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銀の鎖
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1:
美桜
初めて書く小説なので、下手ですが読んでもらえれば嬉しいです。更新も少しずつになりますが、気長におつきあい下さいm(__)m
2006-05-07 02:28:00 -
2:
美桜 ◆kJmhGaf60.
あなたと離れてからも私の胸元で輝く銀の鎖。4年前、あなたに付けられた銀の首輪。その首輪は、あなたと離れた現在でも、私の胸元で重く、あなたの存在を示している。 離れることを決めたのは私。そして、現在もその鎖を外すことが出来ないのも私。きっとこの鎖は一生私を縛り続ける。そう、あなたとの思い出に……
2006-05-07 02:29:00 -
3:
美桜 ◆kJmhGaf60.
side A〜美桜〜 a.m.6:00「もっし〜、ヒロぉ?美桜だけど。今までミナミで飲んでたんだけど、飲み足りなくってさぁ。今からでも騒げる店知らない?」「…美桜…今何時だと思ってるんだ?」「ん?今?朝の6時」「朝の6時、じゃねぇっつうの!!オレはさっき家に帰ってきて寝たばっかなんだよ!年中飲みっぱなしのアル中女と同じ時間で行動してねぇんだよ!!」「あ〜、ひっど〜い。美桜アル中なんかじゃないもん!美桜は遊ぶのが好きなだけ〜。ってか、まじでどっか知らない?」「知らない」「絶対嘘!ヒロ、ミナミの店詳しいじゃん。バーでもホストでも何でもいいから紹介してよ」「うるさい、切るぞ」「切ってもいいけど、教えてくれるまで電話かけ続けるよ?花綾まだ帰りたくないもん」「…5分後かけ直す」
2006-05-07 02:31:00 -
4:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜は早朝のミナミにいた。この街は夜中も眠らない。夢幻の不夜城。こんな朝方でも開いている店はある。美桜は眠ることが嫌いだった。起きていれば嫌な夢を見ることもない。お金と体が許す限り起きて遊んでいれば、やがて眠ってしまったことにも気づくことなく眠りがやってくる。そうやって眠ればいやな夢を見ることもない。だから美桜はお金が許す限り遊ぶ。
2006-05-07 02:33:00 -
5:
美桜 ◆kJmhGaf60.
独りになるのも嫌いだった。だからこの眠らない街が大好きだった。この街にいれば独りになることもない。例え一瞬独りになったとしても、すぐに「仲間」を見つけられる。そして疲れ果てて自分が眠りに落ちたことさえわからないまま眠る。それが花綾の日課だった。
2006-05-07 02:34:00 -
6:
美桜 ◆kJmhGaf60.
お金は腐るほどあった。実家が裕福だから。その上、美桜自身水商売で稼いでいた。生活に遣う以外のお金は全て飲み代に消えていた。それに例え生活費がなくなったところで、親や客からお小遣いを貰えばまた遊びに行ける。
2006-05-07 02:35:00 -
7:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜はどこの店に行ってもちやほやされた。たくさんお金を遣うから。今日もいつも通っている店でたくさんお金を遣っていた。いつもその店は、お金を遣えば遣うほど皆、美桜を楽しませてくれる。けれど、今日は何だかそこでは物足りなかった。だからヒロに電話をかけて知らない店を紹介してもらおうと思ったのだ。
2006-05-07 02:35:00 -
8:
美桜 ◆kJmhGaf60.
物足りない理由を美桜はわかっていた。確かにお金を遣えば遣うほど、みんな美桜を楽しませてくれる。けれど、美桜が楽しめば楽しむほど、美桜を楽しませてくれる人たちは美桜を『お金』と見る。
2006-05-07 02:36:00 -
9:
美桜 ◆kJmhGaf60.
独りになりたくないから、楽しんでいたいから、お金を遣う。なのにそうすればそうするほど、美桜は人として見られなくなっていく。だけど、お金を遣わなければ、独りになるし、楽しめない。思いと行動が矛盾しているのはわかっていた。でも結局美桜にはお金を遣う、という方法しか知らないし、わからない。だから、段々人として見られなくなっていくのをわかっていながらも、お金を遣って人の中にいるしかなかった。
2006-05-07 02:38:00 -
10:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんなことをぼんやり考えていると、ヒロから電話がかかってきた。「オレ。ツレに電話しといた。今から迎えに行けって言ってある」「サンキュウ〜!で、どこに迎えに来るの?美桜はどこにいればいい?」「周防町の角の喫茶店わかるだろ?そこの前で待ってろ」「OK!じゃあ今から向かうね。ヒロ、起こしてごめんね?愛してるよ〜ん」「愛想ふりまかなくていいから。美桜の我儘には慣れてるし」「ばれた?でもほんとサンキュウね」「ああ。あんまハメ外してオレに恥かかすなよ」「わぁかってるって!じゃね、オヤスミ」
2006-05-07 02:39:00 -
11:
美桜 ◆kJmhGaf60.
電話を切り、周防町にある喫茶店に向かう。いつもの道。見慣れた景色。そこを美桜は踊るような足取りで進む。この街にいる間だけ、美桜は美桜らしくいられる。だから楽しくて仕方がない。目的の場所につき辺りを見回してみたが、それらしき人間は見当たらない。でも、すぐに迎えは来るだろう。そう思い、美桜は閉店した喫茶店のシャッターの前に座り込んで、携帯を開いた。
2006-05-07 02:40:00 -
12:
美桜 ◆kJmhGaf60.
しばらくそうしていると、「あの、すいません」と声をかけられた。顔を上げると、そこにいたのは、黒髪ロン毛、スーツ姿の男がいた。ホストだ。男のわりに綺麗な顔をしている。(何だ、キャッチか)そう思い、美桜は意識を携帯へ戻した。美桜はロン毛の男が大嫌いだったから、キャッチをしてきた男と話す気にならなかった。
2006-05-07 02:40:00 -
13:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「すいません」しつこいなぁ、と思いつつ立ち上がって男を見返す。「何?私、人を待ってんだけど」「美桜ちゃん?ヒロくんの知り合いの。オレ、迎えに行くようにヒロくんから言われて来たんだけど」
2006-05-07 02:41:00 -
14:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ああ、なんだぁ。ごめんね、キャッチだと思ったから無視しようと思っちゃった」「そうなんだ。オレ、人違いしたかと思ったよ」「ほんとにごめんね。お迎えありがとう。お店近いの?」「うん。すぐそこだよ。あそこに見えているビルの三階」「そっか。じゃ、行こっかぁ」
2006-05-07 02:42:00 -
15:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜は一歩遅れて男に着いて行きながら、迎えに来た男がホストだったことに少し驚いていた。今までヒロに店を紹介してもらったことはあったが、ホストを紹介されたことはなかった。ヒロと美桜は兄妹のような付き合いをしているので、お互いのことはよく知っていた。美桜がなぜ夜遊びをするのか、なぜ眠りにつきたくないのか。だから、ヒロは今まで決して美桜にホストを紹介しなかった。ホストにとって女は『お金』だから…
2006-05-07 02:43:00 -
16:
美桜 ◆kJmhGaf60.
side B〜晧輝〜 (あー、だりぃ。つか、この女マジうざい)ボックス席で女の横に座りながら、晧輝は内心毒づく。横に座っている女は、晧輝に惚れて通ってきている水商売の女。水商売っていっても、小さなスナックで働く中年に近いホステスだ。
2006-05-07 02:45:00 -
17:
美桜 ◆kJmhGaf60.
派手にはしているが、元が良くないので、それが恐ろしく似合っていない。まるで、どこかの田舎の「飲み屋」にでもいそうな感じだ。少なくとも「ミナミのホステス」ではない。
2006-05-07 02:45:00 -
18:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ねぇ、晧輝ぃ。今日終わってからどこに行くぅ?」鼻にかけた甘い声で晧輝に話し掛けてくる。40歳近くにもなってこの女はそんな話し方をすれば男から可愛く見られるとでも思っているのだろうか。頭が痛くなる。
2006-05-07 02:46:00 -
19:
美桜 ◆kJmhGaf60.
晧輝は欝陶しいのを我慢しながら「あー、でも、オレ今日あんまり売り上げよくないから、終わってからオーナーに説教食らわされるかも」「そんなの、お客さんとアフターあるからって言えばいいじゃない」「そうもいかないんだよ、うちのオーナー。清香さんも知ってるだろ?うちのオーナーの口癖」
2006-05-07 02:47:00 -
20:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「『お客さんよりオレ優先!』だっけ?」「そうそう。あの人オレら従業員に異常なほど愛着持ってるからね」「でも、お客さん大事にしないと水商売ってうまくいかないでしょ?オーナーならそのへんはわかってるでしょ?」「普段ならわかってくれるんだけどな。今日オレの売り上げマジやばいから『お客さんとアフターです』って言っても絶対信じない。説教から逃げる手段だと思われるだけ」
2006-05-07 02:49:00 -
21:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ええ〜、せっかく久しぶりに晧輝とゆっくりしようと思って来たのにぃ〜」「ごめんって。また今度埋め合わせするから」「でもぉ…」「つぅかさ、ごめんっつってるじゃん。あんましつこいとオレ怒るよ?」「…ごめんなさい…」「清香さん、いい加減オレの性格わかれよ」
2006-05-07 02:50:00 -
22:
美桜 ◆kJmhGaf60.
夜の世界に入って四年。晧輝はずっといわゆる「オラ営」だった。偉そうな態度で接客し、我儘放題する。我儘が通らなければキレる。するとなぜか女はそんな晧輝にはまる。最初はなにがいいのかわからなかった。金を払って来ているのに、従業員のオレの機嫌を伺い、我儘を許し、あげくの果てにはキレられる。
2006-05-07 02:52:00 -
23:
美桜 ◆kJmhGaf60.
晧輝は自分が逆の立場だったら、絶対二度とその店には行かないだろう、と思いつつも今日まで四年間同じ営業スタイルを貫いてきた。正直、自分の何が女にウケるのかは今でもわからない。でも、それでも売り上げは確実に上がっているのでわからないままでも大した問題ではなかった。
2006-05-07 02:53:00 -
24:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…晧輝、電話鳴ってるよ」「ああ…先輩からだわ。ちょっと席外すな」そう言いながら席を立ち、スタッフルームに入る。「あ、ヒロだけど。お疲れさん。今大丈夫か?」「お疲れさまっす。大丈夫っすよ。むしろ助かりました。うざい客が来てるんで」
2006-05-07 02:53:00 -
25:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ははっ。おまえ相変わらずだなぁ。あんま客のことうざいとか言うなよ?オレら水商売、客あってのものなんだからな」「そりゃ、わかってますけどね。で、どうしたんですか?こんな時間に電話かけてくるなんて珍しい」 「ああ。オレの知り合いがな、今ミナミにいるらしくて。で、どっかいい店ないかって聞くから、おまえんとこどうかな、と思って。客来てるなら無理か?」
2006-05-07 02:55:00 -
26:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「いや、いいっすよ。でも、マジ珍しいっすね。ヒロくんがオレに客紹介するなんて」「客っつぅか、妹のようなもん。この時間に下手にふらふら歩かれて変なヤツに捕まっても困るしな」「ずいぶん可愛がってるんっすね。片思いでもしてるんですか?がらにもなく」「ばぁか。んなんじゃねぇよ。とにかく頼むわ」
2006-05-07 02:55:00 -
27:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「わかりました。で、どうすればいいんすか?」「迎えに行ってくれるか?どこまでなら出られる?」「今日はあんま店抜けられる状況じゃないんで…近くの喫茶店くらいまでなら行けますけど」「じゃあそこまで行くようにそいつに連絡しとくから。悪いな」
2006-05-07 02:56:00 -
28:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「わかりました。あ、その子の名前は?」「美桜。美しいに桜で『みお』」「美桜ちゃんね。OK。んじゃ、行ってきますね」「くれぐれも頼むな。…手、出すなよ、じゃあな」
2006-05-07 02:57:00 -
29:
美桜 ◆kJmhGaf60.
切れた電話を眺めながら(へぇ、マジ珍しい。ヒロくんがここまで女構うなんて)と思いつつ、スタッフルームを出る。ヒロは晧輝よりはマシだが、女の扱いはかなり適当だった。そのヒロに珍しく、頼む、と言わせるなんてどんな女だろう…そんなことを考えながら清香の席に戻る。
2006-05-07 02:58:00 -
30:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「清香さん、悪い。オレの先輩の紹介で新規の客来るから、迎えに行ってくる」「ええ〜、晧輝全然私の席にいないじゃない!!」「仕方ないだろ。世話になってる先輩の紹介だし、オレ今日まだあんま上げてないし」「そんなの、清香に関係ないじゃない!清香は晧輝がいてくれなきゃ嫌なの!!」「…うるさいって。とにかくオレ迎えに行ってくるから。そんなにオレに席に居てほしいなら、シャンパンの一本でもおろせよな」言い捨てて店を出た。
2006-05-07 02:59:00 -
31:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日はここまでですm(__)mお付き合いくださいましてありがとうございました。また明日更新します。
2006-05-07 03:00:00 -
32:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今から少しだけ更新していきます。
2006-05-07 16:41:00 -
33:
まだ夏になりきっていないのにa.m.6:00の空はすでに明るくなっていた。暗い店から出てきたので少しの明かりすら眩しく感じる。サングラス持ってくればよかったな、と思いながら待ち合わせの場所に向かう。店のあるビルから歩いてほんの少しの距離。すでに喫茶店は見えている。
2006-05-07 16:42:00 -
34:
そこに座り込んでいる女がいた。茶髪にヤンキー座り。(まさか、あれじゃないだろうな…)そう思いつつ女の側まで行き、携帯に集中している女に声をかける。
2006-05-07 16:43:00 -
35:
「あの、すいません」女が顔を上げた。その瞬間、晧輝は女の瞳に惹かれた。何もかもを見通せそうな大きな瞳。少し吊り上がっていて猫を思わせる。その瞳が一瞬晧輝を見た後、すぐに携帯へ顔を戻した。
2006-05-07 16:44:00 -
36:
(人違い?でも、こいつ以外にそれらしいの、いないし…)「すいません」もう一度声をかけた。すると女が立ち上がった。晧輝の顎くらいまでしかない身長。小さい女だ。しかし改めて顔を見るとやはりその瞳に惹かれる。
2006-05-07 16:45:00 -
37:
だが、周りにやはりそれらしき姿はない。仕方がなく、「美桜ちゃん?ヒロくんの知り合いの。オレ、迎えに行くようにヒロくんから言われて来たんだけど」そう言った途端、女の表情が激変した。
2006-05-07 16:47:00 -
38:
ふわっと微笑むと、「あぁ、なんだぁ。ごめんね、キャッチだと思ったから無視しようと思っちゃった」と笑顔のまま話す。「そうなんだ。オレ、人違いしたかと思ったよ」「ほんと、ごめんね。お迎えありがとう。お店近いの?」「うん。すぐそこだよ。そこに見えているビルの三階」「そっか。じゃ、行こっかぁ」そう言われて、女の一歩先を道案内するように歩きだした。
2006-05-07 16:48:00 -
39:
第一印象最悪。でも、話した途端、雰囲気が変わった。何より晧輝はその瞳に惹かれた。こんな瞳をした女に出逢ったのは初めてだった。晧輝は店に清香がいるのも忘れて、この後の時間を少し楽しみにしながら花綾を連れて店へと戻って行った。
2006-05-07 16:49:00 -
40:
side A〜美桜〜 ほんの少しの距離を美桜は男と話すことなく、店へ向かった。男はビルに着くとエレベーターで三階美桜を案内した。黒いドアに金の文字で書かれた店名。『いらっしゃいませ!!』何人もの男の声が一斉に美桜を迎えた。店は黒を基調としたコーディネートで、テーブルとカウンターは白。
2006-05-07 16:50:00 -
41:
「水割りでいい?」「ロック」「酒強いの?」「うん。そこら辺のつまんない男よりはよっぽどね」「ははっ。オレもつまんないって言われないように頑張るよ」「頑張ってね。美桜、お酒弱い男、嫌いだから」「わかったよ。じゃあ乾杯!」「乾杯」
2006-05-07 16:51:00 -
42:
乾杯をし、美桜は一気にグラスを空けた。喉が熱い。それから、カウンターを挟んで目の前にいる男をじっと見た。 さっき見たときに思ったが、やっぱり綺麗な顔をしている。切れ長の一重の目、鼻筋も通っている。薄い唇に、剃り跡のない綺麗な顔。(顔は好みなんだけどなあ)そう思っていると
2006-05-07 16:52:00 -
43:
「何?オレの顔、なんか変?」「ううん。綺麗な顔だなぁと思って」「綺麗!?それって誉め言葉?」「うん。美桜の中では最上級の誉め言葉」「そっか。ありがとう」「いいえ。ね、名前、なんていうの?」
2006-05-07 16:53:00 -
44:
「あ、オレの名前聞いてなかった?晧輝だよ」「こうき?どんな字?」「晧々と輝く、の晧と輝で晧輝」「へえ。名前も綺麗だね。本名?」「そ。オレの母親がつけた名前」「ふうん」「美桜って名前も可愛いよね。どっちが付けたの?」「さあ?きっとどっちかが適当につけただけだよ」「そんなことないだろ」「そんなことあるから、そう言ってるの」
2006-05-07 16:54:00 -
45:
そう言うと美桜はグラスを差し出す。「空いてるんだけど」「ああ、ごめんね」晧輝がグラスに焼酎を注ぐ。それを美桜はまた一気に飲み干した。
2006-05-07 16:55:00 -
46:
「ちょ、美桜ちゃん、いくら強いったって、そんなペースで飲んで大丈夫?」「大丈夫。今までお酒でつぶれたことないから。そんなこと気にしないでいいから早く注いで」晧輝が心配そうな顔をしながら焼酎を足す。
2006-05-07 16:56:00 -
47:
「ねえ、何か話してよ」「何か、って何?どんな話がいいの?」「楽しくなるような話」「美桜ちゃんはどんな話をすれば楽しめるの?」「そんなの、自分で考えれば?それが晧輝の仕事でしょ」美桜は冷たく言い放つ。そして同時に少しがっかりした。
2006-05-07 16:58:00 -
48:
美桜のことをよく知っているヒロが紹介してくれた店だから、と多少の期待をしていたのに、どうやら晧輝は最近多い『顔だけが取り柄』の男のようだ。
2006-05-07 16:59:00 -
49:
「美桜ちゃん、結構きついね。ヒロくんとはどういう知り合いの?」「ヒロのこと晧輝に話したって、美桜は楽しくないんだけど」「そう?でもオレは楽しいと思うよ」「何で?」「オレが見たことのないヒロくんの話聞けるかもしれないし。だから、オレは楽しい」
2006-05-07 17:00:00 -
50:
「はあ!?何で美桜が晧輝を楽しませなきゃいけないの!?」「だって美桜ちゃん、きっとオレが何言ったって笑ってくれないだろ?だから、せめてオレが楽しませてもらう」
2006-05-07 17:01:00 -
51:
美桜はドキッとした。ほんの5分ほど話しただけで、晧輝のことを『話の出来ない男』と判断していたので、すでに楽しむ気は失せていた。それを見透かされた?「あのさ、美桜ちゃん、オレだって遊びで水商売やってきたわけじゃないんだよ」晧輝が静かに話し出す。
2006-05-07 17:02:00 -
52:
「待ち合わせの場所で美桜ちゃんが笑顔を見せてくれたのは、ヒロくんの顔を立ててのお愛想。で、店入ってきてから美桜ちゃんはオレを品定めしていた。そしてどうやら期待外れだったらしい。それくらいはわかるよ」「…で、それが晧輝は面白くないってわけ?」「いや、別に。そんなのいつものことだし」
2006-05-07 17:03:00 -
53:
「…どういうこと?」「ホストに来る女なんて、皆、同じような反応しか見せないよ」淡々と晧輝は話し続ける。「勝手にオレに何かを求めてやって来る。で、勝手に期待したくせに、オレが思い通りに動かないと、泣いたり怒ったり」「……」
2006-05-07 17:04:00 -
54:
「客はホストに感情なんてないって、思ってんじゃない?客からすれば、オレ達ホストは人じゃないんだよ」「…人じゃなかったら、何?」「言葉を話し、人間の体温を持っていて、思い通りに動かすことの出来る自分好みの人形」そう言って晧輝は自嘲気味に笑った。
2006-05-07 17:05:00 -
56:
ラビ
読んでるよ??頑張ってね。一つ疑問なんだけど…花綾ってだれ?美桜じゃなくて?
2006-05-07 23:40:00 -
57:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ラビさんへ 読んで下さってありがとうございます。この小説は書き溜めていたものをコピペして掲載していってるんですよ。書き溜めているときの主人公の名前が『美桜』ではなく『花綾』だったので…全て直したつもりだったんですが抜けがあったようで…ややこしくて申し訳ないですm(__)mなので『花綾』=『美桜』です。
2006-05-08 00:52:00 -
58:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今からまた少しだけですが更新していきます。
2006-05-08 00:53:00 -
59:
side B〜晧輝〜 話をしながら晧輝は、今自分が言っていることは八つ当りだと自覚していた。美桜が晧輝に何かを期待をしていたように、晧輝も期待をしていたのだ。今まで出逢った女たちとは違うかも、と。ところが、店に入ってきてからの美桜は今まで店でたくさん知り合ってきた女たちと似たような反応を示していた。それが晧輝を落胆させたのだ。
2006-05-08 00:55:00 -
60:
それでつい、いつもなら口にしないようなことを言ってしまっていた。少し、しまった、と思いながら美桜の顔を見ると、美桜はなぜか微笑んでいた。それも愛想笑い、ではなく本物の笑顔だった。でもその笑顔は寂しそうな笑顔だった。
2006-05-08 00:56:00 -
61:
「何がおかしい?」そう晧輝が尋ねると、「ううん。おかしいんじゃなくて、何だかホッとして」「え?」「晧輝、美桜と似てるかも…美桜もね…」そう言うと美桜は少しずつ話し始めた。眠りたくないこと、独りになりたくないこと。でもそうならないための手段がわからず、お金を遣って遊び、結局は孤独になってしまう。
2006-05-08 00:58:00 -
62:
そういうことを寂しそうな笑顔のまま、美桜は話し続けていた。 「…だからね、さっき晧輝が言ったことに何だか凄く共感できた。同じような考えの人、見つけたと思ったら何だかホッとして」
2006-05-08 00:58:00 -
63:
「……そっか」「今までね、ヒロが美桜にホストを紹介したことなんてなかったの。だから、晧輝を紹介されたことが意外だったんだけど、何となくヒロが晧輝を紹介した意味がわかったよ」
2006-05-08 01:00:00 -
64:
「何で?」「わからない?じゃあ自分で考えてみて?」そう言うといたずらっぽい微笑みを浮かべ美桜はグラスを持ち上げた。「ね、晧輝。もう一回乾杯しよ?」「何に?」「今日、晧輝と美桜が出会えた記念に。で、私たちを引き合わせてくれたヒロに」
2006-05-08 01:01:00 -
65:
「……何だかよくわからないけど、美桜ちゃんがしたいなら」そう言い、晧輝もグラスを持ち上げる。「じゃあ、改めて乾杯!!」「乾杯」乾杯と同時に一気に飲み干し、二人はグラスを置いた。「さあ、今からじゃんじゃん飲むよぉ!人生楽しまなきゃ損だぁ!」と、いきなりテンションを上げた美桜。それを見て晧輝は思わず微笑んでいた。――その時、
2006-05-08 01:02:00 -
66:
『清香さんからドンペリいただきました!!ありあ〜っす!』思いがけない、清香の席からのシャンパンコール。忘れていた。席を離れるときに言った捨てゼリフ。きっとあまりに席に戻らない晧輝に、清香は我慢しきれなくなったのだろう。すると―――
2006-05-08 01:03:00 -
67:
『晧輝ーーーっ!!清香の席へ帰ってこーい!』とシャンパンコールをしていた従業員からマイクを奪い清香が大絶叫していた。(あの、バカ女!!)晧輝は清香を殴り飛ばしたい気分なのを抑えながら美桜の顔を見た。
2006-05-08 01:04:00 -
68:
「大変だね〜、晧輝。美桜も騒ぐけど、あれは恥ずかしい」苦笑いしながら晧輝に同情していた。「いいよ、行ってきたら?美桜は他の子と遊んでるから。楽しめる子、つけてね」「……悪い。すぐ戻ってくるから」そう言って晧輝は、軽く美桜のグラスに自分のグラスを合わせて『ごちそうさま』をし、清香のテーブルへと歩いていった。
2006-05-08 01:06:00 -
69:
side A〜美桜〜 皓輝と初めて会った日から一週間が経っていた。あの日皓輝は結局美桜の席に戻ってくることはなかった。シャンパンコールで戻っていった席で立て続けにドンペリが5本もおり、皓輝はその5本をほとんど一人で空け、そのまま潰れてしまった。だからあの日皓輝と話したのは結局30分ほどだった。
2006-05-08 01:08:00 -
70:
30分。たったそれだけの時間しか過ごしていないのに、あれ以来美桜の頭から皓輝のことが離れなかった。(皓輝、元気してるかなぁ…。電話番号すら聞く暇も無かったし、ヒロに聞くのもなぁ…)
2006-05-08 01:09:00 -
71:
今日は土曜で美桜の店は休み。どこかへ出かけようかと思いながらも皓輝のことをぼんやりと考えていた。ふと気づくと鳴り響く携帯の着信音。知らない番号だ。(誰だろう?)
2006-05-08 01:10:00 -
72:
「もしもし…?」「美桜ちゃん?」「そうだけど…」「オレ、皓輝」それは皓輝からの電話だった。「…皓輝!?何で美桜のケー番知ってるの?」「ああ、ヒロくんに聞いたから…まずかった?」
2006-05-08 01:11:00 -
73:
「ううん、それは全然いいんだけど…どうしたの?」「いや、あの日結局美桜ちゃんの席に戻れなかったことずっと気になってたんだけど、忙しくてなかなか電話できなくて。あの日は、ごめんな」「それだけ?それだけの為にわざわざ電話して来てくれたの?」
2006-05-08 01:12:00 -
74:
「いや、それだけっていうわけじゃないんだけど……」口ごもる皓輝。「何?どうしたの?何かあった?」「…何か緊張してる」「はぁ!?緊張!?何で?」「何でって言われても…何でだろ…」どうやら皓輝は本当に緊張している様子だった。
2006-05-08 01:13:00 -
75:
電話越しに伝わる皓輝の緊張が美桜には面白かった。美桜も水商売。勿論客に電話をすることはあるが、どんな客に対してでも、緊張などしたことがない。どういう風に話を繋ぐのだろう、と楽しみながら少し待っていると、
2006-05-08 01:15:00 -
76:
「腹減った」「え?」「飯、何がいい?」「え?何がいいって言われても…今そんなにお腹減ってないし…」「そっか。じゃあ、一時間後にひっかけのツタヤ前で待ち合わせで」と、皓輝が言い、そのまま電話は切れてしまった。
2006-05-08 01:16:00 -
77:
美桜は切れた電話をしばらく呆然と見つめながら、(今、ご飯に誘われたんだよね?てか、何?今の電話…?)通話時間はたったの2分。しかも、一方的に約束を取り付けられてしまった。『緊張している』と言ったそばから何て自己中心的な誘い方だろう。
2006-05-08 01:17:00 -
78:
でも、美桜は不思議と腹が立たなかった。腹が立つどころか、気分は既に1時間後のことを考えていた。とにかく今から急いで用意をしよう。皓輝の顔を見たら一言目は何を言おう、そんなことを考えながら美桜は出かける用意をし始めた。
2006-05-08 01:18:00 -
79:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日はここまでです。次の更新は明日の夜になると思います。気長にお付き合いいただければ幸いです。
2006-05-08 01:19:00 -
81:
美桜 ◆kJmhGaf60.
読んで下さる皆様ありがとうございます。今から少しですが更新させていただきます。
2006-05-08 21:26:00 -
82:
美桜 ◆kJmhGaf60.
sideB 〜皓輝〜 切った電話を皓輝もしばらく見つめていた。(今、オレ凄い自己中な誘い方したよな…?)と自問自答をしていた。本当はもっとちゃんと色々言葉を考えていたのだが、いざ美桜の声を聞くと、用意していた言葉が全部吹き飛んでしまった。
2006-05-08 21:27:00 -
83:
切ってしまった電話がかかってくるかとしばらく待ってみたが、電話は鳴らない。美桜が来るかどうかはわからないが、とにかく誘ったのは自分なので待つしかない。とにかく今からの1時間をどう過ごそうか、そう考えながら皓輝はひっかけ橋へと向って行った…
2006-05-08 21:28:00 -
84:
1時間後。皓輝は今までにないほど緊張をしながらツタヤの前で美桜を待っていた。初めて彼女と待ち合わせしたときでもこれほど緊張はしなかった。(本当に、オレ何でこんな緊張してんだろ…)
2006-05-08 21:28:00 -
85:
そう思いながらもう何本目かもわからないほど吸っているタバコに火を付ける。一口吸ってから視線を巡らす。心臓が跳ね上がる。人混みの中に美桜がいた。
2006-05-08 21:30:00 -
86:
美桜はまだこちらに気づいていない。少し目を伏せるようにしながらこちらへ向ってくる。白いシャツにジーンズ。どこにでもいそうな、ごく普通の姿だが美桜にはオーラがあった。事実、周りの男が美桜を振り返る。
2006-05-08 21:31:00 -
87:
そんな周りの視線を少しも気にすることなく、美桜はこちらへ近づいてくる。視線が合った。微笑む美桜。その笑顔を見て皓輝の心臓はさらに跳ね上がる。(おいおい、オレ大丈夫かよ…)
2006-05-08 21:32:00 -
88:
「ごめんね、待った?」ハスキーな美桜の声。1週間ぶりに聞くその声が耳に心地よい。「いや、オレも今来たばっかりだから…」すると美桜はいたずらっぽい笑顔を浮かべる。「何?」「嘘ばっかり」「え?」「今来たばっかりって嘘だよね?」相変わらず意地悪な笑顔を浮かべながら美桜が言う。
2006-05-08 21:33:00 -
89:
「まじで今来たばっかりだって」「へーえ?皓輝って、すっごいヘビースモーカーなんだね〜。今来たばっかりでもうこんなにタバコ吸ったの?」と言いながら美桜は皓輝の足元を指差す。
2006-05-08 21:34:00 -
90:
そこには1箱分はありそうな吸殻の山。(!!…いつの間に…)結局電話を切ってからどこへ行くにも中途半端なのでそのまま待ち合わせの場所へ皓輝は来たのだ。だから足元の吸殻の山は勿論1時間分。だが皓輝は1時間の間、上の空で美桜を待っていたので、そんなところまで気が回っていなかった。
2006-05-08 21:35:00 -
91:
美桜はくすくすと笑いながら、「控え目にしないと早死にするよ〜?」と皓輝の目を覗き込みながら言う。「…おう…」極度に緊張している上に、やってしまった失態で皓輝は上手く言葉を繋ぐことができない。
2006-05-08 21:36:00 -
92:
そんな皓輝を楽しそうに見ながら美桜は、「何食べに行く?皓輝、結構お腹減ってる?」「まぁ…」「どこに行くかもう決めてるの?」「いや、特には…」すると、美桜が弾けるように笑う。
2006-05-08 21:37:00 -
93:
「ちょっと、皓輝、自分から誘っておいて、しかも1時間も時間あったのに何にも考えてないの?」何がそんなにおかしいのかとにかく美桜は目に涙を浮かべるほど笑い転げている。
2006-05-08 21:38:00 -
94:
「んだよ、何がそんなにおかしいんだよ」あまりの笑われっぷりに少し腹を立てながら皓輝が言うと、「だって、今まであれだけ失礼な誘い方しておいて何が食べたいかすら決めてない、なんて人いなかったんだもん!」と笑い続けながら美桜が言う。
2006-05-08 21:39:00 -
95:
それは確かにそうだろう。皓輝は返す言葉もない。「じゃ、皓輝は何が好き?」「…あっさりしたもの」その言葉を聞き更に笑う美桜。「また、えらく範囲が広いね〜。あっさりしたものね。何だろう…」「…寿司…」「お寿司?お寿司が食べたいの?」「いや、今何となく頭に浮かんだから…」
2006-05-08 21:40:00 -
96:
「てか、皓輝、考える気ある?もういいや、お寿司にしよう!どこか良い所知ってる?」「いつも行ってる店があるけど」「じゃあ、そこに決定で!」「おう」「では、案内よろしく!」そう言って美桜は皓輝の横に並ぶ。
2006-05-08 21:41:00 -
97:
「んじゃ」と言い歩き出しながら皓輝はいつもの調子が出ない自分にかなり戸惑っていた。でも、皓輝には何故自分がいつもの調子を出せないのか、その理由も本当は気づいていた。
2006-05-08 21:41:00 -
100:
電話を切ってすぐ、美桜は出かける用意をし、用意ができた途端、飛び出すように家を出た。早く皓輝に会いたかったから。家を出てタクシーに乗り、タバコに火をつけてふと考えた…(私はどうしてこんなに急いでいるのだろう?)
2006-05-08 21:45:00 -
101:
確かにあれから1週間皓輝のことが頭から離れなかった。ずっと皓輝のことを考えていた。でも…それは『恋』とは違う思いだった。何故だろう。『恋』ではないのに、こんなにも皓輝に会いたい。
2006-05-08 21:46:00 -
103:
御堂筋でタクシーを止め、美桜はツタヤに向った。昼間のミナミは相変わらず人でいっぱいだ。どこからこんなに人が湧いてくるのだろう…この人たちは一体何を求めてこの街をさまよっているのだろう…。そんなことを考えながら足を進める。
2006-05-08 21:47:00 -
104:
いた…皓輝だ。皓輝は既に美桜を見つけていたようで、視線が合う。少し足を早めて皓輝の方へ歩いていく。ふと、皓輝の足元を見ると吸殻の山。それを見た途端、美桜は嬉しくなった。
2006-05-08 21:48:00 -
106:
歩きながら美桜は皓輝の横顔を見上げた。相変わらず、綺麗な顔。その顔が少し怒ったような表情を浮かべている。そんな顔を見ていると、少し虐めてやりたくなるのだが、これ以上皓輝の機嫌を損ねるのも嫌だったので、黙って並んで歩く。
2006-05-08 21:50:00 -
107:
「いらっしゃい!」そこはカウンターだけの小さな寿司屋だった。「お、皓輝!久しぶりだなぁ!今日は綺麗な子連れてるな〜。彼女か!?」「…そんなんじゃないって。ってか、適当にいつもの感じで頼むわ」「おう、任せとけ」50過ぎの店員と慣れた様子で話す皓輝。
2006-05-08 21:51:00 -
108:
店員は美桜に視線を向け、「お嬢さん、好き嫌いはある?」「無いです。何でも食べられます」「じゃあ、お嬢さんもお任せでいいかな?」「はい」とても感じの良い人だった。
2006-05-08 21:52:00 -
109:
温かい視線を向けながら美桜に話しかける。「好き嫌いが無いのはいいことだな。最近の若い子は好き嫌いが多くて駄目だよ」と、言いながら手は寿司を握っている。その間皓輝は一言も話さず、出されたお茶を飲んでいる。
2006-05-08 21:53:00 -
110:
「好き嫌いはしてはいけないと、小さいころから両親に言われていましたので」と美桜が返事をすると、店員は嬉しそうに「そうか、そうか。良いご両親だなぁ」「……ありがとうございます」美桜は複雑な思いでそう返す。『良いご両親』。端から見ればそうだろう。
2006-05-08 21:54:00 -
111:
小さいころからしつけは厳しかった。箸の持ち方、茶碗の持ち方、正座の仕方……幼いころ、怒られずに食事をした覚えが無いくらい、厳しかった。マナーが悪く少しでも父親の機嫌を損ねると食事を抜かれてしまうほどだった。
2006-05-08 21:56:00 -
112:
美桜の記憶の中に父親の笑顔は無い。いつも厳しい顔をしている。記憶の中に少しでも父親の笑顔があれば今の美桜はもっと違う美桜でいられたのだろうか……
2006-05-08 21:57:00 -
113:
記憶の海の中を漂っていると、「お待たせ!」と寿司が出された。白身の魚を中心とした、握りが並んでいる。普通は彩りや、味のバランスを考えマグロなどの赤い魚が入っているはずなのに、出された皿はほとんどと言っていいほど、白ばっかり。
2006-05-08 21:58:00 -
114:
美桜が怪訝な顔をしているのが、店員に伝わったのだろう。「こいつさ、若いくせに脂っぽい魚苦手でね。だからこいつが来た時に握る寿司は白ばっかり」そう言いながら、店員は苦笑している。
2006-05-08 21:59:00 -
115:
「…苦手なんだから仕方ないだろう」子供のように少し拗ねて皓輝が言う。それを見て微笑みながら美桜は、「私もお魚は白身の方が好きです」「だろ!?ほら、見ろよ。好き嫌いに歳なんか関係ないんだよ」と勝ち誇るように言う皓輝。
2006-05-08 22:00:00 -
116:
そんな皓輝が可愛くて、美桜は小さく笑いながら「いただきます」と箸を取った。・・・「おいしい!」「だろ?美桜ちゃん、こっちも食べろよ」「うん!」本当に美味しくて美桜が喜んで食べている様子を皓輝は微笑みながら見ている。
2006-05-08 22:01:00 -
117:
「?皓輝、食べないの?」「何かあんまり腹減ってなくて」「何それ!?さっき電話でお腹減ったって言ってたじゃん!」「待ってる間に、何か腹いっぱいになった」と苦笑しながら皓輝は言う。
2006-05-08 22:02:00 -
118:
「駄目だよ、ちゃんと食べなきゃ!水商売は体あっての仕事なんだから!」すると横から「美桜ちゃんだっけ?もっと言ってやって。こいつ酒は馬鹿みたいに飲むくせに本当に食わなくてさぁ。いつも、体壊すから食えって言ってるのに、うちに来たときもほんの少ししか食わなくてさ」とさっきの店員が言う。
2006-05-08 22:03:00 -
119:
「そうなんですか?」と店員に返事をし、皓輝の方に向き直り、「本当にちゃんと食べなきゃ駄目だよ?」「食べてるって。ただ、量が少ないだけ」「でも、さっきからまだ全然食べてないよ?」「まじでちょっと腹いっぱい」
2006-05-08 22:04:00 -
120:
「何も食べてないのに、お腹いっぱいになるわけないでしょ!それに食べないと作ってくれた人に失礼だからちゃんと食べよ?」と美桜が言うと、「その通り!いやぁ、美桜ちゃんは本当にちゃんとした子だねぇ。今時珍しい」と嬉しそうに店員が言う。
2006-05-08 22:05:00 -
121:
美桜は店員の方を向き、「これも小さいころから両親に言われていたことなので・・・」と苦笑しながら返事をする。「そうか。美桜ちゃんのご両親は本当にちゃんとした方たちなんだなぁ」
2006-05-08 22:06:00 -
122:
あれだけ嫌いな両親のお陰で今の美桜が誉められている。あんな両親に育てられた私が誉められている・・・・・・急に美桜は叫び出したくなる。(私の両親は誰かに誉められるような両親じゃない!)(私は誰かに誉められるような『良い子』なんかじゃない!)
2006-05-08 22:07:00 -
123:
湧き上がってくる凶暴な感情を必死に抑えようと無言になった美桜の横で皓輝が、「いただきます」と箸を取った。一口で寿司をほおばる皓輝。「・・・うま」と言いながら飲み込み、次の寿司に箸を伸ばす。
2006-05-08 22:08:00 -
124:
「美桜ちゃんも食べろよ」と言いながら2個目の寿司を口に入れる。そんな皓輝の様子を見ていると、さっきまで暴れ出しそうだった感情は潮が引くように消えていった。
2006-05-08 22:09:00 -
126:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでです。次回の更新は明日の夜遅くになると思います。お付き合いくださいましてありがとうございましたm(__)m
2006-05-08 22:10:00 -
127:
ラビ
質問に答えてくれてありがとう?更新早いし話も読みやすくて…これからも完結まで楽しみにしてますね!
2006-05-08 22:36:00 -
128:
名無しさん
この話いいなぁ?すごく読みやすいしなんかドキドキします。頑張ってくださいね。楽しみにしてます?
2006-05-08 22:50:00 -
129:
美桜
ラビさん、130さんレスありがとうございますm(__)m仕事の休憩中に見ているのですが嬉しかったので取り急ぎお礼だけ…本日の更新はかなり遅くなりますがお待ちいただければ幸いです(*^_^*)
2006-05-09 17:21:00 -
130:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今から少しだけですが更新させていただきますm(__)m
2006-05-09 23:59:00 -
131:
Side B〜皓輝〜 「ごちそうさま」「ああ、また来いよ。うちに来ない間でも飯だけはちゃんと食えよ」「わぁかってるって、じゃ」会計を済ませ苦笑しながら店を出る。時間を見るとまだp.m.8:00。(これからどうしよう…)
2006-05-10 00:00:00 -
132:
財布をしまいながら、美桜の待つ方へ歩く。美桜はぼんやりとミナミの街並みを眺めていた。美桜はあとどれくらい時間があるのだろう。というより、美桜は何の仕事をしているのだ?
2006-05-10 00:01:00 -
133:
土曜の夕方に遊びに出られるということはOLか?いや、でもそんな雰囲気ではない。皓輝はヒロの知り合い、ということ以外は美桜のことを何も知らないことに気が付いた。
2006-05-10 00:02:00 -
134:
仕事も、どこに住んでいるのかも、何歳なのかも…「美桜ちゃん、お待たせ」呼びかけると、美桜が振り向く。「ごちそうさまでした」と丁寧に頭を下げる美桜。
2006-05-10 00:02:00 -
135:
「どういたしまして。誘ったのオレだし」「それでも、お礼は言わないとね。てか、これからどうするの?お店に行くにはまだ早いよね?」「ああ。それ今考えてたとこ。美桜ちゃん時間まだまだ大丈夫?」
2006-05-10 00:03:00 -
136:
「ぜんっぜん大丈夫だよ〜。何なら明日の夜まで暇なくらいだもん」「そっか。じゃあ、どっか遊びに行く?それとも呑みに行く?」「う〜ん、どうせお酒は皓輝の店で呑むから普通に遊びたいかな?」「え!?」と皓輝は驚いた声を出した。
2006-05-10 00:04:00 -
137:
美桜はどうやらこの後皓輝の店に来てくれるつもりらしい。驚いた皓輝をきょとんとした顔で見返し、「え?お店行かないの?」と不思議そうに問い返す。「そりゃ、来てくれれば嬉しいけど…」と皓輝は返事をする。
2006-05-10 00:05:00 -
138:
もしかして美桜は皓輝が同伴予定で誘ったと思っているのだろうか。そんなつもりで電話をしたわけではないのだが。何となく気持ちが沈む。美桜から見て皓輝はただの『ホスト』なのだろうか。
2006-05-10 00:06:00 -
139:
「ね、どこ行く?」そんな皓輝の考えに少しも気づく様子も無く美桜が話しかける。皓輝は気持ちを切り替え、「美桜ちゃん、ビリヤードできる?」と尋ねる。「大得意!」と本当に得意そうに少し胸を反らして美桜が答える。
2006-05-10 00:07:00 -
141:
ビリヤード場へ向う途中、さっきまでの緊張も解け皓輝は美桜に色々話しかけた。仕事は何をしているのか、歳は何歳なのか、等プライベートなことも含め質問尽くしだ。美桜はそのひとつひとつにきちんと答える。
2006-05-10 00:09:00 -
142:
仕事は水商売、仕事場は新地。歳は23歳、住んでいる所はミナミからタクシーで10分の距離で一人暮らし・・・など、特に隠し事をする様子もなく答えていく。
2006-05-10 00:10:00 -
143:
歩きながらでも美桜はきちんと皓輝の目を見ながら話をする。そうすることによって皓輝の心を見透かすかのように。ありふれた言葉だが美桜の瞳は綺麗な瞳だと皓輝はその瞳を見ながら思う。
2006-05-10 00:11:00 -
144:
黒目がちな大きな目で美桜は今まで何を見てきたのだろう。どんなものを見てくれば、そんな綺麗な瞳ができるのだろう。そんなことを考えながら皓輝は歩き続けた。
2006-05-10 00:12:00 -
145:
ビリヤード場へ着くと早速美桜はキューを選んでいる。とても慣れた仕草で、キューを見比べ「う〜ん、もうちょっと短いのないかなぁ」などひとり言を言っている。そんな美桜を横目で見ながら皓輝もキューを選ぶ。
2006-05-10 00:13:00 -
146:
どちらからゲームを始めるかジャンケンをし、皓輝が勝った。2人は『ナインボール』というゲームをすることにし、ゲームを始める。『大得意』と言っただけあり、確かに美桜はビリヤードが上手だった。
2006-05-10 00:14:00 -
147:
だが、2人の実力がほぼ互角なだけになかなかゲームの勝敗がつかない。皓輝も美桜もビリヤードに熱中していた。そんなとき皓輝の携帯が鳴った。《着信 清香》
2006-05-10 00:15:00 -
148:
皓輝は携帯をちらっとだけ見て、清香からの電話だということがわかり、無視をする。「出なくていいの?お客さんじゃないの?」美桜が心配そうな顔で皓輝に言う。「ああ、客だから大丈夫」と皓輝は答える。
2006-05-10 00:16:00 -
149:
「え?」「オレの客、こんな時間に電話かけてきてもオレが出ないことわかっててかけてきてるから」「でも…」「本当にいいんだよ」と少し面倒くさそうに皓輝は答えた。「気にせず、続けよ」「…うん」と美桜は不満げな顔でゲームに戻る。
2006-05-10 00:17:00 -
150:
そんな美桜の様子を見ながら皓輝は何が不満なのかがわからなかった。同伴で出勤前から客といることはもちろんある。そんな時に他の客から電話がかかってくることもある。
2006-05-10 00:18:00 -
152:
だから「客だから出なくていい」というと女たちは嬉しそうな顔をする。『私は特別なんだ』とその嬉しそうな表情が言っている。
2006-05-10 00:20:00 -
153:
それなのに美桜は不満そうな顔をする。こんな反応も初めてだ。その間にも清香から何度も着信がある。「・・・皓輝、出た方がいいよ」と美桜が言う。「面倒くさいからいい」「でも・・・」
2006-05-10 00:21:00 -
154:
さらに言い募ろうとする美桜を「まじでいいんだって。営業時間外にかけてくる方が悪い」少し苛立った様子で皓輝が遮る。「でも、こんなにかけてくるなんてよっぽど用事があるんじゃないの?」「いいんだって!」と少し皓輝は声を荒げた。
2006-05-10 00:22:00 -
155:
しまった、と思い皓輝は慌てて言葉を続ける。「美桜ちゃんも水商売やってるならわかるだろ?営業時間外に電話かけてくんな、って思わない?」と皓輝が言うと美桜は静かに首を振り、「思わない」とだけ言った。しかも少し怒ったように。
2006-05-10 00:24:00 -
157:
「私たち水商売ってお客さんがいてくれるから、成り立ってる仕事だよね。もちろんそれは水商売だけじゃなくて、コンビにでもレストランでも、お客さんがいなければ成り立たないよ?でも水商売ほどお客さんとの繋がりを大事にしないと成り立たない商売ってないと思う」
2006-05-10 00:26:00 -
158:
と皓輝の目をまっすぐに見ながら美桜は続ける。「だから美桜は例えプライベートな時間でも、どれだけ失礼な時間に電話がかかってきてもそれがお客さんなら出るよ」
2006-05-10 00:27:00 -
160:
皓輝の先輩や後輩、知り合いのホステスなどはプライベートな時間に客から来る連絡を嫌がっている人間ばかりだった。皆口を揃えて「ウザい」という。もちろん皓輝もそうだった。
2006-05-10 00:29:00 -
162:
本気だよ。確かにお客さんといる時に他のお客さんからの電話に出るのはマナーとしてどうかとは思うよ?でも、一緒にいるお客さん自身がいいって言ってるなら、美桜は出る」ときっぱり言う。
2006-05-10 00:31:00 -
163:
「どれだけ失礼なお客さんでもその人が使ってくれたお金は美桜の給料になるんだもん。だからちゃんとしなきゃ」「……」「だから皓輝もちゃんとして?」さらに驚いた。
2006-05-10 00:32:00 -
164:
今までの客たちは『私といっぱい一緒にいて』とは言った。でも誰一人として『他の客も大事にして』なんて言ったことはなかった。なのに、美桜は言う。『他の客も大事にしろ』と。
2006-05-10 00:34:00 -
165:
「なんで…?なんで、美桜ちゃんはそんなことが言えるんだ?」と本当に純粋に思った疑問が口に出た。「え?」と不思議そうに美桜は皓輝を見た。
2006-05-10 00:36:00 -
166:
「なんで、自分以外の客も大事にしろって言えるんだ?美桜ちゃんが楽しければ他の客のことなんてどうでもいいだろ?」「それが皓輝のためになるから」「え?」即答する美桜に今度は皓輝が不思議そうな顔をする番だった。
2006-05-10 00:37:00 -
167:
「どういうこと?」「皓輝のお客さんが美桜だけなら美桜は皓輝に『美桜だけを大事にして』って言うかも知れない。でも、皓輝のお客さんは美桜だけじゃないよね?」と言う。
2006-05-10 00:38:00 -
168:
「もし、皓輝が美桜だけを大事にして他のお客さんを放ったらかしにしてしまうと、お客さん切れるよね?」「…ああ」「だから、美桜はそんな自分勝手なことを言えないよ。もしそんなことになってしまっても、美桜は皓輝になにもしてあげられない」と静かに美桜は言葉を終える。
2006-05-10 00:39:00 -
170:
『私と一緒にいて!』『どうしていつも忙しい忙しいってそればっかりなの!』『他の客とはアフター行くのに何で私とは行ってくれないの!?』と皓輝の客は言う。
2006-05-10 00:41:00 -
171:
皓輝だって、最初から客のことを『ウザい』と思っていたわけではない。1人1人大事にして時間を作ってやりたい、と思っていた。だけど皓輝の体は1つしかない。
2006-05-10 00:42:00 -
172:
どれだけ皓輝が客と時間を作ろうとしても限界がある。だけど客たちは10人いれば10人が『遊びに連れて行け』や『ご飯に行こう』と何かと皓輝を縛りたがる。
2006-05-10 00:43:00 -
177:
だが会って2回目の美桜にそんなことまで言ってしまっていいのだろうか。でも、言いたい。どうしようもない思いが皓輝の体中を巡る。苦しかった。言葉が出ない。
2006-05-10 00:48:00 -
178:
次の瞬間皓輝は、美桜を抱き寄せていた。「っ!?皓輝!?」美桜は驚いて皓輝を振りほどこうとする。「ちょっと、皓輝!!人が見てるから!」と美桜は皓輝を離そうとする。
2006-05-10 00:49:00 -
179:
だが、皓輝はさらに力を強くして美桜を抱きしめた。言いたいことばの代わりに名前を呼ぶ。「美桜……」「何?」皓輝の様子に気づいたのか、もう振りほどこうとはせず美桜が答える。
2006-05-10 00:50:00 -
181:
「美桜……」「なぁに?」皓輝は美桜の名前を呼ぶことしかできなかった。その分言葉に出来ない感情を込めて強く美桜を抱き締め続けた。
2006-05-10 00:52:00 -
183:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。お付き合い下さいましてありがとうございました。次回更新は明日の夜とさせていただきます。
2006-05-10 00:54:00 -
184:
ラビ
わーい\(o゚ω゚o)/たくさん更新してある↑明日も頑張って下さいね。毎日『銀の鎖』読むの日課なんです、
2006-05-10 01:05:00 -
185:
美桜 ◆kJmhGaf60.
おはようございます。ラビさん>レスありがとうございます。読みにくいところなどあれば遠慮なくおっしゃってくださいね。感想おまちしています。
187さん>レスありがとうございます。半分実話半分空想です(;^_^Aでも話が進む内にわかりますが決して美桜は素敵な女性なんかではないんですよ…話の続きを見てまた是非感想下さいね。
それではまた夜更新しに来ます。取り急ぎお礼まで…m(__)m2006-05-10 09:23:00 -
186:
名無しさん
2006-05-10 09:35:00 -
188:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の分今から更新していきます。
2006-05-10 21:37:00 -
189:
Side A〜美桜〜 「いらっしゃいませ〜!!」皓輝と遊びに行ってから1ヶ月が経っていた。あれから毎日美桜は皓輝の店に来ている。
2006-05-10 21:37:00 -
190:
あの日、皓輝はしばらくの間美桜を抱き締めたまま、無言だった。その皓輝をあやすように落ち着かせ、皓輝の出勤までの時間を一緒に過ごした。特に何を話すでもなく……
2006-05-10 21:38:00 -
191:
あの日から美桜の中で、皓輝は『特別』な存在になった。仕事をしていても、家に帰り眠りにつくまでのほんの少しの時間でも、皓輝のことを考えない時間はなかった。
2006-05-10 21:39:00 -
192:
皓輝は美桜の『半身』だった。育ってきた環境や、仕事に対する考え方、何一つとして美桜と皓輝は合わない。でも、身にまとう『空気』が同じだった。
2006-05-10 21:40:00 -
193:
《誰かと一緒にいたい》《でも、どうすれば自分らしく誰かと一緒にいられるのだろう》《どうして人は本当の自分を見てくれないのだろう》…そんな『空気』を皓輝も身にまとっていた。
2006-05-10 21:41:00 -
194:
美桜は皓輝の傍にいることで、やっと自然に『呼吸』ができた。皓輝に会わないと、まるで酸欠になったように苦しくて、息ができなくて、何も考えられない。
2006-05-10 21:42:00 -
196:
「美桜姉、お疲れ〜!!」皓輝の店に来るようになって1ヶ月。ほぼ毎日ヘルプについてくれる悠馬が美桜の席に飛んできた。悠馬は美桜によくなついていて、知り合ってたったの1ヶ月にもかかわらず、美桜のことを『美桜姉』と呼んだ。
2006-05-10 21:44:00 -
197:
「おはよ、悠馬」いつものカウンターの席に座りながら挨拶を返す。「皓輝は?」「あ、皓輝さん今ダウン中です」と苦笑しながら悠馬が答える。
2006-05-10 21:45:00 -
198:
「またぁ?仕方ないなぁ。昨日あれからそんなに忙しかったの?」「例のお客さんが来てたでしょ?美桜姉が帰った後大変だったんですよ…」例の客とは《清香》のことだ。
2006-05-10 21:46:00 -
200:
トイレや電話で席を立つ度に、美桜の席に座りに来る。それを美桜がいつも他の席へ行ってこい、と送り出していたのだ。そんな美桜と皓輝を清香が見、嫉妬をし、やがて酔っ払い席で暴れる。
2006-05-10 21:48:00 -
201:
毎日がそれの繰り返しだった。もっとも嫉妬のおかげで、清香の席ではいつもシャンパンがおり、皓輝の売り上げは驚くほど上がっていた。
2006-05-10 21:49:00 -
202:
「そっかぁ。皓輝も大変だね〜。美桜あんまり来ない方がいいのかなぁ…」「それはダメっすよ!美桜姉来なくなったら俺らが困る!」と真剣な表情で悠馬が言う。
2006-05-10 21:50:00 -
203:
「何で?」「だって機嫌の悪い皓輝さんの相手できるのって、美桜姉くらいだもん。それに、美桜姉来なくなったら俺ら飢え死にする!」「おいおい、売り上げのことじゃなくて、悠馬たちのお腹の心配〜?」「俺たちにとっては切実な問題なの!!」と悠馬が言い返す。
2006-05-10 21:51:00 -
204:
悠馬は美桜より3歳年下の二十歳。甘え方が上手なので、今ではすっかり本当の弟のような存在だった。「はいはい。で、今日は晩御飯食べた?」「まだ!!」と元気良く悠馬が答える。
2006-05-10 21:52:00 -
205:
「じゃあ、美桜も少しお腹減ったから悠馬の食べたいの何か適当に頼んで?あ、皓輝はご飯食べた?」「まだじゃないっすかね?俺が出勤してきたら皓輝さんソファでダウンしてたんで」
2006-05-10 21:53:00 -
206:
「そっか、じゃあ皓輝の分も一緒に頼んでおいて」と言いながら、美桜は席を立つ。「あ、皓輝さん厨房ですよ」と言う悠馬に「はいは〜い」と返事をしながら厨房へ向う。
2006-05-10 21:53:00 -
207:
厨房の床に崩れるように皓輝がいた。ひどく苦しそうな顔をしながら眠っている。そっと近づき「皓輝?」と声をかける。「……ん」と寝言のように皓輝が返事をする。
2006-05-10 21:54:00 -
208:
「お〜い、皓輝くん。仕事の時間ですよ〜。起きなさ〜い」とさっきより少し大きな声で美桜は話しかける。「…わかってる…」ととりあえず返事だけはしているが、皓輝は眠り続けている。
2006-05-10 21:55:00 -
209:
美桜はため息をつきながら皓輝の耳元へ顔を寄せ、「皓輝さん!後5分でオーナー来るって!」と叫んだ。「…まじで!?」と皓輝は飛び起きる。
2006-05-10 21:56:00 -
210:
「って、ヤバ!!悠馬、今何時!?」どうやら皓輝はまだ少し寝ぼけているようで悠馬に起こされたと思っているようだ。「おはよ、皓輝」としゃがみこみながら声をかける。
2006-05-10 21:57:00 -
211:
「え?美桜?何で?」と驚きながら辺りを見回し、「てか、お前ここ厨房。スタッフ以外出入り禁止」と急に目が覚めたようにしっかりと返す。「大丈夫だよ。まだ他にお客さん来てないから。只今の時刻は午前1:00です」と少しふざけて返す美桜に、
2006-05-10 21:58:00 -
212:
「そういう問題じゃなくて…とりあえず席に行こう」と美桜の腕を摑み厨房を出る皓輝。「おはようございます!」と一斉に従業員たちが挨拶をする。
2006-05-10 21:59:00 -
213:
「おはようさん。ていうか、お前ら起こせよ」「いや、俺ら何度も起こしましたって。起こしたら皓輝さん自分でソファから歩いて厨房まで行ったじゃないですか!」「…そうだっけ?」と惚ける皓輝。
2006-05-10 22:00:00 -
214:
「もう、皓輝さんまじ勘弁して下さいよ〜。皓輝さんがダウンしてると毎回俺らがオーナーに怒られるんっすよ?」と悠馬と同期の陽太が言う。「まぁ、仕方ないだろ」と皓輝。「オレ客多いから毎日飲む量ハンパじゃないしな〜」
2006-05-10 22:01:00 -
215:
と言いながら、スタッフルームへ引っ込む。そんな皓輝を見送りながら美桜は、「ほんっと迷惑な奴だね〜」と陽太に話しかける。「ね〜。ほんっと皓輝さんには困ったもんですよ!」と苦笑しながら陽太が言う。
2006-05-10 22:01:00 -
216:
「てか、美桜姉さすがだね。ダウンしてる皓輝さん起こせるのってオーナーと美桜姉だけだわ」と横から悠馬が言う。「皓輝さんがダウンしてるときは美桜姉、起こしに来てよ!」
2006-05-10 22:02:00 -
217:
「美桜はここのスタッフか?」と苦笑しながら返す美桜に、「あ、それナイス!美桜姉ここで働けば?」と半ば本気で悠馬が言う。
2006-05-10 22:03:00 -
218:
ばぁか!ここで働く=皓輝の世話係、でしょ?そんなダルい仕事無理〜」とそんな会話をしている内に、用意を終えた皓輝がスタッフルームから出てきて美桜の横に座る。
2006-05-10 22:04:00 -
219:
「あぁ、ダル…」とそのままカウンターにうつ伏せる。「こらこら皓輝。まだ全然仕事してないっつーの!てか、それがお客様の前でする態度〜?」と美桜がからかうと、
2006-05-10 22:05:00 -
220:
「美桜は客じゃないからこれでいい」と皓輝は呟く。「いやいや、皓輝くん。美桜ちゃんとお金払ってるじゃん。客じゃなかったら何なのよ?」と返すと、一瞬間が空き、
2006-05-10 22:06:00 -
221:
「…オレのおふくろ」とうつ伏せたまま皓輝は言う。「はぁ!?美桜こんなデカい子供持った覚えないし!」「オレも美桜に育てられた覚えないし…」とダルがりながらもしっかり言い返す皓輝。
2006-05-10 22:07:00 -
222:
「もう!ほんっとやる気ないでしょ?」「…うん、無理。飯来るまでしばらく寝かせて…」と言いながら皓輝は本気で眠り出した。
2006-05-10 22:08:00 -
223:
そんな2人を見ながら悠馬が「皓輝さんまじ疲れてるから勘弁してやってよ、美桜姉」と。「ん。別に美桜はいいんだけど、下の子にしめしつかないじゃん」「大丈夫。俺ら皓輝さんが誰より頑張ってること知ってるから…」
2006-05-10 22:08:00 -
224:
皓輝はあまり出てこないオーナーに代わり、店を任されている。従業員の管理、売り上げの管理、お客さんの管理、色々雑用が多くほとんど眠る時間などないことは美桜も知っていた。
2006-05-10 22:09:00 -
225:
加えて皓輝には病気がちの母親がいてその世話に追われ、失踪した父親の残した莫大な借金もあった。皓輝は店にいても、家にいても、心の休まる時間がない。それは美桜も知っているのだが、後輩たちの手前というものもある。
2006-05-10 22:10:00 -
226:
「皓輝さん、美桜姉の横じゃないとゆっくりできないんだよ…」と悠馬が言う。「だから悪いけど、しばらく寝かせてやって」そこまで悠馬に言われれば美桜にはダメと言う理由がない。
2006-05-10 22:11:00 -
227:
「仕方ないか!デキの悪い子ほど可愛いっていうし!?」とふざけて美桜が返すと、悠馬も「美桜姉の子供デキ悪過ぎ〜」と返し、2人で笑い合った。
2006-05-10 22:12:00 -
228:
「悠馬もゆっくりしておいで?出前来たらちゃんと呼んであげるから」「でも、俺までいなくなったら美桜姉、暇じゃん?」「大丈夫!眠ってても皓輝がいてくれてるから…」
2006-05-10 22:13:00 -
230:
厨房に入る悠馬を見送り美桜は皓輝に視線を戻す。さっきまでとは違い気持ち良さそうな顔で眠っている。顔にかかる前髪が少しうっとうしそうなので、美桜はかき上げた。
2006-05-10 22:15:00 -
231:
すると皓輝が目を開ける。「ごめん、起こした?」と静かに話しかける。「…ん、大丈夫。…美桜…」「何?」「ごめん、全然構ってやれない…」と美桜の目を見ながら皓輝は言う。
2006-05-10 22:16:00 -
232:
「毎日来てくれてるのに、いつも話せる時間ほとんどなくて、ごめん」「大丈夫だよ。美桜は皓輝の頑張ってる姿を見るのが好きだから」「…ん。忙しくなくなったらちゃんと時間作って美桜の話いっぱい聞くから…」そう言いながら皓輝はまた眠りに落ちた。
2006-05-10 22:17:00 -
234:
いつも偉そうにお客さんに物を言いお客さんを放ったらかしにし、それでも詫びの一言もない。そんな皓輝が美桜のことをちゃんと考えしかも「ごめん」という。
2006-05-10 22:18:00 -
236:
美桜 ◆kJmhGaf60.
一旦ここで中断させていただきます。また後で更新できれば、と思いますができなければすいませんm(__)mその場合次回更新は明日の夜とさせていただきます。
2006-05-10 22:20:00 -
237:
名無しさん
?
2006-05-11 04:24:00 -
238:
名無しさん
??
2006-05-11 11:58:00 -
239:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今から更新させていただきます。読んでいて下さっている方いれば、ありがとうございます。
2006-05-11 22:17:00 -
240:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side B〜皓輝〜 情けなくも美桜に縋りついたあの日から美桜は皓輝を心配してか、毎日のように店に来てくれていた。だが、毎日のように美桜が店に来てくれていても、皓輝が美桜の席につけるのは一日で多くて一時間ほど。
2006-05-11 22:18:00 -
241:
ひどい日は、挨拶だけをし一度も席につけないこともあった。それでも美桜は楽しそうに悠馬や陽太と遊んでくれている。悠馬や陽太も美桜によく懐き、今では直接美桜に電話をしたりしているようだった。
2006-05-11 22:19:00 -
242:
普通なら口座を持つ客とヘルプが仲良くするのは、揉め事の原因になるのであまり良くないことだったが、美桜に関してはそんな心配もなく、ヘルプたちから電話があったことや、今度ご飯に行っていいか、などきちんと皓輝に報告をしてくれる。
2006-05-11 22:20:00 -
243:
今日も美桜は来てくれていた。いつもの通りカウンターに座り、悠馬と楽しそうに話をしている。皓輝はといえば、清香が来ていてその席から離れることが出来ない。
2006-05-11 22:21:00 -
244:
「ねえ、皓輝聞いてるの!?」と清香が皓輝の腕を引っ張りながら言う。正直美桜に気を取られていたので、清香の話など全く耳に入っていなかった。
2006-05-11 22:22:00 -
245:
「悪い、聞いてなかった。何?」「だからぁ、今度遊びに行こうって!」と清香は上目遣いに皓輝を見ながら言う。冗談じゃない。
2006-05-11 22:23:00 -
246:
ただでさえ店の雑用や実家のことで忙しく、美桜ともろくに話せない状況なのに、と思いながら、「時間が出来たらな」と素っ気なく返す。
2006-05-11 22:24:00 -
247:
と、突然清香が「皓輝。あの子皓輝の何?」と顎で美桜の方を示す。「何って客」「あの子皓輝の口座だよね?」「だったら何?」と少し苛立ちながら皓輝は返す。「毎日毎日カウンターに座って、大したお金も使わないでさぁ。何しに店に来てるの?」そう言いながら美桜の方を見る。
2006-05-11 22:25:00 -
248:
「皓輝の口座のくせに皓輝とは全然話さないで、毎日ヘルプと話すだけ。可哀想だよね〜」と何故か嬉しそうに言う清香。誰のせいで美桜がそんな目に遭ってるんだ!?と怒鳴り返したいのを抑えながら、
2006-05-11 22:26:00 -
249:
「別にあの子はオレに色恋求めて来てるわけじゃないからあれでいいんだよ」「それにしたってさあ、全然お金使ってないのに毎日来られたら皓輝も迷惑でしょ?」と言いながら清香は立ち上がる。
2006-05-11 22:26:00 -
250:
「…どこに行くんだよ」嫌な予感がし皓輝は清香を引き留める。「清香さんの席はここだろ!?」そんな皓輝の言葉を無視し、清香は美桜のほうへと近づいていく。慌てて腕を摑み止めようとしたが「ちょっと!」と清香が美桜に声をかける方が一瞬早かった。
2006-05-11 22:27:00 -
251:
振り返り少し驚きながら清香を見る美桜。「何?」と美桜が清香に言う。「あんた目障りなんだよね」「は!?」「毎日大したお金も使わず店来てさ、皓輝が迷惑してるのわからないの!?」「清香さんっ!!」と止めに入る皓輝に向って、「皓輝は黙ってて」と一言いい美桜に向き直る。
2006-05-11 22:28:00 -
252:
「毎日に来るお金があるんだったら、週に1度くらいにしてその分一気に使えば?そんなに少しずつ使われたって皓輝が恥かくだけなんだけど」「私のお金をどう使おうが、あなたに関係ないと思うけど?」と美桜は冷静に返す。
2006-05-11 22:30:00 -
253:
てか、厚かましいんだよ。たったそれぐらいのお金で皓輝の口座だなんて!」と清香は叫ぶ。「皓輝の客だったらさぁ、もっとお金使えば!?ナンバー1の客にあんたみたいな細客はいらないんだよ!!」
2006-05-11 22:31:00 -
254:
叫ぶ清香を見ながら怒った様子もなく美桜は、「あなたの言い分だと、お金をたくさん使った人が皓輝とたくさん時間を過ごせるのね?」と返す。「当然でしょ!?ここをどこだと思ってるの!?」美桜が冷静なのが気に入らないのか、更に怒り狂ったように清香は叫ぶ。
2006-05-11 22:32:00 -
255:
「私くらい皓輝と話したければもっと使ってみれば!?あんたみたいな細客には無理でしょうけどね!」「いい加減にしろって!!」さすがに皓輝も我慢の限界が来て、清香を席へ引きずっていこうとした。そこへ
2006-05-11 22:33:00 -
256:
「私があなたよりたくさん使えば皓輝との時間を譲ってくれるのね?」と静かに美桜は言う。「それであなたは大人しく引き下がってくれるのね?」更に静かに美桜は続ける。
2006-05-11 22:34:00 -
257:
そんな美桜を見て清香は、「出来るものならやってみれば?それができればいくらでも皓輝のこと譲ってあげるわよ!」勝ち誇ったように清香は言う。
2006-05-11 22:35:00 -
258:
それを受け美桜は、「そう。わかった」と言いながら、自分のカバンから何かを取り出し、カウンターの上に投げ出した。清香が息を飲む。…帯のついた札束だった。しかも3つ。
2006-05-11 22:36:00 -
259:
「これで皓輝のこと譲ってくれるのよね?」と美桜が言う。「あなたさっき、自分で言ったよね?たくさん使った方が皓輝とたくさん時間を過ごせるって。だったらこれでいいでしょう。今すぐ私に皓輝をちょうだい」
2006-05-11 22:37:00 -
260:
そして更に冷たい声で言い放つ。「それとも、これ以上のお金をあなたが皓輝に使えるの?だったら私はもっと使うだけ」清香は返す言葉もなく立ち尽くす。それは皓輝も、その場にいた悠馬や陽太も同じだった。
2006-05-11 22:38:00 -
261:
まさか美桜がこれほどの金を持っているなんて誰も予想していなかった。しかもこんなに冷たい瞳をした美桜を誰も見たことなんてない。冷静にだが確実に美桜は怒っている。
2006-05-11 22:39:00 -
262:
「遊び方も知らないんだったら、大人しくしていなさい。その歳になって人を見下すことでしか優越感を感じることが出来ないなんて可哀想な人だね」
2006-05-11 22:40:00 -
263:
と突き放すように言うと美桜は何事もなかったように、カウンターに向き直り、「悠馬、お酒作って」と悠馬に話しかけた。「あ、ああ、はい」茫然としていた悠馬が我に返り、美桜のグラスを受け取る。
2006-05-11 22:41:00 -
264:
「さっきのちょっと濃かったよ?もう少し薄めでね〜」と本当に何事もなかったかのように振る舞う美桜。清香のことなんてもう目に入っていないようだった。
2006-05-11 22:42:00 -
265:
さすがに清香が少し可哀想になり皓輝は、「清香さん?」と声をかけると、「勝手にすれば!!」と叫び財布の中から何枚かの札を抜き取り皓輝に投げつけ、清香は出て行った。
2006-05-11 22:43:00 -
266:
「ばっかみたい」と美桜が呟く。そして皓輝を振り返り、「ごめんね、皓輝。どうしても我慢できなかった…」と小さくなりながら美桜は謝る。
2006-05-11 22:43:00 -
267:
「本当にごめんなさい…」さっきまでとは別人のようにいつもの美桜がそこにいた。「いや、オレの方こそゴメン。気ぃ悪い思いさせて…」と皓輝も謝りながら、
2006-05-11 22:44:00 -
268:
「それにしても美桜…この金は…」「…親から貰ったお金…」ため息とともに吐き出すように美桜は言う。「ごめん、皓輝。美桜まだ皓輝に言っていないことがあるの…今から話聞いてくれる?」
2006-05-11 22:45:00 -
271:
名無しさん
?
2006-05-11 22:50:00 -
272:
名無しさん
頑張って
2006-05-12 09:30:00 -
273:
ラビ
読みやすい!この話が一番大好きです、これからも頑張ってね!!
2006-05-13 12:48:00 -
274:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ラビさん読んで下さってありがとうございます。昨日は更新できなくてごめんなさい。今から少しだけですが更新させていただきます。
2006-05-13 22:06:00 -
275:
美桜 ◆kJmhGaf60.
side A〜美桜〜 21歳の春、美桜は家を飛び出した。汚い物を見るように美桜を見る父。怯えたように美桜を見る母。そして両親にも美桜にも無関心な妹。その何もかもが嫌になり、家を飛び出した。そうなった原因は16歳の冬にさかのぼる……
2006-05-13 22:07:00 -
276:
美桜の家は裕福で父は社会的にそれなりの地位もあり、世間体をひどく気にする父に本当に厳しく育てられていた。父は二言目には「藤沢家の長女なんだから…」と言う。
2006-05-13 22:08:00 -
277:
幼稚園、小学校、中学校と美桜は金銭的には何不自由なく育てられた。欲しいものは全て買い与えられ、物質的不満を感じることなどなかった。だが精神的にはいつも孤独だった。
2006-05-13 22:09:00 -
278:
父は『跡取り』として美桜を育てようとし、テストでどれだけ良い点を取ろうと、作文や絵のコンクールで賞などを貰おうと決して美桜を誉めることがなかった。
2006-05-13 22:09:00 -
279:
母は大人しい人で厳しく育てられている美桜を不憫には思っていたのだろうが父のやり方に口を挟むことができず、いつも黙って寂しそうな顔をしているだけだった。
2006-05-13 22:10:00 -
282:
強烈な吐き気。立っていられないほどのめまい。急にやって来ためまいのせいで机の上の物を落としながら美桜はその場に崩れた。物が落ちる大きな音に驚いた母が飛んできた。
2006-05-13 22:14:00 -
283:
「美桜ちゃん、美桜ちゃん!!どうしたの!?」すぐ側にいるはずの母の声が途方もなく遠くから聞こえる。「…だ・・・だいじょう…」
2006-05-13 22:15:00 -
285:
昨日の夜ご飯を食べたのが最後で空っぽのはずの胃が何かを吐き出そうとする。だがもちろん空っぽの胃からは何も出ることはない。吐きたいのに吐けない。強烈な苦しみに襲われながら、美桜は軽いパニックに陥っていた。
2006-05-13 22:17:00 -
286:
(何…これ!?)前日まで美桜はいたって元気だった。風邪を引きかけているような様子もなく、睡眠が不足しているわけでもない。美桜がトイレの中でパニックに陥っている最中、扉の外ではひたすら母が美桜に呼びかけている。
2006-05-13 22:17:00 -
289:
目が覚めたのはそれから3時間程後でもう昼に近かった。目を覚ますと蒼白になった母の顔が目に入った。「美桜ちゃん、気がついたのね!大丈夫!?」
2006-05-13 22:20:00 -
290:
目に入ってくる母の顔と、その後ろに見える見覚えのない天井。(ここは…?)どうやら美桜はあのまま救急車で病院に運ばれたようだった。恐る恐る体を起こす。
2006-05-13 22:21:00 -
291:
「美桜ちゃん、起きて大丈夫なの!?」母が心配そうに声をかける。ところがさっきの苦痛は嘘のように、吐き気もめまいも消えている。そんな美桜の様子を見ながら母がナースコールで看護師を呼んだ。
2006-05-13 22:22:00 -
292:
しばらくして看護師とともに医者がやって来た。「気分はどう?倒れる前のこと覚えているかな?」と穏やかに医者が問いかける。「…もう大丈夫です。倒れる前のこともちゃんと覚えています」「そう。少し検査させてもらいたいんだけど、動けるかな?」「はい。大丈夫です」
2006-05-13 22:23:00 -
293:
それから2時間ほど血液検査やレントゲンなど色々なところを検査された。ところが…「血液検査の結果はまだわかりませんが、今のところ特に目立った症状は無いですね」と医者の言葉。
2006-05-13 22:24:00 -
294:
その言葉に母も美桜も愕然とする。あれだけ苦しかったのに悪いところがない!?「恐らく一時的に血圧が低下しそれでめまいや吐き気が起こったんだと思いますよ」と大したことなさそうに医者は続ける。
2006-05-13 22:25:00 -
296:
午後になってからも特に体調が悪くなることも無く、本当に医者が言うように一時的なことだったのだと母も美桜も思っていた。だが次の日の朝…
2006-05-13 22:27:00 -
297:
目が覚め制服に着替えようとした途端、また昨日のように吐き気・めまいに襲われ、パニック症状が美桜を襲った。そんなことがそれから1週間も続き、美桜は1週間学校を休んでいた。
2006-05-13 22:28:00 -
298:
(本当にどこも悪くないの!?)(どこも悪くないなら毎朝のように苦しいのは何故!?)と理由のわからない不安をぬぐうこともできないまま日々を過ごしていた。
2006-05-13 22:29:00 -
299:
だが具合が悪くなるのは午前中。しかも決まって学校のある平日の朝。それが午後になると朝の苦しみが嘘のように以前と変わらず元気になる。
2006-05-13 22:30:00 -
300:
母は毎朝そんな美桜を見ていたので『仮病』とは思っていなかったのだが、父は違った。父は毎朝出勤が早いため滅多に朝美桜と顔を合わせることが無い。
2006-05-13 22:31:00 -
302:
『発作』に襲われるようになり1週間が過ぎた頃、父は美桜に「お前はいつまで学校をさぼっているつもりだ」と言った。その父の言葉に美桜は愕然となる。
2006-05-13 22:32:00 -
303:
(さぼり!?)とんでもない言いがかりに美桜が言葉を返せずにいると、「まったく。藤沢家の長女がろくに学校にも行かないなんて。世間体の悪い!」と吐き捨てる。
2006-05-13 22:33:00 -
304:
(世間体!?)それが何だと言うのだ。毎朝体が引き裂かれてしまうほどの苦しみを味わっているのに、そのことを心配する様子も無く世間体!?美桜は父のあまりの言いように体が震える。
2006-05-13 22:34:00 -
305:
さすがに見かねた母が「お父さん。美桜ちゃんはさぼっているのではなくて、毎朝本当に具合が悪くなるんですよ」それを聞いた父の言葉は耳を疑うようなものだった。
2006-05-13 22:35:00 -
307:
その瞬間美桜は椅子を蹴り席を立っていた。「何だ美桜、食事中に行儀の悪い。とにかく明日からは学校へ行け」と冷たく父は言う。美桜は怒りに全身を震わせていた。
2006-05-13 22:37:00 -
308:
何か言い返そうとしたその途端、『発作』が起こった。その時の発作は毎朝起こる発作とは比べものにならないくらいひどいものだった。
2006-05-13 22:37:00 -
310:
倒れるのを防ぐためにしゃがみこむのが精一杯でそこから一歩も動けず、全身を覆う痺れのため指一本動かすことも出来ず、息もろくに出来ない。
2006-05-13 22:42:00 -
311:
だが今日に限りひどい苦しみにも関わらず、意識だけはしっかりしていた。(助けて!助けて!!)美桜は心の中で大声で叫ぶ。駆け寄る母と妹の足音に重なり、更に信じられない父の言葉。
2006-05-13 22:43:00 -
314:
(どうして!?どうして、こんなに苦しいのにお父さんは信じてくれないの!?)「お父さん!お姉ちゃん演技なんかしてないよ!早く救急車呼んでよ!」と妹が叫ぶ。「美桜ちゃん、美桜ちゃん!」必死に母が呼びかける。
2006-05-13 22:46:00 -
315:
そのどれもが美桜には既に現実のことのようには感じられていなかった。「お父さん、救急車!!」もう一度妹が叫ぶ。「お姉ちゃん死んじゃうよ!!」
2006-05-13 22:47:00 -
318:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。お付き合い下さいましてありがとうございました。また明日の夜更新させていただきます。
2006-05-13 22:49:00 -
320:
美桜 ◆kJmhGaf60.
申し訳ありませんが、今日は多忙のため更新できそうにありません。お待ちいただいてる皆様本当に申し訳ありません。
2006-05-14 22:55:00 -
321:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今から少しだけですが更新させていただきます。
2006-05-15 21:18:00 -
322:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side B〜皓輝〜 美桜の話を皓輝は言葉を挟むことなく聞いていた。「…結局ね、原因は鬱から来るパニック症候群ってやつだったの」と美桜が言う。
2006-05-15 21:19:00 -
323:
親や周りからの過剰な期待によるストレスで美桜は自覚することもなく鬱になってしまっていたのだった。「それからはね、本当に大変だったなぁ」と遠い目をしながら話を続ける。
2006-05-15 21:19:00 -
324:
話し始めてから美桜は一度も皓輝の目を見ていなかった。こんな美桜を見るのも初めてだ。美桜は話すときはいつも必ず相手の目を見ながら話をする。
2006-05-15 21:21:00 -
326:
「美桜のせいで家の中はぐっちゃぐちゃ。お父さんは毎日美桜の顔を見ては恥さらしだの世間体が悪いだの非難するし、お母さんは美桜のこと壊れ物を扱うような態度だしね」「……」
2006-05-15 21:22:00 -
327:
「妹もね、最初のうちはお父さんから庇っていてくれてたんだけど、段々疲れてきたんだろうね。『お姉ちゃんさえいなければ』っていうようになってね」と苦笑しながら美桜は言う。
2006-05-15 21:23:00 -
328:
そんな美桜に皓輝はどんな言葉をかけていいのかわからなかった。出会ってからの美桜はいつも笑顔を絶やさず、いつでも皓輝を励ましてくれていた。今まで見てきた美桜にはそんな暗い影は全然見当たらなかった。話を聞いた今でも信じられないくらいだ。
2006-05-15 21:24:00 -
329:
「それでね、21歳のときに家を出たんだ。美桜も苦しかったし、美桜がいなければ皆元の生活に戻れるかなぁと思って」「…どうやって?」「ん?」「家を出てどうしてたの?」
2006-05-15 21:25:00 -
331:
「手っ取り早く一人暮らしの男のところに転がり込んだ」「そのとき付き合ってた彼氏?」「ううん」とさらに苦笑しながら美桜は続ける。
2006-05-15 21:27:00 -
334:
「その時…そいつと暮らし始めてから美桜は幸せだった?」「…幸せ、だったかな…その人はとにかく美桜のこと大事にしてくれたから…」と、また遠い目をしながら美桜は言った。
2006-05-15 21:31:00 -
335:
「…家を出てからね、結局お父さんは毎月美桜の口座にお金を振り込んでるんだ。さっきのはそのお金」「親父さん、本当は美桜のこと心配してるんじゃないのか?」
2006-05-15 21:32:00 -
337:
「あの人がお金を振り込む理由は美桜が藤沢家の名前を汚さないように、世間から見て恥ずかしいことをさせないように、それだけの理由でお金を振り込み続けてるんだよ!」
2006-05-15 21:36:00 -
339:
「あの人は水商売や風俗は最低の人間がやる仕事だと思ってる。だから美桜がそんな世界に行かないようにお金を与えていれば体裁が守れると思っているんだよ!だから…だから美桜は!!…」
2006-05-15 21:38:00 -
340:
そこまで言い、耐え切れなくなったのか美桜の大きな瞳からとうとう涙がこぼれた。その涙を見られないように美桜は両手で顔を覆う。
2006-05-15 21:39:00 -
341:
そんな美桜の頭を皓輝は静かに撫でる。「美桜…」皓輝の中で様々な感情が巡っていた。その中から皓輝が美桜に一番伝えたい言葉を口にする。
2006-05-15 21:40:00 -
343:
「今でも親父さんのことが憎いならオレに話してくれていい。親父さんに反抗するためだけに水商売をしているなら辞めればいいとオレは思う」美桜は無言で皓輝を見つめる。
2006-05-15 21:42:00 -
344:
「無責任な言い方かもしれないけど今のオレは美桜に何もしてやれない。家族との仲を戻すことも、美桜を養ってやることもできない。でも…」美桜の頭を撫で続けながら皓輝は言う。
2006-05-15 21:43:00 -
348:
そう答えた皓輝に、「駄目だよ…皓輝…美桜は『良い子』でいなくちゃ…美桜の存在価値がなくなっちゃう…」と子供のような表情になり美桜は言う。
2006-05-15 21:47:00 -
349:
そんな美桜に皓輝は首を横に振る。「美桜。それは違う。今ここにこうして美桜がいること。それ自体が美桜の存在価値だよ」大きな瞳を更に見開いて美桜は皓輝を見つめる。
2006-05-15 21:48:00 -
350:
「オレは今日美桜が怒るところや誰かを憎んでいるところを初めて見たよ。でもそんな美桜を見ても嫌いになんてならない」皓輝は少しずつ少しずつだが、一生懸命思いを美桜に伝える。
2006-05-15 21:49:00 -
352:
初めて2人で出かけたあの日とは逆に今度は皓輝が美桜のことを静かに強く抱き止めていた…美桜がいつもの笑顔を取り戻せるまで…
2006-05-15 21:51:00 -
353:
美桜 ◆kJmhGaf60.
本日の更新はここまでです。本当に少なくて申し訳ないです。また明日の夜更新させていただきます。
2006-05-15 21:52:00 -
355:
美桜 ◆kJmhGaf60.
遅くなりましたが今から更新させていただきます。読んでくださっている方本当にありがとうございますm(__)m
2006-05-16 23:17:00 -
356:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side A〜美桜〜 それからの毎日は美桜にとってとても幸せな日々だった。仕事が終わると毎日まっすぐ皓輝の店に行き、毎日少しずつでも皓輝と色んな話をする。
2006-05-16 23:18:00 -
357:
店に来てくれたお客さんのこと、友人たちとご飯に行ったこと、悠馬のことや皓輝の仕事の話。そんな他愛のない会話ができる、それが今の美桜にとって一番幸せなことだった。
2006-05-16 23:19:00 -
358:
皓輝は日々本当に忙しくプライベートな時間を過ごせることなどほとんどなかった。それでも月に一度や二度、休みの日や出勤前の時間に美桜を食事やビリヤード、お世話になった先輩が経営している店など色々な所に連れて行ってくれた。
2006-05-16 23:20:00 -
360:
その日美桜は珍しく仕事中に酔っぱらってしまい、店が終わってどうやって帰ったのか記憶もなく、とにかくなんとか着替えだけを済ませ、自宅で一人潰れていた。何か物音がしたような気がして目を覚ます。ふと時計を見ると時間はa.m8:30。
2006-05-16 23:22:00 -
363:
え?」「どこだって聞いてんだよっ!!」「…家だけど…」事情はわからないがとにかく皓輝は本気で怒っているようだ。「…どうしたの、皓輝。何かあった?」「何かあったの?じゃねえんだよ!」と相変わらず怒鳴り声のまま皓輝が言う。
2006-05-16 23:25:00 -
364:
「電話にも出ない、メールも送ってこない、お前昨日一日何してたんだ!?」「はぁ!?」どうやら皓輝は昨日美桜と連絡が取れなかったことに対して怒っているようだった。
2006-05-16 23:26:00 -
365:
「昨日店で酔っ払っちゃって、そのまま家に帰って潰れてたんだけど…たった一日連絡つかなかったくらいで何そんなに怒ってるの?」訳もわからず怒られていることにさすがに美桜もムッとなり、思わず喧嘩腰で言い返す。
2006-05-16 23:27:00 -
366:
「お前今まで一日だって連絡欠かしたこと無かっただろ!そんな奴がいきなり何の連絡も無くこっちから連絡しても連絡がつかないなんて心配するだろ!!」「…心配かけたことは悪かったと思うけど、だからってそんないきなり怒鳴らなくてもいいじゃない!!」
2006-05-16 23:28:00 -
367:
「オレがどれだけ心配したと思ってるんだよ!」と皓輝も怒鳴り返す。「だから、心配させてごめんって。でも怒るにしたって理由くらい聞いてから怒ってよ!」
2006-05-16 23:29:00 -
368:
「はぁ!?お前本当に反省してんのかよ!?」とそんな遣り取りが30分程繰り返され、「つうか、お前まじむかつく」それだけを言い皓輝が電話を切った。
2006-05-16 23:30:00 -
369:
美桜は美桜で心配をかけたのは悪かったと思っていたが、あまりの皓輝のキレっぷりにかなり苛立ってたので、携帯の電源をそのまま切りベッドの上に投げ付けた。
2006-05-16 23:31:00 -
370:
カバンからタバコを取り出し火を点ける。一本吸い終わり少し冷静になって考える。(…確かにあれだけ毎日連絡してたのが、ぷっつり途切れちゃったら心配するかなぁ…)と少し反省をする。だが…
2006-05-16 23:32:00 -
371:
(それにしたってあの言い方は無いよね!?)と思い返し腹が立つ。一瞬電話をかけ直して文句を言ってやろうかと思ったのだが、二日酔いのこの頭で怒鳴り声を聞き続ける元気もなかった。
2006-05-16 23:33:00 -
373:
タイミングが悪いことは続くもので、その日から美桜は毎日アフターが続き皓輝に連絡することができなかった。あの日、夕方に起きて携帯の電源を入れ着信履歴を見返すと、皓輝からの着信がa.m12:30一時間おきで残っていた。
2006-05-16 23:34:00 -
374:
(本当に心配してくれてたんだ…)さすがに反省をし、取り敢えず「本当にごめんなさい」とだけメールはしておいた。だが、皓輝からの返事はなかった。(さすがに呆れられちゃったかな…)と美桜は落ち込んでいた。
2006-05-16 23:35:00 -
375:
あれから、6日が過ぎ美桜の誕生日の前日。やっと時間に余裕が出来、仕事が終わってから6日ぶりに皓輝に電話をする。コール音は鳴っているのだが、皓輝は出ない。
2006-05-16 23:36:00 -
376:
(忙しいのかな?また後でかけ直そう…)美桜はひとまずタクシーに乗り自宅へ戻った。自宅に着き着替えを済ませもう一度皓輝に電話をかける。…出ない。
2006-05-16 23:37:00 -
377:
皓輝はまだ怒っているのだろうか。美桜は不安に襲われた。もしかして美桜は皓輝に見捨てられてしまったのだろうか。それから何度か皓輝に電話をかけてみたのだが、やはり出ない。
2006-05-16 23:38:00 -
378:
不安が今度は心配に変わる。(もしかして皓輝に何かあったんじゃ!?)とそこで美桜はふと気付く。(あの日の皓輝もこんな気持ちだったんだ…)
2006-05-16 23:39:00 -
379:
そう思うと美桜はいても立ってもいられなくなり、皓輝の店へ電話を入れる。「…お電話ありがとうござ…」「悠馬!?」電話が繋がった途端、話し出す美桜。
2006-05-16 23:40:00 -
380:
「…美桜姉?」「うん。悠馬、皓輝は!?」「え?」「皓輝と連絡が取れないの!?店に来てる!?」「…美桜姉も連絡取れてないの?」悠馬のその一言が美桜の心配を募らせる。
2006-05-16 23:40:00 -
381:
「皓輝さん2日ぐらい前から店に来てないんですよ。連絡もないし、電話しても出ないし。今皆で美桜姉に連絡しようかどうしようか相談してたところで…」「!?」
2006-05-16 23:42:00 -
382:
「美桜姉何か心当たりない?」見えない悠馬を相手に美桜は激しく首を振る。「わかんない!!私も最近忙しくて全然連絡していなかったから…!」と半泣きになりながら答える美桜に、「美桜姉、落ち着いて!」と悠馬が慌てた様子で声をかける。
2006-05-16 23:42:00 -
383:
「たぶん皓輝さんのことだから、風邪引いて寝てるとかそんなことだと思うから。何か分かったら美桜姉にも連絡するし」「…うん」「じゃあ、美桜姉、またね」電話を切った美桜はまた不安に襲われる。
2006-05-16 23:43:00 -
384:
どうしよう…皓輝の自宅の連絡先なんて知らないし、携帯へかけても出ない。本当に風邪を引いて寝ているだけなのだろうか…それとも…何かあったのでは!?一人でいる美桜は段々パニックに襲われ始めた。
2006-05-16 23:44:00 -
385:
体が震え、息が出来ない。《過呼吸》だ。(やば…)今発作を起こすわけにはいかない。とにかく気持ちを落ち着かせようとする。だが、『もう一人』の美桜がささやく。
2006-05-16 23:45:00 -
386:
『皓輝はあんたからの電話に出たくないんだよ』『あんた皓輝に嫌われたんだよ』(うるさい、うるさい!!)美桜は必死に自分を抑える。
2006-05-16 23:46:00 -
387:
『可哀想にね。あんたこれから独りだよ』さらに『もう一人』の美桜がたたみかける。『あんたが《良い子》じゃなかったからいけないんだよ』その一言で美桜は『もう一人』の美桜に囚われた。
2006-05-16 23:47:00 -
388:
(美桜が《良い子》じゃなかったから、皓輝に嫌われたの…?)『そうだよ。だからあのクソ親父と同じようにあんたを捨てたんだよ』震える手を伸ばし美桜は化粧ボックスを摑む。
2006-05-16 23:48:00 -
389:
『《良い子》でいられないあんたなんか誰も必要としてないんだよ』(皆…美桜なんて要らないの?…)化粧ボックスを開け、美桜はある一点を見つめる。
2006-05-16 23:49:00 -
390:
『そうだよ。だからあんたなんか死んじゃえばいいんだ』見つめていた『物』を取り出す。…カミソリだった。美桜は震え続ける右手で、それでもしっかりとカミソリを握る。
2006-05-16 23:50:00 -
392:
(綺麗…)美桜は取り憑かれたように自分の傷口を見つめる。赤い筋は量を増し次第に白い部分が少なくなっていく。それでも美桜はまだ見つめ続けている。
2006-05-16 23:52:00 -
393:
10分ほどそうしていて美桜はふと我に返る。自分の両手に目をやり、激しい後悔に襲われる。(ああ…また…)美桜はまだ皓輝に言っていないことがあった。
2006-05-16 23:53:00 -
395:
体を襲う激しい苦しみがひどく長く続いているうちに美桜には今自分の身に起こっていることが現実か夢なのかその区別がつかなくなっていった。そしてそれは発作が起こっていない日常にも及び出した。
2006-05-16 23:55:00 -
396:
起きていても夢の中にいるような気分。今自分が起きているのか眠っているの、それすら区別がつかない。現実と夢の区別をつけるためには《痛み》を感じるしかなかった。
2006-05-16 23:55:00 -
398:
だが始めは区別をつけるための《痛み》だったのが次第に《不安》や《苦しみ》から逃れる手段に変わっていった。《不安》や《苦しみ》に襲われているときリストカットをすると、何故か急にすっきりする。
2006-05-16 23:57:00 -
399:
そのことに気付いてしまい、美桜はリストカットが止められなくなってしまったのだ。それ以降もう数えきれないくらい何度と無くリストカットを繰り返してきていた。
2006-05-16 23:58:00 -
402:
連絡が取れない不安と、リストカットがばれれば皓輝を失うかもしれない、という不安で美桜はまたパニックに陥りかける。(ダメ!!もう絶対にやっちゃダメ!)
2006-05-17 00:01:00 -
404:
(明日になったらきっと連絡が取れるから)(皓輝はきっと元気だから)そう自分に言い聞かせながら手当てをしている内に、睡眠薬が効き始め、美桜はそのまま眠りに落ちた。
2006-05-17 00:03:00 -
405:
このとき美桜はまだ気付いていなかった。自分がどれだけ皓輝に依存し始めているかということに。そしてそれがどれだけ《危険》なことか、ということにもまだ気付いていなかった……
2006-05-17 00:04:00 -
406:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでです。お付き合いくださいましてありがとうございました。次回更新は明日の夜になります。
2006-05-17 00:05:00 -
408:
ラビ
主さん忙しいん?(;Д;)
2006-05-20 09:28:00 -
409:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ラビさんお待たせして申し訳ありませんっm(__)m急な仕事が入りバタバタしています。今暫らくお待ちいただけると幸いです。
2006-05-20 16:26:00 -
410:
名無しさん
昨日ここまで全部読みました。
更新楽しみにしています。2006-05-23 23:32:00 -
411:
美桜 ◆kJmhGaf60.
お待ちいただいていた方大変申し訳ありませんでした。今から少しだけですが更新させていただきます。
2006-05-24 00:32:00 -
412:
今日になってやっと熱も下がり、何とか店にも行けそうだった。(ヤベ、オレ全然連絡してなかった…)携帯を見ると不在着信だらけだった。店、従業員、客、そして…美桜。
2006-05-24 00:34:00 -
413:
この間喧嘩をして以来美桜とは連絡が取れていなかった。あの日、電話を切った後散々悠馬たちに『言い過ぎ』と言われ何となく皓輝からは連絡がしにくかったのだ。
2006-05-24 00:35:00 -
414:
それに美桜も怒っているのか全然連絡をしてこなかったので、結局ちゃんとした仲直りもできていない。(美桜、心配してるかな)と思い電話をかけようとしたのだが、時間を見るとまだ美桜は仕事中の時間だった。
2006-05-24 00:36:00 -
417:
電話をかける『口実』を見つけ、美桜の仕事が終わった時間にでも電話をしてみようと思いなおし、ひとまず悠馬に電話をかけた。コール音。「…皓輝さん!!」慌てたような悠馬の声が電話の向こうから聞こえる。
2006-05-24 00:40:00 -
418:
「おはようさん」「おはようさん、じゃないっすよ〜!!連絡も無しに3日間何してたんっすか!?」と悠馬が怒る。「悪い。風邪引いて寝込んでた」
2006-05-24 00:41:00 -
419:
「それにしたってメールくらいできるでしょう!!俺らどれだけ心配したと思ってるんすか〜」と最後の方は情けない声になりながら悠馬が言う。「まじ、ごめん。熱出てて、メールすらできる状況じゃなかったから」「まぁ、無事ならいいんっすけどね」
2006-05-24 00:42:00 -
420:
悠馬のあまりに情けない声に苦笑しながら、「で、3日間無事だった?」と尋ねる。「無事じゃないっすよ〜。皓輝さんのお客さんたちから電話鳴りっぱなし」
2006-05-24 00:43:00 -
421:
「あぁ、オレの携帯もすっげぇ着信してたわ」「…でしょうね」と悠馬も苦笑しながら言う。よっぽど店にも客からの電話が入っていたのだろう。
2006-05-24 00:44:00 -
422:
「あ」と思い出したように悠馬が言う。「昨日美桜姉からも電話ありましたよ」「…何て?」突然美桜の名前が出て何故か皓輝は動揺する。
2006-05-24 00:45:00 -
423:
「皓輝さんと連絡取れないから何かあったのかって。でも何かちょっと様子変でしたよ」と心配そうに悠馬がいう。「どういう風に変だった?」「なんかすっげー焦ってて、泣きそうな声でした」「……」
2006-05-24 00:47:00 -
424:
何かあったのだろうか。皓輝は不安になる。「…ダメっすよ、あんまり美桜姉に心配かけちゃ」「ああ。後で美桜に電話しとくわ。で、今日からは出勤するわ」「あ、はい。じゃあ、また後で」
2006-05-24 00:48:00 -
425:
悠馬との電話を切り皓輝は美桜に電話をしょうか悩む。どうせ仕事中なので出ないだろうが悠馬から聞いた美桜の様子が気になる。
2006-05-24 00:49:00 -
427:
5コールほど鳴らしたが出ないので電話を切ろうとした時「…はい」と美桜が電話に出た。「美桜ごめん、オレ昨日まで風邪引いてて連絡できなかった。電話もらってたけど、何かあった?」
2006-05-24 00:52:00 -
428:
「…ううん、特に」電話から聞こえる美桜の声は何となく元気がなかった。「皓輝、もう大丈夫なの?」「ああ。今日から店にも出ようと思ってる」「そう…あんまり無理しちゃダメだよ」
2006-05-24 00:52:00 -
429:
そういう美桜の声はやはり元気がない。「美桜、何か元気ないけど、どうした?」「そう?少し疲れてるだけだよ」「そっか。って、今日仕事は?」まだp.m.9:00なので本当なら美桜は仕事中のはずだ。
2006-05-24 00:53:00 -
430:
「疲れてるから今日は休んだの」「そんなに具合悪いのか?」「ううん、半分はサボりみたいなもんだから、大丈夫だよ」「そっか。それならいいけど…」
2006-05-24 00:54:00 -
431:
美桜は大丈夫だというがどうも様子がおかしい。だがいくら聞いたところで美桜はきっと大丈夫、としか言わないだろう。そう思いながら、「美桜、今日ミナミまで出てくる元気ある?」と尋ねる。
2006-05-24 00:55:00 -
432:
「…出るには出られるけど、お酒飲む元気はないかな」と一瞬ためらってから美桜は答える。「じゃあ、オープン前でもいいから時間ない?」「…いいよ。何時にどこ?」
2006-05-24 00:56:00 -
433:
美桜の誕生日プレゼントは店に置いてきてしまっていたので、「10:30に店前で大丈夫か?」「OK。じゃあまた後で」それだけ言って電話は切れた。
2006-05-24 00:57:00 -
435:
用意を終え、タクシーに乗りメールのチェックをする。『皓輝、どこで何をしてるの!?』『電話ぐらい出てよ!』と客たちからのメールはそんな内容ばかりだった。皓輝はうんざりし、返事をすることなく携帯を閉じる。
2006-05-24 00:59:00 -
436:
ミナミに着き早足で店に向う。p.m.10:15。約束の時間まで後15分だった。店の鍵を開け照明をつける。3日ぶりの店がなんだか少し懐かしかった。
2006-05-24 01:01:00 -
438:
約束の時間まで皓輝は3日間の売り上げのチェックや仕入れのチェックなどをしながら時間を過ごす。どうやら悠馬たちは皓輝が不在の間でもちゃんと仕事をしてくれていたようだ。
2006-05-24 01:03:00 -
439:
(あいつら、やれば出来るじゃないか…)と日頃の世話のやかされぶりを思い返し、少し腹が立つ。そう思っていると携帯が鳴った。《着信 美桜》
2006-05-24 01:04:00 -
440:
「はい」「今店の下。上がっていけばいい?」「ああ。鍵開けてるから入ってきて」そう言って電話を切り皓輝はふと気付く。(プレゼントってどうやって渡せばいいんだ?)
2006-05-24 01:04:00 -
441:
今まで皓輝は客はもちろん彼女ですらプレゼントなんてしたことがなかった。一緒に出かけたときに何かを買ってやったりとか、金を渡し好きなものを買ってこい、といったことはある。
2006-05-24 01:05:00 -
443:
「おはよ」と微笑みながら美桜が言う。やはり少し元気がないのだが、皓輝は(どうやってプレゼントを渡すか?)に気を取られているので、気がつかない。「おはようさん」とぎこちなく返す。
2006-05-24 01:07:00 -
444:
「思ってたより元気そう。良かった」と美桜が言う。「昨日までは大変だったけどな」と平静を装い皓輝は返事をする。美桜は皓輝のいるテーブルまで歩いてきて皓輝の隣に座る。
2006-05-24 01:09:00 -
446:
そう返事をしながらも皓輝は上の空だ。プレゼントのことばかりが頭を占めている。「皓輝?何かあったの?」とそんな皓輝を見て美桜が尋ねる。
2006-05-24 01:10:00 -
447:
「何で!?」「何か今日の皓輝ヘンだよ?」その言葉に皓輝は動揺する。「…そうか。」とだけかろうじて返事をする。「うん」と頷く美桜。沈黙が流れた。
2006-05-24 01:11:00 -
448:
皓輝は本当にどうしていいのかわからなくなり、背中の後ろに置いてあったプレゼントを摑み「やる」と突き出した。きょとんとした顔で美桜が皓輝を見る。
2006-05-24 01:12:00 -
449:
「何?」「だから、やる」と同じ言葉だけを繰り返す。不思議そうな顔をしながら美桜が受け取る。中を覗き「…皓輝…これ」と皓輝に尋ねる。
2006-05-24 01:13:00 -
450:
「今日お前誕生日だろ。だから…」「!?…ありがとう…開けていい?」「ああ」美桜は紙袋から中身を取り出し丁寧に開ける。そこに入っているのはReturn to TIFFANYのシルバーネックレス。
2006-05-24 01:14:00 -
451:
ネックレスを見つめ美桜は無言だった。「美桜…?」気に入らなかったのだろうか。恐る恐る皓輝は声をかける。美桜が顔を上げた。その顔を見て皓輝は驚いた。
2006-05-24 01:16:00 -
452:
美桜は瞳に涙を浮かべている。「!?どうした?」訳がわからず皓輝は動揺する。「…ごめん。凄い嬉しくて。皓輝、本当にありがとう」どうやら嬉し涙らしい。
2006-05-24 01:17:00 -
454:
「これ、皓輝が選んでくれたの?」「オレ以外に誰が選ぶんだよ…」その場面を想像したのだろうか、「…似合わない」と少し笑いながら美桜が言う。
2006-05-24 01:19:00 -
455:
「本当にありがとう。可愛いね」よほど嬉しいのか美桜は何度もありがとうを言う。「つけていいかな?」「…そのために買ったんだけど」
2006-05-24 01:19:00 -
456:
「そうだよね」と自分のせりふに苦笑しながら美桜はネックレスをつけようとした。ネックレスをつけようとしている美桜を見ているうちに皓輝の視線が美桜の左腕に止まる。
2006-05-24 01:20:00 -
457:
袖口からのぞく傷。まさか…!?ネックレスをつけ皓輝の顔を美桜が見る。皓輝の表情の変化に気づき「どうしたの?」と美桜が聞く。「皓輝、恐い顔してるよ?」
2006-05-24 01:21:00 -
458:
そういう美桜に無言で手を伸ばし左手を摑もうとする。「!?」驚いたように美桜が左手を引こうとする。それより素早く手を伸ばし腕を摑みシャツをめくる。
2006-05-24 01:22:00 -
459:
「!?」そこには真新しい傷と、それ以外にも無数の古い傷跡があった。「…お前、これ…」視線を逸らす美桜。「美桜…お前!?」「何でもないよ。ちょっと猫にひっかかれただけ…」
2006-05-24 01:23:00 -
460:
摑まれた腕を慌てて引きシャツをおろす。「…本当のこと言えよ」低い声で皓輝が言う。「…本当に何でもないから」と視線を逸らしたまま美桜は言う。「美桜!!」大声で名前を呼ばれ美桜の体はびくっとする。
2006-05-24 01:24:00 -
461:
「オレには本当のこと言う約束だよな」はっとしたように皓輝の顔を見る美桜。「…オレの客にも何人か似たような傷のある奴がいる。そいつらは…」
2006-05-24 01:25:00 -
463:
「…何で!?」「苦しくて…」と本当に苦しそうな表情で美桜は言う。「何が苦しかったんだ!?何があったんだ!?」「……」「美桜!!」
2006-05-24 01:27:00 -
464:
なかなか話そうとしない美桜に少し苛立つ皓輝。どんな理由があったとしてもやっていいことと悪いことがある。「…皓輝がいなくなっちゃうかもって思ったら…」「え?」
2006-05-24 01:27:00 -
465:
「昨日、皓輝と連絡が取れなかったでしょ?」「ああ」「だからお店に電話したの。そしたら悠馬が出て何日か前から皓輝と連絡が取れないって言うから…」
2006-05-24 01:28:00 -
466:
俯きながら美桜が言う。「…もしかしたら、皓輝に何かあったんじゃないかって思って…」「だからって、何で…」理由がわからず皓輝は苛立つ。「だからって、何でそんなことするんだよ!?」
2006-05-24 01:29:00 -
467:
「…だって!」と美桜は皓輝の顔を見ながら、「皓輝がいなくなるなんて耐えられないんだもん…皓輝がいなくなっちゃうかもしれないって思ったら恐かったんだよ!」と叫ぶ。そして
2006-05-24 01:30:00 -
470:
美桜以外の女にその台詞を言われたならきっと重たくてウザくて仕方がなかっただろう。だが皓輝の首にしがみつく美桜を皓輝は『愛おしい』と思った。
2006-05-24 01:33:00 -
472:
「ああ。だから二度とこんな馬鹿なことはするな」「美桜がいなくなるなんて、オレには考えられない…」そういいながら皓輝は美桜がいなくなることを想像してみる。
2006-05-24 01:35:00 -
476:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。少し忙しくしているので、次回の更新のお約束はできませんが、どんなに遅くても完結させますのでお付き合いいただければ幸いです。
2006-05-24 01:38:00 -
477:
美桜 ◆kJmhGaf60.
読んで下さっている皆様、本当にありがとうございます。
2006-05-24 01:39:00 -
478:
ラビ
わーい\(o゚ω゚o)/たくさん更新されてる↑↑無理せず頑張って下さいね。
2006-05-24 01:55:00 -
479:
sage
待ってます!
2006-06-04 22:01:00 -
482:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ラビさんを始めお待ちいただいていた皆様大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
今から再開させていただきます。2006-06-14 00:43:00 -
483:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side A~美桜〜 皓輝と出逢って初めての冬を迎えた。平穏な日々。生まれてきてから一番平穏で幸せな日々が続いている。
2006-06-14 00:44:00 -
484:
美桜 ◆kJmhGaf60.
もちろん時にはささいなことで喧嘩をすることもあった。だが初めて喧嘩をして以来2人で約束したことがあった。『喧嘩は1日で終わらす』こと。
2006-06-14 00:45:00 -
485:
美桜 ◆kJmhGaf60.
例えば『ごめんなさい』と言ったのに、その話題を次の日に蒸し返したり、話し合うことも無くお互い意地を張って何日も過ごしたり…
2006-06-14 00:46:00 -
486:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんなことが無いように、腹が立ったことがあればその日に言い、その日の内に解決すること。それが2人の間の数少ない約束の内の1つだった。
2006-06-14 00:47:00 -
487:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その約束のお陰で衝突することはあっても、次の日には必ずいつも通りの2人でいられた。
2006-06-14 00:48:00 -
488:
美桜 ◆kJmhGaf60.
こんなにも自分を出すことが出来て、そして相手も『素』で接してくれる。美桜は貴重な経験だった。
2006-06-14 00:49:00 -
489:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そして現在でもはっきりと覚えている『あの日』。美桜にとって人生で最良の日…
2006-06-14 00:50:00 -
490:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日は1月2日。時間はa.m.4:00。皓輝は毎年恒例の従業員全員でのカウントダウンのために12月31日から今日の夕方ぐらいまで神戸へ出かけていた。
2006-06-14 00:51:00 -
491:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが皓輝は1日になった瞬間、『あけましておめでとう』と電話をくれた。他にもかけなければいけないところはあるはずなのに、一番に美桜にかけてきてくれた。
2006-06-14 00:52:00 -
492:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう思うと美桜は一人で過ごす正月も寂しくはなかった。1人でのんびり正月番組などを見ながら過ごしていると、気がつけばこんな時間になっていた。
2006-06-14 00:53:00 -
493:
美桜 ◆kJmhGaf60.
(そろそろ寝ようかなぁ)そう思っていると《着信 皓輝》
2006-06-14 00:54:00 -
494:
美桜 ◆kJmhGaf60.
はぁい」「起きてた?」「起きてたよ〜」少し寝ぼけているような皓輝の声が受話器から聞こえてくる。
2006-06-14 00:55:00 -
495:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「どしたの?こんな時間に」「いや、特に用事はないんだけどな。何となく」「そっか。美桜は今から寝ようかな〜と思ってたところ」
2006-06-14 00:56:00 -
496:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「寝てないのか?」「何となくテレビ見てたら寝そびれちゃって」と苦笑しながら美桜は言う。
2006-06-14 00:57:00 -
497:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「暇だったら少し出てこないか?」「今からぁ?」と突然の皓輝の誘いに驚く美桜。「無理?」「無理じゃないけど、すぐには…」と美桜が返すと、
2006-06-14 00:58:00 -
498:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ああ、どうせオレも今から用意しないといけないし…」「じゃあ朝ご飯でも食べに行く?今からだとあんまりにも中途半端な時間じゃない?」「そうだな」
2006-06-14 00:59:00 -
499:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「じゃあ、7時にいつもの場所で待ち合わせね」「おう」と言って電話は切れた。
2006-06-14 01:00:00 -
500:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝はいつも突然美桜を誘う。でも美桜も日にちを決めて遊びに行く、というのが凄く苦手なので皓輝のペースは美桜にとってはちょうど良かった。
2006-06-14 01:01:00 -
501:
美桜 ◆kJmhGaf60.
知り合って半年が過ぎたがちゃんと予定を立ててから出かけたのはほんの2、3回程度だった。皓輝との約束の時間まではまだ間があるので部屋を片付けたりしながら時間を過ごす。
2006-06-14 01:02:00 -
502:
美桜 ◆kJmhGaf60.
しばらくして時計と見るとそろそろいい時間だったので用意をし始め、タクシーを呼び出かける。待ち合わせの場所に着いたのはa.m.6:50。
2006-06-14 01:03:00 -
503:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜は待ち合わせをするときいつも少し早めに行き皓輝を待つ。皓輝を待っている時間が好きだった。待っている間は1人だが時間になると皓輝がやって来る。
2006-06-14 01:04:00 -
504:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝がこちらに歩いてくる姿を見ているときが何故か一番孤独が癒される。『1人ではない』何故かそう強く思える。だから美桜は皓輝を待つのが大好きだった。
2006-06-14 01:05:00 -
505:
美桜 ◆kJmhGaf60.
a.m.7:10。いつも通り皓輝が時間に少し遅れてやって来る。「おはよ〜」「おはようさん」いつものやりとりだ。
2006-06-14 01:06:00 -
506:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「寒いね〜」「外じゃなくて、中で待っていれば良かったのに」そう言いながら皓輝は店のドアを開け美桜を中に入れてくれる。
2006-06-14 01:07:00 -
507:
美桜 ◆kJmhGaf60.
案内された席に座り皓輝の顔を見る。たった2・3日会っていないだけなのに、なんだか既に懐かしい。「どした?」と皓輝が尋ねる。
2006-06-14 01:08:00 -
508:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「いやぁ、好きだなぁと思って」「は!?」と皓輝が照れながら返事をする。「人が素直な気持ちを言ってるのに、『は!?』はないでしょ」と笑いながら美桜が言うと、
2006-06-14 01:09:00 -
509:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「お前が突然ヘンなこと言うから…」照れ隠しなのかタバコに火をつけながら皓輝は言う。
2006-06-14 01:10:00 -
510:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「何か2人でゆっくりするの久しぶりだね〜」「ああ、クリスマスからこっち何かとバタバタしてたからなぁ」としみじみ皓輝は言う。
2006-06-14 01:11:00 -
511:
美桜 ◆kJmhGaf60.
本当に年末の皓輝は忙しそうだった。クリスマスイベントから始まり、店の大掃除、30日には常連だけを呼んで店を開け、いつもの感謝の気持ちを込めて打ち上げ会。
2006-06-14 01:12:00 -
512:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その後は従業員たちとのカウントダウン。そして今日。「今日はゆっくりしていれば良かったのに」「まぁ、でもまとめて休みが取れるのは正月と盆くらいだからな。盆は慰安旅行があるし」
2006-06-14 01:13:00 -
513:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝の店のオーナーは『客よりオレ優先!!』とお客さんにも公言しているほど、従業員と過ごす時間が大好きな人なので、休みがあれば皓輝はオーナーに呼び出されている。
2006-06-14 01:15:00 -
514:
美桜 ◆kJmhGaf60.
もちろんオーナーは美桜と皓輝の関係を知っているがそれでも関係無しに皓輝を連れ回す。美桜はオーナーとも仲が良いので腹は立たないが、たまにやきもちを焼きたくなるほどだ。
2006-06-14 01:15:00 -
515:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう言えば皓輝の正月の予定を聞いていなかったことに気付き、「お正月、っていっても今日と明日だけだけど、どうするの?」
2006-06-14 01:17:00 -
516:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「今日は後で実家に帰る。で、そのまま実家に泊まって4日は実家から出勤予定」皓輝のお母さんは体が弱いので、今は実家を出ている皓輝もちょくちょく帰ってはいるのだが、ゆっくり実家にいられるときは母の傍にいてやりたいのだろう。
2006-06-14 01:18:00 -
517:
美桜 ◆kJmhGaf60.
家族と仲の良さそうな皓輝を見ていると正直羨ましく思う。自分が家族と上手くいっていないからこそ、皓輝が実家でゆっくりしたいというならそうさせてあげたい。
2006-06-14 01:19:00 -
518:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…ゆっくりできると良いね」「ああ。でも親戚とか集まってきてるだろうからなぁ…」と苦笑しながら皓輝は言う。「休みなのに酒呑まされそう」「ほどほどにね」
2006-06-14 01:20:00 -
519:
美桜 ◆kJmhGaf60.
とそこで少しふざけて美桜は「美桜も行こうかなぁ」「どこに?」「皓輝の実家に」と言うと皓輝が食べていたご飯を吹き出す。
2006-06-14 01:21:00 -
520:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「!?ちょっと汚ぁい!!」と美桜は慌ててよける。「お前がヘンなこと言うから…」「何で?」「突然正月なんかに連れて帰ってみろ。何言われることやら…」
2006-06-14 01:22:00 -
521:
美桜 ◆kJmhGaf60.
母や親戚に囲まれ質問攻めにあっている場面を想像したのか、うんざりした様子で皓輝が言う。
2006-06-14 01:23:00 -
522:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「冗談だよ。そんな非常識なことするわけないじゃん」と本音では少し寂しいのだがそんなことは口には出さず美桜は笑いながら言う。
2006-06-14 01:24:00 -
523:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな美桜の様子を見ながら皓輝がぼそっと、「…まぁ、焦らなくても20年後にオレの親戚はお前の親戚になってるから…」と言う。
2006-06-14 01:25:00 -
524:
美桜 ◆kJmhGaf60.
言われた言葉の内容を一瞬考え美桜は「皓輝…それって…」(プロポーズ?)と思いながらもその言葉は飲み込む。
2006-06-14 01:26:00 -
525:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…だから、そういうこと…」と美桜の方を見ずに皓輝は言う。思い切り顔を赤くしながら。
2006-06-14 01:27:00 -
526:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜は嬉しくて泣きそうになりながらも、わざとからかい口調で「え〜、20年後も美桜が皓輝の傍にいると思ってるところが凄いよね〜。どっからそんな自信が!?」と言うと、
2006-06-14 01:28:00 -
527:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「オレより良い男はそうそういないから」と皓輝もふざけて言い返す。どちらからともなく2人は笑い出す。
2006-06-14 01:29:00 -
528:
美桜 ◆kJmhGaf60.
…本当に現在思えばこの「時間」が一番幸せだったと美桜は思う。時間を戻せるなら、この頃に戻りたいと、現在の美桜は強く願い続けている…
2006-06-14 01:30:00 -
529:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでです。お待ちいただいていた皆様本当にありがとうございます。お待たせしてしまった時間を少しでも取り返せるようにまた更新頑張っていきたいと思っています。
2006-06-14 01:31:00 -
530:
名無しさん
?
2006-06-14 09:47:00 -
531:
ラビ
わーい\(o゚ω゚o)/久々だぁ。完結まで頑張ってくださいね??
2006-06-14 10:27:00 -
532:
美桜
ラビさん素早いレス&励ましのお言葉ありがとうございますm(__)m頑張ります!
2006-06-14 13:04:00 -
533:
美桜 ◆kJmhGaf60.
本日分の更新をさせていただきます。読んで下さっている皆様本当にありがとうございますm(__)m
2006-06-15 21:23:00 -
534:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side B〜皓輝〜 正月も明け、ミナミの街もいつもどおりの賑やかさを取り戻している。
2006-06-15 21:24:00 -
535:
美桜 ◆kJmhGaf60.
(今年でこの世界に入ってもう五年か…)そんなことを考えながら皓輝はミナミの街を眺めていた。
2006-06-15 21:25:00 -
536:
美桜 ◆kJmhGaf60.
この街は『虚飾』の街だと皓輝は思う。華やかなネオンの裏には目を覆いたくなるほど暗い背景が隠されている。
2006-06-15 21:26:00 -
537:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな世界に生き続けて早五年。この世界で皓輝が得たものといえば『金』だった。
2006-06-15 21:27:00 -
538:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな金では一家を養ってはいけない。もっとたくさんの金が欲しくて17歳の時に水商売の世界に足を踏み入れた。
2006-06-15 21:29:00 -
539:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝には父親がいない。父は皓輝が幼い頃に会社の金を横領し逮捕された。それからの父の消息は知らない。
2006-06-15 21:30:00 -
540:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今も獄中にいるのか、それとも出所してどこかで生きているのか。父は会社の金に手をつけただけでなく、金融からもたくさんの金を借りていた。…母を保証人にし。
2006-06-15 21:31:00 -
541:
美桜 ◆kJmhGaf60.
おかげで父が獄中に入ってからというもの毎日のように取り立て屋が皓輝の家を訪れた。
2006-06-15 21:32:00 -
542:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そのせいで元々丈夫ではなかった母は肉体的にも精神的にも追い詰められ、寝込むことが多くなり生活はいっそう苦しくなった。
2006-06-15 21:33:00 -
543:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな子供時代を過ごしてきていたので、皓輝は人一倍『金』に執着をするようになった。
2006-06-15 21:34:00 -
544:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そして水商売の世界は驚くほどの金を皓輝にもたらした。給料以外にも客が色んな物を貢いでくれる。
2006-06-15 21:35:00 -
545:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝が水商売にはまってしまうのにそんなに時間はかからなかった。
2006-06-15 21:36:00 -
546:
美桜 ◆kJmhGaf60.
売り上げを上げるためにずいぶんひどいこともした。ボトルを卸すのを嫌がった客を蹴ったり、未収を飛んだ客に追い込みをかけ風俗に落としたり。
2006-06-15 21:37:00 -
547:
美桜 ◆kJmhGaf60.
幼い頃皓輝を、皓輝の家族を苦しめた復讐をするかのように客たちに当たった。
2006-06-15 21:38:00 -
548:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だがそんな自分に正直うんざりしはじめていた。そんな時に美桜に出会ったのだ。
2006-06-15 21:39:00 -
549:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜も『父』に苦しめられ未だにその呪縛から抜け出すことが出来ない。父を恨み、そして自分を呪っている。
2006-06-15 21:40:00 -
550:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが美桜には皓輝との決定的な違いがあった。美桜は『真っ直ぐ』だった。
2006-06-15 21:41:00 -
551:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝は自分を苦しめた父の変わりに客を苦しめて来た。客たちが稼いでる以上の金を使わせ、払えなくなれば体を売らす。
2006-06-15 21:42:00 -
552:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな風に『金』に対する復讐をしてきた。
2006-06-15 21:43:00 -
553:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが美桜は自分が苦しんできた分、周りに優しくしようとする。どれだけ救いようがない人間でも手を差し伸べようとする。
2006-06-15 21:44:00 -
554:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だからこそ皓輝は美桜に惹かれたのだ。
2006-06-15 21:44:00 -
555:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜を幸せにしてやりたい。心からそう思う。お互いに子供時代に家庭に恵まれなかった分、幸せな家庭というものを美桜と一緒に築いていきたい。
2006-06-15 21:45:00 -
556:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが、美桜と過ごす時間が増えれば増えるほど、育ってきた環境の違いに直面させられる。
2006-06-15 21:47:00 -
557:
美桜 ◆kJmhGaf60.
裕福に育ってきた美桜。皓輝も今は自分で稼いでいるとはいえ、美桜が育ってきた環境とはずいぶん違いがある。そんな2人が上手くやっていけるのだろうか…
2006-06-15 21:48:00 -
558:
美桜 ◆kJmhGaf60.
それに皓輝は『犯罪者』の息子なのだ。そんなことが美桜の実家にバレてしまえば、当然2人は引き裂かれるだろう。
2006-06-15 21:48:00 -
559:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜と自分の置かれている環境を思えば、離れた方がいいのかもしれない……最近ではそう思うことすらある。
2006-06-15 21:49:00 -
560:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが、美桜が皓輝がいなくては息が出来ない、というように皓輝だって美桜がいない生活なんて考えられない。
2006-06-15 21:50:00 -
561:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜と一緒にいたい、という気持ちと、美桜のことを思えばこそ離れてしまった方が…という気持ちの間で日々皓輝は揺れていた。
2006-06-15 21:51:00 -
562:
美桜 ◆kJmhGaf60.
この日も、そんなことを考えながらミナミの街を歩いていた。そこへ《メール受信 美桜》。
2006-06-15 21:52:00 -
563:
美桜 ◆kJmhGaf60.
時間を見ると、美桜の出勤時間だったので、いつもの『いってきます』というメールだろうと思いながら受信メールを開いた。
2006-06-15 21:53:00 -
564:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だがそのメールには予想もしなかった言葉が書かれていた。
2006-06-15 21:54:00 -
565:
美桜 ◆kJmhGaf60.
『ごめんなさい。実家に引き戻されてしまって暫く皓輝とも連絡が取れそうにありません。もうすぐこの携帯も取り上げられてしまいそう。でも、きっと必ず皓輝の傍へ帰るから待っていて』
2006-06-15 21:56:00 -
566:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そのメールを最後に現在も美桜からの連絡は無い。美桜、現在どこでどうしている?ちゃんと笑ってるか?幸せにしているか?
2006-06-15 21:57:00 -
567:
美桜 ◆kJmhGaf60.
現在お前がオレの傍にいないのは、あの日、『離れてしまった方がいい』と思ったオレに対する罰なのか?
2006-06-15 21:58:00 -
568:
美桜 ◆kJmhGaf60.
現在なら言える。『お前を幸せにする』と。だから美桜、オレの傍に帰ってきてくれ。
2006-06-15 21:58:00 -
569:
美桜 ◆kJmhGaf60.
どれだけの時間が過ぎようとお前の帰りを待っているから……
2006-06-15 21:59:00 -
570:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。ありがとうございました。
2006-06-15 22:00:00 -
571:
コアラ
?しおリ?
2006-06-15 22:28:00 -
572:
美桜
コアラさん、しおりありがとうございますm(__)m
2006-06-16 12:59:00 -
573:
名無しさん
楽しみにしてます?頑張ってください??
2006-06-16 13:06:00 -
574:
名無しさん
この小説大好きです。頑張ってください!
2006-06-16 18:24:00 -
575:
美桜 ◆kJmhGaf60.
読んで下さっている皆様ありがとうございます。励ましのお言葉凄く嬉しいです。
今から少しだけですが更新させていただきます。2006-06-17 00:22:00 -
576:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side A〜美桜〜 皓輝と引き離されてどれだけの時間が経ったのだろう。……あの日、マンションのチャイムが鳴ったので、ドアを開けるとそこには厳しい顔をした父と、怯えたような母が立っていた。
2006-06-17 00:23:00 -
577:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「何の用?」そう言った美桜はいきなり父に殴られた。衝撃のあまり息が出来ず、頬を押さえる美桜に父は、「このマンションの契約は解約した。今すぐ引っ越しの準備をしろ」
2006-06-17 00:24:00 -
578:
美桜 ◆kJmhGaf60.
それだけ言い、部屋に入り荷物を持ち出そうとした。「ちょっと!!どういうことよ!?」慌てて父を追いかけ理由を問いただそうとする。
2006-06-17 00:25:00 -
579:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「どういうことだと!?藤沢家の娘が水商売で生計を立てるなんてそんなことが許されると思っているのか!?」と怒鳴りつける父。…バレたのだ。
2006-06-17 00:26:00 -
580:
美桜 ◆kJmhGaf60.
舌打ちをしたいほどの思いを押さえながら美桜は父に言う。「もう私は藤沢家とは関係の無い人間でしょ。そんな人間が何をやっていようとあんたには関係ない」と言うと、もう一度殴られた。
2006-06-17 00:27:00 -
581:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「事実がどうであれ、世間から見ればお前が藤沢家の娘であるということに変わりは無い。そんなこともわからんのか!」
2006-06-17 00:28:00 -
582:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「わからないわよ!私はあんたなんか知らない。もう藤沢の家は捨てたのよ!!」と美桜は全身で叫んだ。「美桜ちゃん…」とおろおろしながら母が声をかける。
2006-06-17 00:29:00 -
583:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「今はお父さんの言うことを聞いて…」「…お母さん。私は本当に家になんか帰りたくないのよ…またあんな地獄のような日々を過ごせというの?」と静かに美桜は母に言う。
2006-06-17 00:30:00 -
584:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…何の自由も無く、私に対する理解も無く、ただ人形のように日々を過ごす。そんな生き方に生きてる意味はあるの?」
2006-06-17 00:32:00 -
585:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜の言葉に母は目を見開きながらも、「それでも、死んでしまうよりは希望も持てるでしょう?」「…またあんな日々を過ごすくらいなら死んだ方がましよ」吐き捨てるように、美桜は言う。
2006-06-17 00:33:00 -
586:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その台詞を聞いた父が、「そうだな。いっそ死んでくれた方が藤沢家も恥をかかずに済む」と言った。
2006-06-17 00:34:00 -
587:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その台詞を聞いた途端、美桜の中で何かが切れた。『コノ人ハ本当ニ自分ノコトシカ考エテイナインダ』
2006-06-17 00:34:00 -
588:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…だったら、死んでやるわよ!」そう叫び、寝室に取って返し、化粧ボックスの中からカミソリを取り出し手首にあて一気に引いた。
2006-06-17 00:35:00 -
589:
美桜 ◆kJmhGaf60.
溢れ出す鮮血。叫ぶ母の声。それが美桜の『城』での最後の記憶だった。
2006-06-17 00:36:00 -
590:
美桜 ◆kJmhGaf60.
次に気がついたときには病院のベッドに寝かされていた。死ねなかったのだ。『死んでくれた方がまし』と言いながらも、いざその場面に直面すると、死なせることも出来ずに病院に運んだのだろう。
2006-06-17 00:37:00 -
591:
美桜 ◆kJmhGaf60.
自殺なんてされればまた藤沢家の対面が汚れるから。矛盾している。父の中で美桜は生きていても死んでしまっても『恥』なのだ。
2006-06-17 00:38:00 -
592:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう思うとおかしくなり美桜は独りベッドの上で声を出して笑った。美桜が生きていることで父を苦しめ続けることができるのであれば、それも良いかも知れない。
2006-06-17 00:39:00 -
593:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そこへ母が入って来た。「美桜ちゃん。どうしたの?」独り笑う美桜に母が心配そうに声をかける。「どうもしないわよ。何?」「美桜ちゃん、これ…」と言いながら美桜の携帯電話を差し出した。
2006-06-17 00:40:00 -
594:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「もうすぐこの携帯電話も止められてしまうの。だから今のうちにどうしても連絡を取りたい人に事情だけでも説明しておいた方が…」美桜は驚いて母を見る。
2006-06-17 00:41:00 -
595:
美桜 ◆kJmhGaf60.
どうせ携帯を止めろ、と父が言ったのだろう。だが、美桜は今まで母が父に逆らったところなど見たことが無い。その母が父に逆らって美桜にまだ使える携帯を渡すなんて…
2006-06-17 00:42:00 -
596:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「お母さん、どうしたの?そんなことがバレたらあいつに怒られるよ?」
2006-06-17 00:44:00 -
597:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「そうね…でも、お母さんだって美桜の幸せを望んでいないわけじゃないのよ?家を出ていた間に、美桜ちゃんにも大事な人はできたでしょう?せっかく出来た大事な人をこんな形で失って欲しくないから…」
2006-06-17 00:45:00 -
598:
美桜 ◆kJmhGaf60.
と母は寂しそうに微笑みながら言う。「ごめんね。お母さん頼りなくて…」あの大人しい母がそんなことを考えていたなんて。
2006-06-17 00:47:00 -
599:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…ありがとう…」美桜がそういうと母は、「いいのよ」とそれだけ言い病室を出て行った。
2006-06-17 00:48:00 -
600:
美桜 ◆kJmhGaf60.
渡された携帯を眺めながら美桜は考えた。連絡を取りたい人。そんな人はもちろん一人だけ。皓輝だ。
2006-06-17 00:49:00 -
601:
美桜 ◆kJmhGaf60.
でも、何と言って今の状況を説明すればいいのだろう。下手に皓輝を巻き込みたくない。
2006-06-17 00:50:00 -
602:
美桜 ◆kJmhGaf60.
結局考えたあげくにどう取り繕っても仕方がないと思い詳しい事情は説明できないが、
2006-06-17 00:51:00 -
603:
美桜 ◆kJmhGaf60.
『ごめんなさい。実家に引き戻されてしまって暫く皓輝とも連絡が取れそうにありません。もうすぐこの携帯も取り上げられてしまいそう。でも、きっと必ず皓輝の傍へ帰るから待っていて』
2006-06-17 00:52:00 -
604:
美桜 ◆kJmhGaf60.
とメールをした。本当は電話にしたかった。でも皓輝の声を聞いてしまえば今すぐにでも飛び出して皓輝の元へ行きたくなるのはわかっていた。
2006-06-17 00:53:00 -
605:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だがそれをしてしまうと、ここまで強硬な手段に父が出た以上最初の家出のときのようにすんなりはいかないだろう。
2006-06-17 00:54:00 -
606:
美桜 ◆kJmhGaf60.
きっと父は皓輝の元へ行き、美桜を関わるなと言うだろう。それだけは絶対に避けたい。しばらく我慢していればまた逃げ出せる機会はあるだろうから…
2006-06-17 00:55:00 -
607:
美桜 ◆kJmhGaf60.
1週間ほど経って退院が許された。退院の日美桜は母に連れられて何年かぶりに実家へ足を踏み入れた。21年間過ごしてきた実家。
2006-06-17 00:56:00 -
608:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが久しぶりに戻っても懐かしいとは思わない。むしろ嫌な記憶が呼び覚まされて叫び出したい思いに駆られる。
2006-06-17 00:57:00 -
609:
美桜 ◆kJmhGaf60.
母と言葉を交わすこともなく美桜は自分の部屋へ急いだ。ドアを開ける。飛び出した頃となにひとつ変わらない光景がそこにあった。
2006-06-17 00:58:00 -
610:
美桜 ◆kJmhGaf60.
きっと母は美桜がいつ戻ってきてもいいように毎日掃除をしていてくれたのだろう。倒れこむようにベッドに横になる。
2006-06-17 00:59:00 -
611:
美桜 ◆kJmhGaf60.
首につけたままにしているネックレスに手をやる。誕生日に貰って以来一度も外したことのない皓輝からのプレゼント。
2006-06-17 01:00:00 -
612:
美桜 ◆kJmhGaf60.
(皓輝…会いたいよ…)皓輝はどうしているだろうか。突然連絡の取れなくなった美桜を心配してくれているだろうか。
2006-06-17 01:01:00 -
613:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ずっと続くと思っていた幸せな日々は呆気ないほど簡単に壊れてしまった。
2006-06-17 01:02:00 -
614:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝の傍にいたい。そんなささやかな願いさえ抱いてはいけないのだろうか。
2006-06-17 01:04:00 -
615:
美桜 ◆kJmhGaf60.
(もう何も考えたくない……)そう思いながら美桜は目を閉じた。このまま眠ってしまっていっそ明日なんかこなければいいのに。
2006-06-17 01:05:00 -
616:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そうすれば幸せな記憶も鮮やかなまま死ぬことができるのに。
2006-06-17 01:05:00 -
617:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だがきっとこの家にいては死ぬことすら許されないのだろう。この家で美桜に許されることはただ息をすることだけ。
2006-06-17 01:06:00 -
618:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんな地獄の日々を我慢すればまた皓輝に逢えるのだろうか。それまで皓輝は待っていてくれるのだろうか。
2006-06-17 01:07:00 -
619:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜はこれから始まろうとしている地獄を想像し絶望しながら眠りについた……
2006-06-17 01:09:00 -
620:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。お付き合いいただきましてありがとうございました。
2006-06-17 01:09:00 -
621:
名無しさん
お疲れ様です?楽しみに待ってます?
2006-06-17 01:11:00 -
622:
名無しさん
?
2006-06-17 09:51:00 -
624:
ひろりん
今日、一気に読みました?更新楽しみにしています?
2006-06-17 13:32:00 -
625:
コアラ
しおリ?
2006-06-17 14:35:00 -
626:
美桜
629さん、ひろりんさん、コアラさん、レスありがとうございますm(__)mまた夜にでも更新させていただきます!
2006-06-17 17:00:00 -
627:
美桜 ◆kJmhGaf60.
いつも読んで下さっている皆様本当にありがとうございますm(_ _)m今から更新させていただきます。
2006-06-17 23:18:00 -
628:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side B〜皓輝〜 美桜がいなくなって一ヶ月が過ぎた。美桜からメールをもらってすぐに電話をかけたのだが、留守電だった。
2006-06-17 23:19:00 -
629:
美桜 ◆kJmhGaf60.
しばらく何度かかけてみたがやはり留守電が続き次の日には携帯は解約されていた。
2006-06-17 23:20:00 -
630:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜はいまどうしているのだろうか。
2006-06-17 23:21:00 -
631:
美桜 ◆kJmhGaf60.
毎日のように来ていた美桜が突然顔を出さなくなり、悠馬たちも心配をしている。
2006-06-17 23:22:00 -
632:
美桜 ◆kJmhGaf60.
最初の何日かは『体調が悪いそうだ』と誤魔化していたのだが、さすがに一週間がすぎてしまうとその言い訳も難しくなり本当のことを言わざるを得なくなった。
2006-06-17 23:23:00 -
633:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜の家の事情はある程度悠馬たちも知っていたので理由を聞いて美桜の無事がわかり安心した反面、心配も増えたようだ。
2006-06-17 23:24:00 -
634:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜姉、元気ですかね…」ぽつりと悠馬が寂しそうに言った。「どうだろうな…」と皓輝が返す。皓輝だって心配していないわけではない。
2006-06-17 23:25:00 -
635:
美桜 ◆kJmhGaf60.
最近はなくなっていたとはいえ、美桜が何かあればすぐにリストカットをする。今していないという保証はどこにもない。
2006-06-17 23:26:00 -
636:
美桜 ◆kJmhGaf60.
もし皓輝と会わない間にリストカットをしてしまい美桜に何かあったら…
2006-06-17 23:27:00 -
637:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう思うと居ても立ってもいられなくなるのだが、皓輝は美桜の実家を知っているわけでもなく電話さえ知らない。
2006-06-17 23:28:00 -
638:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜がいなくなってすぐ美桜が勤めている店に美桜の実家のことを聞きにも行った。
2006-06-17 23:29:00 -
639:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが、店でも美桜の実家のことは把握していなかった。当然だろう。
2006-06-17 23:30:00 -
640:
美桜 ◆kJmhGaf60.
経歴などを言いたくない、言えない人間はこの世界にはたくさんいる。だから店側も敢えて深いところまでは追求しない。
2006-06-17 23:31:00 -
641:
美桜 ◆kJmhGaf60.
問題を起こさず、毎日店に来て仕事をしてくれていればそれだけで充分なのだ。
2006-06-17 23:32:00 -
642:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「でも、オレ、美桜姉も心配だけど、皓輝さんのことも心配っす」と悠馬が真剣な顔をして言った。
2006-06-17 23:33:00 -
643:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「皓輝さん、美桜姉がいなくなってからろくに飯食ってないじゃないですか」
2006-06-17 23:34:00 -
644:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜がいなくなってからというもの、皓輝も精神的に落ち込み、イライラし、ろくに眠れず食事もできない日々が続いていた。
2006-06-17 23:35:00 -
645:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「そんなんじゃ、美桜姉が帰ってくる前に皓輝さんが倒れちゃいますよ」と泣きそうな表情で悠馬が言う。
2006-06-17 23:36:00 -
646:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「オレ、美桜姉と皓輝さんが一緒にいるところ見るの大好きでした。2人とも凄く自然に一緒にいるのに、凄く幸せそうだったから…」と悠馬は言う。
2006-06-17 23:37:00 -
647:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「だから、美桜姉が帰ってきた時に皓輝さんは元気じゃないとダメなんです!」と最後には泣き出しながら悠馬は言った。「悠馬…」皓輝は思わず言葉に詰まった。
2006-06-17 23:38:00 -
648:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今まで皓輝は同じ店の従業員と深く関わったことがない。同じ店の従業員とはいえ、いつ客を取られるか油断はできない。
2006-06-17 23:39:00 -
649:
美桜 ◆kJmhGaf60.
水商売の世界はそんなものだ、と思いながら仕事をして来た。だから後輩ですら信用していなかった。
2006-06-17 23:40:00 -
650:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう思っていたからこそ、悠馬がこんなに自分と美桜のことを心配して思ってくれるなんて想像もしなかった。
2006-06-17 23:40:00 -
651:
美桜 ◆kJmhGaf60.
正直に悠馬の気持ちは嬉しかった。そして自分にこんな変化をもたらしてくれた美桜に改めて感謝をした。
2006-06-17 23:41:00 -
652:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜が悠馬たちにきちんと『人』として接していてくれたからこそ、こうして悠馬も心配してくれているのだろう。
2006-06-17 23:42:00 -
653:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ありがとう」素直にその言葉が出た。「俺は大丈夫だから。美桜が帰ってくるまで何があっても倒れたりしないから」「皓輝さん…」
2006-06-17 23:43:00 -
654:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「もうすぐオープンだからとりあえず顔洗って来い」と悠馬に言うと、悠馬は少し恥ずかしそうに「そうっすね」と言いながらトイレに向った。
2006-06-17 23:44:00 -
655:
美桜 ◆kJmhGaf60.
悠馬の後姿を見送りながらタバコに火をつける。そして美桜のことを考えた。
2006-06-17 23:45:00 -
656:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜がいなくなってから美桜のことを考えない日は一日もなかった。
2006-06-17 23:46:00 -
657:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜は今どうしているのだろうか。皓輝の元には美桜と過ごした証が何ひとつない。写真を撮るのを美桜が嫌がったから写真の一枚すらない。
2006-06-17 23:47:00 -
658:
美桜 ◆kJmhGaf60.
あるのは記憶だけ。笑う美桜。怒る美桜。泣く美桜。そして皓輝の名前を呼ぶ少し低めの柔らかい声…。
2006-06-17 23:48:00 -
659:
美桜 ◆kJmhGaf60.
初めて出逢ってから一年近く経とうとしているが、その間の美桜のことはどんな瞬間でも鮮やかに思い出すことができる。
2006-06-17 23:49:00 -
660:
美桜 ◆kJmhGaf60.
この記憶だけが皓輝が美桜と過ごした証だ。
2006-06-17 23:50:00 -
661:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今まで皓輝は思い出にすがって生きるなんて弱い人間のすることだと思っていた。だが、今ならそうしたくなる気持ちがよくわかる。
2006-06-17 23:52:00 -
662:
美桜 ◆kJmhGaf60.
この記憶が鮮やかなうちにまた美桜と過ごせる日々がくるのだろうか…どうすれば美桜を取り戻せる?
2006-06-17 23:53:00 -
663:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう思いながら皓輝の思いはある一つの方向へと向かって行った……
2006-06-17 23:54:00 -
664:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。少なくて申し訳ないですが、何分多忙のためご了承下さいm(_ _)m少しずつでも更新していきますので、気長にお付き合いいただけましたら幸いです。
2006-06-17 23:55:00 -
666:
ラビ
いっぱい進んでた↑かなり読みやすい!
2006-06-18 16:22:00 -
667:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ひろりんさん、アンカーありがとうございます。
ラビさん、いつも応援レスありがとうございます。
遅くなりましたがこれから更新させていただきます。2006-06-19 00:47:00 -
668:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side A〜美桜〜 皓輝と離れてから本当にどれぐらいの時間が経ったのか…美桜はもう今がいつなのか、正確な時間さえ把握できなくなっていた。
2006-06-19 00:48:00 -
669:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ずいぶんとたくさんの季節を独りで過ごしたような気もする。
2006-06-19 00:49:00 -
670:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝と離れてからの美桜の生活は『籠の中の鳥』のようだった。ロクに外出もさせてもらえず、食事だけ与えられ、たまに外出を許されても父の部下たちの監視がつけられていた。
2006-06-19 00:50:00 -
671:
美桜 ◆kJmhGaf60.
どこにいても常に誰かが美桜を見ているのに、ひどく美桜は『孤独』だった。皓輝に会いたい。
2006-06-19 00:51:00 -
672:
美桜 ◆kJmhGaf60.
生きてさえいればいつかまた会うことができるかもしれない。その思いだけを頼りに生きてきた。
2006-06-19 00:52:00 -
673:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝と離れて美桜に大きな変化が一つだけあった。美桜の背中には今、月と桜のTATTOOが刻まれてる。そして太股には比翼の鳳凰。
2006-06-19 00:53:00 -
674:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝の「皓」は白く輝く月を示す。その月の下に舞う桜。背中のTATTOは皓輝と過ごした証。
2006-06-19 00:54:00 -
675:
美桜 ◆kJmhGaf60.
このTATTOOを彫ってから少しだけ美桜は寂しくなくなった。常に皓輝が傍にいてくれるような気がしたから。
2006-06-19 00:55:00 -
676:
美桜 ◆kJmhGaf60.
太股の比翼の鳳凰はもう一度皓輝に会えるための『おまじない』だった。
2006-06-19 00:56:00 -
677:
美桜 ◆kJmhGaf60.
比翼の鳥というのは、一つの羽、一つの目しか持たない2羽の鳥が2羽揃うことによって一羽の完全な『鳥』になれる、という想像上の鳥だ。
2006-06-19 00:57:00 -
678:
美桜 ◆kJmhGaf60.
『夫婦』の深い結びつきを現すときに使われる表現で、美桜はその鳥に自分と皓輝を重ねたのだ。
2006-06-19 00:58:00 -
679:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜と皓輝は2人で初めて一人の『人間』になることができる…
2006-06-19 00:58:00 -
680:
美桜 ◆kJmhGaf60.
あまり多くの時間父の部下たちの監視の目から逃れて行動は出来なかったので、全て出来上がるまでに相当な時間を要した。
2006-06-19 00:59:00 -
681:
美桜 ◆kJmhGaf60.
でも、TATTOOを彫っている間の痛みは何故か美桜に安らぎをくれた。この痛みは皓輝と繋がっている証だ。そう思えたから。
2006-06-19 01:00:00 -
682:
美桜 ◆kJmhGaf60.
出逢った彫師も良かったのだろう。ネットで調べて見つけた女性の彫師。初めてスタジオを訪れた日、包み隠さずどんな事情でどんなTATTOOを彫りたいのかを話した。
2006-06-19 01:01:00 -
683:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜の話を彫師は親身に聞き、そしてこう言った。『2人で協力して素敵な証を残しましょう』と。
2006-06-19 01:02:00 -
684:
美桜 ◆kJmhGaf60.
実際に出来上がったTATTOOは今まで見たどんなTATTOOよりも美しいものだった。毎日そのTATTOOを見ることだけが孤独を癒すことができた。
2006-06-19 01:03:00 -
685:
美桜 ◆kJmhGaf60.
このまま皓輝の想い出と共に鳥籠の中で暮らすのも悪くないかもしれない。そう思い始めたころ季節は桜の季節を迎えていた。
2006-06-19 01:04:00 -
686:
美桜 ◆kJmhGaf60.
部屋の窓から舞い散る桜の花を眺めていた。皓輝と知り合ったのは夏の始め。そして離れたのは冬の半ば。
2006-06-19 01:05:00 -
687:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だから皓輝との思い出の中に桜の景色はない。こんなにも綺麗な桜の花、皓輝もどこかで同じ景色を見ているのだろうか…
2006-06-19 01:06:00 -
688:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ぼんやりと桜を見つめていると部屋の扉をノックする音が聞こえた。どうせ母だろうと思い放って置いた。
2006-06-19 01:07:00 -
689:
美桜 ◆kJmhGaf60.
返事をしなくても入ってくるのだからノックなどしなければいいのに…「美桜ちゃん…」やはり母だった。美桜は母を振り返ることなく桜を見続けていた。
2006-06-19 01:08:00 -
690:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜ちゃん、あなたがこの家に帰ってきてどれくらい時間が経っているかわかっている?」「…さあ?…」そんなことどうでも良い。
2006-06-19 01:09:00 -
691:
美桜 ◆kJmhGaf60.
どうせどれだけの時間が経とうと『籠』の中から飛び立つことなどできないのだから。
2006-06-19 01:10:00 -
692:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…2年よ。あなた2年もの間誰にも会わず過ごしてきているのよ?」「…そう…」だから何だと言うのだ。
2006-06-19 01:11:00 -
693:
美桜 ◆kJmhGaf60.
2年経とうが5年経とうが10年経とうが関係ない。一生このまま皓輝の想い出とともに生きていくのだから。
2006-06-19 01:12:00 -
694:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜ちゃん、あなたこのまま誰にも会わずに生きていくつもり?」美桜は少し苛立ってきた。そんなことを聞いてどうしようというのだ?
2006-06-19 01:13:00 -
695:
美桜 ◆kJmhGaf60.
結局母が父に逆らったのはあの病院での携帯電話の件のみだった。外出に監視がつけられることも黙認してきた母が今更なんだというのだ。
2006-06-19 01:14:00 -
696:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…だから?」素っ気なく美桜は返した。「…美桜ちゃん、あなた、この家を出なさい」「!?」思いがけない母の言葉にさすがに驚いて振り返った。
2006-06-19 01:15:00 -
697:
美桜 ◆kJmhGaf60.
母は美桜に向って銀行の通帳とカードを差し出した。「ここに少しだけどあなたのために取っておいたお金があるの。これを持って家を出なさい」「…お母さん?どういうつもり?」美桜は母の真意がわからず尋ねる。
2006-06-19 01:16:00 -
698:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「そんなことをすればアイツに怒られるのはお母さんなんだよ?」「そうね。でもあなたがこの家に帰ってくる時にお母さん言ったわよね?お母さんだって美桜の幸せを望んでいないわけではないの」「……」
2006-06-19 01:17:00 -
699:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「最初ね、美桜ちゃんが水商売をしているってわかったときはお母さんショックだった。そんなことをして生活をしているくらいならここに戻ってくればいいとも思ったわ」
2006-06-19 01:18:00 -
700:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そういう母の顔は今まで見てきたどの表情よりも寂しそうな顔をしていた。
2006-06-19 01:19:00 -
701:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「でも帰ってきてからのあなたを見ていると、お父さんとお母さんのしたことは間違っているんじゃないかなって思ったの。あなたの幸せを願うならあなたの思い通りの人生を送らせてあげなくてはいけないのよね?」「…お母さん…」
2006-06-19 01:20:00 -
702:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜ちゃん、ごめんね。お父さんもお母さんも今まであなたに本当の意味での幸せを与えてあげることができなくて」そう言いながら母は静に涙をこぼした。
2006-06-19 01:21:00 -
703:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「これからはあなたの望む場所であなたが一緒にいたい人と幸せになりなさい」「…でも・・・もうあの人は待っていてくれていないかもしれない。私なんか必要と
していなかもしれない…」2006-06-19 01:22:00 -
704:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「それでも、ここで何もしないまま人生が終わっていくよりは幸せだとお母さんは思うわ」「…それに、きっとまたアイツが連れ戻しに来るよ」
2006-06-19 01:23:00 -
705:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「お父さんのことはお母さんに任せて。何とか説得するから」それから、と続けて母は何かを差し出した。解約されたはずの美桜の携帯だった。
2006-06-19 01:24:00 -
706:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「電話としてはもう使えないけど、この電話の中には美桜ちゃんの大切な人の連絡先が入っているでしょう?」美桜は言葉もなくその携帯を受け取る。
2006-06-19 01:25:00 -
707:
美桜 ◆kJmhGaf60.
母はずっと充電をしていてくれたらしく、今でもその携帯は電源を入れることができた。メールボックスを開くとそこには懐かしい皓輝とのメールが残っていた。
2006-06-19 01:26:00 -
708:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝とのメールを見ていくうちに涸れてしまったと思っていた涙が溢れてきた。会いたい。皓輝に会いたくて仕方がない。
2006-06-19 01:27:00 -
709:
美桜 ◆kJmhGaf60.
携帯を見つめながら静かに涙を零す美桜を母は静かに抱きしめた。
2006-06-19 01:28:00 -
710:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜ちゃん、幸せになってね。何か困ったことがあればお母さんに連絡するのよ」「…ありがとう、お母さん。ありがとう…」
2006-06-19 01:29:00 -
711:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そして美桜は家を出た。だけど、まだ皓輝には会えない。会いたいけど、会いに行かない。
2006-06-19 01:30:00 -
712:
美桜 ◆kJmhGaf60.
もう少し強くなって、守られるだけではなく皓輝を守れるようになってからでないと皓輝には会わない。
2006-06-19 01:31:00 -
713:
美桜 ◆kJmhGaf60.
それがいつのことになるかはわからない。だけど、美桜にはいくつかの《お守り》がある。
2006-06-19 01:32:00 -
714:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝からもらったネックレス。背中と太股のTATTOO。そして母にもらった携帯。それに皓輝との想い出もある。
2006-06-19 01:33:00 -
715:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だから寂しくても一人で平気だった。『籠』の中でのことを思えばこんな孤独などなんてこともない。
2006-06-19 01:34:00 -
716:
美桜 ◆kJmhGaf60.
強くなろう。いつか胸を張って皓輝に逢えるように……
2006-06-19 01:35:00 -
717:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。読んで下さっている皆様お付き合いくださいまして本当にありがとうございます。
2006-06-19 01:36:00 -
718:
名無しさん
更新楽しみにしてます!
2006-06-19 04:32:00 -
720:
美桜 ◆kJmhGaf60.
726さん、ひろさんレスありがとうございます。読んで下さっている皆さん、本当にありがとうございます。
今から更新させていただきます。2006-06-19 22:29:00 -
721:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side B〜皓輝〜 「皓輝さん、お疲れ様でした!!」悠馬たち従業員が並んで一斉に頭を下げている。今日は皓輝の『ラスト』だった。
2006-06-19 22:30:00 -
722:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜がいなくなってから皓輝は水商売を上がる決心をした。もちろんすぐに辞めるわけにはいかなかったのであれから今まで以上に懸命に働いた。
2006-06-19 22:31:00 -
723:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そして水商売を上がる決心をしてからちょうど一年目の5月30日に『ラスト』を迎えることにした。明日5月31日が皓輝にとっては特別な日だったから。
2006-06-19 22:32:00 -
724:
美桜 ◆kJmhGaf60.
3年前の5月31日、初めて美桜に出逢ったのだ。美桜と出逢ったその日から、新しい人生を歩むことにした。
2006-06-19 22:33:00 -
725:
美桜 ◆kJmhGaf60.
水商売時代に作ったコネで皓輝は自分の店を出すことになった。店は水商売ではなくカフェだ。
2006-06-19 22:33:00 -
726:
美桜 ◆kJmhGaf60.
正直自分でも似合わないとは思うのだが、美桜を思ってのことだった。
2006-06-19 22:34:00 -
727:
美桜 ◆kJmhGaf60.
いつか再び美桜と巡り逢えたとして今までと変わらず水商売のままではまた前と同じ状況になってしまうだけだ。
2006-06-19 22:36:00 -
728:
美桜 ◆kJmhGaf60.
胸を張って美桜の両親に会えるように。そのことを考え昼の仕事をすることにした。
2006-06-19 22:37:00 -
729:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「皓輝さん、オレ店に遊びに行きますよ!!」と悠馬が言う。「大丈夫かよ。酔っ払ってくるんじゃないぞ?」とからかいながら皓輝は言う。
2006-06-19 22:38:00 -
730:
美桜 ◆kJmhGaf60.
悠馬の存在はずいぶん皓輝を助けてくれた。もう美桜は戻ってこないのではないか、そう弱音を吐く皓輝を悠馬はいつも励ましてくれていた。
2006-06-19 22:39:00 -
731:
美桜 ◆kJmhGaf60.
『大丈夫ですよ!絶対美桜姉は帰ってきますって!!』その言葉は何度皓輝を助けてくれたかわからない。
2006-06-19 22:40:00 -
732:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「悠馬、本当にありがとうな」心から感謝の気持ちを込めて悠馬に礼を言った。
2006-06-19 22:41:00 -
733:
美桜 ◆kJmhGaf60.
その言葉を受け悠馬は照れくさそうにしながら、「何言ってんすか!オレの方こそ皓輝さんには本当にお世話になりました」そう言い悠馬は深々と頭を下げた。
2006-06-19 22:42:00 -
734:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そして顔を上げ「皓輝さん、一つだけ約束してください」と真剣な表情で言った。
「ん?」2006-06-19 22:44:00 -
735:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「オレ、歳取ってホストとして働けなくなるまでこの店で頑張ります。だから、いつか必ず美桜姉と遊びに来てください!」
2006-06-19 22:45:00 -
736:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「悠馬…」皓輝はとっさに返す言葉に詰まった。そんなにも自分と美桜の再会を信じてくれているのか…
2006-06-19 22:46:00 -
737:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ああ、約束する。必ず2人で遊びに来るよ」「…待ってます」…そして長いようで短かった皓輝の水商売時代が終わった。
2006-06-19 22:47:00 -
738:
美桜 ◆kJmhGaf60.
翌日。5月31日a.m.11:00。店の前には水商売時代の知人たちからのたくさんの花が贈られていた。
2006-06-19 22:48:00 -
739:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そしてオープンと同時に元同業者や、皓輝の客たちがたくさん店に訪れてくれていた。
2006-06-19 22:49:00 -
740:
美桜 ◆kJmhGaf60.
何人かスタッフは雇っていたが、ここまでたくさんの客が来てくれるとは思っていなかっただけに皓輝も慣れない接客に追われていた。
2006-06-19 22:50:00 -
741:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そこへ「いらっしゃいませ!」振り向くとそこに居たのはヒロだった。手には小さな花束を抱えている。
2006-06-19 22:51:00 -
742:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「よ!」花束を持っていないほうの手を軽く上げ皓輝に挨拶をする。「ヒロくん、お久しぶりです」「おめでとうさん。しっかしカフェとはまた似合ってないな〜」
2006-06-19 22:52:00 -
743:
美桜 ◆kJmhGaf60.
笑いながらカウンター席へヒロは座る。「これ、お祝い。どうせ花はたくさんあるだろうと思って小さいのにした」
2006-06-19 22:53:00 -
744:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ありがとうございます」丁寧に頭を下げ花束を受け取る。「何にしますか?」「アイスティーで」「かしこまりました」オーダーを通し、カウンターを挟んでヒロの前に立つ。
2006-06-19 22:54:00 -
745:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ヒロは店の中を見渡し、「恐ろしくお前に似合っていない店だな」と言った。
2006-06-19 22:55:00 -
746:
美桜 ◆kJmhGaf60.
店の雰囲気はアジアンテイストで、扱っているドリンクも少し変わっている。
2006-06-19 22:56:00 -
747:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜の趣味だな…」ぽつりとヒロは言った。「お前、まだ美桜のこと待っているのか?」
2006-06-19 22:58:00 -
748:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…はい」この店の雰囲気は美桜が好きだったもので統一している。
2006-06-19 22:59:00 -
749:
美桜 ◆kJmhGaf60.
たった一度だけだが美桜が好きだといっていたカフェに一緒に行ったことがあった。いつ美桜が帰ってきてもいいようにその店を基本にしてデザインをした。
2006-06-19 23:00:00 -
750:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…そうか。ま、お前がそれでいいって言うなら俺は何も言わないよ」「ヒロくんも美桜とは全然連絡取れていないんですよね?」「ああ」
2006-06-19 23:01:00 -
751:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜を紹介してくれたのがヒロだったので、美桜が居なくなってから真っ先にヒロに連絡を取った。
2006-06-19 23:02:00 -
752:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そのとき初めて知ったことなのだが、美桜とヒロは幼馴染らしくお互いの家など行き来もあるようだった。
2006-06-19 23:04:00 -
753:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だからその時はかなり食い下がって実家を問いつめたのだが、結局ヒロは教えてはくれなかった。
2006-06-19 23:05:00 -
754:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ただ一言『美桜を信じて待て』とだけ言った。
2006-06-19 23:06:00 -
755:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜、元気してるんですかね」と何気なく皓輝は言った。すると、「どうやら随分と前に実家を出たようだ」「!!」
2006-06-19 23:07:00 -
756:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「それも親父さんの目を盗んで失踪したようだ」(失踪!?)皓輝は愕然とした。
2006-06-19 23:08:00 -
757:
美桜 ◆kJmhGaf60.
自由になったのなら何故皓輝の所へ姿を見せにこないのだ!?もう美桜にとって自分は必要な存在ではないのか!?
2006-06-19 23:09:00 -
758:
美桜 ◆kJmhGaf60.
様々な思いが一瞬にして皓輝の頭をよぎった。その様子を見ていたヒロが一言、「それでもお前は美桜のことを待てるのか?」と尋ねた。
2006-06-19 23:10:00 -
759:
美桜 ◆kJmhGaf60.
確かに自由なのであれば皓輝に逢いに来てもいいはずだ。だが実際に美桜はこの前に現れてはいない。
2006-06-19 23:11:00 -
760:
美桜 ◆kJmhGaf60.
現在はもう皓輝のことなど忘れ、新しい土地で新しい生活を送っているのかもしれない。皓輝の知らない誰かと。だが…
2006-06-19 23:13:00 -
761:
美桜 ◆kJmhGaf60.
少し考えて皓輝はきっぱりいった。「待ちます。俺には美桜が必要です」「そうか…」
2006-06-19 23:14:00 -
762:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「正直、これだけ離れている相手をこれほどまでに思うって言うのは『恋』ではないのかも、と自分でも思うときもあります。無いものねだりで執着しているだけではないのかと」
2006-06-19 23:15:00 -
763:
美桜 ◆kJmhGaf60.
と皓輝はヒロの目を見ながら話す。「でも、恋であれ執着であれ、それ以外の理由であれ、俺にとって美桜が必要だということに変わりはありません」
2006-06-19 23:16:00 -
764:
美桜 ◆kJmhGaf60.
するとヒロは一息置いて、こう言った。「アイツも…美桜も同じようなことを言っていたよ」
2006-06-19 23:17:00 -
765:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「!?会ったんですか!?」「ああ。少し前にな」と落ち着いた様子でヒロは言う。「少し前にアイツから連絡が来て会った。元気だったよ」
2006-06-19 23:18:00 -
766:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ヒロくん、美桜は今どこに!?」「それは今は言えない。アイツとの約束だから」「約束!?どんな!?」
2006-06-19 23:20:00 -
767:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜自身がお前に会えると思うまでは会いに行かないと言っていた」「どうして!?」
2006-06-19 23:20:00 -
768:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「落ち着け皓輝。ここはお前の新しい店だろ?」そう言われて皓輝は我に返り少し冷静になる。
2006-06-19 23:21:00 -
769:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「どういうことですか?」とさっきよりは少し落ち着いて問う。「お前を守れるくらい強くなってから会いに行くといっていた」「え?…」
2006-06-19 23:23:00 -
770:
美桜 ◆kJmhGaf60.
意味がわからず皓輝は唖然とする。「美桜が言ってたよ。今まで自分は皓輝に守られてばかりいた。でも、今度は守られるばかりではなく自分も皓輝を守れるくらいの強さが欲しいと」
2006-06-19 23:24:00 -
771:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「……」「だから暫くは一人で頑張るそうだ」「そんなことを美桜が…」守られているばかりだなんて、そんなことはなかったのに。
2006-06-19 23:25:00 -
772:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜の存在がどれだけ皓輝のことを助けてくれていたか。傍にいてくれるだけで充分なのに…
2006-06-19 23:26:00 -
773:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「まあ、アイツも頑張ってるんだ。お前も色々辛いだろうが頑張れ」「…はい」それだけ言うのが精一杯だった。「いらっしゃいませ!!」「お、新しいお客さんだぞ」と言いながらヒロは立ち上がる。
2006-06-19 23:27:00 -
774:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「忙しそうだから長居しても悪いし、帰るわ」財布を取り出しカウンターに千円置いて「じゃあな」と言い、「そうだ。これ」とメモを差し出した。
2006-06-19 23:29:00 -
775:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「何ですか?」メモを開きながら皓輝は尋ねる。どこかの住所と携帯電話の番号が書かれていた。
2006-06-19 23:30:00 -
776:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「俺からのもう一つのお祝い」「?」「美桜の仕事先と今の携帯電話の番号」「!?」驚きながらヒロの顔を見ると、
2006-06-19 23:31:00 -
777:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「さすがに俺もお前に同情するわ。これをどう使うかはお前に任せるよ」と言い店を出て行った。
2006-06-19 23:32:00 -
778:
美桜 ◆kJmhGaf60.
慌てて追いかけ店先で「ありがとうございました!!」と深々と頭を下げた。店に戻りスタッフに休憩すると声をかけスタッフルームに入った。改めてメモを見る。
2006-06-19 23:33:00 -
779:
美桜 ◆kJmhGaf60.
『大阪市北区…』あれだけ遠かった美桜がこんなにすぐに近くにいる。メモを見ながら皓輝はそう思い今すぐにでも飛び出したい思いだった。
2006-06-19 23:35:00 -
780:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが…水商売を辞め店を出したのも全て美桜のためだった。今ここで店を放り出して美桜に会いに行ってしまえば、これまでの努力が全て無駄になってしまう。
2006-06-19 23:36:00 -
781:
美桜 ◆kJmhGaf60.
それに美桜も皓輝のために頑張っているのだ。会おうと思えばいつだって会えるのだ…そう思い直し、皓輝は店へ戻った。
2006-06-19 23:38:00 -
782:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「いらっしゃいませ!!」と新しく入ってきた客に明るく挨拶をする。たった一枚のメモだがそれでも美桜と繋がる大事な証。
2006-06-19 23:39:00 -
783:
美桜 ◆kJmhGaf60.
それを手に入れ皓輝は今までの苦しみなど全てなくなったような気分だった。
2006-06-19 23:40:00 -
784:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜、いつか必ず迎えに行くから。お前に胸を張って会えるように頑張るよ…そう思いながら新しい店での一日が過ぎて行った…
2006-06-19 23:41:00 -
785:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今日の更新はここまでになります。お付き合いくださいましてありがとうございました。
2006-06-19 23:42:00 -
786:
コアラ
気になる????
2006-06-20 06:37:00 -
788:
ラビ
うーん。気になる(ΦДΦ)
2006-06-20 23:03:00 -
789:
美桜 ◆kJmhGaf60.
コアラさん、ラビさん、お待たせいたしました。ひろりんさん、アンカーありがとうございます。今から更新させていただきます。
2006-06-21 01:04:00 -
790:
美桜 ◆kJmhGaf60.
Side A&B=One 実家を出てから母がくれたお金でネイルの学校に入り勉強をした。今では資格も取れキタにあるサロンで働いている。
2006-06-21 01:05:00 -
791:
美桜 ◆kJmhGaf60.
実家を出てから何度も皓輝に連絡を取ろうと思ったけれど、まだ会えないと思い我慢をし今日まで頑張ってきた。
2006-06-21 01:06:00 -
792:
美桜 ◆kJmhGaf60.
離れることを決めたのは自分なのだから。けれど、未だに皓輝からもらったネックレスは外せないでいる。
2006-06-21 01:07:00 -
793:
美桜 ◆kJmhGaf60.
この銀の鎖は美桜と皓輝を繋ぐ鎖だから外すことができなかった。
2006-06-21 01:08:00 -
794:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「お疲れさまで〜す!!」同じサロンのネイリストたちが仕事を終え帰って行く。
2006-06-21 01:09:00 -
795:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「お疲れ様です」美桜は皆を見送り一人サロンの中にいた。何となく帰りたくない気分だった。
2006-06-21 01:10:00 -
796:
美桜 ◆kJmhGaf60.
こんなとき以前の自分なら勢いに任せてミナミの街に出て、浴びるほど酒を飲み疲れ果てて眠っていたのだろう。
2006-06-21 01:11:00 -
797:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だが、実家を出てからというものそんなことは一度もなかった。あれだけ誰かと一緒にいたくて仕方がなかったのがウソのように孤独を何とも思わなくなっていた。
2006-06-21 01:12:00 -
798:
美桜 ◆kJmhGaf60.
あれから実家には一度も帰っていない。電話すらしていない。正直母のことは気にはなる。だが、まだ父を許せないでいた。
2006-06-21 01:13:00 -
799:
美桜 ◆kJmhGaf60.
今ならあれだけ厳しかった父の気持ちも少しだけなら理解できる。父は本当に愛し方を知らなかったのだろう。
2006-06-21 01:14:00 -
800:
美桜 ◆kJmhGaf60.
だからといってすぐに許せるものでもなかった。だけど、いつか父を許せる日が来れば…最近ではそう思えるようにまでなっていた。
2006-06-21 01:15:00 -
801:
美桜 ◆kJmhGaf60.
ふとカレンダーに目をやると今日は美桜の誕生日だった。(忙しくて忘れてたなぁ…)
2006-06-21 01:16:00 -
802:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そんなことを考えながらロッカーを開け、バッグの中から携帯を取り出した。
2006-06-21 01:17:00 -
803:
美桜 ◆kJmhGaf60.
メールが何通か来ている。開くとどれも友人たちからの『Happy Birthday』だった。その中にヒロからもメールもあった。
2006-06-21 01:18:00 -
804:
美桜 ◆kJmhGaf60.
『誕生日おめでとう。俺からの誕生日プレゼントはお前が今一番欲しいものにしておいたから』と。
2006-06-21 01:19:00 -
805:
美桜 ◆kJmhGaf60.
(一番欲しいもの?)何も思いつかない。気になってヒロに電話をしてみる。コール音…
2006-06-21 01:20:00 -
806:
美桜 ◆kJmhGaf60.
『はい』「お疲れ〜。ねえヒロ、美桜の一番欲しいものって?」『ああ。メール見たのか?とにかく誕生日おめでとうさん』
2006-06-21 01:21:00 -
807:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ありがとう〜!!で、プレゼントって何?」『お前、プレゼントは開ける楽しみが要るだろ?だから中身は内緒』
2006-06-21 01:22:00 -
808:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ええ〜!?何よそれ〜。そんなに凄いものなの?」『ああ。とにかく取りにおいで』「了解。どこにいけばいい?」『とりあえず後で電話するからちょっと待ってて』「はぁい。じゃ、また後でね」
2006-06-21 01:24:00 -
811:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう言って電話を切り、帰り支度を始める。(本当に一番欲しいものって何なんだろ?)最近ヒロとはあまり連絡をしていなかったので、思い当たることが無い。
2006-06-21 01:25:00 -
812:
美桜 ◆kJmhGaf60.
あるとすれば一つだけだがまさか…頭に浮かんだことを美桜は即座に否定した。
2006-06-21 01:26:00 -
813:
美桜 ◆kJmhGaf60.
(あり得ない)そう思いながら店を出、駅へ向かおうとした。そこへ…
2006-06-21 01:27:00 -
814:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「美桜」懐かしい声がした。とっさに今自分が耳にしたものが信じられなくて振り返ることができなかった。
2006-06-21 01:28:00 -
815:
美桜 ◆kJmhGaf60.
一度も忘れたことがないこの声。間違えるはずがない。
2006-06-21 01:29:00 -
816:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そこへもう一度「美桜」と呼ばれた。ゆっくりと振り返るとそこにいたのは皓輝だった。
2006-06-21 01:30:00 -
817:
美桜 ◆kJmhGaf60.
記憶の中の皓輝よりは髪が短くなり少し痩せてはいたがそれは確かに皓輝だった。「…皓輝…」美桜は今自分が目にしているものが信じられなかった。
2006-06-21 01:31:00 -
818:
美桜 ◆kJmhGaf60.
あれだけ逢いたかった皓輝が今すぐそこにいる。「…皓輝…どうして…」それだけ言うのが精一杯だった。
2006-06-21 01:32:00 -
819:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「誕生日おめでとう」そう言いながら皓輝は美桜の方へ歩いてくる。
2006-06-21 01:33:00 -
820:
美桜 ◆kJmhGaf60.
美桜もよろけながら皓輝の方へ近づく。そしてこの腕に触れた。「…夢?」
2006-06-21 01:35:00 -
821:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そう呟くと皓輝は「夢じゃないよ、美桜。俺は確かにここにいる」と言いながら美桜の手を握った。「迎えに来たよ」と微笑みながら皓輝は言う。
2006-06-21 01:35:00 -
822:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「どうして…ここが…」「これ、ヒロくんから」と皓輝は一枚のメモを美桜に手渡す。開くと
2006-06-21 01:37:00 -
823:
美桜 ◆kJmhGaf60.
《お前が今一番欲しいもの確かに届けたぞ》とだけ書かれていた。
2006-06-21 01:38:00 -
824:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ヒロくんが美桜の居場所教えてくれたんだ」久しぶりに会う皓輝の顔を見つめる。逢いたかった顔がそこにある。堪らず美桜は皓輝の首に腕を回した。
2006-06-21 01:40:00 -
825:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…皓輝…逢いたかったよ…」「俺もだよ、美桜」皓輝が静かに美桜を抱きしめる。
2006-06-21 01:42:00 -
826:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「…ごめんなさい…本当にごめんなさい…」泣きながら美桜は皓輝に謝る。「いいんだよ、美桜。気にするな。俺の方こそごめん」
2006-06-21 01:42:00 -
827:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「何が?」顔を上げ皓輝を見つめる。「ヒロくんから、美桜のこと聞いてたんだ。美桜が今はまだ逢えないって言ってたのも聞いてる」「…え?」
2006-06-21 01:43:00 -
828:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「なのに、どうしても逢いたくてこうやって迎えに来てしまった」「…皓輝…」「美桜、俺と一緒に帰ってくれるか?」「・・・でも」と、美桜は少しためらった。
2006-06-21 01:44:00 -
829:
美桜 ◆kJmhGaf60.
帰りたい。だが、帰ればまた迷惑をかけてしまうかもしれない…「美桜、もう俺を独りにしないでくれ」と皓輝は言った。
2006-06-21 01:46:00 -
830:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「ヒロくんから俺のために美桜が強くなろうとしてくれているとは聞いたよ。でも、俺は美桜がいてくれればそれでいい」「…皓輝…」
2006-06-21 01:47:00 -
831:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「だから俺の傍にいてくれ」美桜はもう涙で皓輝の顔すらはっきり見えなかった。耳に聞こえる懐かしい声は少し泣いているような声だった。
2006-06-21 01:48:00 -
832:
美桜 ◆kJmhGaf60.
抱きしめる腕の力がさらに強くなる。「美桜」「…皓輝と一緒にいたい…」何とか喉から声を押し出し美桜はそう言った。
2006-06-21 01:50:00 -
833:
美桜 ◆kJmhGaf60.
「一緒にいるよ。これからはずっと…」「うん」そう言って美桜は顔を上げた。「今度こそずっと一緒だね?」「ああ」
2006-06-21 01:50:00 -
834:
美桜 ◆kJmhGaf60.
そして2人は初めてのキスのようにそっと唇を重ねた…
2006-06-21 01:52:00 -
835:
美桜 ◆kJmhGaf60.
〜Another One〜 『比翼の鳥』は一羽では生きていくことができない。二羽揃って初めて羽ばたくことができる。
2006-06-21 01:53:00 -
836:
美桜 ◆kJmhGaf60.
でも、一羽では生きていくことができない鳥がどちらかを失ったときにどうなるのか誰も知らない。
2006-06-21 01:54:00 -
837:
美桜 ◆kJmhGaf60.
出会ってしまった二羽の鳥はこれからも共に羽ばたき続ける。
2006-06-21 01:55:00 -
838:
美桜 ◆kJmhGaf60.
どちらかがどちらかを失うまで……
――Fin――2006-06-21 01:56:00 -
839:
美桜 ◆kJmhGaf60.
読んで下さっている皆様今までお付き合いくださいまして本当にありがとうございました。これにて『銀の鎖』完了とさせていただきます。
2006-06-21 01:57:00 -
840:
名無しさん
お疲れ様でした?毎日楽しみにしてました?完結おめでとうございます?
2006-06-21 01:58:00 -
841:
美桜 ◆kJmhGaf60.
皓輝と美桜の物語は現在も続いています。これから先のことは私にもわかりません。
皓輝と美桜の物語、皆様の中で皆様が思う『幸せ』の形で終了していただけたら、と思っています…
本当に長い間お付き合いくださいましてありがとうございました。2006-06-21 01:59:00 -
845:
コアラ
お疲れさまでしたッッ? ずっと楽しみに読んでました??最後2人が会えて本当によかったデス? お疲れさまでした?
2006-06-21 02:37:00 -
846:
ラビ
お疲れさま?めちゃくちゃ読みやすかったしおもしろかったぁ?ほかにも話書く予定あったら教えてくださいね?
2006-06-21 02:58:00 -
848:
ひろりん
主さん、完結おめでとうございます!
毎回楽しく読ませて頂きました(^-^)
次の作品も楽しみにしています♪
本当にお疲れ様でした!2006-06-21 04:04:00 -
849:
名無しさん
お疲れさまでした!すごく良かったです!
2006-06-21 15:24:00 -
853:
名無しさん
めっちゃよかったぁ?
読みやすかった?2006-06-22 18:46:00 -
854:
はるな
一気に全部読みました?完結おめでとう?これからも幸せにね?
2006-06-25 00:34:00 -
855:
美桜
完結後もレスして下さってありがとうございますm(__)m
今でも晧輝と仲良くやっていますよ?2006-06-25 13:51:00 -
857:
アキラ
今日いっきに読みました??とっても良かったです?
お疲れ様?お幸せにぃ???2006-06-27 04:58:00 -
858:
名無しさん
よかったー!モゥ会えナィんかと途中思ってしまった!長い間一人の人を想うンは大変ょなぁ。
お疲れさまでした!2006-06-28 23:29:00 -
859:
美桜
アキラさん、レスありがとうございますm(__)m今は2人仲良く過ごしてますよ(^-^)
867さん、レスありがとうございますm(__)m私にとって晧輝はいて当たり前の存在なので思い続けるよりいないことの方が苦痛でした(;^_^A2006-06-29 16:18:00 -
860:
りか?
暇つぶしのつもりで読んだんやけど、かなり読みやすいし、むっちゃよかったぁ???また小説かくなら言ってねぇ?絶対よむから?お幸せに…??
2006-06-30 01:03:00 -
861:
しー?
感動しました????
お疲れ様でした?ずっと仲良くして下さいね??゛2006-07-01 01:01:00 -
862:
美桜◆a8LCXFMc7c
りかさん、しーさん、レスありがとうございます。
これからもずっと仲良くいられるよう頑張ります♪2006-07-05 04:04:00 -
864:
名無しさん
?
2006-07-07 16:50:00 -
865:
名無しさん
?
2006-08-14 02:41:00 -
866:
名無しさん
1ー300
2006-08-15 05:53:00 -
868:
名無しさん
凄くよかった?
これからも幸せに?2006-08-17 12:15:00 -
869:
名無しさん
初めて読んだ?すごい感動しました?
2006-11-18 12:45:00 -
870:
美桜◆a8LCXFMc7c
上げて下さった方ありがとうございますm(__)m感想スレいただけてとても嬉しいです(^o^)
2006-11-19 03:04:00 -
871:
ぬ
実話ですか???すごいはなしですね???
2007-03-19 20:16:00 -
872:
名無しさん
あげ?
2008-09-06 21:09:00 -
873:
名無しさん
シオリ?
2010-11-01 12:57:00 -
874:
名無しさん
良かった?お幸せにぃ?
2012-02-01 22:58:00 -
875:
名無しさん
リンド&リンダーズ
2012-02-15 03:53:00