなんやろなって思った。

    2006-09-11 14:40:00
  • 207:

    杏奈

    次の日からは、またあの慌ただしい生活が始まった。光輝はホストの仕事に復活。私は相変わらず何もすることなく家事するのみ。

    朝帰って来る光輝のためにご飯作って、一緒に寝て夕方起きて朝ご飯作って…。私まで夜行性になってた。アースさんは光輝が無事に帰って来たことを本当に喜んでくれてた。

    2006-09-11 14:45:00
  • 208:

    杏奈

    時々アースさんの自宅にお呼ばれされて、一緒に鍋をしたりそんな仲の良い付き合いをしながら季節は12月を迎えた。

    ━12月━

    12月といえば、水商売が一番忙しくなる時だった。世間一般みんなが忙しいとは思うけど、一番お金の動く季節やから。

    2006-09-11 14:46:00
  • 209:

    杏奈

    “世の中の景気の良し悪しは水商売が一番分かる“とアースさんは言っていた。世間が良い景気だと、お金がよく動くって。それが一番分かりやすいのが飲食業や風俗業って。

    そんな冬のある日、私は日曜日に光輝と久しぶりにデートしようとミナミに出掛けた。

    2006-09-11 14:50:00
  • 210:

    杏奈

    街はクリスマスモード一色。綺麗なイルミネーションでそこら中がキラキラ彩られてた。
    光輝と過ごす三度目の冬も私は変わらず光輝の隣にいて…。

    「めっちゃキレーやなぁ。やっぱ冬っていいよなぁ…一年で一番キラキラしてるし。でも今年も…光輝仕事やんな?」

    2006-09-11 14:51:00
  • 211:

    杏奈

    「それゆうなって。ごめんってば。まぁ今年も仕事やからしゃあないなぁ…。けどクリスマス前の日曜でも俺らのクリスマスしよ」

    光輝はそう言うと舌を出して変顔をしてきた。おちゃらけた顔…。あほみたいな顔。でも憎まれへん顔。

    2006-09-11 14:53:00
  • 212:

    杏奈

    でも、思えば一年のうちイベントごとなんて一緒に過ごせることなんてない。
    お互いの誕生日もクリスマスも光輝はいつも当日は仕事で。結局別の日になる。イベントなんてあってもないようなもんだ。

    ホストを仕事にしてる光輝と付き合ってるからしかたないんやけど。半分諦めモード。

    2006-09-11 14:55:00
  • 213:

    杏奈

    ゆっくりできるのは日曜日か年末年始、GW、盆ぐらい。それ以外は光輝はみんなのものやから…。
    三度目のクリスマスも結局一緒にはいれないんや…。やっぱり寂しかった。同世代の友達を見てると羨ましかった。

    普通に記念日過ごしたり、イベントごとにどこか遊びに行ったり。街中を堂々と手を繋いで歩いたり…。

    2006-09-11 14:57:00
  • 214:

    杏奈

    “当たり前”のことが当たり前じゃなくて…“普通”にできることが普通にできんくて…。
    本音を言えば不満はあった。でもそれは口にするべきじゃないこと。だってそれは付き合っていく上では否めないことやったから。

    2006-09-11 14:58:00
  • 215:

    杏奈

    そんなことを考えながら私はミナミの街を光輝と歩いてた。

    「あ、客や。杏奈ちょっとごめん。先歩いてて」

    視線の先には金髪のヤンキーみたいな女の子がいた。私は言われるままに光輝から離れて先に歩いた。こんなことは初めてじゃない。前にも何度かあったから。光輝にとってお客さんに見られては“困る”私。私はいつからかミナミを二人で歩くことも嫌になるようになった。

    2006-09-11 15:01:00
  • 216:

    杏奈

    すれ違う人はみんな楽しそうに笑ってる。前を歩くカップルは仲良さそうに手を繋いで歩いたり。
    でも私は…デート中に一人で歩いて…。わけわからんなんて呟きそうになる。

    「ゴメン!びっくりしたわぁマジで。ゴメンな」

    2006-09-11 15:02:00
  • 217:

    杏奈

    やっと光輝が来た。ぶすっとした私を見て平謝り。機嫌を直そうと必死で喋ったり。結局いつもそれで私も折れてた。

    「ミナミもあれやし今日梅田でも行く?そのほーが客にも会わんやろし」

    光輝にそう言われて私達は梅田に向かった。着いてからは何食べる?なんて言いながら東通商店街を歩いてた。

    2006-09-11 15:09:00
  • 218:

    杏奈

    でも…場所を変えても同じやった。一緒に入ったお店でお客さんを見つけてしまい結局急いでお店を出たりして。

    仕方なくまた商店街を歩きながらご飯食べる場所探してたらまたお客さんに会ったりして離れて歩いたりしてた。
    ナンバーワンやから仕方ないけど…だんだんむかついてた。

    2006-09-11 16:21:00
  • 219:

    名無しさん

    しおり?

    2006-09-11 21:28:00
  • 220:

    杏奈

    「もう帰ろおもんない」

    言いたくない言葉が出た。週に一回しかない休みの日やのに、そんな言葉言いたくなかった。せっかくの休みやのに…楽しく過ごしたいはずやのに。

    「ごめん…」

    2006-09-11 22:52:00
  • 221:

    杏奈

    光輝を責めたって仕方ないのに…自分が嫌になった。何でこんなことでイライラしたり光輝の仕事のこと、分かってあげられへんねやろうって。

    「ごめん…」

    私も謝った。光輝は少し悲しそうな顔をしてた。多分気持ちは同じやった。相手のこと思ってんのにその想いが空回りしてて…。

    2006-09-11 22:54:00
  • 222:

    杏奈

    「まぁ…もういっか!杏奈行くぞ」

    光輝はそう言って私の手をつかんで商店街を歩きだした。またお客さんに会うかもしれんって分かってんのに…。

    「光輝、いいよ。ごめんな。こんなんしてくれんでいい。こんなんさせてゴメン。もう大丈夫やから…」

    2006-09-11 22:55:00
  • 223:

    杏奈

    そう言った時、急に涙が出た。自分がカッコ悪くて。光輝にこんなことさせた自分が情けなかった。
    ナンバーワンの光輝が手を繋いで歩いてる姿をお客さんが見れば、それは仕事にも差し支えることになる。光輝はそれを分かってたのに手を握ってくれた。

    そんな光輝の気持ちを考えたら涙が止まらなかった。私めっちゃあほやわって。

    2006-09-11 22:56:00
  • 224:

    杏奈

    一番の理解者であるべきはずの私が、一番光輝の仕事のこと分かってなかった。水商売ってゆう自分を売る仕事のこと…何も分かってなかった。

    「泣くなって(笑)とりあえずここ入ろっ。焼肉でいいやろ?ほらっ」

    光輝は私の肩に手を置くと、そのままお店の中に入った。

    2006-09-11 22:58:00
  • 225:

    杏奈

    「泣き虫やなぁお前は。そんなに泣いてたら徳光さん並やで(笑)」

    光輝は笑いながら言った。…そん時思った。もっと大人にならなあかんって。もっと光輝に近づきたいって。もっともっと知りたいって。

    「あ…杏奈も…光輝と同じ仕事したい…。ってゆうかする」

    2006-09-11 22:59:00
  • 226:

    杏奈

    「もうええって。やらんでええから。お前はそんなんせんと家におってくれたらいいねん」

    光輝は絶対に首を縦にはふってくれなかった。

    「だって…光輝のこと分かりたいねんもん。立場とか仕事とか。同じ仕事したら気持ちとかも分かるやん。いいやろ?」

    2006-09-11 23:01:00
  • 227:

    杏奈

    結局、その時は話を流されてしまい返事は後でまた考えておくと言われた。
    私はそれから家に帰ってからも、光輝に何度も念を押してオッケーしてもらえるようにお願いしながら頑張ってみた。

    「じゃあオッケーするにしても絶対約束してもらうことが三つある」

    2006-09-11 23:05:00
  • 228:

    杏奈

    光輝は面倒くさそうに頭をかきながら私を見てそう言った。
    「約束?三つって何?守るから言って!」
    「…お前本気なん?」
    「めっちゃ本気やし」
    「マジかよ…。分かった分かった。一つめは週三日だけ。それ以上はシフト入れたらあかんってこと。できるな?」

    2006-09-11 23:06:00
  • 229:

    杏奈

    「うん、できる!」
    私は元からレギュラーで入るつもりなんてさらさらなかった。
    「二つめは同伴とアフターは絶対せんこと。要するに店以外では客と会うな」
    自分は同伴ってゆうやつしてるのに…でも私はしたいとも思わなかったし、ちゃんと光輝の言葉にうなずいた。

    2006-09-11 23:07:00
  • 230:

    杏奈

    「三つ目はお父さんとお母さんに、ちゃんと自分で夜やることを話して、許してもらったら俺もオッケーしたるわ」
    一瞬自分の顔が引きつった気がした。
    「え…マジで?それセコいわぁ。絶対あかんって言われるに決まってるやん」

    2006-09-11 23:09:00
  • 231:

    杏奈

    光輝は最初から三つ目の約束ができないと分かっていたんだと思った。ムキになってた私は、やれるならやってやろうと思って言ってしまった。
    「分かった。じゃその三つ守ったらやっていいんやんな?杏奈約束できるで」

    光輝は目を丸くして驚いていた。

    2006-09-11 23:10:00
  • 232:

    杏奈

    「えっ…う…ん」
    「やったぁ☆これで杏奈も光輝に近くなれる☆」
    そんな安易な考えで始まった“水商売の世界”。始めはお父さんもお母さんも反対してきたけど、昔から頑固な性格だった私は何度も話をして最後は渋々許してもらった。

    2006-09-11 23:12:00
  • 233:

    杏奈

    そして、お店を決めることになった。候補は三店舗あった。以前スカウトをされていたミナミのキャバ、新地のクラブ、もう一つは光輝の知り合いが経営してるキャバだった。
    光輝は自分がミナミで働いてるせいか、新地に行くことは反対してきた。スカウトのキャバもダメ。

    2006-09-12 00:17:00
  • 234:

    杏奈

    結局、光輝の知り合いが経営していた大箱のキャバに行くことになって…。
    その当時は今から二年半前。まだミナミも活気づいていたほうだった。
    入店する前に、時給の交渉などは全部光輝がやってくれていて、私は適当にドレスを買っておいた程度。

    2006-09-12 00:29:00
  • 235:

    杏奈

    入店初日。華やかな街へと足を踏み入れた。お店は綺麗な内装でたくさんのホステスさんがいた。
    光輝のお店とは少し違う感じ。まぁホストとは違うもんなのかもしれんけど。
    「名前なににする?」
    「えっ?変えたほうがいいんですか」
    「いや、それは杏奈ちゃんの自由やで。変えたかったから変えていいしそのままでいいならいいし」

    2006-09-12 00:32:00
  • 236:

    杏奈

    どうしよう…結局私は名前を変えることなくそのままで入店した。
    「名前呼ばれたらチェンジってことやから…etc」
    私の担当になってくれた千場くんは、入店初日のドシロウトの私にとりあえずたくさんの説明をしてくれた。

    2006-09-12 00:44:00
  • 237:

    杏奈

    「あっ、杏奈さんお願いします。とりあえず着いてみよか。分からんことあったらすぐ手上げて呼んで」

    千場くんに呼ばれた私は、初めての接客に着いた。

    「失礼します初めまして」

    2006-09-12 00:48:00
  • 238:

    杏奈

    お客さんは二人組のサラリーマンだった。雰囲気は良くて意外に普通。
    なんやこんなもんなんやってゆうのが印象的やった。もっとこう…なんてゆうかイメージが悪かったから。普通に会話したり少しお酒飲んだりする程度なんやぁみたいな。

    2006-09-12 00:49:00
  • 239:

    杏奈

    「もう指名された?」
    急にお客さんは私にそう聞いてきた。
    「いえ、全然まだです」
    「よっしゃ、じゃあ俺が初指名したるわ。君けっこう面白いし気に入ったし」
    そう言うとその人は、ボーイを呼んで指名すると言ってくれた。初めての指名。よく分からなかったけど、少し嬉しかった。

    2006-09-12 00:50:00
  • 240:

    杏奈

    結局その人は三時間もいた。帰りぎわ、私に携帯番号を聞いてきたからどうしていいか分からず、向かいに座っていた女の子の真似をして名刺に番号を書いて渡した。
    「また電話するわ」
    その人はそう言って帰って行った。私の初めてのお客さん。その人は二年半たった今も飲みに来ている。

    2006-09-12 00:51:00
  • 241:

    名無しさん

    気になる??

    2006-09-12 13:09:00
  • 242:

    名無しさん

    ゥチも気になる??

    2006-09-13 18:30:00
  • 243:

    杏奈

    初日は何事もなくスムーズに席を回れた。指名も場内指名が五本。多分新人だったから気を使ってくれたのかもしれないけど。
    とりあえずはそんな感じで営業時間が終わり、更衣室で着替えていると一人の女の子に声をかけられた。

    2006-09-13 23:33:00
  • 244:

    杏奈

    「名前なんてゆうん?今日からやんなぁ?」

    私をジッと見たその子は私にそう言った。

    「あ、今日からです…杏奈って言います」

    2006-09-13 23:35:00
  • 245:

    杏奈

    「杏奈ちゃんかぁ。あたしルイってゆうねん。よろしくね」

    「ルイさん?いくつなんですか?」

    そんな会話をした記憶がある。ルイは同じ歳だった。初めて会ったその頃は仲も良かった。当時、ルイは店のナンバーワンやったけど威張ったりもしてなかったしめちゃくちゃ感じのいい子やったから。

    2006-09-13 23:36:00
  • 246:

    杏奈

    その日は着替え終わって帰ろうとした時、代表の勇二君に呼び止められた。

    「飯食いに行かん?俺、光輝の友達やし光輝に電話して聞いてみ。仕事のことも話しときたいし」

    「あ、はい…」

    2006-09-13 23:37:00
  • 247:

    杏奈

    光輝の友達やしまぁ大丈夫か。そう思って電話をしたら光輝もすんなりオッケーしてくれた。

    「勇二どこ行くん?」
    「ご飯行くならうちらも連れてってーやー」
    私と代表が店を出ようとした時、二人組の女の子が後ろからそう言って来た。

    2006-09-13 23:38:00
  • 248:

    杏奈

    「お前らはまた次連れてったるわ。今日はこの子初日やったし仕事のことも話しておきたいことあるし」

    「うちらん時は初日でも連れてってくれんかったくせにー。勇二なんか知らんわアホ!」

    その女の子達はそう言うと少し怒った顔で帰って行った。

    2006-09-13 23:39:00
  • 249:

    杏奈

    一番気まずいのは私だった。別におなかが空いていたわけでもなく、ご飯食べに行きたかったわけでもないのに。
    あの女の子達を連れてけばいいのに…内心そう思ってた。
    「ごめんなーあいつらいつもあーやねん。行こか」

    代表はそう言うと先に歩き始めた。

    2006-09-13 23:39:00
  • 250:

    杏奈

    着いた先は居酒屋。夜の4時が過ぎてたのに人はたくさんいた。こんなに人おるもんなんやぁって思ってた。
    「ビールでいい?」
    「あ、いいですよ」
    私はお酒が強いほうではなかったけど、少し気も使ってしまってたし苦手なビールを飲むことにした。

    2006-09-13 23:40:00
  • 251:

    杏奈

    「光輝と付き合って長いん?どれくらいなん?」

    そんな話から始まった。私は付き合って二年半ぐらいたつことや、服屋のショップでバイトしてたこと、しばらく仕事もしないでずっと家にいたことなど、気付けばビールのせいもあって色々話していた。

    2006-09-13 23:41:00
  • 252:

    杏奈

    「やっぱちょっと変わってんなぁ」

    代表、勇二君はそう言うと私を見ながら笑った。変わってる?誰が?ちょっと意味が分からんかった。

    「普通仕事なんかしたないやろ。家おっても光輝から生活費もらえてたのにそっちのほうが絶対ラクやん」

    2006-09-13 23:42:00
  • 253:

    杏奈

    「あ、まぁそうなんですけど…。同じ環境にいたいなぁと思って」

    「同じ環境?それってどうゆう意味?」

    代表は不思議そうな顔でそう聞いてきた。

    2006-09-13 23:43:00
  • 254:

    杏奈

    「なんか知らないことが多すぎて…。夜の仕事のことよく分からんし喧嘩になったり不安やったから」

    「あーそうなんやぁ。まぁよく分からんけど俺としてはラッキーやけどな。久々に育てがいある子が入ってくれて」

    2006-09-13 23:44:00
  • 255:

    杏奈

    「えっ?」
    「全くのシロウトなわけやん。だからどう育つかは見物やなぁと思って。楽しみやねんけっこう」

    代表はまたそう言いながら笑ってた。見物かぁ…私、そんなに変わることないと思うんやけど。
    その日はご飯を食べて飲み終わると代表が家まで送ってくれた。帰ると7時前になってた。

    2006-09-13 23:45:00
  • 256:

    杏奈

    少し酔っていた私は家に着いてすぐ光輝に電話をかけた。
    でも光輝は出なかった。店忙しいんかなぁ…そんなこと考えながらぼーっとしてるといつのまにか寝てしまってた。

    「杏奈寝てんの?おーい大丈夫か?」

    2006-09-13 23:46:00
  • 257:

    杏奈

    光輝の声で目が覚めた。

    「ビックリしたぁ今帰ってきたん?」

    2006-09-13 23:47:00
  • 258:

    杏奈

    「そやで。つーかお前化粧ぐらい落として寝やな。肌あれんで」

    …マジで?そう思った時、まつげがくっついて左目が開きにくいことに気付いた。うわ、ほんまにそのまま寝てたんや。最悪…。

    「酔ってたん?初仕事どーやった?あっ、そういえば勇二と飯食いに行ってたんやろ?」

    2006-09-13 23:47:00
  • 259:

    杏奈

    「うーん、仕事は普通やったよ。意外とあんなもんなんやぁって感じやった。代表さんとは普通に仕事の話とか光輝の話してた」

    「ふーん。勇二男前やろ?浮気すんなよ」

    何ゆってんねんって感じやった。光輝の友達で店の代表さんやのに。

    2006-09-13 23:48:00
  • 260:

    杏奈

    「明日は休みやろ?ゆっくり寝ろよ」

    光輝はそう言うと私の隣で寝ると五分もたたないうちにイビキをかいて寝てしまった。
    疲れてんねやろうなぁ…。少し分かった気がした。夜の仕事って体力は使わないけど、頭や体の中をフル回転させてるし。ストレスも貯まるんやろうなぁって。

    2006-09-13 23:49:00
  • 261:

    杏奈

    私は気付けばまた寝てしまってた。次に目を覚ましたのは夕方の4時。
    二日酔いでガンガンする頭を押さえながら、冷蔵庫の水を入れて一気に飲んだ。慣れないお酒は思っていたよりも抜けるのが遅くてしんどかった。

    2006-09-13 23:53:00
  • 262:

    杏奈

    光輝との約束は週三回だけの出勤。だから今日は休みだった。光輝に朝ご飯を作って6時になるとベッドまで起こしに行った。

    「光輝ぃ6時やで」
    「あと30分…」
    「分かった分かった」

    2006-09-13 23:55:00
  • 263:

    杏奈

    光輝はいつもすぐには起きない。多分体がすぐには動かないのかも。

    「もう6時半やで」
    「今日飯なに?」
    「光輝がちゃんと起きるまで教えへん」

    2006-09-13 23:56:00
  • 264:

    杏奈

    そう言うと光輝は眠たそうな目をこすりながらダラダラとリビングに歩いた。

    「いただきまーす」

    光輝は食べる時に必ずいつもこう言う。家でも外でも。施設にいた頃は言わないと怒られてたからクセがついてると言っていた。

    2006-09-13 23:57:00
  • 265:

    杏奈

    でもいただきますを言う時の光輝は、子供みたいに手を合わせていて結構可愛いから私は好きだった。

    「杏奈ぁーお前店やめたくなったらいつでも言えよ。すぐ言ったるから」

    私が仕事を始めた頃、光輝はよくそう言ってきてた。自分がやめてほしいだけやんって思ってたけど。

    2006-09-14 00:10:00
  • 266:

    杏奈

    月、水、金。私の週三回の出勤日。最初の一ヶ月は、そんな感じで仕事をしてた。光輝もたまにお店に飲みに来てくれたりした。
    その頃のナンバーワンはルイのまま。ルイと仲良くなっていた私は、光輝が飲みに来た時に場内で指名して呼んでもらうことにした。

    2006-09-14 00:11:00
  • 267:

    名無しさん

    続き読みた−ぃ?

    2006-09-14 15:34:00
  • 268:

    杏奈

    「ルイちゃんって可愛いん?どんな子なん?」

    「めっちゃ可愛いで☆ナンバーワンやけど威張ってないしめっちゃいい子」

    私と光輝はルイが席に来るまで二人でルイの話をしていた。ルイは売れっ子やったからなかなか来なくて。

    2006-09-14 22:47:00
  • 269:

    杏奈

    だから二人で今週の日曜日に何をするとかどこ遊びに行こうとかそんな話をしてた。そうしたらしばらくすると杏奈がやっと席に来てくれた。

    「失礼しまーす☆ごめんなぁ、なかなか付けんくて。あっ初めましてルイです。杏奈には仲良くしてもらってます」

    2006-09-15 09:07:00
  • 270:

    杏奈

    ルイがそう言って顔を光輝に向けた時、ルイは一瞬だけ光輝をジッと見ていた。光輝も…そんなルイを不思議そうに見てた。

    「どーしたん?めっちゃ静かになってるやん?あっ、初めましてやから緊張してるん?ルイー杏奈の彼氏☆光輝ってゆうねん」

    2006-09-15 09:08:00
  • 271:

    杏奈

    「あ、うん知ってる。よく話聞いてたし…。めっちゃカッコイイやん」

    ルイはそれから普段通りのルイに戻った。三人で笑い話しながらその時は普通に終わって光輝は店に戻って行った。
    その日、私は代表の勇二君に営業が終わるとまた仕事の話があるってことでご飯に誘われた。

    2006-09-15 09:09:00
  • 272:

    杏奈

    ご飯行くのは二回目やったし、光輝も仕事中やと思ったからその日は光輝に連絡せずに黙って(黙ってとゆうか勇二君は光輝の友達やし大丈夫かと思って)行った。
    代表とお店を出る帰りぎわ、ルイにはどこに行くのか聞かれたから言っておいた。別に隠す必要なんかなかったし。

    2006-09-15 09:10:00
  • 273:

    杏奈

    着いたのは前に来た居酒屋だった。前と変わらず人はたくさんいた。

    「光輝大丈夫やった?」

    「あ、代表やから別に心配もせえへんし何も言わんと思うから今日は何も言ってないよ」

    2006-09-15 09:11:00
  • 274:

    杏奈

    「へぇー“俺って安全パイやと思われてんねや”」

    小さな声でそう言ったように聞こえた。安全パイって何?まぁ気にも止めへんかった。

    「でもアンめっちゃ変わってきたよなぁ。キレなってきたし指名も入って一ヶ月ちょっとやのにめっちゃ取れるようになってるやん」

    2006-09-15 09:12:00
  • 275:

    杏奈

    “アン”。代表はいつからか私をそう呼ぶようになってた。別に何とも思わんかったけど。
    でも、綺麗になったとか頑張ってるとかいつも褒めてくれる勇二君は私をいつもいい気分にさせてくれてた。
    光輝は絶対そんなこと言ってくれへんから。化粧がケバくなったとかドレスが似合わんとか。そんな屁理屈ばっかり。

    2006-09-15 09:13:00
  • 276:

    杏奈

    まぁ代表にうまくノセられてるだけやって分かってたけど、女の子ってそういう言葉で変われたり嬉しくなったりするから。

    「なぁ、店まだ週三回しか無理なん?」

    「あ…光輝と仕事する時に約束してるから…。無理かなぁ」

    2006-09-15 09:14:00
  • 277:

    杏奈

    「マジでー?アンやったらもうちょっと頑張ればルイとかしおり(NO.2)も抜けると思ってんけどなぁ」

    「そんなん絶対無理やし!ルイもしおりさんもめっちゃ凄いやん。杏奈なんか無理無理!」

    そうは言ったものの、心のどこかに自分に対する可能性があると言われたことが凄く嬉しくて、好奇心を持つようになった。

    2006-09-15 09:16:00
  • 278:

    杏奈

    でも光輝との約束がある。破るわけにはいかなかった。結局その日は話を流して普通に飲んで話をした。
    (♪♪♪)
    帰りぎわ私の携帯が鳴り、出ようとした時、充電が切れてしまい電源が切れてしまった。

    「誰から?光輝?俺の携帯使うか?」

    2006-09-15 09:20:00
  • 279:

    杏奈

    勇二君はそう言ってくれたけど、私は光輝じゃないと思ってたから携帯を借りずにそのまま近くを通ったタクシーを拾い、勇二君にマンションまで送ってもらった。
    だいたい光輝は仕事中やしかけてくるわけがないから。いつも私が家に着いたって言おうと思って電話をかけても、この時間は出ないことのほうが多いから。

    2006-09-15 09:21:00
  • 280:

    杏奈

    でも…その日はそうじゃなかった。家に着いて電源を入れると着信履歴は光輝。えっ?なんやろ…そう思って電話をかけた。

    「もしもし電話したぁ?」
    「お前どこおんねん今」
    「え?あ、今家帰ってきた。代表とご飯食べててん」

    2006-09-15 09:22:00
  • 281:

    名無しさん

    みたい?

    2006-09-15 18:13:00
  • 282:

    名無しさん

    いいとこでとめんといて。

    2006-09-15 18:35:00
  • 283:

    名無しさん

    ↑コピペしてくれてんねんから文句言いなや

    2006-09-15 19:20:00
  • 284:

    杏奈

    「はぁ?分かってるわ。お前連絡もせんと勝手なことすんなや。いくら勇二でも連絡ぐらいしてこい」

    光輝は怒ってた。意味が分からんかった。なんでそんなに怒られなあかんのかって。それになんで知ってんの?

    2006-09-16 04:17:00
  • 285:

    杏奈

    「ごめん…でも光輝、前は代表とやし行ってきていいって言ってくれてたやん。光輝の友達やったら心配せえへんと思って。それに仕事中に電話かけたらたまに怒るやん。だから帰ってから連絡しようと思っててん」
    「でもとかだからとか言い訳すんな」

    光輝は酔っていたせいか喋り方もきつかった。

    2006-09-16 04:19:00
  • 286:

    杏奈

    「てゆか何で知ってるん?代表から聞いたん?」

    私は光輝に聞いた。

    「え?何が?えっあ、あぁえーっとそーやで」

    2006-09-16 04:20:00
  • 287:

    杏奈

    あやしい。絶対違うわ。そう思って電話を切った後、勇二君に電話をかけた。
    話を聞いたら光輝から電話も鳴ってないし知らんでって。
    嘘ついてるアイツ!でもじゃあ光輝は誰から聞いたんやろ…。私はまた光輝に電話をかけた。

    「はーい」

    2006-09-16 04:21:00
  • 288:

    杏奈

    「光輝ほんまのこと言いーや。さっきのこと誰から聞いたん?」

    「だから勇二やって」

    「勇二君に確認したで。嘘つき。ほらはよ言ってみ」

    2006-09-16 04:22:00
  • 289:

    杏奈

    「えー。お前絶対ゆうもん。怖いから言わん」

    「黙ってるんやったら黙ってたらいいけど。じゃあ杏奈もこれから勝手にするし隠し事もするから。文句ゆわんといてや」

    「…分かったって。ゆうから!ルイちゃん。ルイちゃんから聞いてん。っつーか店飲みに来てくれた」

    2006-09-16 04:23:00
  • 290:

    杏奈

    「ウソやろ?ルイ?」

    意味が分からんかった。何でルイが光輝の店に飲みに行ってんの?しかも勇二君とご飯行ったことも光輝に話すなんて…。

    「ほんまやで。ありがとうゆうとってな」

    2006-09-16 04:24:00
  • 291:

    杏奈

    「えっ…あ、うん。ルイってアフターやったん?」

    「ちゃうで。一人で来てたけど。黙っといてって言われたからもしかしてサブイ?」

    「知らん。とりあえずまた帰ってきてから話聞くわ」

    2006-09-16 04:25:00
  • 292:

    杏奈

    電話を切ってからも私は混乱してた。ルイ…何のために飲みに行ったん?行くなら私と行けばいいのに。
    何のためにいちいちチクるような真似したん?

    考えだすとキリがなかった。それと少し嫌な予感がした。もしかして光輝のこと気にいったんかな?って。

    2006-09-16 04:26:00
  • 293:

    杏奈

    女の嫉妬は醜いもので、そう思えば思うほど好きだったルイがどんどん嫌な女に思えてきた。
    気のせいや、たまたま飲みに行きたい気分やったからたまたま光輝んとこ行っただけ、ホストに行ってみたかっただけかもしれん、私に言うの照れくさかったんや。
    そう思うようにしてもなかなか前向きにはなられへんかった。

    2006-09-16 04:28:00
  • 294:

    杏奈

    「おやすみ」

    夢の中で光輝の声がした。誰かが頭を優しく撫でてくれてた。…ん?そう思って目を開けるとすぐ隣には光輝がいた。

    「帰ってきてたん?今帰ってきたん?」

    2006-09-16 04:29:00
  • 295:

    杏奈

    いつもは当たり前の光景やのにその時は安心して光輝に抱き着いてた。とゆうよりしがみついた。

    「おい(笑)どうしてん?怖い夢でも見たんか?今日は怒ってごめんな」

    光輝はそう言いながら久しぶりにギュッと強く抱きしめてくれた。

    2006-09-16 04:30:00
  • 296:

    杏奈

    「杏奈もごめん。てゆうか杏奈が悪かったし…。光輝ごめんな」

    「なんやねんマジで。大丈夫か?めっちゃ甘えたさんやん」

    私は自分でも分からなかった。ヤキモチ…?いや、それは分からないけど光輝を誰にも渡したくないって、そう思ってた。

    2006-09-16 04:31:00
  • 297:

    杏奈

    その頃はマンネリしてHも週一、二回が普通。でもその日は久しぶりに何度も何度もお互いを求め合ってた。
    私は忘れかけてた好きって気持ちが再確認できた。

    「なぁ、ルイ今日なにしに来てたん?」

    2006-09-16 04:32:00
  • 298:

    杏奈

    「え?普通に飲みにきとっただけやで。でも俺もビックリしたわ。急に一人で来て誰か従業員紹介したろと思ってたら俺でいいとか言うし。気に入られたんかな?」

    光輝は笑いながら冗談で私にそう言った。
    私はその場は笑いでごまかしてたけど内心は混乱してた。ルイ一体なに考えてんの?

    2006-09-16 04:33:00
  • 299:

    杏奈

    でも私は自信があった。光輝と私には誰にも壊せない強い繋がりがあるって思ってたから。
    光輝のこと分かってんのは私だけ。そう思ってないと悪いことばっか考えてしまうし。
    結局次の日は休み。私は光輝が仕事に行った後はずっと家にいた。その頃は携帯のメールとゆうものが頻繁に使われるようになった頃だった。

    2006-09-16 04:34:00
  • 300:

    杏奈

    私は家にいても落ち着かず、今日は休みのはずのルイにメールをした。

    昨日帰ってすぐ寝てたん?店出てから代表とおる時にルイも呼ぼうかと思って電話してんやん?でも繋がらんかったから?

    送信完了。そしてメール送信から10分後、ルイからメールが返ってきた。

    2006-09-16 04:35:00
  • 301:

    杏奈

    ごめーん?すぐ寝てたよ?疲れてたから?

    返ってきたメールを見てショックやった。嘘つかれたことがめっちゃ腹立った。ひょっとしたらほんまのこと言ってくれるかもって期待してたとこあったのに。

    2006-09-16 04:36:00
  • 302:

    杏奈

    私はムカついた。もういいや、ほんまのこと言おう。そう思って電話をかけたけどルイは出なかった。
    もしかして店かな?出勤したんかも…そう思って代表に電話したら休みだと。
    女の勘は妙に働くもんやった。あ、もしかしたら…

    2006-09-16 04:37:00
  • 303:

    杏奈

    そうは思いたくない。でも…。私は光輝に電話をした。
    「店にルイ来てる?」
    「えっ?あ…」
    「来てんねやろ」
    「来て…ます」

    2006-09-16 04:38:00
  • 304:

    杏奈

    はぁぁぁ?人の電話も出ずに光輝の店で飲んでる?ふざけんな!私は何も言わずに電話を切ると、着替えてミナミに向かった。
    光輝は知らない。ルイも知らない。従業員も誰も私が向かっていることは知らなかった。

    2006-09-16 04:40:00
  • 305:

    杏奈

    キラキラ光る夜のミナミ。のんべーになってるおじ様達や色んな人で溢れ返っていた。
    タクシーからおりた私は光輝の店へと足早に急いだ。エレベーターに乗り着いた先は…光輝のお店。
    ドアを開けると大きな音やガヤガヤした声が聞こえてきた。

    「いらっしゃいませー」

    2006-09-16 04:41:00
  • 306:

    杏奈

    各テーブルから次々に声がする。そして…見つけた。ルイは端のほうのBOXに座ってた。
    その向かいには光輝。その席には一人知ってる従業員の店長をしてるヒロが座ってた。私に気付いたヒロはビックリした顔だった。

    「あ、杏奈さんお久しぶりです。代表!」

    2006-09-16 04:42:00
  • 307:

    杏奈

    私に気付いていなかった光輝とルイは私を見てビックリしていた。

    「お前どうしてんビックリするやん」

    「あ、杏奈ごめん今さっき携帯見てん。電話くれてたやんなぁ」

    2006-09-16 04:43:00
  • 308:

    杏奈

    「ちょっ、杏奈!お前立ってたらおかしいからとりあえず座れや」

    私はそう言われて光輝の横に腰掛けた。状況は最悪やった。店にいた女の子や従業員は何があったかと心配そうに見てた。

    2006-09-16 04:44:00
  • 309:

    杏奈

    「ここで何してるん」
    私は静かにルイに問い掛けた。

    「ちゃう、暇やったから飲みに出てきてたまたま来てみてん。いい店やなぁ」

    2006-09-16 04:45:00
  • 310:

    杏奈

    「そんなこと聞いてないねん。何しに来てるん。昨日も今日も嘘ついてまで。何もないわけないやろ?しらっとした顔してるけどホンマ最悪やな」

    私がそう言うとルイはフッと鼻で笑ってきた。

    「なーんや知ってたんや。光ちゃん黙っててって言ったのにぃ。ややこしいことなりたくないからそう言っててんでー」

    2006-09-16 04:46:00
  • 311:

    杏奈

    光ちゃん?なんなん?ホンマにブチギレるかと思った。でも冷静にならなあかん…ここは店の中やねんから。
    そう思って静かに話をしてた。
    「ルイ、あんた何考えてんの?」

    「えっ?何も考えてない。一個ゆえることは好きになっちゃったってこと」

    2006-09-16 04:46:00
  • 312:

    杏奈

    「えっ?」
    「えっ?」
    「えっ?」

    私と光輝とヒロの三人は声が揃っていた。好きになっちゃったって何?

    2006-09-16 04:47:00
  • 313:

    杏奈

    「一目惚れしてん。別に取る気とかないで。ただ好きになるのに順番とか法律とか関係ないやん」

    呆れた…。こんなこと言う子やったんや…。

    2006-09-16 04:48:00
  • 314:

    杏奈

    「順番とか確かにそんなん人好きになんのに関係ないけど常識ってもんあるやろ?分からんの?」

    「分からん」

    「ちょっと出て話さん?ここやと周りの目もあるし」

    2006-09-16 04:49:00
  • 315:

    杏奈

    私がそう言って立ち上がった時、光輝に手を引っ張られてまた座らされた。

    「ごめん。気持ちは嬉しいねんけど。杏奈とは付き合って長いしこれからもずっと付き合っていくつもりやねんな。俺は杏奈のこと好きやしルイちゃんのことは杏奈の友達としてしか見られへんねん。ごめん」

    2006-09-16 04:49:00
  • 316:

    杏奈

    えっ…?光輝…。私はビックリして口が開いたままだった。こんなにハッキリと目の前で言ってくれるなんて。意外だった。

    「告ってもないのに勝手にフラんといてや。あたし別に付き合いたいとか杏奈から取ろうとか考えてたわけちゃうし。何で好きなだけじゃあかんの?」

    「ルイちゃんみたいな子やったらもっと他にいい男おると思うしな。それに店での杏奈との関係もあるやろ。だからハッキリさせときたかったから」

    2006-09-16 04:52:00
  • 317:

    杏奈

    「意味わからんし。杏奈と付き合ってきた時間が長いんか知らんけど恋愛に時間なんか関係ないやん。あたしは好きなもんは好きやし簡単に変わるもんじゃないから」

    ルイは怒って店を出て行った。

    2006-09-16 04:53:00
  • 318:

    杏奈

    簡単に変わるもんじゃないって?会ってまだ二日やそこらでそんなに深く好きになるもんなん?理解できひんかった。

    「もう帰るわ。急に来てごめんな」

    私が席を立つと光輝も一緒に立ち上がった。お店にいた人達は、チラチラ見てきてた。その頃に、私の存在の噂が立ったのは言うまでもない。

    2006-09-16 04:54:00
  • 319:

    杏奈

    その頃からネットといわれるいわゆるホームページや掲示板サイトなどが盛んになっていた。
    噂は噂を生み、あることないことかかれ始めていた。光輝の本カノはキャバ嬢、店で喧嘩をしてた、客と喧嘩をしてた、結婚してる、子供がいる…もう散々だった。

    2006-09-16 04:55:00
  • 320:

    杏奈

    よくもまぁ次から次にない話をあるかのように書くなぁと感心した。
    私はというと、あの日以来ルイとは口を聞かなくなった。お店をやめても良かった。むしろやめたかった。でも…やめなかったのはルイの監視ってほど大袈裟なもんじゃないけど、光輝と同じ街にいないと心配だったから。

    2006-09-16 04:56:00
  • 321:

    杏奈

    そして、あれ以来お互いライバル心を持ってしまった私達はお店でも火花を散らしてた。
    ルイはすぐに周りを味方につけた。他の女の子達にありもしない話を吹き込んだり私が嫌われるようにしたり。
    店の子達も、代表によくしてもらってた私を気に入ってなかったこともあったせいか私のお客さんのヘルプに着いた時にホストと付き合ってるとかバツイチとか散々なことを言われていた。

    2006-09-16 04:57:00
  • 322:

    杏奈

    お客さんも何人か減ったりした。でも私は平気だった。ちゃんと仕事さえしてれば指名は入るし、新規もできる。
    だからそんな嘘を信じて離れていくようなお客さんなら初めっからいらないと思ってた。

    2006-09-16 04:58:00
  • 323:

    杏奈

    指名で勝ってやりたい…そう思い始めたのはその頃だった。ルイはナンバーワンなままだったし私は相変わらず週三のバイト出勤。
    それでもお店ではナンバー5だった。抜きたい…抜いてやりたい…。
    私はいつからかそんなことばかり考えるようになっていた。

    2006-09-16 04:59:00
  • 324:

    杏奈

    でも光輝との約束があった。週三の約束。
    同伴とアフターをしない約束も私はずっと守ってた。破るつもりもなかったし、そうゆう約束で始めたもんやったから…。
    ちょうどそんなことを考えてた時、代表にまた飲みに誘われた。前のこともあったし、その時は光輝にちゃんと連絡してから行った。

    2006-09-16 05:00:00
  • 325:

    杏奈

    着いた先は…やっぱりまたいつもの居酒屋。

    「とりあえず、ビール二つと…焼き物適当に!」

    代表はいつものように注文した。ビールでお疲れ乾杯をすると、ウマーイって思えた。私は苦手なビールも仕事のせいか克服できていた。

    2006-09-16 05:01:00
  • 326:

    杏奈

    「最近どー?」
    「あ、まぁ普通かな」

    私がそう言うと少しシーンとした空気が流れた。

    2006-09-16 05:02:00
  • 327:

    しぉり?

    2006-09-16 05:28:00
  • 328:

    杏奈

    「嘘つくなって。めっちゃしんどいやろルイ達のせいで。あいつら変な噂立てたりやり方汚いねんなぁホンマ」

    「どーでもいいし」

    気付けばポツリとそうこぼしていた。

    2006-09-16 10:18:00
  • 329:

    杏奈

    「えっ?」

    「あ、別に。全然大丈夫やで。友達でもないし仲良くするつもりもないから。お客さんも切れたらまた作ればいいだけやもん」

    「おっ♪アンもゆうようなったやん。でもしんどなったり疲れたら俺にゆってこいよ。何もできんかもしれんけど力なれることならなるし」

    2006-09-16 10:21:00
  • 330:

    杏奈

    代表…勇二君はいつも優しかった。光輝にグチはこぼせない。もし口にすれば、じゃあ仕事をやめろって言われるのが目に見えて分かるから。
    その日から私はたまに代表に愚痴を聞いてもらうようになっていった。

    2006-09-16 10:23:00
  • 331:

    杏奈

    そんな日々が続いてた頃、光輝の売り上げが上がってるとかそんな噂があるサイトの掲示板に書かれてあった。
    そして“いつもよく見るあの人が光輝の彼女?”とか“綺麗な子やなぁ”とかそういうことも書かれ出した。
    へぇ、光輝新しいお客さんできたんやぁ。でかいんかなぁ?そんな軽い気持ちだった。

    2006-09-16 10:24:00
  • 332:

    杏奈

    光輝には掲示板を見ていたことは黙ってたし、わざわざそんなこと聞く必要もないって思ってたから。
    でも…。

    「おい、アン!ちょっと今日時間いい?光輝には内緒やねんけど大事なことやねん」

    2006-09-16 10:25:00
  • 333:

    杏奈

    私は悩んだけど大事なことって言われたし、代表はちゃんとした人やから光輝には連絡しないで店が終わるといつもの居酒屋へ行った。

    「なぁ勇二君、大事な話ってなんなん?」

    「あぁ…。アンな、ルイの携帯の待ち受け見た?」

    2006-09-16 10:27:00
  • 334:

    杏奈

    「待ち受け?知らん。ってゆうか話すこともないのに携帯なんか見ることないやん」

    「あ、そうやんな」

    代表はフーッとためいきをついてビールを飲んだ。

    2006-09-16 10:29:00
  • 335:

    杏奈

    「てゆうか待ち受けって何?何かあったん?」

    「あ、うん。ルイの携帯の待ち受けが光輝やねん。多分写メやと思うねんけど。今日たまたま見てもうてんやん。ルイと仲悪くなったのってもしかして光輝が原因なん?」

    私は黙ってた。また頭がおかしくなりそうやった。何で光輝の写メがルイの待ち受けなん?

    2006-09-16 10:31:00
  • 336:

    杏奈

    「アン?聞いてる?」

    勇二君は心配そうに私を見ていた。なんかよく分からんかった…。頭がいっぱいで…。もしかして最近掲示板サイトに書かれてたのってルイのことかもしれんって。
    光輝の売り上げ上がったのもナンバーワンのルイが行ってるからかもしれん…って。

    2006-09-16 10:33:00
  • 337:

    杏奈

    シンドイ…光輝のことは信じてるけど、もしルイが店に来てたこと私に黙ってたら…そう思うと急に涙が出て来た。

    「ちょっ、アン?どうしてんって!なぁ」

    勇二君はアタフタしてた。もう嫌や…なんか分からんけどルイのことが頭いっぱいでパンクしそうやった。

    2006-09-16 10:35:00
  • 338:

    杏奈

    「もう帰る…」

    私はそう言って席を立つと居酒屋を出た。帰るつもりやったけど…足は光輝の店に向かってしまった。

    「アン!ちょっと待てって。どこ行くねん、光輝んとこか?俺ついてったるわ。ルイに店で嫌がらせされてた話もどうせ光輝に言ってないんやろ?何も我慢することないやん。俺がゆったるわ」

    2006-09-16 10:40:00
  • 339:

    杏奈

    気持ちは嬉しかった。お店でも味方は勇二君だけやったから。でも、迷惑かけられへんかった。

    「大丈夫。一人で行けるから。色んなことが杏奈の勘違いかもしれんし。だから行って自分で話して確かめてみる」

    2006-09-16 10:41:00
  • 340:

    杏奈

    「分かった。でも何かあったら連絡してこいよ。俺が光輝にゆったるし」

    「うん、ありがとう。いつもいつもごめんな…。またあさってお店でね」

    そう言って勇二君とはそこでバイバイした。

    2006-09-16 10:42:00
  • 341:

    杏奈

    (ウィーン)
    2…3…とエレベーターは上がっていく。また来てしまった。私の噂が立ってからは、しばらくお店には来てなかったのに。

    「いらっしゃいませ」

    またいつもの大きな声がいくつも聞こえてくる。

    2006-09-16 10:44:00
  • 342:

    杏奈

    「あ、杏奈さんいらっしゃいませ!どうぞ」

    ヒロ君が気付いて開いている席に案内してくれた。

    「ヒロー?光輝は?」

    2006-09-16 10:45:00
  • 343:

    杏奈

    「あっ、今奥の席着いてるんで呼んできます」

    私はヒロが一瞬焦ったような感じに見えた。

    「奥って誰が来てるん?嘘ついてもすぐばれんねんからホンマのこと言って」

    2006-09-16 10:46:00
  • 344:

    杏奈

    ヒロは困った顔をしてた。可哀相やけど仕方なかった。
    「男のお客さんと…ルイさんです」

    自分で聞いておきながら信じたくなかった。夢であってほしいと。

    2006-09-16 10:47:00
  • 345:

    杏奈

    しかもルイはお客さんを連れてアフターに来ていた。これじゃあ席に行くこともできない。
    そして、ルイと来ていた奥のお客さんがトイレに行く時に私の横を通り過ぎた。見てビックリした。
    そのお客さんは元々私のお客さんやったから。ルイがセコい嘘を吹き込んで取られた人やった。

    2006-09-16 10:48:00
  • 346:

    杏奈

    でも私は知らないフリをして静かに飲んでた。そしたらすぐに光輝が私のところに来た。

    「杏奈…ちゃうねん」

    「何が違うん?嘘ついてたんやろずっと。ルイが一人で来てたんかアフターで来てたんかは知らんで?でも杏奈に黙って平気な顔してたん?信じられへんわ」

    2006-09-16 10:49:00
  • 347:

    杏奈

    「ちゃうねんって…。でもとりあえずごめん」

    「とりあえずって何なん?とりあえずで謝られても迷惑やわ。それにルイの携帯の待ち受けが何で光輝の写メなん?」

    私達が言い争っている間、近くの席の二人組の女の子や一人の女の子がジロジロと見てきていた。

    2006-09-16 10:51:00
  • 348:

    杏奈

    「待ち受けぇ?知らんって。あ、でもこの前来た時写メ取られたわ。でも客連れて来てくれてたから何も言われへんやん撮んなとか。俺、悪いけど何もやましいことなんかないから」

    光輝は強く私に言った。分かってる。でも当たる先は光輝に対してしかなかった。

    2006-09-16 10:52:00
  • 349:

    杏奈

    ルイと話がしたい。でも今はお客さんもいる。どうにもならん気持ちが爆発寸前やった。

    「ルイはアフター以外で来たりもしてたん?」

    光輝はちょっと黙ってた。しばらく黙った後、ゆっくり話し始めた。

    2006-09-16 10:54:00
  • 350:

    杏奈

    「正直にゆうわ。ほとんどがアフターやで。でも一人で来たこともあった。友達と来たこともあった。でもな、客やん所詮。それ以上でも以下でもない。金使ってくれるし売り上げも上がるやん。ちゃうか?」

    「ちゃうか?って何よ?自分を正当化しすぎなんじゃないん?分かってる?何があってこうなってんのか」

    2006-09-16 10:55:00
  • 351:

    杏奈

    「分かってるって。黙ってた俺が悪いで?でも話しても怒っただけやろ?」

    言葉がでんかった。悔しくて情けなかった。確かに私は怒ったと思う。いくらお金を使ってくれてもルイは…ルイだけは嫌やったから。

    2006-09-16 10:56:00
  • 352:

    杏奈

    その時…
    「ありがとうございましたー」
    大きな声が店内に響いた。奥の席から歩いてきたのはルイと客だった。

    「ちょっ、杏奈待ってて。送り出しやから。待っててな」

    2006-09-16 10:57:00
  • 353:

    杏奈

    そう言って光輝は席を立った。そして、私の前を通り過ぎて行くルイ。一瞬私を見て笑っていたような気がした。
    何も言えない状況だったからなおさら腹が立った。
    しばいたろか…ほんまに思った。

    2006-09-16 10:59:00
  • 354:

    杏奈

    その時、ヒロが席に来た。申し訳なさそうな顔して。
    「ごめんなぁ…ヒロ。なんかさっき怒ってしまって。あほみたいやわ」

    「そんなことないっす。杏奈さんが心配すんの分かりますもん。でも代表も仕事やから仕方ない部分もあると思うんすよ…。こんといてくれとかやっぱ言えないでしょ。女の子はすぐ泣くし。それに売り上げはやっぱり大事っすから」

    2006-09-16 11:00:00
  • 355:

    杏奈

    分かってる…そんなことくらい分かってるよ…。でもルイだけは客としてでも光輝に近付いてほしくないねんもん…。
    あんなセコい女…全部取ろうとしてくるやん…。私に何がしたいん?光輝が好きなら正々堂々としてたらいいのに。
    客取ったり噂流したり嘘ついたり…ましてお金使いに店来るなんてありえへんわ。

    2006-09-16 11:01:00
  • 356:

    杏奈

    「テキーラ!」

    私はとりあえず飲みたかった。たいして強いわけでもないのに調子にのってテキーラを頼んでた。グイッと一気に飲み干した後、のどの焼ける感じが気持ち悪かった。光輝が戻ってきても気分は晴れないまま。

    「ごめんごめん。もう帰っていったから。あ、ヒロもういいで、3番行っといて」

    2006-09-16 11:04:00
  • 357:

    杏奈

    光輝はヒロを他の席に行かせると私の隣に座ってまた話し始めた。

    「俺が悪かった。でも杏奈もちょっとは分かるやろ?売り上げとか指名とか口座とか。やっぱり俺はナンバーワンでおりたいし客も必要やねん。プラスに考えてたらいいやん。お前の嫌いなルイちゃんから俺が金を絞ってるって」

    2006-09-16 11:04:00
  • 358:

    杏奈

    テキーラのせいで酔いが回ってきてた私は頭がおかしくなりそうやった。
    言ってくれると思ってたのに。もう来ささんようにするって。私がこんなにルイのことで嫌な思いしてんのに…それでも光輝はホストってゆう立場の売り上げを…ナンバーワンを取るんや。

    「光輝はこんなにゆっても客としてルイとの繋がり切れへんってゆうん?」

    2006-09-16 11:05:00
  • 359:

    杏奈

    「何で分からんねん。俺はお前と付き合ってるやん。俺の彼女はお前でお前の彼氏は俺やろ?客は全くちゃうもんやん」

    「ルイは違うもん…ルイは嫌やねん。光輝は知らんかもしれんけど…」

    私は言われへんかった。ルイに嫌がらせされてたことやお店で女の子達から孤立してること。

    2006-09-16 11:06:00
  • 360:

    杏奈

    「なんやねん。俺の知らんことって」

    「いい。もういいわ。なにゆっても一緒やから。もういいどうでも」

    ホンマにどうでもいいと思った。こんなわからずやに何ゆっても一緒やって。

    2006-09-16 11:07:00
  • 361:

    杏奈

    「何で分からんねん…」

    「分からんのは光輝のほうやんか!お金が大事?ナンバーワンが大事?お客さんが大事?ルイが大事?杏奈よりそうゆうことのほうが大事なんやろ?もう勝手にしてよ!」

    私は店を飛び出した…。やっちゃった…。あんなにお客さんおったのに…。自分が恥ずかしくなった。

    2006-09-16 11:08:00
  • 362:

    杏奈

    店を飛び出してビルから出た私の目に飛び込んで来たのは…勇二君やった。

    「何で?何してるん?帰った…じゃない…ん」

    もう言葉は声にならなかった。

    2006-09-16 11:09:00
  • 363:

    杏奈

    「何で泣いてんねん!アン?泣いてたら分からんやろ?何かあったんか?」

    勇二君はちゃんと私の話を聞いてくれようとする。光輝は違う。完全なホストになってしまった光輝は、自分のことでいっぱいになってるから。

    「もう嫌やぁ…」

    2006-09-16 11:10:00
  • 364:

    杏奈

    「お前何してんねん」

    その時後ろから光輝の声がした。光輝は私と勇二君のほうに歩いてきた。

    「何してんねんお前ら。勇二お前杏奈に気ぃあんのかこんなとこまで来て。なぁ?杏奈が呼んだんか?答えろや」

    2006-09-16 11:11:00
  • 365:

    杏奈

    「勇二君は関係ないから!たまたまここ通っただけやねん。ってゆうか光輝には関係ないやんもうほっといてーや!」

    私がそう言うと勇二君は私の腕をつかんでいた光輝を突き飛ばして私の前に立って光輝に言った。

    「たまたま通ったんちゃうわ。心配やったから待ってたんじゃ。お前がちゃんとせえへんからアンずっとしんどい思いしててんぞ?」

    2006-09-16 11:12:00
  • 366:

    杏奈

    「はぁ?どういう意味やねん?だいたい勇二に関係ない話なんちゃうんか」

    二人は今にもつかみ合いになりそうな雰囲気やった。

    「知ってんのか?お前。アンが店でずっと嫌がらせされてたの。ずっと色んな心配してたこと」

    2006-09-16 11:13:00
  • 367:

    杏奈

    「もういいって勇二君」

    「もういいちゃうわ!なんやねん嫌がらせって」

    「ルイに決まってるやんけ。周りの女味方につけて店でずっと嫌がらせしてたんじゃ。客もセコいやり方で取ったりアンの変な噂流したり…それでもお前にも誰にも何も言わんと我慢しててんぞ」

    2006-09-16 11:14:00
  • 368:

    杏奈

    「それでも店やめんとずっと来てたん何でか分かるか?お前のことが好きやからちゃうんか?近くにおらな心配やからやったんやろーが」

    思っていたことのほとんどを勇二君に言われた私は、止まりかけていた涙がまた止まらなくなってしまった。

    2006-09-16 11:15:00
  • 369:

    杏奈

    「そんなん言ってこやな分からんやんけ!何もゆうてこーへんのに分かるわけないんちゃうんか?だいたいお前さっきからアンアンゆうてるけどコイツの何やねん?ただの店のスタッフやろが」

    光輝はそう言って勇二君の胸ぐらをつかんだ。光輝には通じんかったんや…。私がずっと我慢してたこと。言わな分からんって?言ったらどうにかなってたん?

    2006-09-16 11:16:00
  • 370:

    杏奈

    私がそんな思いしてる頃、光輝は客としてルイを接客してたのに。私の気持ちなんて分かるはずない。
    勇二君は胸ぐらをつかまれたままやった。何で光輝こんなことするん…

    「アンが好きやからに決まってるやんけ!ずっとゆうつもりなんかなかったわ。黙ってるつもりやったわ。お前とこんなんなると思わんかったしお前に惚れてるアンのことが好きになってんから」

    2006-09-16 11:18:00
  • 371:

    杏奈

    えっ…?一瞬自分の耳を疑った。

    「ほんなら最初っからそう言えや!お前もルイと一緒やんけ!」

    2006-09-16 11:19:00
  • 372:

    杏奈

    「あんなんと一緒にすんな!女泣かせることがお前の男気なんか?自分の女泣かせて我慢させて苦しめることがお前の彼氏としてのやり方なんか?俺ならそんなこと絶対せえへんわ。自分の女幸せにせんで誰を幸せにすんねん?客か?店か?ない頭絞って考えろや」

    2006-09-16 11:20:00
  • 373:

    杏奈

    勇二君がそう言った時、光輝は勇二君を殴っていた。鈍い音が痛々しかった。

    「殴るんなら殴れや。俺はなんもせんから。好きにしろ」

    勇二君はそう言うと血の混じったツバをペッと吐き捨てた。痛かったはず、殴り返したかったはずやのに…。

    2006-09-16 11:21:00
  • 374:

    杏奈

    「杏奈、お前なに考えてんねん?こんなやつと仕事しとったんか?お前ら浮気しとったんちゃうんか!」

    光輝は私の腕を痛いぐらいにつかんでそう言って来た。
    呆れて言葉も見つからなかった。浮気?こんなやつ?勇二君はいつでも味方でいてくれた。光輝の話もいつもちゃんと相談に乗ってくれてたし。私にとって唯一の支えやった人。

    2006-09-16 11:22:00
  • 375:

    杏奈

    恋愛感情はなかった。でも人として優しくて芯の強い人。いつも近くで見守ってくれてた人。
    そんな勇二君をこんなやつ呼ばわりされたくなかった。

    「もう光輝いいって。もう…別れよう。あんたと何を話しても無理って分かった。一から十まで話しても多分何も分からんと思う」

    2006-09-16 11:23:00
  • 376:

    杏奈

    「はぁ?何ゆってんねん?お前勇二んとこ行くんか!ありえへんことゆうな」

    あほらしかった。別に勇二君に好きって言われたから気持ちが移ったわけでもないし、勇二君を好きなわけじゃない。勇二君に乗り換えるつもりもなかった。

    ただ、もう光輝とはもうやっていかれへんって思ってた。こんな分からず屋…。

    2006-09-16 11:24:00
  • 377:

    杏奈

    「何で分からんの?光輝がここまで頭おかしいとは思わんかったわ!ルイみたいなんと話してるから頭悪なったんちゃう?ナンバーワンホスト?聞いて呆れるわ。あんたみたいなん中身のない人間ってゆうねん」

    「はぁ?お前っ!!」

    酔いが残っていた私の言葉に光輝はめちゃくちゃ怒った顔で初めて私も胸ぐらをつかまれた。

    2006-09-16 11:25:00
  • 378:

    杏奈

    バコン…

    次の瞬間光輝は目の前に倒れていた。勇二君が…光輝を殴ってしまってた。

    「お前何してるか分かってんのか!女の胸ぐらつかむようなことすんな。目ぇ覚ませいい加減!」

    2006-09-16 11:26:00
  • 379:

    杏奈

    光輝は倒れたまま笑ってた。私には意味が分からんかった。

    「ハハッ、何アツなってんねん。もうええわ。お前ら好きにすれば?」

    光輝はそう言うと立ち上がってビルに入って行った。

    2006-09-16 11:28:00
  • 380:

    杏奈

    「大丈夫か?ごめんな…俺いらんことしてもうたやんなぁ…マジごめん」

    勇二君はそう言って私に何度も謝って来た。

    「何で勇二君が謝るん?謝らなあかんの杏奈のほうやわ…。ごめんな変なことに巻き込んでしまって…」

    2006-09-16 11:29:00
  • 381:

    杏奈

    ホンマその通りやった。勇二君は光輝と仲のいい友達やったのに…私のせいでこんなことなって…。

    「気にすんなって。光輝はちょっと今おかしなってんねん。やっぱナンバーワンとかって必死なってまうとことかあるからな。光輝マジで少し変わってもうたけど、俺は嫌いやから喧嘩したわけちゃうから。あいつのいいとこいっぱい知ってるしそれはアンも一緒やろ?」

    2006-09-16 11:30:00
  • 382:

    杏奈

    いいところ…か。知ってるよ。いっぱい知ってる。そんなんずっと付き合ってきててんから知り過ぎてるくらい分かってる。

    「でも…もうとりあえず別れる。一回ちゃんと距離置いて考えたいし。ルイのこともやっぱり杏奈は納得なんかできひんから」

    2006-09-16 11:31:00
  • 383:

    杏奈

    「そっか。よっしゃ、分かった。なぁ…ルイに勝ちたない?仕返しってゆうたら大袈裟やけど」

    「えっ?何かあるん?」

    「アンが頑張ってルイを抜いてナンバーワンなればいいねん。これはある意味いいと思うで?俺はアンにはできると思ってるしずっとそうなってほしかったから」

    2006-09-16 11:32:00
  • 384:

    杏奈

    「ナンバ…ワン?」

    「そう。ナンバーワン」

    勇二君にそう言われた私は考えた。これはある意味戦争みたいなもんやなって。光輝は関係なく、女としてルイに勝ちたい。負けてるなんて思ってないし、あんな空っぽホステスなんか…そう考えたら私の中の何かがパッと弾けた。

    2006-09-16 11:34:00
  • 385:

    杏奈

    「やってみよ…かな?頑張ってみよかな?できるかは分からんけど…」

    「おー。やってみろや。俺が完全なバックアップしたるわ。そんかわり出勤は最低でも週5は入らなあかんで」

    「うん☆やってみる!あ…あのさぁ、杏奈ずっと光輝と住んでたやん。だから実家帰ってもいいねんけどちょっとミナミから遠くなんねんやん」

    2006-09-16 11:35:00
  • 386:

    杏奈

    「うーん…どないする?てゆうかマジで光輝と別れる気なん?」

    勇二君はビックリした顔で私にそう言った。

    「うん。なんかさ、そう考えたらラクになってん。ナンバーワンにもなりたいなぁって」

    2006-09-16 11:36:00
  • 387:

    杏奈

    「そっか。あ、俺がさっきゆったことは気にせんといてな」

    「ん?何?」

    「いや…あの…だから…。好きやとか…そんなんゆうたこと」

    2006-09-16 11:37:00
  • 388:

    杏奈

    「あっ…あぁうん…」

    ちょっと気まずい雰囲気にはなったけど、勇二君に心の中でありがとうって思った。

    「店の俺の客に不動産会社の専務おるからマンション借りるなら適当に話しとこか?お金も抑えてくれるやろし」

    2006-09-16 11:37:00
  • 389:

    杏奈

    そうやなぁ…確かにそのほうが便利やし仕事上近いほうがラクやし…

    「うん。じゃあお願いしよっかな☆1Kとかでいいし。とりあえず今日はマンション戻っているものだけ取りに行って友達のとこ行くわ」

    2006-09-16 11:38:00
  • 390:

    名無しさん

    続き気になる?

    2006-09-16 12:14:00
  • 391:

    名無しさん

    (*´∀`)

    2006-09-16 21:56:00
  • 392:

    杏奈

    「びっくりしたわぁこんな朝っぱらに急に電話かかってきて。なんかあったん?」
    真美に不意をつかれた。なんかあった…か。

    「うーん…ちょっと。急に来てごめんなぁ」

    2006-09-16 22:53:00
  • 393:

    杏奈

    「全然いーよ。おりたいだけおってな」

    真美はそう言うと、私用に小さめの布団を出してくれた。朝の10時過ぎだった。それから寝てなかった私はウトウトしながらいつのまにか寝てしまっていた。

    (ブーブーブー)

    2006-09-16 22:54:00
  • 394:

    杏奈

    電話?そう思って目が覚めた。窓の外は夕暮れで薄暗い部屋の中、携帯の振動が布団に響いてた。メールだった。

    ?(お前どこおんねん?勝手なことすんなや。勇二と一緒なんか?)

    メールを見た私は寝起き早々呆れてしまった。どこまで光輝はアホなんやろうって。

    2006-09-16 22:55:00
  • 395:

    杏奈

    少しは頭冷やしたんかと思ったのに…何も分かってないし…。

    ?(一緒なわけないやろ?もういい加減にしてよ?勝手にしたらいいのは光輝のほうやわ?しばらく連絡してこんといて)

    2006-09-16 22:56:00
  • 396:

    杏奈

    メールを送った私は目を閉じて一人でつぶやいてた。「しんど…」って。

    疲れてた。ほんまに結構いっぱい?やった。昨日の出来事を思い出しただけで頭痛くなってた。
    ルイのことが特に…。

    2006-09-16 23:01:00
  • 397:

    杏奈

    「おはよー。杏奈ぁ先にフロ入る?美容院一緒に行こっか♪」

    真美は眠そうな目をこすりながら寝起きもキゲンが良かった。私達はシャワーを浴びて軽く化粧をすると時間もギリギリだったし急いで美容院に向かった。

    2006-09-16 23:02:00
  • 398:

    名無しさん

    やば気になる?

    2006-09-17 01:39:00
  • 399:

    名無しさん

    めっちゃ更新されてる?

    2006-09-17 03:19:00
  • 400:

    名無しさん

    あげ

    2006-09-17 23:08:00
  • 401:

    杏奈

    ミナミに着くといつもどおり人がたくさんいて、いつもどおり賑やかで…。
    私は結構この街が好きだった。でもその日はいつもと少し違った。光輝を変えてしまったこの場所が嫌いになりそうだった。

    「杏奈どしたん?大丈夫?めっちゃぼーっとしてるやん」

    2006-09-18 12:50:00
  • 402:

    杏奈

    「あ…ごめん。大丈夫やでなんもないよ」

    私がそう言っても真美は少し心配そうな顔をしてた。それから美容院でセットが終わると、お店が違う真美は働いているラウンジに向かって行った。

    「店終わったら電話して☆今日もウチ来るやろ?一緒に帰ろうなぁ」

    2006-09-18 12:51:00
  • 403:

    杏奈

    真美は別れぎわにそう言って手を振ってた。いい友達がいて良かったなって思った。
    私は正直ゆうと光輝が全てやった。ずっと光輝とおったしずっとそれでいいとも思ってた。
    だから自分が夜の仕事をするまでは、家にいるのが当たり前で。友達ともたまに会うぐらい。

    2006-09-18 12:52:00
  • 404:

    杏奈

    友達って大事やなぁって。それと急に電話をかけた時でも、何も言わずに話聞いてくれる子、会ってくれる子、一緒にいてくれる子がいて良かったなって。
    私にそんな子が何人いてるんやろ?そう考えた時、自分の甘さを痛感した。光輝ばかりになってて、大好きやった友達と今は距離があるなぁと。

    2006-09-18 12:54:00
  • 405:

    杏奈

    そんなことを一人で黙々と考えながら私もお店に向かってた。今日もルイと顔合わすことになるんや…だるいなぁ…。
    一発殴ってやりたいぐらいの気分やった。人の気持ち逆なでばっかしてきて一体何がしたいんやろう。

    2006-09-18 12:57:00
  • 406:

    杏奈

    「おー杏奈おはよ」

    お店に入るとボーイの千場くんにまず声をかけられた。

    「あっおはよー。代表店いてる?」

    2006-09-18 13:06:00
  • 407:

    杏奈

    「うん来てるでー。どうしたん?あ!それより杏奈今日から出勤増えるんやろ?聞いたで代表から!頑張ってナンバー1なってな」

    えぇ?何で知ってるん…。とは思いながらも改めて思い出した。そっか、私ナンバーワン目指すんやったっけな…。

    2006-09-18 14:00:00
  • 408:

    杏奈

    「あんま大っきい声でゆわんとってな…。でもまぁ、とりあえず頑張る」

    私がそう言うと千場くんはニコッと笑ってうんってうなずいてた。

    それから着替えのために更衣室に入るといつものルイの取り巻きメンバーが雑談してた。

    2006-09-18 14:01:00
  • 409:

    杏奈

    私はその後ろを素通りしてロッカーの前まで行くと、とりあえずそのまま着替えてた。

    「おはよー」
    「あーおはっ♪」
    「ルイさんおはようございますぅ」

    2006-09-18 14:07:00
  • 410:

    杏奈

    ルイ…?そう、あのルイが出勤してきたのだ。私は聞こえないフリをしながら黙って着替えてた。

    「あーこれ誰ですかぁ?彼氏?めっちゃ恰好いいですねぇ」

    お店の女の子、サキがルイの携帯を見ながらそう言っているのが聞こえてきた。携帯に写ってるのは光輝だと分かってた。

    2006-09-18 14:08:00
  • 411:

    杏奈

    ルイは多分、私がそのことを知らないと思っていたと思う。

    「そやろー♪めっちゃカッコイーやんなぁ。ルイの好きなダーリンやねん♪」

    聞いててまた頭が痛くなった。ルイの声、言葉、顔、存在…全てがうっとうしくて。

    2006-09-18 14:12:00
  • 412:

    杏奈

    我慢の極限やった。

    (バンッ!)

    私は気付いたらロッカーを蹴ってた。少しへこんだロッカーを見ながらもう一発ドンっと蹴った。

    2006-09-18 14:15:00
  • 413:

    杏奈

    「なに!?」
    「えっ!?何の音!?」

    女の子達は少しざわついてた。びっくりした顔で。

    「ハハッ、どうせ杏奈やろ?頭おかしいから」

    2006-09-18 14:19:00
  • 414:

    杏奈

    まっとう…ってゆったら変かもしれんけど、その先輩のお葬式や家に線香をあげに行った時に、先輩のお母さんに言われたことがあって。

    「お願いやからレディースとか暴走族はやめて」って。「あの子みたいになってほしくない」って。「親孝行しなあかん」って。

    でも一番引っ掛かった言葉があった。

    2006-09-18 15:14:00
  • 415:

    杏奈

    「私があの子を殺したようなもんや」って。「バイク乗るのやめさせてれば」って。
    泣きながらそう言ってた。私はそん時に思った。ヤンキーをやめようって。大好きやった先輩は、多分亡くなってからもずっと苦しんでるって思ったから。

    親や友達、後輩、それから彼氏も…。いろんな人を悲しませてるから。だから苦しんでるんじゃないかなって

    2006-09-18 15:15:00
  • 416:

    杏奈

    やっぱり言いたいことはいっぱいあったと思う。親には親孝行したかったやろうし、友達や仲間とはずっとつるんでたかったはずやし。
    好きな…付き合ってた彼氏にも好きやでって、ありがとうって言い残したこといっぱいあったと思う。
    でも、死んでしまってからじゃいくら後悔しても遅いから…。だから先輩のためにも私だけでも変わりたかった。

    2006-09-18 15:16:00
  • 417:

    杏奈

    だからそれから喧嘩なんて一回もしなかった。バイクにも手つけんかったし、人にも手あげんかった。
    悪いことからは一切遠ざかってた。
    だから私が本気で怒ったのは、その時以来…まさか相手がルイになるなんて思ってもみんかった。

    「誰が頭おかしいって?」

    2006-09-18 15:17:00
  • 418:

    杏奈

    「え?」

    「だから誰が頭おかしいかって聞いてんねん!」

    私が大声を張り上げると、ルイの周りにいた女の子達はびっくりして口があいたままだった。それからルイも…。

    2006-09-18 15:18:00
  • 419:

    杏奈

    シーンとしてた。私は黙ったままのルイのそばまでいって耳元で大声を出して聞いた。

    「なぁ?お前耳ついてんのか?ちゃんと声聞こえてるか?」

    「きっ聞こえてるわ!」

    2006-09-18 15:20:00
  • 420:

    杏奈

    ルイは慌てながらそう言ってきた。私は思った。我慢をすることは大事やけど、爆発させることも必要なんやって。

    「で?誰が頭おかしいって?はよゆえや?なぁ」

    「べ、別にあたしそんなんゆってないし」

    2006-09-18 15:20:00
  • 421:

    杏奈

    手を出すつもりは初めっからなかった。でも、ルイに我慢し続けてきていた分、あまりにもふざけた答えに私の手はルイのアゴをつかんでた。

    「はぁ?お前のこの口がさっきゆうとったんちゃうんか?」

    「ちょっ、やめてよ」

    2006-09-18 15:21:00
  • 422:

    杏奈

    「あんまいちびっとったらいってまうで?お前の家ごといったろか?人が何もゆわんかったから機嫌よー好き勝手やってきたみたいやけど人おちょくんのもええ加減にせーよ!」

    更衣室は静まり返ってた。やばっ…やってもーた…。そう思った時には時すでに遅し。

    2006-09-18 15:23:00
  • 423:

    名無しさん

    リアルタイムやぁ?まぢぃおもろぃ?続きはよ読みたい?

    2006-09-18 15:23:00
  • 424:

    杏奈

    ルイは何も言い返してこなかった。もっと面白いことになるかと思ってたのに無反応で空回りやった。

    宣戦布告。その言葉そのもの。ルイも少しはおとなしくなるやろう…。
    それから更衣室を出たら、代表が立ってた。

    2006-09-18 15:24:00
  • 425:

    杏奈

    「おはよ。アンどーしてん?びっくりした顔して」

    勇二君は私の顔を見てそう言った。びっくりした顔?あ、もしかして聞いてたんかな?

    「今ってもしかして声聞こえてた?」

    2006-09-18 15:25:00
  • 426:

    杏奈

    「えっ!?何も聞こえてないで」

    良かったぁ…。ほっとしたのもつかの間やった。

    「人おちょくんのもええ加減にせーよ!とか全然聞こえてないで(笑)」

    2006-09-18 15:27:00
  • 427:

    杏奈

    笑いながら勇二君はそう言った。げっ…ってかめっちゃ聞こえてたんやん…。

    「ちょっとスッキリしたんちゃう?頑張ろな。次はナンバーワンなってとことんやったれ」

    「うん…頑張る」

    2006-09-18 15:27:00
  • 428:

    杏奈

    「つーかアンって元ヤン?びっくりするわぁ」

    「もう!それは忘れてな。めっちゃ恥ずかしいわ…。仕事頑張ろーっと」

    そんな話をしながら仕事を開始した…。変な日の始まりやった。

    2006-09-18 15:28:00
  • 429:

    杏奈

    その日は始まりがあんなんやったせいもあって、めっちゃパワフルに頑張った。指名客もうまい具合に来てくれてたし、場内もかなり取った。
    今思えば、ほんま…何やろ?ただ必死やった。意地になってた。
    水商売の変貌…そのものやった。光輝が変わったって思ってた。でもそれだけじゃなかった。私も…変わっていってた。

    2006-09-18 15:29:00
  • 430:

    杏奈

    光輝を好きになって、いろんな感情を知った。
    楽しい気持ち、悲しい気持ち。むかついたり悩んだりもした。嬉しくて幸せだったり…やきもちやいて悔しい思いもした。

    つまらない一言や、ちょっとした行動で喧嘩になったり、たいしたことないことに跳びはねたくなるぐらい幸せを感じたり。
    人を好きになってよく分かった。感情だけはどうにも理解しがたいもんだなって。

    2006-09-18 15:30:00
  • 431:

    杏奈

    感情をコントロールできるなら苦労しないのに。喜怒哀楽が同じだけ順番に出てくればいいのに。
    私だけかもしれないけど、いいことや悪いことが続けてくる気がして。まとめてどっとくるような感じ。
    特にこのころはそう思ってた。何でこんなに嫌なことばっかり続くんやろうって。

    2006-09-18 15:31:00
  • 432:

    杏奈

    光輝は多分いつもの喧嘩や…ぐらいにしか思ってなかったと思う。まさか本気で別れようと思ってたなんて気付きもしてなかった。

    私が同棲していたマンションから飛び出してからも変わらずに鳴る光輝からの電話やメール。
    私は最初は戸惑ってた。電話に出ようかメールを返信しようかって。

    2006-09-18 15:35:00
  • 433:

    杏奈

    でも折れるわけにはいかなかった。また同じことの繰り返しになるような気がしたから。
    ルイのことが一番の理由やったけど、仕事に溺れていく光輝を見るのが嫌やった。
    仕事のためなら私の嫌いな女だって客にできるし、私の気持ちなんて二の次で。

    2006-09-18 15:36:00
  • 434:

    名無しさん

    おもろい???

    2006-09-19 04:17:00
  • 435:

    杏奈

    よくゆうやん。ホストの彼女は忍耐力がいるって。
    ふざけんなって思わん?なんで彼女が耐える必要があるんかな?なんで彼女が我慢しなあかんのかな?

    間違ってるよね。
    付き合うってことは、お互い対等なわけでしょ。どっちかが我慢してどっちかが楽して。そんなんっておかしいなってその時ようやく分かった気がしてた。

    2006-09-20 06:41:00
  • 436:

    杏奈

    それに初めて自分から何かをしたいって思えたから。それがNo.1になることやった。
    最初はルイに対するライバル心、対抗意識、報復みたいに考えてた。やっぱりルイはNo.1やったしそこからとりあえず変えたいって。

    2006-09-20 06:42:00
  • 437:

    杏奈

    だから変わっていった。私は相変わらず真美のマンションに居候しながら、新居が見つかるまで生活してた。
    仕事は毎日…でてた。人間って何かに本気で没頭した時ってびっくりするくらい力発揮できるもんやねんなぁって思ったよ。
    必死やっただけやけど、光輝と付き合ってた間一回もしたことがなかった同伴やアフターにも行くようになったし。

    2006-09-20 06:43:00
  • 438:

    杏奈

    それに評価がすぐに出るし目に見えて分かる。グラフや指名の張り出し、もちろん給料も変わった。
    嬉しかった。仕事もやることやってれば結果は必ずついてくる、それが分かったから。
    私はNo.5だった先月の順位から、その月はNo.3まで上がってた。光輝から離れて一ヶ月半くらいの頃やったかなぁ…。

    2006-09-20 06:44:00
  • 439:

    杏奈

    光輝も変わってた。相変わらずNo.1やったのは知ってたけど、すごい売り上げをあげてるってとあるサイトで見たり。
    その時は光輝からの連絡もあまりなくなってた。私が出ていって3週間くらいは毎日毎日電話もあったけど、それからは減っていってて…。

    2006-09-20 06:45:00
  • 440:

    杏奈

    人って不思議なもんで連絡ずっとしてきた人があんまりしてこなくなったらなんか変な気分になるよね。
    何してんねやろ、何で連絡減ってきたんやろって。
    結局自分勝手やねん。連絡きてもほっといたんは自分やのに。いざ光輝が変わってきたら焦ったりして。
    ほんまアホやなぁって思った。

    2006-09-20 06:46:00
  • 441:

    杏奈

    ルイのことも気になってた。まだ光輝の店行ってんのかなぁって。今どうなってんねやろって。
    毎日ルイはキャバクラで会うけど、更衣室でもめたあの時以来、私とは一言も話さないままやったし。
    それに私が仕事を頑張ってるのを見て焦ってたのかは知らんけど、ルイまで必死になってるように見えた。

    2006-09-20 06:47:00
  • 442:

    杏奈

    勇二君は相変わらず私のよき相談相手で飲み友達やった。仕事中もかなり応援してくれてたし。
    光輝と喧嘩したあの日以来、勇二君は何も言ってこないけど、光輝とは喧嘩したままやったやろうし。これからどうするんやろ…
    私がそんなことを考えてる間にも、複雑なそれぞれの想いが交錯していってた。
    私、光輝、ルイ、勇二君。四人の糸は、からまり始めていた。でも、一度もつれてしまった糸は簡単にはほどけなくなって…。

    2006-09-20 06:48:00
  • 443:

    杏奈

    そんな時、新たな出来事が起きた。
    ちょうどまだ肌寒い三月の終わりだった。私は仕事が終わると、真美に電話をかけた。
    「もう仕事終わったよー。真美は?」

    「ごめん!アフター中やねんやん。先帰っててくれるー?ごめんなぁ」

    2006-09-20 06:49:00
  • 444:

    杏奈

    「分かったぁじゃあ先に帰っとくね」

    そう言って電話を切った…その時、離れた前のほうに見覚えのある後ろ姿を見つけた。
    光…輝?光輝かな?私は何故か久しぶりにドキドキしてた。私が家を飛び出して二ヶ月目の頃だった。
    でも、唖然とさせられた。光輝の隣を歩いてたのは、ルイやったから。私は少し離れて歩きながら見てた。二人は光輝の働いている店のビルに入って行ってた。

    2006-09-20 06:50:00
  • 445:

    杏奈

    私なにやってんねやろ…こんなとこまで来て…。

    「杏奈さん?」

    えっ?と思い振り返るとそこには光輝の店のヒロがいた。

    2006-09-20 06:51:00
  • 446:

    杏奈

    「何してるんすか?つーかめっちゃお久しぶりっすよね。光輝さん待ってるんすか?」

    「あ、ちがうねん…たまたま…通っただけやから。ここで会ったこと光輝には言わんといて」

    ヒロは不思議そうに私を見ていた。

    2006-09-20 06:51:00
  • 447:

    杏奈

    「ヒロ無理せんと頑張りや。またね」

    私はとりあえずその場から急いで離れた。っていうか…ルイ…まだ来てるし。
    どういうことよ…光輝。もういいんかなぁ…ほんまに。私なんて必要ないんかな?だからまだ平気でルイのこと店呼んだりできるんや…。

    2006-09-20 06:52:00
  • 448:

    杏奈

    なんか久々にオチた。私この二ヶ月何してたんやろうって。仕事に必死になって…ルイへのライバル意識だけで。
    光輝のことよりルイへの嫉妬や仕返しでNo.1を目指したりして。
    でもそんなことで必死になってた間も何も変わってなかった。むしろ私だけが空回りしてた。

    2006-09-20 06:53:00
  • 449:

    杏奈

    なんかどうしようもない気持ちが苦しかった。ぶつけようもない気持ち、気持ちをぶつける相手もおらん…。
    涙が出そうやった。目いっぱいに涙がたまってた。あかん…涙こぼしたら…そう思って歩いてた。
    早く帰ろう。帰ってお風呂入ってスッキリしよう。それからビール飲んで寝よう。そうすれば…明日になれば…忘れられる。今日のことも。

    2006-09-21 01:33:00
  • 450:

    杏奈

    「大丈夫?」

    歩いていた私の前に立って突然話しかけてきたのはスーツに身を包んだホストだった。

    「どいて」

    2006-09-21 01:34:00
  • 451:

    杏奈

    「何で泣いてんの?」

    ホストは私の前からどかずに突っ立ったままだった。邪魔やし…早く家に帰りたい…どいてよ…。
    私は我慢してた涙が止まらんくなってた。光輝のことやルイのことでもううんざりやったのに街中のホストまで私のこと馬鹿にして…。
    私はホストを押しのけて歩いた。ふざけんな!って思いながら。

    2006-09-21 01:35:00
  • 452:

    杏奈

    「なぁー何で泣いてんの?何かあったんなら話聞くでー。なぁーお願いやからちょっとだけ話聞いてーやー。なぁー」

    でも、ホストはそう言いながらずっと後をついて来た。

    「ついてこんといてよ、ホストなんて行かんし。ついてきても時間のムダやで。だいたい杏奈ホスト嫌いやから」

    2006-09-21 01:36:00
  • 453:

    杏奈

    「ふーん、杏奈ってゆうんや?」

    あっ…最悪や…。焦ってた私を見てそのホストはちょっとクスっと笑ってた。

    「なぁ、杏奈ってどこの店?キャバクラ?」

    2006-09-21 01:38:00
  • 454:

    杏奈

    馴れ馴れしい。その言葉がピッタリな奴やった。

    「関係ないやん、ていうかもうついてこんといて」

    「まぁ関係ないけど(笑)自分めっちゃ気強いな。怖いわ。でも何かあったから泣いてたんやろ?俺ヒーローやからそうゆうのほっとかれへんたちやねん」

    2006-09-21 06:38:00
  • 455:

    杏奈

    ヒーロー?あほちゃうコイツ…。あほらし…そう思って無視して歩いた。
    やっと静かになった。よかった…もう大丈夫や。でもしばらく歩いて後ろを振り返ってびっくりした。

    自称ヒーローはまだついてきてた。

    2006-09-21 06:39:00
  • 456:

    杏奈

    「何でおるん、ついてこんとってってゆったやん!」

    「何でもいいやんこっちに来たかったから来ただけやで。悪い?」

    …。何よコイツ。でもちょっとおかしかった。初対面の人にキレたり怒ったりして。

    2006-09-21 06:40:00
  • 457:

    杏奈

    降参…やった。イライラしてたしストレスも発散したかった。

    「もういいわ分かった。飲みに行けばいいんやろ」

    「別に来たくないならこんでいーで。キャッチじゃないし。ゆったやんさっき。俺はヒーローやって。泣いてたから助けたろうと思ってん」

    2006-09-21 06:41:00
  • 458:

    杏奈

    「ハハッ(笑)やっぱり頭おかしいみたいやな。まぁいーや、店どこ?」

    「マジで来るん?」

    つくづく変な奴やった。マジで来るん?って普通ゆわんやろ…って。それから私は誘導されるがままにとあるビルへと足を踏み入れた。

    2006-09-21 06:41:00
  • 459:

    杏奈

    「いらっしゃいませー」

    一歩足を踏み入れたその店は、暗い中にいくつもの照明がキラキラ光ってた。

    「なに飲む?何でも飲み放題やけど。説明してなかったけど初回やしフリータイムで3000円やねん。好きな酒ある?」

    2006-09-21 06:42:00
  • 460:

    杏奈

    「何でもいい、あっビールでいいや」

    一分後、テーブルにはビールが運ばれてきた。

    「自分で払うから俺もビール頼んでいい?あっコレ、名刺やからもらって」

    2006-09-21 06:43:00
  • 461:

    杏奈

    私は名刺を見て驚いた。ただのチャラホストかと思ってたのに、名刺には代表って書かれてたから。

    「ほい、カンパーイ」

    グラスを持ってとりあえず乾杯をしたものの、イメージが違いすぎて話しにくくなってしまった。

    2006-09-21 06:45:00
  • 462:

    杏奈

    「ほんまに代表さん?」

    「そーやけど何で?みえへん?」

    「いや…そんなんちゃうけど代表クラスとかって外出たりせえへんのちゃうかなぁと思って」

    2006-09-21 06:46:00
  • 463:

    杏奈

    「だから俺はヒーローやからやって(笑)さっき助けてって思ってたやろ?っていうか陽介でいいで呼び方」

    そう言って笑ったホスト、陽介は第一印象がめちゃくちゃやった。でも面白かった。

    「なぁー杏奈って店どこなん?ミナミ?」

    2006-09-21 06:46:00
  • 464:

    杏奈

    「ミナミやで。近くやけど(某店)知ってる?」

    「えっ?○○?嘘やろ?マジかよ…」

    ホスト陽介は店の名前を聞いたとたん顔つきが変わってた。何か嫌なことでもあったんかな?うちの店で。

    2006-09-21 06:47:00
  • 465:

    杏奈

    「なぁ、その店にルイってやつまだおる?」

    ル…イ?聞きたくない名前やった。またルイ?ルイが私にまとわりついてるんかって思うくらいやった。

    「おるけど…何で?知り合いなん?」

    2006-09-21 06:48:00
  • 466:

    杏奈

    「あぁ…前の女やねん」

    「えっ?マジで?」

    陽介はルイの元カレやった。不思議な巡り会わせやなぁと神様を怨んだ。別にストレス発散で飲みに来ただけやったけど、そんな場所にまでルイをつなげるなんて…。

    2006-09-21 06:49:00
  • 467:

    杏奈

    「あいつちょっとおかしいやろ?散々やったで。客ともめたり暴れたり。情緒不安定なんやろけど」

    ホスト陽介はルイとのことを話し始めた。ルイは陽介の前も別のホストと付き合ってたらしい。ホスト好きとゆうかそんな感じやって言ってた。

    「なぁ、別に杏奈そんな話聞きに飲みに来たわけちゃうねんけど」

    2006-09-21 06:50:00
  • 468:

    杏奈

    「あ、ごめん。つーか何でさっきはマジで泣いてたん?何かあったんやろ?」

    ホスト陽介の言葉はあったかく聞こえた。最近誰かに話を聞いてもらえただろうか。
    真美とは毎日一緒にいるけどやっぱり真美は仕事で疲れてたり帰ってきても寝てたりするからそんなに話せないままだった。勇二君とも光輝の話題はあえてしなかったし仕事の話ばかりで。

    2006-09-21 06:53:00
  • 469:

    杏奈

    だから誰かに何かあったのかって聞かれたことが嬉しかった。多分陽介じゃなくても誰でもよかった。
    優しい言葉で埋められたかった。

    「悔し泣き…かな。自分が格好悪くて。なんかよく分からんようなってさ。なぁホストって楽しい?みんな変わってしまうんかなぁ」

    2006-09-21 07:13:00
  • 470:

    杏奈

    「わ…からん」

    「酔うたままならケガするっちゅうこと。俺がそうやったから。うぬぼれていちびって、落とされてどん底見て。だから自分で目覚まして落ちとくべきやねん。上に立つと見下すやろ?人を。そうじゃなくて上に立っても目線はいつも上を見とくってこと」

    2006-09-21 13:31:00
  • 471:

    杏奈

    その時はその言葉の意味がいまいちよく分からんかった。でも今はよくやく少し分かる気もする。

    「もしかして彼氏ホストなん?」

    「えっ…あ、彼氏っていうか元ってゆうか…好きやねんなぁって今日思わされた。離れても変わらんねんなぁって」

    2006-09-21 13:34:00
  • 472:

    杏奈

    「No.1なん?もしかして代表とか役職?店どこ?」

    「店はゆわれへんけどNo.1で代表やで。けどホスト始めた頃とめっちゃ変わってしまった。なんかやっぱり寂しいなぁって思う。どんどん変わってくの見てて怖いなぁって」

    「水商売の変貌…か。俺もそんなんゆわれたことあるわ昔」

    2006-09-21 13:35:00
  • 473:

    杏奈

    ホスト陽介もかつてミナミを騒がせたほどの有名ホストだったらしい。その頃もも変わらず有名は有名やったけど。

    「そんなに好きなんや?いいよなぁ人をそんな好きになれて」

    ホスト陽介はそう言うと、少し寂しげな顔をした。それがとても綺麗な顔で。

    2006-09-21 13:37:00
  • 474:

    杏奈

    「何で?彼女とか好きな女の子いてないの?」

    私は気付けばそう聞いていた。陽介の不思議さに興味をもって。

    「俺?おれなぁ…おらん。っちゅうか無理やな。ほしいとも思わんし。昔は…ほんまに好きやった女一人だけおったけど。もう結婚してもうたし」

    2006-09-21 13:38:00
  • 475:

    杏奈

    「そっか…」

    嫌なことを思い出させてしまったようで何も言えなかった。しばらく黙って飲んでるとホスト陽介は静かにその忘れられない一人の女の話をしてくれた。

    「客やってん。っていうか店に引っ張るために色で繋いでてんな。そいつ俺の店来るために風俗で必死で仕事したりして。その頃の俺はテングになってたNo.1やってん。」

    2006-09-21 13:40:00
  • 476:

    杏奈

    「俺はめっちゃラッキーと思って色使いまくって金使わせてたんやけど。そいつめっちゃ純粋に俺のこと好きやってんやん。だから文句もゆわんといつも飲みに来たらニコニコしとった。顔見れてよかった、これで明日も頑張れるって。」

    「うん」

    私は黙ってあいづちをうちながら話をきいていた。

    2006-09-21 13:44:00
  • 477:

    杏奈

    「風邪ひいたとかちょっとしんどいとかメール入ってても俺は仕事頑張れよしか返さんかったりしたのに、いつも来たらニコニコしてあほみたいに笑って。ガキやなぁこいつって思ってた。ええ鴨やって。半年ぐらいずーっと店きてたわ。店以外で会ったのは二回だけやし営業ついでに手繋いでチューしただけ。これ聞いてどう思う?」

    2006-09-21 13:46:00
  • 478:

    杏奈

    「最悪…やけど色ホストならそれも普通なんかもしれんね。でもその子めっちゃ真っ直ぐな子やん、いつも笑ってニコニコしてるなんて。何も文句言わずに色にのまれてたんやろ?」

    「うん…。でも急に連絡とれんようになってんな。店にもこんようなって。しばらくしたら携帯も解約されてた。」

    2006-09-21 13:47:00
  • 479:

    杏奈

    「俺、なんかよう分からんけどめっちゃ探してた。客減るとか金とか自分ではそうゆうことで必死になってると思ってた。でも…ちゃうかってん。いつも当たり前におったのに…ニコニコしとったのに…急におらんようになってもうて焦っててん。気付いたらあいつが俺の中で大きい存在になっとってん」

    2006-09-21 13:49:00
  • 480:

    杏奈

    人って本当に愚かなもの。失って初めて気付いたり、離れて初めて分かったり。すぐ目の前にあるものだからこそ一番見えなくて。

    いつもそばにいる人ほど大切さに気付けない。だっているのが“当たり前”になってるのだから。

    2006-09-21 13:50:00
  • 481:

    杏奈

    でも気付いた時には遅い時もある。間に合わない時もある。だからこそ自分をうらみたくなる。
    何で気付かんかったんやって。何で分からんかったんやって。後悔先に立たず。昔の人は何か意味を込めてことわざを作ったのだろうか。
    出会いと別れは背中合わせ。好きと嫌いも背中合わせ。昨日までそばにいた人がいなくなったり、好きでいてくれた人に嫌いになられたりもする。

    2006-09-21 13:51:00
  • 482:

    杏奈

    深い深い恋愛とゆう迷路に入りこんでしまった時、ゴールに相手がいるのといないのとでは全く違う。
    ゴールに大好きな人がいればどんなに難しい長い迷路でも、絶対に会えると分かってるなら急いでゴールを目指せるよね。
    でもゴールに誰もいなかったら?入り込んだ迷路の中を最後までゴールを目指して進める?

    2006-09-21 13:52:00
  • 483:

    杏奈

    ホスト陽介は迷路に入り込んでたのにスタートするのが遅かった。
    ゴールにその子がいた時にスタートしておけば、きっといい結末のゴールを迎えていたはずなのに。

    今は行き場のない迷路をぐるぐる回ってるだけ。ゴールが見付からずに迷ってる。
    そして、苦しんでる。だからいまだに新しい恋もできずに立ち止まったまま。

    2006-09-21 13:54:00
  • 484:

    杏奈

    「結局そのままなん?その子とは」

    「え?うん。けどそれから店のやつが男とおるの見たって言ってて。そっからは全然知らんかってんけど去年やから一年前ぐらいかな?偶然見てん。ベビーカー押してたわ。男と二人で。結婚したんやろうな」

    そう言うとホスト陽介は少し悔しそうな顔をした。

    2006-09-21 13:55:00
  • 485:

    杏奈

    「あいつ俺のこと好きちゃうかったんかなぁ…」

    弱気な声でそう言った。ホスト陽介は今でも気付いていなかった。彼女がなぜ自分の元からいなくなったのか。

    「好きやったに決まってるやん。好きで好きでどうしようもないくらい好きやってんで多分。だから離れてんやん。自分が崩れてしまうから。いつも笑ってたのも寂しさの裏返しやったんじゃないん?」

    2006-09-21 13:56:00
  • 486:

    杏奈

    その子はきっと離れることより好きでいることのほうが辛かったんじゃないかな…。
    自分がいくら想っいても変わらないままの恋。好きでいるために、会いたいために自分の体を盾に頑張ったり。色だと分かる営業の仕方や態度にも疲れてしまったのだと感じた。
    だって好きな人から離れてしまうのってほんまに辛いやん。それをしたぐらいやから。

    2006-09-21 13:57:00
  • 487:

    杏奈

    「俺が…幸せにしたかったわ。去年見た時な、あいつめっちゃ幸せそうな顔しててん。にこーっと笑ってめっちゃええ顔してた。あんなん見たら声かけれんかったわ…」

    「そっか。でもよかったやん幸せで。幸せでいてくれただけでよかったやん。だから陽介も新しい恋して幸せ見つけてみ。多分思ってるよ、幸せになってほしいってその子が一番。」

    2006-09-21 13:58:00
  • 488:

    杏奈

    「そやな。つーか俺なに喋ってんねん!みたいな。こんな話あんましたことないのに。杏奈も彼氏?元カレか知らんけど手に届くとこにおるなら気持ちちゃんと言うとけよ。俺みたいになんで(笑)なっ?」

    陽介はまた笑ってた。ほんまに不思議な子やなぁって思った。なんかあんなに悩んでたのにスーッと楽になってた。

    2006-09-21 13:59:00
  • 489:

    杏奈

    「なぁ、番号教えてや。別に営業なんかせんから。でもまた話聞いてほしいかも。杏奈の話も聞くし。休みの日飯でも行こや」

    そんなこんなで帰りぎわにメモリー交換をした。あんなに第一印象よくなかったのに、何故か“いいヤツ”と思うぐらいになっていた。
    チェックはちょうど6000円だったけど私に3000円だけちょーだいと言って残りはポケマネで出していた。つくづくおかしな子やなぁと思った。

    2006-09-21 14:00:00
  • 490:

    杏奈

    帰り道、ふと考えてた。
    私は何を強がって光輝にまで壁を作ってしまってたんやろうって。

    一番大事なものが一番遠くにいってしまう。あかん…このままじゃ。私は携帯を手にしてた。メモリー登録000はいつも光輝の指定番号だった。

    2006-09-21 14:03:00
  • 491:

    杏奈

    プップップッ…
    発信ボタンを押してた。プルルルル…受話器から聞こえる音を目を閉じて聞いてた。

    「ハイ」
    久しぶりに聞いた光輝の声やった。変わらないいつもの声、なぜか少しほっとした自分がおった。

    2006-09-21 14:04:00
  • 492:

    杏奈

    「ごめん…仕事中?」

    私は少し戸惑いながらもそう言った。

    「そうやけど。別に大丈夫やで。どうしたん?」

    2006-09-21 14:05:00
  • 493:

    杏奈

    「えっ…あ、ちょっと話したくなってん。っていうかちゃんと光輝と話したくて。ごめんなずっと電話でんかって」

    「そうなんや…話ってなんの話?杏奈お前勇二と付き合ってんねやろ?いまさら何の話があるん」

    …えっ?一瞬耳を疑った。勇二君と付き合ってる?

    2006-09-21 14:07:00
  • 494:

    杏奈

    「何のこと?意味わからんねんけど」

    「は?こっちが意味分からんし聞きたいわ」

    すぐに分かった。ルイの策略にはめられてるって。きっとルイは光輝にデマを話して光輝はそれを聞いたんやって。

    2006-09-21 14:08:00
  • 495:

    杏奈

    「ちょっ待ってよ。そんなんありえると思ってんの?ありえるわけないやん」

    私は光輝に言った。

    「えっ?違うんか?」

    2006-09-21 14:47:00
  • 496:

    杏奈

    「どーせルイにでも吹き込まれたんやろ?」
    「そーやけど…だってお前ずっと連絡とられへんし勇二も電話もしてこんかったから」

    やっぱりルイか…。光輝はアホや。何でルイの言葉を鵜呑みにできたんやろ。

    2006-09-21 14:48:00
  • 497:

    杏奈

    「杏奈が違うってゆっても信じられへん?」
    「いや…信じるけど。てかお前今どこ?」
    「ん?今は御堂筋の橋のとこやけど」
    「ちょっと待ってて!今から行くから!すぐ行くから待っててな」
    光輝はそう言って電話を切ってしまった…。

    2006-09-21 14:50:00
  • 498:

    杏奈

    私は朝の御堂筋で一人ぼんやりと川を眺めてた。
    「杏奈っ!!」
    光輝が走りながら私の名前を呼んだ。息切れしながら私の目の前に立った光輝は私を見ると何も言わずにそっと抱きしめてきた。

    「ちょっ…光輝!?」

    2006-09-21 14:51:00
  • 499:

    名無しさん

    もっと読みたい?

    2006-09-21 15:12:00
  • 500:

    杏奈

    行き交う人達の目線や朝っぱらからこんな場所で…って感じで車の中からジッと見る人もいた。
    「光輝?」
    「あ…ごめん。痛かった?ちゅーかお前ほんま…もう…俺よう分からんけど…やたら走ってたし(笑)もうなにがなにか分からんわ」

    私も同じだった。よく分からんけど言葉では表せないような感情で。

    2006-09-21 21:03:00
  • 501:

    杏奈

    「アホ…ほんまアホやわ。今日ルイと歩いてたやろ?見てんで…」
    私はもう自分の気持ちやどうしたいかってこと、包み隠さずに話そうと思った。好きやから…誰にも光輝を取られたくないから。

    「ごめん…な。お前の気持ち考えんと売上のことで頭いっぱいなってた。てかびっくりすんなよ?ルイ今な、キャバクラと風俗掛け持ちしてんねんで」

    2006-09-21 21:04:00
  • 502:

    杏奈

    「えっ…」
    私は何も言葉が出てこなかった。ルイが風俗に…?それって光輝のために?
    「あんた何も思わんかったん?それ聞いて」
    「うん、別に何も思わん。キャバクラも今月で辞めるみたいやしこれで杏奈も店で嫌な思いせんですむやろ?よかったやん」

    2006-09-21 21:05:00
  • 503:

    杏奈

    何でやろ?私…なんか分からんけどしっくりこんかった。
    ルイは光輝にとって本当にお客さんでしかない。でもルイは?そこまでして光輝のお店に通うなんて…そんなに好きなん?
    光輝はそれを分かってて、むしろ風俗に移るのを歓迎モード。何でやろ?
    不思議と光輝が鬼のように感じた。

    2006-09-21 21:06:00
  • 504:

    杏奈

    ルイのことは嫌いやけど、何かそこまでして必死になってるって知って、私は頭の中が痛くなった。
    私はいくら光輝が好きでも、きっと同じことはできひんから。それは人それぞれの感覚やねんけどね。
    ルイにされたことを考えると、ざまーみろって思ってもおかしくないはずやのに、私は何故か少し悲しかった。

    2006-09-21 21:07:00
  • 505:

    杏奈

    「なぁ、今日俺んち来てくれるやろ?もう店戻らんからこのまま一緒に帰ろ」
    光輝にそう言われ、私は真美に連絡をした。
    それから二人で二ヶ月ぶりの光輝の家に帰り、もう日曜日だったし私達は昼過ぎまで二人でゆっくりテレビを見ながら話していた。

    2006-09-21 21:08:00
  • 506:

    杏奈

    「風呂入ってくるわ」
    私がテレビを見ていると光輝がそう言ってお風呂場に入って行った。テーブルの上に無防備に置かれてあるケータイ…。
    私は手を伸ばした。

    2006-09-21 21:09:00
  • 507:

    杏奈

    ━ケータイチェック━
    私はこの時無意識に携帯に手を伸ばしてた。発着信履歴━Kとつけられている名前はお客さんのことで、相変わらずたくさんの番号から鳴っていた。
    ルイK。ルイからも着信があった。異常なくらいの数が…。

    2006-09-21 21:10:00
  • 508:

    杏奈

    ━メールチェック━
    ?ルイK
    今日も頑張ってくるね?。今日も仕事が終わったら会いに行っていい?。光ちゃん大好き?。杏奈と勇二めっちゃラブラブで店の中でもいちゃいちゃしてる?。お揃いの物買おうよ?。

    ルイのメールは予想通りの痛いものだった。

    2006-09-21 21:11:00
  • 509:

    杏奈

    でもそれだけじゃない。ルイ以上にすごいお客さんもいた。
    やよいK、さおりK。私はこの時初めて知った。光輝が色恋だけではなく本当に付き合ってる形の本カノ営業とゆうことをしていたことを。
    やよいとさおりとゆう二人は、ソープ嬢ど飛田で働いている女の子だった。

    2006-09-21 21:13:00
  • 510:

    杏奈

    光輝はNo.1。当然、アースさんが引退してからずっとNo.1をキープしていた。
    たくさんのお客さんがいるのは知っていたけど、偽物の恋愛の型にはめて彼女とゆう立場にさせてお店に通わせる…
    ホストなら当たり前のことなのかもしれない。だけど自分の彼氏がそういうことを平気でしていると知って私は少しショックだった。

    2006-09-21 21:14:00
  • 511:

    杏奈

    そして一人、また一人と仕事を変えていってるのか考えると嫌な気分になった。
    光輝にはそんな仕事の仕方をしてほしくなかった。
    光輝は…やっぱり少し変わってしまってた。色ホストと呼ばれるような営業方針で色カノがたくさんいて。

    2006-09-21 21:15:00
  • 512:

    杏奈

    みんな素直に光輝のことが好きなんだろうな…そう思うと切なかった。
    「あっ…お前携帯チェックかよ(笑)なんもやましいもんなかったやろ?」
    お風呂から上がってきた光輝に携帯を見ていたのをバッチリ見られてしまった。

    「あ、ごめん」

    2006-09-21 21:16:00
  • 513:

    杏奈

    アースさんは色恋的な営業をしなかった。どちらかと言えばバカ騒ぎしたり笑わせたり、そういう感じの営業で。
    それなのに売上は上げるし人気もあった。それにアースさんのお客さんは長いお客さんが多くて、本当に単純に楽しみに来る目的で来ていたみたいだし。
    『客は自分の鏡やから』って言ってた。要するに自分の接客で客が決まるって。

    2006-09-21 21:18:00
  • 514:

    杏奈

    私は光輝がアースさんを抜いてNo.1になった時、素直に喜んだしアースさんも喜んでくれてたけど、アースさんが引退してしまったことは残念に思う。
    アースさんの下であのまま働いていたら、光輝も少しは違っていただろうなって。
    No.1になったことで光輝は変わっていったし、何より上に立つ人がいなくなってしまったせいで光輝は間違った道に進んでしまったから。

    2006-09-21 21:19:00
  • 515:

    杏奈

    「えーやん、そんなんどっちでも。俺は俺やしアースさんはアースさんやし。ちゅーか杏奈もうすぐ誕生日やんな?何欲しい?バーキンでも何でもこいやで」

    光輝には伝わらない。ホストにとって水商売にとって人間にとって何が大切なのかってことが。
    色恋なんてなくたって、人間性を磨けば男としてじゃなく一人の人間として好きになってもらえるのに…

    2006-09-21 21:20:00
  • 516:

    杏奈

    「なんも欲しくない。そんなんやったらどっか一緒に行きたい。一泊でもいいから旅行行こうよ」

    約一ヶ月後の私の誕生日。付き合ってからは初めての日曜日の誕生日だった。

    「別にいいけど。じゃあどこ行くか決めとけよ」

    2006-09-21 21:25:00
  • 517:

    杏奈

    「うん!分かった!」

    嬉しかったなぁ…なんか久しぶりにどっか行けるってゆうのが。

    「なぁ杏奈ほんまに何もいらんのか?欲しいもんゆわんかったら俺勝手に買ってくるで。センス悪いとか後からゆうなよ(笑)」

    2006-09-21 21:27:00
  • 518:

    杏奈

    欲しいもの…
    欲しいもの…?
    考えても全く思い付かなかった。あえてゆうなら昔の…ね。
    「なぁ、欲しいってゆったら何でもいいん?無理なものじゃないから」
    私の欲しいもの。それは…

    2006-09-21 21:28:00
  • 519:

    杏奈

    「えーでえーで。何でもゆってみろや」
    光輝は少し半笑いで半分は何を言われるのかと顔が少し引きつっていた。
    「んーとな、昔の光輝が欲しい」
    「はっ!?」
    「だからー、昔の光輝やってば。なんかさ、よく分からんねんけど…杏奈は昔の光輝に戻ってほしいなぁと思って。めっちゃお客さん大事にしてたやん。どんな細いお客さんでもみんなに優しかったやろ?」

    2006-09-21 21:28:00
  • 520:

    杏奈

    「意味分からん」
    「今の光輝は前と違う。あんなに大事にしてたお客さんを大事にしてるように見えへんねん…なぁ、今からでも遅くないやん?色だけのNo.1ってホストとしてもカッコイイもんじゃないと思うよ。お願いやから女の子を風俗行かせたりするようなホストにはならんといて」

    2006-09-21 21:29:00
  • 521:

    杏奈

    「なぁ…俺はな、お前のことは大事にしてるやん。お前だけは大事にしていくで。だから誰がどうなろうと別にいいやん?」

    ━どうなろうと━?

    「じゃあ何?光輝は自分のお客さんはどうでもいいん?自分のために風俗とか本番屋まで行ってる子…そんな子らに対して何も思わんの?」

    2006-09-21 21:30:00
  • 522:

    杏奈

    「知らんやんそんなん。勝手に流れていくだけなんやから。俺が行けってゆうてるわけちゃうねんし」

    光輝…
    なぁどうしたん?
    あの時の光輝はどこに行ったん?一人になるのが怖かったんじゃなかったん?店やお客さんに必要とされてるって分かった時、嬉しかったんじゃないん…?

    2006-09-21 21:32:00
  • 523:

    杏奈

    そんな光輝ならみんな離れて行っちゃうで…今はよくても…気付いたらみんないなくなっちゃうで…。

    「なぁ、光輝はお父さんみたいになりたかったんじゃないの?憧れやったんやろ?周りから必要とされてるカッコイイお父さんが目標やったんじゃないん?」

    2006-09-21 21:33:00
  • 524:

    杏奈

    「だから俺は今必要とされてるやん周りにも客にもお前にも。親父みたいになれてるやんけ」

    「じゃあ光輝はもし自分の子供がいたらそんな仕事のやり方してるの自慢できるんや?子供は光輝を見てカッコイイと思うんかな?人を騙してる姿を見て、憧れたりすると思う?」

    私はこの話にはふれたくなかった。だけど光輝を変えられるのはお父さんしかいないって思ったから…。

    2006-09-21 21:34:00
  • 525:

    杏奈

    しばらく光輝は黙ってた。沈黙が続いた。

    「売上げ落ちるで?」
    「えっ?」
    光輝の突然の言葉に意味が分からなかった。

    2006-09-21 21:36:00
  • 526:

    杏奈

    「お前といいもん食いに行ったり好きなもん買ったれんようになるかもしれんで?」

    「うん……えっ?」

    「もうやめるわ。色営業。なんか分からんけど親父の顔が浮かんだ。俺まだまだあんなにすげー男までは程遠いけど…小さい頃に俺の見てきた背中はめっちゃ大きかったから。親父みたいに…親父を越えれるような男になるわ俺」

    2006-09-21 21:37:00
  • 527:

    杏奈

    光輝の言葉を聞いて、私は少し目の前がにじんだ気がした。
    やっぱり光輝にとって、お父さんの存在は大きかった。私が言ってもあかんかったのに…そう思うと少し光輝のお父さんにヤキモチやいたなぁ(笑)
    でもお父さんに感謝もした。ありがとうございましたって。力を貸してもらった気がしたから…。

    2006-09-21 21:38:00
  • 528:

    杏奈

    「なっ和歌山にしよっか。杏奈の誕生日の一泊旅行♪なっそーしよっ」

    少ししんみりした雰囲気になっていた光輝に私はそう言った。
    和歌山には光輝の生まれた町がある。施設やお父さんのお墓も。私は一度も行ったことがなかった。
    光輝の生まれ育った場所に。

    2006-09-21 21:38:00
  • 529:

    杏奈

    「何で和歌山やねん?もっとええとこでいいやん。和歌山なんか何もないで」
    光輝は笑ってた。

    「お墓参り行ってないやろ?ずっと。手合わせに行こうよ。光輝の生まれた町も見てみたいし」
    「マジでゆってるん?ほんまにたいしたもんないで?まぁ別に俺はいいけど。お前のこと親父に紹介しなあかんしな」

    2006-09-21 21:39:00
  • 530:

    杏奈

    光輝はそう言うと私の頭をくしゃくしゃっとしてきた。会いたかったな…私も。光輝のお父さんに会ってみたかった。
    光輝がこんなにも心から想ってる人ってどんな人だったんだろう。
    多分めちゃくちゃ素敵なお父さんやったんやろうなぁ…。

    2006-09-21 21:40:00
  • 531:

    杏奈

    「じゃあ和歌山で決定!ついでに温泉とかもありやんなぁ♪」

    私と光輝は日が暮れるまでそんな話をしながらずっと話し続けてた。気付けば二人してそのまま寝ちゃってたりして。
    目が覚めると部屋は真っ暗だったけど、光輝の腕の中だったから安心できた。久しぶりの光輝のあったかさが心地よかった。

    2006-09-21 21:41:00
  • 532:

    名無しさん

    あげ?

    2006-09-22 11:00:00
  • 533:

    名無しさん

    久々に見たらめっちゃ更新されてるし??しかも二人戻ってるし??ょかった?

    2006-09-23 02:54:00
  • 534:

    名無しさん

    書いて?

    2006-09-23 11:31:00
  • 535:

    杏奈

    先に起きた私は光輝の寝顔を見ながら思った。人は人で変わることができる。
    人をよく変えるのも悪く変えるのも人次第なんやろうなって。

    人を好きになって見えたものは、人の温かさ、人の醜さ、人の切なさ、人の…優しさ。

    2006-09-24 07:22:00
  • 536:

    杏奈

    光輝は私にいろんな想いを教えてくれた。
    好きになるって気持ちにはいろんなプラスαがあった。くだらない嫉妬もそう。自分だけのものにしたくて焦って必死になった。

    空回りしてる自分がカッコ悪くて、もういいやって逃げたくなった時もある。

    2006-09-24 07:25:00
  • 537:

    杏奈

    喧嘩して言い合って、売り言葉に買い言葉。後になって後悔したり。
    うまくいかない時は自分が自分でなくなってしまう位泣いたり落ち込んだりもした。
    でも…信じることを諦めた時、多分人は人でなくなってしまうから。私は何度も光輝を嫌いになりそうだった。信じられなくなった時もあった。
    でも、やっぱり好きやったんかな…結局いつも光輝から離れられへんかった。

    2006-09-24 07:27:00
  • 538:

    杏奈

    「おはよ…起きてたん?もうちょっと寝よや…」
    光輝は一瞬目を覚ますと私を見てまた寝てしまった。寝ぼけてるんやろうなぁって可愛く見えた。

    伸びかけのヒゲもまぬけに開いた口も変な寝ぐせのついた髪も…全然かっこよくない。
    でも、私にとってはそんな姿が1番落ち着く。着飾ってかっこつけてないそのまんまの光輝が好きやから。

    2006-09-24 07:28:00
  • 539:

    杏奈

    光輝と付き合ってから三年半がたとうとした頃、私はやっと光輝と向き合えた気がした。
    遠回りして、やっと辿り着いた。私達は気持ちを表したり伝えることが苦手やったんかもしれん。
    でもそれが逆によかった気もする。終わりよければ全てよしってわけでもないけど。

    2006-09-24 07:29:00
  • 540:

    杏奈

    私はそんなこと考えながら寝ていた光輝を起こさないように部屋を出て行った。もちろん、ちゃんと置き手紙は置いてね。
    光輝へ
    真美の家に帰ってくるね。服とか荷物もあるからさ。真美にはお世話になったし今日は真美に光輝のことも話してまた明日帰ってくるわ。
    杏奈

    2006-09-24 07:30:00
  • 541:

    杏奈

    それからマンションを出ようとした時、見覚えのあるカバンを持った人がマンションの前でうずくまっているのが見えた。
    なに?大丈夫なんこの人…体でもおかしいんかな?
    「大丈夫ですか?」
    私は心配になって聞いた。

    2006-09-24 07:30:00
  • 542:

    杏奈

    「大丈夫で…す」
    そう言って顔をあげた人。それはルイやった。お互いびっくりした顔でとりあえず驚いてた。
    「何してんの?」
    私はルイに聞いた。

    2006-09-24 07:31:00
  • 543:

    杏奈

    「あ…杏奈こそ…もしかして光ちゃんとこおったん?なぁそうなん?」
    今にも泣きそうな顔で私に聞き返してきた。
    「…」
    私は何も言えなかった。ルイのことは嫌いやったしヒドイこともされてきたけど、こんな泣きそうな顔してずっとここで待ってたんや…って思ったら。

    2006-09-24 07:32:00
  • 544:

    杏奈

    「お願い…光ちゃんルイにちょうだい…あんなにルイのこと考えてくれる人おらんねん…大事にするって…ゆっ…くれて…ん」
    泣き声で声がかきけされてた。聞ける願いなら聞いてあげれたかもしれん。
    でも私それだけはできひんから。分かってた。ルイを色で引いてたこと。ルイはお客さんでしかないこと。ルイは風俗まで…行ったこと。

    2006-09-24 07:33:00
  • 545:

    杏奈

    人を好きになると壊れてしまうこともある。嫉妬に狂って嘘をついたり嫌な女になってしまうこともある。ルイも…そんな普通の女の子の一人やったから。
    「ごめん。光輝を好きな気持ちは分かる。でもな、杏奈も好きやねん。光輝じゃないとあかん…渡すことはできひん。あのな、ルイ今風俗行ってるんやろ?」

    2006-09-24 07:35:00
  • 546:

    杏奈

    「えっ…」
    ルイの顔が変わった。
    「なぁ、やめてくれへん?風俗掛け持ちしてるのって光輝のためなんやろ?」

    「ちが…ルイが行きたくて行ってるだけやもん。光ちゃんのためなんかじゃないしルイもう店なんか行ってないもん」

    2006-09-24 07:36:00
  • 547:

    杏奈

    ルイは嘘をついた。私は分かってた。だって昨日お店入るとこ見てたもん。

    「ごめん昨日見てんやん。ルイが光輝の店のビル入るとこ。こんなこと言いたくないねんけど光輝はルイを色で引いてたと思う。そんなん考えたら分かるやろ?ずっとナンバーワンやったルイにやったら分かるやん?」

    2006-09-24 07:37:00
  • 548:

    杏奈

    「ルイプライドもちぃや。ナンバーワンやろ?杏奈…ルイのこと抜くために頑張ったり目指したりしててんで?」

    ルイは多分情緒不安定な子やったと思う。感情移入しやすい。仕事中は完璧といっていいほど究極のホステスやのに、仕事が終われば別人やった。
    精神的に疲れる分、精神的に癒されるホストにはまりやすかったんかな…

    2006-09-24 07:39:00
  • 549:

    杏奈

    「だって…」
    ルイは言葉が出てこなかった。ただ…泣いてた。

    「だってじゃないやん。もういいやん?前みたいに戻りいや。光輝も多分変わってしまうと思う。もう色恋やらんって言ってたから。だから光輝のために風俗行ってるなら早くやめて。自分のために行くのと人のために行くのじゃ意味が全然違うねんから」

    2006-09-24 07:40:00
  • 550:

    杏奈

    「杏奈はせこいわ…光ちゃんと出会うのがルイより早かっただけやん…それやのに何で杏奈は光ちゃんに大事にされ…るん」

    確かに出会うのが早かったのは私。出会いのが遅かったのはルイ。でも私は思う。
    そんな時間のズレも運命やねん。一分一秒で変わってしまうものやから。

    2006-09-24 07:41:00
  • 551:

    杏奈

    「ルイのこと嫌いやで。めっちゃむかつくししばいたろかと思ったこともある。ほんまに許されへんと思ったし人を憎んだことも初めてやった。でもな、もういい。なんか分かるからさ。同じ女やねんから…。気持ちめっちゃ分かるから。光輝は最低なホストやったで。ほんまに…。でも分かって?もう光輝も変わるから。だからルイも変わってよ。自分をなくさんといて」

    2006-09-24 07:42:00
  • 552:

    杏奈

    「ルイ嫌や…そんなん嫌…ごめん杏奈…ごめ…うっぅぅ…ヒドイこといっぱいしてごめん…ル…光ちゃんのこと好き…ったから…」

    「もういいから泣かんとき。なっ」

    「分かっててん…ずっと光ちゃんが違う人見てること…ルイを見てないこと…でも優しいことゆってくれたから…だから…」

    2006-09-24 07:44:00
  • 553:

    杏奈

    「分かったから。ルイもう泣かんといて」

    「ほんまは風俗なんて行きたくなか…た…知ら…人に触られるの怖かった…嫌やってん…だか…」

    ルイは泣き崩れた。私も胸が痛かった。こんなになるまで苦しかったんやろうな…ほんまはずっとルイ自身は分かってたんかもしれへん。

    2006-09-24 07:46:00
  • 554:

    杏奈

    自分のためじゃなく、人のためってことが。

    「ほら、立って」
    私はルイに手を差し延べた。ルイは私の手をとり立ち上がった。
    「なぁルイ?杏奈ナンバーワン目指すけどどうする?張り合う相手がおらんかったらやる気でえへんねんけど。しおりさんとか相手ならんし」

    ルイは笑った。初めて会った頃の顔。素直なルイの笑顔やった。

    2006-09-24 07:48:00
  • 555:

    杏奈

    「しゃーないなぁ…ルイが相手なったるわ。ナンバーワンは渡さんよ」
    ルイはそう言うと私に手を伸ばしてきた。私はルイに手を伸ばし、私達は握手をした。
    ルイへの宣戦布告の日から長かった女の戦いがやっとこの日に終わった。
    私達には終わりであり始まりでもある。光輝をめぐっての件は終わったけど、次はナンバーワンをかけて。

    2006-09-24 07:49:00
  • 556:

    杏奈

    傷付け合うことで分かることもあるんやなってルイとのことで分かった気がする。
    人は誰でも嫉妬するし自分のことが一番やと思う。自分を守るために必死でたまに周りが見えんくなったりするから。
    傷付け合って、泣いたり怒ったりしたけど、ルイも私も今となれば笑い話。

    2006-09-24 07:51:00
  • 557:

    杏奈

    「真美ただいまぁ」
    「おかえりぃー。杏奈帰ってくると思わんかったって。今日日曜やし。ところでどーやったん?彼氏と」

    真美は休みやとゆうのに遊びにも行かず部屋にいた。もしかして待っててくれた?とかちょっと思った。

    2006-09-24 07:52:00
  • 558:

    杏奈

    「仲直りしたで。なんとかもちこたえたわ(笑)」
    「よかったやん☆じゃあ家出ももう終わりやな…ちょっと寂しいけど」
    真美はほんまに寂しそうに見えた。そりゃ実質二ヶ月も一緒におったしね。

    「何ゆってんの!めっちゃ遊びに来るしぃ」

    2006-09-24 07:53:00
  • 559:

    杏奈

    「絶対やでーっ。でもやっぱ寂しなるわぁ…まぁでも杏奈がまた元気なるなら私はいいけどさ☆」

    「真美ありがとう…。杏奈めっちゃ思ったわ。友達って大事やなって。やっぱりさぁ結局ずっと切れずに続く関係は友達しかないもん。だからこれからも仲良くしてな☆」

    2006-09-24 07:55:00
  • 560:

    杏奈

    友達って…離れていても想い合うことのできるもの。何かあれば助けてくれる。あほなことで笑い合える。一緒にグチこぼし合える。泣き顔だって見せ合える。

    喧嘩して嫌なところ見ても言い争っても…友達だから仲直りできる。

    2006-09-24 07:56:00
  • 561:

    杏奈

    「なぁもう今日光輝君とこに帰るん?」
    「うーん明日にするつもりやで。今日は真美とゆっくり話そうかと思ったから。これからは光輝との時間もまた増えるやろうからさ。でもたまには遊ぼな☆」

    「うん。ほんじゃあ今日は鍋でもしながら飲もか」

    2006-09-24 08:00:00
  • 562:

    杏奈

    私と真美はそのまま家で鍋をしながら朝まで語り明かした。光輝は置き手紙を見て気を使ってか、メールを一回入れてきただけだった。
    真美が寝てしまい結局私は朝、真美の家を出て光輝の待つマンションへと帰った。

    2006-09-24 08:01:00
  • 563:

    杏奈

    ━ガチャ━
    部屋に入ると朝っぱらから大きなテレビの音量が聞こえてきた。
    「ただいまぁー」
    「おかえりぃ」
    光輝の返事が可愛く聞こえた。しかも見てたのはわけの分からんアニメのテレビ。こういうとこが母性本能ってやつくすぐられたりする。

    2006-09-24 08:04:00
  • 564:

    杏奈

    それからは仕事の時間まで一緒に食事作ったりゲームしたり。布団たたいてもらったり洗濯したり。
    なんやろうなぁ…そうやって何気ない時間を共有できる相手がいるってことは幸せだなぁって思った。
    毎日が同じようで毎日は全く違う。そんな日々の中ではずっと何気ない幸せが溢れてた。一日一日が大切で思い出で。

    2006-09-24 08:11:00
  • 565:

    杏奈

    それからまた二人での生活が始まった。小さな喧嘩もあったりしたけど、光輝は変わっていったから…。

    前みたいによく笑うようになったしお客さんも大事にするようになった。
    色恋じゃなく中身のある楽しい接客をするためにお笑い系のビデオやテレビ見たり本を読んだりして。

    2006-09-24 08:12:00
  • 566:

    杏奈

    一度はそれてしまった道、曲がってしまった心が元に戻っていった。
    まっすぐな…光輝に。
    確かに売り上げは落ちた。色だけで引いてたお客さんは切れたりもした。でも、光輝は楽しそうやった。
    今日はこんなことがあった、○○ちゃんって子がこんなんでなぁ、って話してた。

    2006-09-24 08:14:00
  • 567:

    杏奈

    自分が変われば相手も変わる。相手が変われば自分も変わる。
    人って人で変わる。ほんまにそう思った。光輝が変わればお客さんも変わった人がおったし。

    2006-09-24 08:43:00
  • 568:

    杏奈

    「おーい用意できたんか?早くしろよー」

    「もうできるから待ってよもうすぐやから」

    部屋の中でバタバタ用意しながら動く私。誕生日を兼ねて一泊で和歌山に行くことになってた。

    2006-09-24 08:47:00
  • 569:

    杏奈

    仕事が終わった日曜の朝から二人とも寝ないで車でのんびりと出発した。

    「なぁどれくらいで着くん?遠い?」
    「そんなことないで。まぁ近いっちゃあ近いし。てか杏奈お前絶対寝んなよ」

    2006-09-24 08:48:00
  • 570:

    杏奈

    「寝えへんわっ」
    私達はそんな会話をしながら阪和道を走ってた。天気も絶好によくてまぶしいぐらいだった。
    大阪から離れていくうちにやっぱり少しずつ変わっていく景色。二人でどこかに出掛けることも久しぶりやったし、私はなんとなーく嬉しくてはしゃいでた。。

    2006-09-24 08:50:00
  • 571:

    杏奈

    光輝の隣にいることが幸せやなぁって思った。
    ほんまに色々あったってゆうか今までありすぎた。めちゃくちゃ疲れた。でも思ったよ…
    いっぱい嫌な想いや辛い想いしたからこそ、幸せを感じる気持ちが大きくなったなぁって。

    2006-09-24 08:51:00
  • 572:

    杏奈

    「おい!もうすぐ昔住んでた家見えるで」
    光輝は少し嬉しそうやった。それからしばらく進むと車の左側に周りの家の何倍もの大きさのめちゃくちゃ大きい家が見えた。
    ここ?まさか…

    「そこやで。俺が昔住んでたとこ。こうやって見たらやっぱすげーよな」

    2006-09-24 08:52:00
  • 573:

    杏奈

    「えっ?マジで?」

    ありえへん…敷地面積軽く私んちの5倍はあるやん…庭なんかめっちゃ広いし。家の前に着くと私達は近くに車を止めておりた。

    歩いて玄関の前まで行くと、表札には倉田と書かれてあった。今は全く知らない人がこの家の持ち主。光輝の幼い頃のお父さんとの思い出がいっぱい詰まった家やのにな…

    2006-09-24 08:53:00
  • 574:

    杏奈

    「ばり懐かしいわ…なんかあんま記憶ちょっとしかないけど。こんな広い家で親父とおかんと三人で住んでたって考えるとあほやんな。ムダに広いだけやし」

    光輝は笑ってた。でもやっぱり笑ってる横顔は少し淋しげに見えた。幸せな幼少期を過ごしたこの家に、大好きだったお父さんは…もういない。

    2006-09-24 08:54:00
  • 575:

    杏奈

    私は黙って光輝の手を握った。光輝は少しびっくりしてた。

    「なっ何やねん…お前どうしてん急に」

    「ん?いいやん。光輝には杏奈がおるから。これからもずっとそばにおる。絶対離れたりせえへんから。もう一人じゃないねんで」

    2006-09-24 08:55:00
  • 576:

    杏奈

    「うん…」

    光輝の返事はそれだけやった。たった二言の短い返事。でも握ってた手を強く握り返してくれた。
    私それだけで光輝の気持ちが全部伝わってきた気がする。
    大切なことは分かりあえること。何も言わんでも分かってあげれたらいいなって思った。

    2006-09-24 08:55:00
  • 577:

    杏奈

    「俺さぁ、将来ホスト引退したら自分で会社おこそうかと思ってんねん」

    初めて光輝の口から出た『将来』って言葉やった。

    「そうなん?」

    2006-09-24 08:58:00
  • 578:

    杏奈

    「ずっと金も貯めてきたやん?それに一生ホストは無理やん年齢的にも生活的にも。だから飲食店でもいいし広告代理店とかな、建築関係でも服飾関係でも。とりあえず何でもいいからいつかやる。だからずっと俺とおってな。俺はいつかこんなでっかい家をお前のために建てたるから」

    光輝が真剣にこんなこと言ってくれたのは初めてやったから、私あほみたいに泣いてた。

    2006-09-24 08:59:00
  • 579:

    杏奈

    でっかい家を建てたるって言われたことや、光輝が自分で将来設計をたててたことが嬉しかったわけじゃない。
    ただ単純に『俺とおってな』って言葉が嬉しかった。長く付き合ってきてるのに、当たり前なことを改めて言われたことがなんかめっちゃ心ん中に響いた。

    2006-09-24 09:00:00
  • 580:

    杏奈

    「泣くなやぁもう。お前ほんま泣き虫か(笑)ほらそんなんしとったら置いて帰んで」
    光輝は私の手を握ったまま車の方へと歩いた。
    私がいつも見てきた光輝の背中。色んなことを乗り越えてきた辛さや涙が、光輝をたくましくしたんかな。光輝の1番の強さは優しさやと思うから。

    2006-09-24 09:01:00
  • 581:

    杏奈

    車に乗り込んだ私に、光輝は『あほぉ…泣き虫』って一言ゆうと車を発進させた。
    「次墓参りやからな」
    そう言いながら意味の分からん作詞作曲自分やん!って感じの歌を気分よさ気に歌ってた。
    あほはどっちよ(笑)って思ってたけど黙っておいた。

    2006-09-24 09:03:00
  • 582:

    杏奈

    「いこか」
    水かけの用意と用意しておいたお線香とお花を持って私達は歩いた。
    一際立派なお墓には菅原家之墓と書かれてあった。光輝のお父さんの眠ってるお墓や…。
    でも?まだついたままの線香と新しいお花が献花されてあった。
    「あれ?誰が持ってきたんやろな?親父の兄貴のおじさんかな」

    2006-09-24 09:05:00
  • 583:

    杏奈

    とりあえず私達も花を飾ってお墓回りを掃除した。それから二人で線香をあげて静かに手を合わせた。

    お父さん聞こえてますか?光輝はこんなに大きく立派になってます。安心して下さい。私が一生光輝のこと、何があっても支えていきます。お父さんができなかったたくさんのこと…光輝にしていきますから。
    だから、見守っていて下さいね。

    2006-09-24 09:06:00
  • 584:

    杏奈

    その時、全くなかった風が一瞬だけ強く吹いて私の髪の毛がなびいた。
    もしかして聞いてくれてたんかな…なんとなくやけど返事をしてくれたようなそんな気がした。
    隣にいる光輝も目を開けると私をみてにこっと笑ってた。

    2006-09-24 09:09:00
  • 585:

    杏奈

    「親父聞こえるかー?俺の彼女連れてきたで。べっぴんやろ…今日も杏奈に言われて来たようなもんやねん。めっちゃしっかりしてる子やで。だから俺、多分こいつと結婚する。その時はまた報告しに来るから。待っててくれな」

    光輝はお墓を見ながら話してた。その顔は、なんやろ…なんかほんまにお父さんに話してるみたいに見えた。

    2006-09-24 09:10:00
  • 586:

    杏奈

    その時少し離れた場所からもう一人その姿を見ていた人を見つけた。短い髪の女の人。
    「なぁ光輝、知り合い?めっちゃ見てるけど」

    私は光輝に言った。すると一瞬で光輝の顔つきが急に変わった。

    2006-09-24 09:11:00
  • 587:

    杏奈

    「帰んぞ」
    そう言ってスタスタと反対の方向へと歩いていく。
    「待ってよ誰なん?」

    私は光輝を追いかけた。光輝はスッと立ち止まって背中を向けたまま言った。
    「おかんや…」

    2006-09-24 09:14:00
  • 588:

    杏奈

    おか…ん?え?お母さん?ってことは…さっきの線香とお花ってもしかして光輝のお母さんが供えたものなんちゃうん?

    「なんも話さんくていいん?お墓参り来てたんじゃないん?お母さんも」

    光輝は黙ってた。多分信じられへんかったんやと思う。お父さんを捨てたお母さんが墓参りに来たってことが。

    2006-09-24 09:14:00
  • 589:

    杏奈

    「光輝が話したくないなら何も言わん。帰りたいならもう帰ろう。でもお母さんってわざわざ富山から和歌山来たんじゃないん?」

    光輝が以前いなくなった時、富山に行ってたことは知っていた。お母さんに十何年ぶりかに会ったことも。

    2006-09-24 09:16:00
  • 590:

    杏奈

    でも深くは聞かなかったし光輝も話さなかった。ただもう会わないってことだけ…言ってた。
    私は黙ったままの光輝を置いてお墓までの階段を走って戻った。
    見えてくる墓場。髪の短い女の人は目をつむって光輝のお父さんのお墓の前で手を合わせていた。

    2006-09-24 09:17:00
  • 591:

    杏奈

    深々と頭を下げる光輝のお母さんはとてもきゃしゃで、か弱そうに見えた。
    「はい…あの、光輝と話さなくていいんですか?差し出がましいとは思うけど…やっぱりちゃんと話すべきだと思うんですよ。過去に何があったのかは分かってます、でも親子ですよね?それは変わらないものじゃないんですか?」

    2006-09-24 09:22:00
  • 592:

    杏奈

    「ごめんなさい…」
    ただそう言って頭を下げたままだった。でもなんとなくやけど分かる。きっとこの人の良心が苦しんでるって。
    過去のことは許されることじゃない。でも…多分時間がこの人の心を変えたんや。後悔してる…何か伝えたいことや思ったことがあったからここに来てるって思った。

    2006-09-24 09:23:00
  • 593:

    杏奈

    その時後ろから光輝が走ってきた。
    「勝手なことすんなって。喋んなこんなやつと」

    「いいん?じゃあこのまま一生こうやって怨んでいくつもり?裏切られた人を許すことはしんどいことやで。でも人を憎んで生きていく方がもっとしんどいねん。光輝の中に残ってる殻をキレイにせんかったらずっと自分の過去に背を向けることになんねんで?」

    2006-09-24 09:25:00
  • 594:

    杏奈

    光輝はしばらく黙ったあと静かにお母さんに向けて話し始めた。
    「何しにきたん?わざわざこんなとこまで」

    「あ…ごめんね…三年前から毎月来てたから…もう帰るから…ごめん」
    お母さんは小さな声でそう言った。

    2006-09-24 09:27:00
  • 595:

    杏奈

    「あーー!もーいらいらすんねん!何やねん!何がしたいねん!」

    「ごめ…ただ…謝りたくて…。お父さんを一人にしてしまったこと…後悔してる。許してもらえるわけないけど…一人で苦しんで死んでいったこと思うと…辛く…」

    最後のほうの言葉は聞き取れなかった。涙で枯れてしまってた。

    2006-09-24 09:29:00
  • 596:

    杏奈

    「俺だって辛いわ。もうちょっと大きかったら助けてやれたかもしれんのに足手まといなことばっかして…ちゅーか後悔するなら初めっからすんなや。親父の気持ち…もっと考えたってほしかったわ。もういいけど。過ぎたことは何ゆうても戻らんねんから。でも償いの気持ちあるならこれからも来たってくれよ。こんな山奥で一人かわいそうやから」

    2006-09-24 09:30:00
  • 597:

    杏奈

    「光輝…ごめ…ありが…う…ほ…まに…」

    お母さんは声が震えてた。光輝…あんたは偉い。自分自身に厳しいあんたが初めて自分の殻を破った。
    心の奥底にあった闇も、やっとこれでもうなくなったやんな…。
    「これ、俺の名刺やから。また大阪来たら連絡して。杏奈行こ」

    2006-09-24 09:31:00
  • 598:

    杏奈

    光輝はそう言うとまた一人で歩いて行った。
    私はお母さんにペコッとお辞儀をして光輝の後を追いかけようとした。その時、「あのっ…」とお母さんに呼び止められた。

    「杏奈さんでしたっけ?」「あ、はい」
    「ありがとうございました。光輝…変わりましたね。前に富山に来た時はあんなに穏やかな顔してなかった。変わったのは多分杏奈さんのおかげです…。光輝を支えてくれてありがとう。これからも仲良く頑張ってね」

    2006-09-24 09:33:00
  • 599:

    杏奈

    「はいっ。お母さんも。また大阪に来た時は光輝に連絡してあげて下さい。少しずつかもしれないけど親子に戻れると思うんで。じゃあ行きますね」

    私はそう言って光輝のもとへ走って追い付いた。

    2006-09-24 09:35:00
  • 600:

    杏奈

    「ごめんな」
    私が言うと光輝は笑いながら「おせっかいやなぁ」って言ってきた。
    「ごめん…」

    「でも…ありがとう」

    2006-09-24 09:36:00
  • 601:

    杏奈

    「えっ?」

    「なんもないわ。なぁてゆうかどこ行く?温泉でもいこか。勝浦の方とか」

    光輝はありがとうが照れくさそうやった。でも、なんか私自身もスッキリした気がした。光輝も…よかったやんな?

    2006-09-24 09:42:00
  • 602:

    杏奈

    結局私達は温泉旅館に泊まることになって、ついてそっこー温泉に入った。
    光輝の頼みで家族風呂用の個室露天風呂を貸りることができて、私達は二人でゆっくり話しながらつかってた。
    「いつかここに子供とか連れてきたいよなぁ。家族風呂やったら多い方がいいしなぁ…俺一人っ子嫌やったもん」
    そんな話し声が心地よかった。

    2006-09-24 09:43:00
  • 603:

    杏奈

    それから部屋に戻ってゆっくりしてると食事が運ばれてきた。
    海の近くだけあって魚料理メインやったけど、めちゃくちゃおいしかった。
    光輝もずっとニコニコしてたし私も楽しかった。和歌山まで来てよかったなぁって今日一日を振り返って思った。

    2006-09-24 09:44:00
  • 604:

    杏奈

    でも寝ないまま来ていたせいで私達は夜8時過ぎにはもう眠くて、すぐに布団をしいてもらい寝ることにした。
    二組敷いてくれた布団。でも寝る時は一緒に一つの布団で寝た。
    多分布団に入ってすぐに寝てたねぇ二人とも。

    2006-09-24 09:46:00
  • 605:

    杏奈

    次の日起きてたのは朝の何時頃やったか覚えてないけどまだ外は薄暗かった。
    あぁ…めっちゃ寝たしぃ…と思って目をこすった時、私はあることに気がついた。
    つけてるはずのない指輪が左手の薬指にはまっていた。何コレ?てかめっちゃ綺麗やし…
    薄暗い部屋でもキラキラしてるのが分かった。

    2006-09-24 09:47:00
  • 606:

    杏奈

    電気をつけてみるとやっぱり私の薬指には指輪が光ってた。隣では光輝が爆睡。枕元には小さな紙袋が置いてあった。
    紙袋の中には指輪の箱やケースが入ってて、カードも一緒に入ってた。バースデーカード。初めてもらった光輝からのカードやった。

    2006-09-24 09:50:00
  • 607:

    杏奈

    杏奈へ
    誕生日おめでとう。お前は俺にとって、ほんまに大事やなって今さらながらよく分かってん。俺がしんどい時は何もゆわんと笑っててくれてたよな。ひどいことしても杏奈はずっとそばにおってくれた。
    俺を変えてくれたのも幸せな気持ちを思い出さしてくれたんもお前やで。なんかうまくゆわれへんけどお前は俺の宝物や。泣かしてきた分、絶対幸せにしたるからな。
    光輝

    2006-09-24 09:51:00
  • 608:

    杏奈

    泣いたなぁ…本当に。光輝って絶対こうゆうことせえへん子やったから。
    手紙なんてもらったこともなかったし、もらえることなんてないと思ってた。
    なんやろ…今までの全てのことが一瞬にしていい思い出に変わった。
    何もかもがこの瞬間のためのもんやったんかなぁって。

    2006-09-24 09:52:00
  • 609:

    杏奈

    私は寝てる光輝に抱きついてた。私が幸せにしたるわ!って思った。
    「杏奈…もうちょっと寝かして…」
    光輝は寝ぼけてそう言った。子供みたいな寝顔、私はこの寝顔を一生見てたい。何があっても、ずっとそばにおろう。

    2006-09-24 09:53:00
  • 610:

    杏奈

    今までだってそうやった。何があっても信じてやってきたんやもん。
    いろんな壁を乗り越えてこれたんやから。これからだって…きっと大丈夫。
    できればもう何も起こらんほうがいいけど。
    人を信じることは自分を信じることと同じ。信じるものは救われる。

    2006-09-24 09:54:00
  • 611:

    杏奈

    「杏奈起きとったん?」
    光輝は一時間後やっと目を覚ました。
    「うん。あ…光輝、これありがとう」
    私が指輪を見せると光輝は照れながら黙ってうなずいた。どんなこと考えながらはめてくれたんやろ?
    私は朝からめちゃくちゃきげんがよかった。

    2006-09-24 09:55:00
  • 612:

    杏奈

    それから朝ごはんを済まし、私達はマリーナシティへ向かった。
    二人でゆったりとした時間を過ごしながら、何も気にせずに手をつないだり。そんな何でもないようなことがすごく嬉しくて幸せやった。
    光輝を好きになってよかった。好きでいてよかったなって。

    2006-09-24 09:56:00
  • 613:

    杏奈

    大阪に戻ってからはいつもの私達に戻った。光輝はホスト、私はキャバ嬢。
    仕事の日々がまた始まった。でも毎日が楽しかった。幸せな時って何をしてても楽しいから。
    単純な話、周りが見えてないだけなんやけどね。私も夜の仕事をして変わったところがある。

    2006-09-24 09:57:00
  • 614:

    杏奈

    それも水商売の変貌とゆうのかはわからない。
    でも、私の場合光輝のことを少しでも分かりたくて始めた仕事やった。そんな単純なきっかけからたくさんの人との出会いや出来事が私を変えてくれた。
    人の痛みも分かるようになった。人の笑顔が好きになった。人の優しさが嬉しかった。

    2006-09-24 09:58:00
  • 615:

    杏奈

    光輝やアースさん。勇二君やルイ。真美やたまたま出会った洋介。光輝や私の両親。みんなが教えてくれた。
    人は人がいなかったら生きていかれへんこと。人は人が好きなこと。
    苦しい時や辛い時、やっぱり人は人が必要やから。一人じゃ生きていかれへん。絶対誰だって…一人は嫌なはずやから。

    2006-09-24 09:59:00
  • 616:

    杏奈

    大切やと思える人に出会えることが幸せなんやと思った。そう思える人が多ければ多いほど幸せなんやろなって。
    好きな人や家族や友達。そんな大切な人が自分を必要としてくれた時、私は何があっても力になろうって思う。
    私が辛い時そばで元気づけてくれたり、私が幸せな時は一緒に笑ってくれたり。そんな人達が私にとっての全て。

    2006-09-24 10:01:00
  • 617:

    杏奈

    光輝とはそれからもずっと一緒にいます。気付けばもう五年もたってしまったけど。喧嘩もするしたまに泣かされる時もある。
    でも、私にはやっぱり光輝しかおらんし光輝にも私しかおらんと思ってなんとか危機も乗り越えてきた。
    考えてみれば喧嘩するだけでも幸せやん。

    2006-09-24 10:03:00
  • 618:

    杏奈

    喧嘩して言いたいこと言い合える人がおるって幸せなことやと思う。
    たくさんの想いが自分を変えていくけど、そんな日々の中でも確かな「幸せ」を手にしてる気がする。


    今そばにいる人を大切にしていきたいね。

    2006-09-24 10:05:00
  • 619:

    杏奈

    好きやなぁって思う人には「好きや」って言えばいい。そばにいたいならいればいい。
    叶わない想いなんてない。何もせずに諦めるなんてあかんと思う。自分の気持ちを信じてたらいつか絶対に願いは叶うよ。
    私が光輝とちゃんと向き合えたみたいに。

    2006-09-24 10:07:00
  • 620:

    杏奈

    水商売の変貌は私自身を変えた。光輝も変わった。いいようにも悪いようにも変わるものやけど、この世界にいる人は心に何かを抱えてる人が多いと思う。
    偶然かもしれんけど、私が出会ってきた人もそうやった。後書きにはなるけど、ルイは子持ちのバツイチやってん。

    2006-09-24 10:12:00
  • 621:

    杏奈

    ルイは17の時に周りに大反対されながらもできちゃった結婚をしたけど18ですぐに離婚してたみたいで。
    元旦那は行方すら分からんくなってた。ルイは子供を産む時に親にも勘当されてたから結局ずっと一人で子供を育ててた。

    2006-09-24 10:13:00
  • 622:

    杏奈

    そんなルイは心のよりどころがなかったんやと思う。でもホストは…色ホストなら当たり前のように優しくて、ルイにとっては心を埋めてくれる存在やったんやと思った。
    だから何人かのホストと次々に付き合ってたけど、結局は光輝で最後やった。
    私がルイに言った言葉がルイにとっては今まで誰に言われた言葉より嬉しかったって言ってた。

    2006-09-24 10:15:00
  • 623:

    杏奈

    今考えればルイもルイで多分必死やったんやと思う。しんどいことやん小さい子供を女で一つで育てるって。
    そういう母親の強さと、頑張りすぎてた女の弱さがアンバランスになってたんやろうね…。
    ルイを憎んだこともあったけど、今は全然そんなことは思わん。むしろ尊敬するとこもある。

    2006-09-24 10:16:00
  • 624:

    杏奈

    最近になって「結婚」って言葉を光輝はよく言うようになったけど、そういう言葉は大事な時に取っててほしいなぁと思う。
    「いつ結婚する?」
    「結婚ってな…」
    こんなんゆわれたら考えてまうやん!みたいな。

    2006-09-24 10:17:00
  • 625:

    杏奈

    結婚式にいくことも増えてきた今日この頃やけどね。友達の結婚式にいくたびに幸せな姿を見てると、羨ましくも寂しい気持ちになったりする。
    真美もつい先日、結婚しました。相手は一回りも年上の人やった。最初はびっくりしたけど、幸せそうな顔をしながらのろけてるの見てたら年齢差なんてやっぱり関係ないんやろうなぁって思った。

    2006-09-24 10:18:00
  • 626:

    杏奈

    生きてるうちにたくさんの恋をするけど、一つの「愛」を見つけることができた時、世界に一つしかない大切な宝物になるんやろうね。

    2006-09-24 10:19:00
  • 627:

    杏奈

    「完」

    2006-09-24 10:22:00
  • 628:

    名無しさん

    おつかれさま??
    いい小説でした??

    2006-09-24 10:25:00
  • 629:

    名無しさん

    なぁ、更新する量が早すぎて≪50件≫押して見ても間に合わんねんけど、これってどしたらいいん??いちいち最初に戻って追いつかなあかんねんけど?アンカーできんよーなったし見にくい?みんなどーしてるん?

    2006-09-24 11:02:00
  • 630:

    名無しさん

    50押して下までいってまた前50ておすか30づつ戻ってるで?

    2006-09-24 14:58:00
  • 631:

    名無しさん

    杏奈サン良かったです???私もホストの彼氏が居るので頑張ろォ?と思いましたぁ`・?・)??(・?・*これからも光輝クンと仲良く頑張ッて下さいねェ?

    2006-09-24 16:51:00
  • 632:

    名無しさん

    とゆぅ?コトは二人はまだ結婚してないんやぁ??″でも秒読みみたいゃね?
    お幸せに?
    あと、完結おめでとうございます??

    2006-09-24 20:27:00
  • 633:

    名無しさん

    これって去年書いてたやつやで。だいぶん前に完結してたやつをコピペしただけやろ。

    2006-09-24 20:32:00
  • 634:

    名無しさん

    一番最初らへんにコピペって書いてあるやん。途中途中にも書いてあるし

    2006-09-24 20:41:00
  • 635:

    名無しさん

    2006-09-25 20:30:00
  • 636:

    名無しさん

    ?

    2006-11-14 05:57:00
  • 637:

    名無しさん

    2006-11-14 18:00:00
  • 638:

    名無しさん

    2006-11-14 18:01:00
  • 639:

    名無しさん

    ごめんなさい?
    >>240ー400

    2006-11-14 18:02:00
  • 640:

    名無しさん

    ??

    2006-11-15 21:59:00
  • 641:

    名無しさん

    ほんまいい話でした??だぁりんの寝てる隣で一気に読みました。
    最後の方の
    『そばにいる人を大切にしたいね』って言葉
    心に響いたぁ?コピペして下さった方ありがとうございました??それと杏奈サンお幸せに?

    2006-11-16 03:28:00
  • 642:

    名無しさん

    ??

    2006-11-16 19:58:00
  • 643:

    名無しさん

    good?コピペお疲れ様

    2006-12-04 18:34:00
  • 644:

    名無しさん

    2006-12-09 02:29:00
  • 645:

    名無しさん

    ?

    2006-12-11 21:56:00
  • 646:

    名無しさん

    ズッシリ響く話やった

    2006-12-12 10:28:00
  • 647:

    名無しさん

    ???

    2006-12-12 18:04:00
  • 648:

    名無しさん

    まぢよかった?

    2007-01-14 06:15:00
  • 649:

    名無しさん

    ??

    2007-01-14 14:17:00
  • 650:

    名無しさん

    ヤバい…今一気に読んで泣いてもた(;_;)杏奈さん彼氏と幸せにな☆

    2007-01-14 16:03:00
  • 651:

    名無しさん

    ?ホンマ

    2007-01-14 22:47:00
  • 652:

    名無しさん

    今一気に読んだわ??ほんま感動した?

    2007-01-14 23:51:00
  • 653:

    名無しさん

    ばりよかった

    2007-01-15 06:49:00
  • 654:

    名無しさん

    ?

    2007-01-15 19:27:00
  • 655:

    名無しさん

    本間にいい話し。
    俺もホストやけど本間に有頂天なりすぎてた。
    今いっきによんで改めてがんばろって思った。
    杏奈サン本間にいい小説ありがとぅ?

    2007-01-16 00:16:00
  • 656:

    名無しさん

    今全部読みました?
    めっちゃ感動しました??あんなサンみたいになりたい〜??尊敬するわァ?
    そばにいるひとを大切にしたぃなあって改めて思いました?
    コピペおつかれ様デス?

    2007-01-16 02:59:00
  • 657:

    名無しさん

    ???

    2007-01-16 10:59:00
  • 658:

    名無しさん

    1-200

    2007-01-16 12:35:00
  • 659:

    名無しさん

    ?

    2007-01-16 22:07:00
  • 660:

    名無しさん

    ?

    2007-01-17 00:03:00
  • 661:

    名無しさん

    久しぶりに感動して涙がでそうになりました???幸せになってなぁ??

    2007-01-17 08:05:00
  • 662:

    名無しさん

    ?

    2007-01-17 12:45:00
  • 663:

    名無しさん

    メッチャ良かった?
    ドラマにしてもいけそう?

    2007-01-22 13:56:00
  • 664:

    名無しさん

    よかったぁ

    2007-01-23 00:56:00
  • 665:

    名無しさん

    おもしろかったぁ

    2007-01-24 02:45:00
  • 666:

    名無しさん

    すごく心に響きました?見失ってたコト思い出したのでこれから変われる気がします?ヒトを信じるコトって難しいケド諦めたら終わりですょねooo痛い程伝わりました?

    2007-01-27 22:03:00
  • 667:

    名無しさん

    ?

    2007-02-13 00:05:00
  • 668:

    名無しさん

    むちゃくちゃよかったあ? はじめて読んだけど考えさせられる小説やった?
    付き合っていくのって
    楽しいばかりなわけないねんよな
    でもどっちか片方だけが我慢するのもあかんと思った

    ありがとう?

    2007-02-13 15:15:00
  • 669:

    名無しさん

    客は自分の鏡 ってそうやなぁって思った

    2007-02-14 00:21:00
  • 670:

    名無しさん

    鏡・・・

    2007-02-14 19:18:00
  • 671:

    名無しさん

    ??

    2007-02-15 15:23:00
  • 672:

    名無しさん

    人を信じる事は自分を信じる事と同じ。ってほんとに心に響きました??   私は自分に自信がなくて、自分を信じるなんてしたことがありませんでした。今からは、恐がらず、ゆっくり自分と向き合って、人を信じていきたいと思いました?                      コピーしてくださった方、本当にありがとうごさいました?

    2007-02-16 04:37:00
  • 673:

    名無しさん

    ????????

    2007-02-17 00:26:00
  • 674:

    名無しさん

    ??

    2007-02-17 15:22:00
  • 675:

    名無しさん

    ?

    2007-02-18 19:09:00
  • 676:

    名無しさん

    キューン??

    2007-02-19 12:05:00
  • 677:

    名無しさん

    やばい?今までで一番かも??杏奈さいこう

    2007-02-20 17:05:00
  • 678:

    名無しさん

    ??

    2007-02-22 19:03:00
  • 679:

    名無しさん

    2007-04-27 15:44:00
  • 680:

    名無しさん

    ?

    2007-05-27 05:40:00
  • 681:

    名無しさん

    ????????????????????

    2007-05-28 06:06:00
  • 682:

    名無しさん

    完結してるぉもしろい小説やよ

    2007-06-13 21:20:00
  • 683:

    名無しさん

    700

    2007-06-13 22:35:00
  • 684:

    名無しさん

    めっちゃ泣いてもぅた。。今かなり不安な状況やけどやっぱり好きやし頑張ろうって思えました。ありがとう

    2007-06-16 05:30:00
  • 685:

    名無しさん

    面白かった?
    コピペおつかれでした???

    2007-06-16 13:09:00
  • 686:

    名無しさん

    .

    2007-06-16 20:26:00
  • 687:

    名無しさん

    何回よんでもおもろい?

    2007-06-17 12:24:00
  • 688:

    名無しさん

    杏奈さんとルイさんのナンバー争いゎどぉなたのかな?

    2007-06-18 21:52:00
  • 689:

    名無しさん

    あげ

    2007-07-13 00:33:00
  • 690:

    名無しさん

    .

    2007-07-14 01:18:00
  • 691:

    名無しさん

    完結おめでとうございます??

    2007-07-14 05:32:00
  • 692:

    名無しさん

    age

    2007-07-14 16:29:00
  • 693:

    名無しさん

    あげ

    2007-07-14 23:53:00
  • 694:

    名無しさん

    LOVEMEMORYもってる方いませんか??

    2007-07-15 01:17:00
  • 695:

    名無しさん

    よかった?

    2007-08-26 14:40:00
  • 696:

    名無しさん

    2007-08-27 03:04:00
  • 697:

    名無しさん

    2007-08-27 03:09:00
  • 698:

    名無しさん

    .

    2007-08-27 20:23:00
  • 699:

    名無しさん

    よかったぁ?

    2008-01-29 20:50:00
  • 700:

    名無しさん

    良かった!感動!

    2008-01-30 16:47:00
  • 701:

    名無しさん

    ???

    2008-01-31 11:01:00
  • 702:

    名無しさん

    2008-01-31 11:07:00
  • 703:

    名無しさん

    ルイって子供いるのにキャバと風俗してホスト行きまくってたんやんな 育児放棄やん?子供可哀想やね

    2008-02-03 02:26:00
  • 704:

    名無しさん

    ?

    2008-05-17 06:47:00
  • 705:

    名無しさん

    ?

    2008-06-26 07:39:00
  • 706:

    名無しさん

    あげ

    2010-03-12 15:19:00
  • 707:

    名無しさん

    よかった?自分とかぶる、

    2010-03-14 00:18:00
  • 708:

    名無しさん

    ありがとう!感動しました!

    2010-03-16 22:25:00
  • 709:

    名無しさん

    うん???

    2010-04-14 08:33:00
  • 710:

    名無しさん

    アゲ

    2010-11-20 07:46:00
  • 711:

    名無しさん

    あたしもホスカノだった事あったけど一緒に住む?ばかりが恋愛?や結婚とは限らないと思うけどなぁ

    2010-11-21 00:48:00
  • 712:

    名無しさん

    上げ

    2012-09-03 07:33:00
  • 713:

    名無しさん

    全体的に良い話やったけど勇次と光輝が殴りあったくだりとか、店ででかい声で叫んで飛び出したとか、杏奈ちょっと痛いな。
    光輝はなかなか忍耐力が有る。
    まあ愛ゆえにかな。
    お幸せに。

    2012-09-07 07:12:00
  • 714:

    名無しさん

    おっと、もう一つ疑問。
    前半の野球のチケットが優待券でどうこうってエピソード、
    あれ2ちゃんねるでめっちゃ有名なコピペじゃないか?
    確かあれはカーチャンだったが。
    まあ泣ける話を盛り込むのはアリやけど。

    2012-09-07 07:16:00
  • 715:

    名無しさん

    良かった?
    途中泣きました?
    主さん
    彼氏さんと
    幸せになってください。

    2013-04-26 06:11:00
  • 716:

    名無しさん

    2013-04-29 22:39:00
  • 717:

    名無しさん

    その後が気になる(^^)

    2013-05-26 02:10:00
  • 718:

    名無しさん

    その後が気になる(^^)

    2013-05-26 02:44:00
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